普通に中学生してたら超展開に巻き込まれたヤツ   作:はごろも282

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だいたい4000字で1話としていることを告白します


転校生→改良の時間

 修学旅行も終わり、通常の生活が戻ってきた。

 日頃であれば特別な行事の後はいつにもまして憂鬱になるものだが、今回に限ってはそうではなかった。理由は、昨日烏間センセーから一斉送信されたメールにある。

 

 明日から転校生が一人加わる

 

 そんな内容が記されたメッセージ。そう、転校生だ。端的に言って僕は新しく加わるクラスメイトに浮足立っていた。

 とはいえ、さすがの僕も同じ過ちは繰り返さない。烏間センセーのメールには多少外見に驚くだろう、なんてことも書いてあった。まあ間違いなく殺し屋だ。

 

 どんな人なんだろうか、生徒として転校するということは若作りなのか、それとも激渋なオッサンなのか。国により秘密裏に育成されたハイパーエージェントの可能性だってある。なんにせよ、そんな非日常を求めてる自分がいるのだ。

 

 そんな期待を胸に夜のうちからワクワクしていたら見事に寝坊したわけだが。

 

「まっにあうかぁ……これ……!?」

 

 全力で走りながら街中の時計をちらりと見る。今の時間は8時35分。始業は35分。確実に遅刻ではある。1限は45分だから、暗殺訓練が始まってから飛躍的に成長した身体能力なら山を登る時間を考慮してもギリギリだ。

 あーもう僕のバカ!なんで修学旅行前日みたいなミスを修学旅行翌日にしてんだ!?

 

 とりあえず、今は校舎に向かうしかない。話はソレからなのだ。僕は心を無にして走った。

 

 ☆

 

 教室の前、扉を開けるのが億劫だ。ノンストップで走ったから肩で息をしているし、汗だって相当かいている。この疲労感が抜けきらないうちに入れば「急いだんです」感はだせる。が、それはそうとして遅刻したときは入りにくいモノなのだ。どうせ殺せんせーは僕がこうして立っていることもわかっているだろうし、そのうえで放置しているに決まってるんだ。心置きなく気を落ち着かせてもらおう。

 

 数度深呼吸をする。……よし、落ち着いた。今日はいつもと違って転入生もいる。どんな人であれ、最初から悪印象を持たれるのはまずい。怖い殺し屋なら殺されかねないし、女性ならふつうに嫌われたくない。ということは、ここはお茶目な感じで入るのがベストだろう。

 

 そこまでプランを考えてもう一度深呼吸。そうして、ガラッ!と勢いよく扉を開ける。

 

「すいません遅刻しましたぁぁああああっ!!?!?!?」

 

 元気よく入室した僕を迎えたのは無数の対先生用BB弾の弾幕による嵐だった。

 

 急いで扉を閉め、とりあえず深呼吸。

 ……。

 

「め、滅茶苦茶キレてる……!?」

 

 転校生は超真面目系殺し屋なのかもしれない。

 

 既に1限は始まっている。E組のルールとして授業中の発砲は禁止だから、あれはみんなの仕業じゃない。ということは誰がやったのか、転校生である。

 なんでだ?せっかくの転校初日に遅刻して歓迎できなかったからか?もしかしてお祝い事ガチ勢なのか?そうなら次の休み時間に真剣に祝うからどうにか許してほしい。

 

 今度は刺激しないようにゆっくりと教室の扉を開く。中をこっそりと覗き見る感じで細心の注意を払って首を垂れるのだ。

 

「お、遅れたくせに調子乗ってすいませぇん……。自分、入ってもいいスかね~……?」

 

「おはようございます宇井戸君!遅刻は感心しませんが、今は余裕がないのでお咎めはナシです……!」

 

「ッス!!ありがとうございます!!」

 

 殺せんせー直々に許しを得たためそそくさと自席へと向かう。殺せんせーがいいと言ったのならもう安心だ。たとえ殺し屋が何をしても僕への被害は0のはず。守ってもらえるし。

 休み時間の詫びだけは忘れないようにしよう。

 

「……おはよ。タイミング悪かったね」

 

 席に座って一息ついていると、隣の速水さんが声をかけてきた。

 

「ん、まったくだよ。危うく転校生に殺されるとこだった……」

 

「遅刻するのが悪いけどね」

 

「仰る通りで……。それで、件の転校生はどなた?」

 

 会話の流れでそう聞くと、速水さんは顎をクイと後ろにやる。つられて首を動かすと、そこには見たことない黒い箱があった。箱の液晶には美少女の顔、側面からは大量のマシンガンが飛び出している。

 

「……なるほど」

 

 何もわからん。

 

 ☆

 

 話を聞いた結果、ある程度把握することができた。あの箱はなんかすごいAIが搭載されたノルウェー開発のトンでも兵器なんだそうだ。殺せんせーが生徒に手を出せないという契約を使った卑劣な罠、なるほどロボットのクラスメイトとは新しい。

 それでだけど、さっき僕が見舞われた弾丸は殺せんせーに向けた流れ弾だったみたいだ。僕が席に着いたあとも引き続き嵐がやむことがなかったことからも間違いはない。ただのトバッチリだったみたいで心底安心した。

 

 箱、もとい『自律思考固定砲台』の特徴として、優れたAIによるトライ&エラーがあげられる。常に成長する思考と機械特有の正確な射撃は、殺せんせーの触手を一本破壊することに成功したのだ。これはカルマ君以来の快挙になる。

 

 そうして、殺せんせーがまともに授業なんてする余裕もないまま1時間目が終了する。脱兎のごとく飛び出す殺せんせーと、役目を終えたと言わんばかりにブラックアウトする自律思考固定砲台。残された僕らと、散らかりに散らかったBB弾。

 

「……これ……俺等が片すのか?」

 

 そんな声がむなしく響く。みんな同じ気持ちのはずだ。すさまじくグッチャグチャな状況にクラスは一致団結していた。

 

「掃除機能とかついてねーのかよ自律思考固定砲台さんよお」

 

 村松君がそう自律思考固定砲台に絡むも、ブラックアウトした画面は起動しない。完全に沈黙を貫くようだ。

 

「チッ……シカトかよ」

 

「やめとけ、機械に絡んでもしかたねーよ」

 

 相当イラついてるみたいだ。文句を言いながら掃除に入るも、空気は重いまま。

 

 その後、どうにか綺麗にして迎えた二時間目も三時間目も機械仕掛けの転校生の攻撃は続いた。僕らは毎時間片付けをした。そんなこんなで、あっという間に昼休みになった。

 

「……流石にやってられないな」

 

「言ってもどーにもなんないだろ。このままやるのか授業」

 

「そりゃそうだけど……」

 

 そうは言いつつみんな思っているのだろう。言葉に覇気が感じられない。

 

「よし、ちょっと言ってくる」

 

「はっ?行くってお前どこにだよ?」

 

 三村君の声を無視して歩みを進める。目的地は当然黒い箱だ。

 

「やあ。自律思考固定砲台さん」

 

 話しかける。反応はない。

 

「やあ、自律思考固定砲台さん」

 

 もう一度話しかける。やはり反応はない。

 

「……やあ──」

 

「こえーよ壊れたラジカセか!?」

 

 3度目の交信はそんな菅谷君の声にかき消された。

 

「わっごめん菅谷君、うるさかった?」

 

 菅谷君は自律思考固定砲台の前の席。近くでいろいろやられたら気になってしまうのもしかたない。

 

「うるさいもなにも、なにやってんだよ宇井戸……」

 

「いや、対話をしようと思って」

 

「お前の対話は同じセリフを言い続けることなのか!?」

 

 そういうわけじゃない。ただ返事がないから続けていただけだ。

 と、そんな僕らのやり取りにつられてか、ぞろぞろと何人か集まってきた。

 

「相手は機械だぜ?無謀だろ」

 

「意思疎通もできない欠陥AIなら廃棄していいでしょ」

 

「目の前でよくそんなこと言えるなお前!?」

 

 前原君の発言に正直に返すと、なぜかヤバいヤツみたいな扱われ方をした。僕がおかしいみたいに扱われてるのは納得がいかない。

 

「いやいやだってさ、対殺せんせー用のAIだよ?対話機能は絶対あるよ」

 

 間違いない。それができないなら殺せんせーを殺すなんて夢のまた夢だ。

 

「だから多分、この箱は僕の声を明確に無視してるんだ」

 

「……宇井戸の言ってることなのに信憑性がある」

 

「待って渚君?どう意味かなそれ」

 

 聞き捨てならないセリフについ目を向けるとスッと逸らされた。確信犯だ。後で仕返ししてやろう。

 ……まあいい。今はこの箱だ。気を取り直して、自律思考固定砲台に意識を向けなおす。

 

「ねえ、ジリチュっ!!」

 

(((噛んだ!!)))

 

 バッ!とみんなの方を見る。全員から目を逸らされた。余計なことを考えるんじゃないぞお前ら。いいか、僕は噛んでいない。

 

「……ふぅ、さて。ジリチュっ!」

 

「「「──っ!!」」」

 

 畜生二度目は無理だ!!あー恥ずかしい!もう最悪だっ!

 

 ていうか言いにくいんだよ自律思考固定砲台!長いよ名前!安直か!

 

「──贅沢な名だね。今から君の名前はシコだ」

 

「「「!?」」」

 

 どうにか湯婆婆を憑依させることで窮地を脱する。危ないところだった。僕の咄嗟の機転がなければ今頃さらし者だっただろう。

 

「シコさん。聞いてるのか、返事をしないなら僕にも考えがあるぞ」

 

「……なあ、シコさんってやめね?響きがあんまりだっていくら機械でも」

 

「じゃあリッシコさんだ」

 

「なんでシコは残そうとするの!?」

 

 そんな会話を続けている最中も箱からの返答はない。

 

 ……しかたない、やるしかないか。

 

「まさか機械相手にセクハラする日が来るとは……」

 

「とりおさえろーっ!!」

 

 呟いた瞬間に身柄を拘束された。なんて速度、反応できなかった。

 

「何しようとしてんの!?バカなのお前!!」

 

 前原君の容赦ない罵倒。バカだって?失礼な!

 

「僕はいたって真剣だぞ!!」

 

「「「なお悪いっつーの!!」」」

 

 今度はみんなして言ってきた。理解者がいない。酷い話だ。

 僕だってやりたくはない。だけどこれが最短なんだ。それをみんなに理解してもらう必要がある。

 

「この箱は美少女AIみたいだから一応女性だよね?女子をふりむかせる手っ取り早い方法、それはセクハラだ!」

 

「トンでもねー持論飛んできた!?」

 

「相手は機械だぞ!?」

 

「本物にはやらないよ!!でも機械に人権はないだろ!!」

 

「コイツシンプルに最低だ!?」

 

「女子生徒だっている中でなんてこと言いやがる!?」

 

 結局、僕の作戦は男子のみんなによって阻まれ、その後も何度か仕掛けた対話術は通用しなかった。

 そうして1日が終了する。その間銃弾が止むことはなく、僕にとってはただ女子の視線がきつくなっただけの1日だった。

 

 

 なお翌日、リッシコさんは寺坂君らの手によってガムテープでぐるぐる巻きにされ行動できなくなった。強硬手段が許されるなら僕の対話の方が穏便だったと思う。

 




機械へのセクハラとはいったいなんなのか分からないことを懺悔します

アンケより、そのうち過去回想があるであろうことを告知します
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