普通に中学生してたら超展開に巻き込まれたヤツ   作:はごろも282

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前回あとがきでこの小説をどのジャンルだと思って読んでるのか気になると書いたところ、感想欄が女性用ロンギヌスとロヴロ先生のハニトラ教室で埋まりました。

どうやらこの小説のジャンルはエロのようです。


二時間目の転校生

「──ふわぁ」

 

 朝、部屋に響く雨音で目が覚める。

 ベットに横たわったまま眠気でろくにまわらない思考。目覚ましなしで起きるなんていったいいつぶりかな?

 

「おはようございます宇井戸さん!時間的にも2度寝はよくないですよ!」

 

 目覚ましが鳴るまでもうひと眠りしようとしていると、不意にそんな声がこだました。最近になって聞きなれた声、僕らを手助けしてくれるようになったクラスメイトの律の声だ。

 

「……おはよう律」

 

「はい!おはようございます!本日6月15日の天気は雨、新たに転校生が加わる日です!」

 

「そういえばそうだったね」

 

 ハキハキした律の声でようやく目が覚めてきた。それで思い出す、そういえば今日は新たに転校生がまた一人加わる日だった。ここまで段階的に増えていくと流石に分かる。どうせ次も殺し屋だ。

 

 話しながら布団の傍らに乱雑に置かれたスマホを手に取り、時間を確認する。7時50分、始業までにはまだ余裕がある。

 ボケっとそのままスマホを眺めていると、ひょこっとスマホの中で動く影。そのまま眺めていると、画面のハジから律が顔を出した。

 

「あぁ、スマホから喋ってたんだね」

 

「はい。みなさんとの情報共有を円滑にするために私の端末をダウンロードしてみました。“モバイル律”とお呼びください!」

 

「なるほど、それは便利だね」

 

「ありがとうございます。こうして様子を見にきたりなんかもできちゃいます!」

 

 私が転校してきた日、宇井戸さんは遅刻されてきたので……なんて言いながら少し得意げな様子の律。かわいい。

 そっか、僕が前寝坊してきたから律は心配してくれていたんだ。

 

「わざわざありがとね。律」

 

「いえ!これもサポートの一環です!」

 

「あはは」

 

「ふふふ」

 

 ブツッ──!

 

 しまった。つい誤ってスマホの電源ボタンを押してしまった。不慮の事故だけどこれでは律との連絡が取れそうにない。まあ電源を入れるのは学校に行ってからでいいか。律もたまたま、偶然そうなってしまったと話せば許してくれるだろう。

 それにしても……そっかそっか。はじめは協調のきの字も知らないようだった律もこんなにたくましく成長したのか。なんだか感慨深いなあ、うんうん。

 

「──もうっ宇井戸さん。急に電源を落とさないでくださいっ」

 

 ビクっ!

 

 完全に気が抜けていたところに再度律の声が聞こえた。おかしい!電源は切ったはずだ!

 そう思ってスマホを覗き込むと、画面にはプンプンと書かれた看板を持つ律の姿が。スマホも再起動されていた。

 

「あはは、ごめん。手が滑っちゃったよ」

 

「もうっ」

 

 どうやら自力でスマホに電源を入れたみたいだ。どうやったんだいったい。くっ……電源を切っただけでは甘いということか……!

 まあいい。ならさらに強引に──。

 

「次からは気を付けてくださいね?じゃないと──」

 

 学校への支度を済ませつつタイミングを見計らう。よきところで……今ッ!

 

「あはは……ああっと今度は足が──」

 

「──じゃないと、私もついグループに間違った画像を送ってしまうかも」

 

「──す……べるかぁぁああ!!??」

 

 あっぶねー!?緊急回避ぃ!!

 

 ☆

 

 教室にて。いつもと少し変わった会話。

 

「烏間先生から転校生が来ると聞いていますね?」

 

「あーうん。まあぶっちゃけ殺し屋だろうね」

 

 会話の内容は来たる転校生のこと。殺せんせーも生徒も共通の認識だ。

 殺せんせーは前回の律の反省も踏まえて、油断はないみたいだ。

 

「ですがいずれにせよ、皆さんに暗殺者が増えることは嬉しいことです」

 

 ニコニコとそう告げる殺せんせーは本心から言っているみたいで、自分が殺されることへの危機感なんかはまるで抱いていないみたいだった。

 

「……で、なんでお前は朝からそうなってんの?」

 

「……大丈夫?」

 

 そんな会話とは別に、三村君と速水さんは呆れたように机に突っ伏す人影を眺める。

 

「な、なんとか……」

 

 人影とは、当然僕だ。

 

「どんな朝を過ごしたらそんなことになるんだ……」

 

「いつも死にかけだけど今日はいつにも増して酷いね。グミ食べる?」

 

「あ、ありがと神崎さん」

 

 疲労困憊の僕を見かねて神崎さんがお菓子を恵んでくれた。やさしい。おいしい。ブドウ味。

 

 グミを食べて少し元気になったところで、かいつまんで朝の出来事を話すことにする。

 

「今日は朝からクラスラインに僕のスマホデータが流出しかけたんだ」

 

「……どうして?」

 

 分かんない。

 

「そーいえば律。何か聞いてないの同じ転校生の暗殺者として?」

 

「はい。少しだけ」

 

 どう話したものかと迷っていると、諸悪の根源である律の呑気な声が聞こえてきた。どうやら転校生についての話らしい。

 

「初期命令では……私と『彼』の同時投入の予定でした。私が遠距離、彼が肉薄……連携して殺せんせーを追い詰めると」

 

 彼、ということは転校生は男か。

 

 というか、最初の律は連携なんてクソみたいな感じだったけど作戦に二人での連携が組み込まれてたのか。あんな様子で連携なんてできたんだろうか。もしかすると僕が思っているよりも作戦はガバガバなのかもしれない。

 

「ですが、2つの理由でその命令はキャンセルされました」

 

「へぇ……理由は?」

 

「ひとつは彼の調整に予定より時間がかかったから」

 

 調整……ということは律と同じ機械なんだろうか。近接と言っていたしその線は薄いか。じゃあなんだろう?人造人間……ないな。現実と漫画をごっちゃにしてはいけない。人造人間なんて技術はこの世界にはないはずだ。

 

 うん、考えても分からない。ここは次の台詞に期待するべきだろう。

 

「もうひとつは、私が彼より暗殺者として圧倒的に劣っていたから」

 

 律よりも暗殺者としてヤバい、だって?

 

 身構えていたにもかかわらず、律の発言には驚くしかなかった。

 僕らは知っている。律の性能のヤバさを。開幕殺せんせーの触手を落としたその能力を。もちろん、あの時の律には協調能力がなかった。だけど、そうじゃないんだ。だって本来、E組での協調能力なんて暗殺には必要ないんだから。

 

 殺し屋にとって、僕らは楔であり枷だ。

 

 殺せんせーをこの校舎という小さな箱庭に留めておくための楔。それが殺し屋にとっての僕らだ。それなのに、生徒の機嫌を損ねれば教室という世界に立ち入ることができなくなり、無理をすればせんせーはどこかへ去ってしまうかもしれない。殺せんせーの気まぐれによって僕らが楔となっている今、殺し屋は僕らに最大限の気をつかわなきゃいけないのだ。そしてそれこそが枷だ。

 つまり律の行動を制限する僕らは邪魔でしかなくて、そういう意味では今の律はその能力を十分に活用できていないと言えるのかもしれない。

 

 ならば、僕らという枷を取っ払ってフルスペックで殺せんせーと対峙できる律の能力こそが彼女の暗殺者としての能力。そしてソレを大きく超えるのが今回の暗殺者だ。

 

 つまるところ、今回の暗殺者は──

 

 ガララッ!!

 

 転校生への期待が無限に高まる中で、扉が開かれた。入ってきたのは、真っ白い装束の人型。戦々恐々とそいつを見る僕らの視線に気がついたのか、人型はスッと腕を前に突き出す。

 

 ポンッ

 

「ごめんごめん驚かせたね。転校生は私じゃないよ」

 

 突き出した腕の裾から飛び出したのはハトだった。僕らの緊張をほぐそうとしてくれたんだろうけど逆効果だ。普通にびっくりした。みろ、証拠に殺せんせーが奥の手の液状化まで使ってる。

 

「私は保護者。……まあ白いしシロとでも呼んでくれ」

 

 白装束、改めシロは朗らかに名乗った。そんな中で生徒は大ビビりかました殺せんせーへの非難で忙しい。騒々しいなぁ。と、そんな声を受けて殺せんせーも元の状態に戻る。少し恥ずかしそう。

 

「初めましてシロさん。それで、肝心の転校生は?」

 

「初めまして殺せんせー。ちょっと性格とかが特殊な子でね。私がじかに紹介させてもらおうと思いまして。あ、これおくりもの」

 

 ぬるっと公開家族面談が始まった。ようかんの贈り物とかすごく保護者っぽいぞ。

 

 というかこのヒト殺せんせー呼びか。ロヴロさんといい、実力者ほど平然と使うからな殺せんせーて。どうやらリサーチの方はバッチリのようだ。

 

「……!」

 

「……?なにか?」

 

「……いや。みんないい子そうですなあ。これならあの子も馴染みやすそうだ」

 

 一瞬驚いたようなしぐさを見せたシロさんだったが、すぐに気を取り直したかのようにあたりを見回す。転校生がなじめるか確かめていたのかな。過保護な保護者だなあ。

 

「席はあそこでいいのですよね殺せんせー」

 

「ええ、そうですが」

 

「では、紹介します。おーいイトナ!入っておいで!!」

 

 席を確認すると、シロさんは外にいるだろう生徒に合図を出すべく声を張り上げた。

 

 さあ、いよいよご対面。散々じらされて覚悟はできた!イトナ君、いったいどんなヤバいヤツだって──

 

 バキィッ!!!(壁を突き破る音)

 

 わ……あぁ……!(動揺からの語彙消失)

 

「俺は……勝った。この教室のカベよりも強いことが証明された」

 

 イトナ君、らしき人物は後方のカベを突き破り何事もなかったかのように席に着くとひとりでに喋りだした。

 

 なんでずっと真顔でいられるんだろう。なんで目ガンびらいてんだろう。転向初日だからって張り切りすぎだ。

 

「それだけでいい……それだけでいい……」

 

 何言ってんだアイツ。B'zか。

 

 僕だけじゃない。みんな戸惑ってる。『なんかまた面倒なのが来た!』みたいな声が聞こえてきそうだ。なんなら神崎さんボソッと言ったからね。聞こえちゃったよ僕。

 これには殺せんせーだってリアクションに困ってるみたいだし。なんかよくわかんない中途半端な顔になってるから間違いない。

 

「堀部イトナだ。名前で呼んであげてください」

 

 シロさんだけは平然としている。やはり真っ白な装束を着てるだけあって頭がおかしい。こんな雨の中真っ白な装束で山道を登るなんて正気の沙汰ではない。

 

「ああそれと。私も少々過保護でね。しばらく彼のことを見守らせてもらいますよ」

 

 あぁホラ、やっぱ*1ヤバい(ヤバい)

 

 と、毎度のことながら僕らが超展開に言葉も出ない中で。

 

「ねーイトナ君。ちょっと気になったんだけど」

 

 イトナ君に平気で話しかける異常者が一人。我らがE組のナチュラルカッコつけヤローことカルマ君だ。日ごろ垣間見えるイタさがうまいこと作用してる!いいぞ!!

 

「今、手ぶらで外から入って来たよね?外、土砂降りの雨なのに……なんでイトナ君一滴たりとも濡れてないの?てか宇井戸後で廊下ね」

 

「!?」

 

 バカな!?何もしゃべっていないのに!!

 

 僕が突然の死刑宣告に戸惑っている中で、カルマ君の指摘を受けたイトナ君はキョロキョロとあたりを見回す。あっ目があった。

 ヘイ、君も僕をフォローしてくれない?そんな気持ちを込めてウインクしてみる。あっ目逸らされた。薄情なヤツだ。

 

「……おまえは」

 

 ひとしきりあたりを見回して何か納得を得たのか、イトナ君が立ち上がってカルマ君に喋りだす。

 

「おまえは、多分このクラスで一番強い。けど安心しろ」

 

 話ながらカルマ君の目の前まで移動したイトナ君はカルマ君の頭をくしゃくしゃと撫でた。それはまるで、息子を撫でる父親のように。

 

「俺より弱いから、俺はお前を殺さない」

 

 まるで自身が圧倒的な存在であるように。彼はカルマ君をそこらの虫みたいに扱った。そしてそのまま、興味を失ったかのように目を離す。

 

「俺が殺したいと思うのは、俺より強いかもしれない相手だけ」

 

 カルマ君から離れ、ある一点に向かって進みだすイトナ君。発言からして、彼のターゲットはただ一人。

 

「この教室では殺せんせー、アンタだけだ」

 

 そう、もちろんソレは殺せんせー。だけど、イトナ君の挑む相手もまた異常者だ。それで怯む殺せんせーじゃない。

 

「強い弱いとは喧嘩のことですかイトナ君?力比べでは先生と同じ次元には立てませんよ」

 

 シロさんから手渡されたようかんを包装ごとバリボリとむさぼる殺せんせー。それだけですでに殺せんせーが埒外の存在である何よりの証拠だ。

 

 と、そんな殺せんせーに動じる様子もなく、イトナ君は何かを取り出そうとしていた。銃とかかな?至近距離とはいえそれでも──あ、アレは!?

 

「勝てるさ」

 

 イトナ君が取り出したのは殺せんせーと同じようかんだった。もちろん、包装だってされている。ま、まさか……

 

「だって俺たち、血を分けた兄弟なんだから」

 

 ……は?

 

「「「き、兄弟ィ!?」」」

 

 そ、そうきたかぁぁあああ!!!!

 

「負けたほうが死亡な。兄さん」

 

 突然の兄弟宣言と同時に包装ごとようかんをむさぼるイトナ君。状況は一転して流れは彼に傾いた。

 

「歯の強度と頭のイカレ具合、互角!生命マウントに失敗した殺せんせーの士気、減!よってメンタルバトル、イトナ君の勝利……!!」

 

「実況しないでバカ宇井戸……!」

 

 一敗二分け、どうする殺せんせー!!

 

*1
ヤバい




キャラ同士の呼び方とか把握してるすごい方がいたらぜひ教えてくれると助かります
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