普通に中学生してたら超展開に巻き込まれたヤツ   作:はごろも282

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ちょっと伸びてきてうれしいことを白状します


くるくる→テストの時間

 高速強化テスト勉強がはじまってしばらく。殺せんせーの数が増えた。

 

「さらに頑張って増えてみました。さぁ授業開始です」

 

 前から一人にひとつ殺せんせーという有難迷惑状態だったわけだが、今日はそれよりもさらに増量。一人に4~5殺せんせーのギッチギチ対応だ。人によってはそれ以上。

 

 これはただの迷惑だ。

 

「……どうしたの殺せんせー?なんか気合入りすぎじゃない?」

 

「んん?そんなことないですよ?」

 

 生徒の質問になんでもないように返答する殺せんせー。そんなことないわけがない。

 

 だって増えすぎて残像もかなり雑になってきている。というか多すぎて逆に集中できない。

 それに今だってゼーハー言いながら大量の汗を流して休憩している。休み時間のたびにこうだ。昨日までそんなことなかったあたり、今日は結構限界近くまで動いているんだろう。とりあえず速水さんに頼んで発砲してもらう。

 

「にゅやっ!?いっ今はダメでしょう速水さん!?」

 

 そんなこと言いながらも危なげなく避けられた。名指しで怒られた速水さんはちょっとバツが悪そうな顔をしたあと僕を睨む。

 

「ふむ、やはりか……」

 

「やはりじゃないけど?」

 

 僕のつぶやきにかみついてくる速水さん。もともと鋭い目つきがさらに鋭くなっている。可愛い顔が台無しだ。こわい。ということで無視して席を離れることにした。次の時間に絶対何か言われるだろうがソレはその時の僕がなんとかするはずだ。人生をうまく生きるコツは未来への期待感だと、エジソンもそう言っていたハズ(言ってない)

 僕は未来の僕へ期待した。

 

「つーか、なんでここまで一所懸命先生をすんのかね~」

 

 教室の隅へ避難したところで、そんな声が聞こえてきた。それはおそらくみんなが思ってることの代弁でもあった。

 

「……ヌルフフフ。すべては君たちのテストの点を上げるためです。そうすれば……」

 

 言ってる途中で口を閉ざし、数秒後。殺せんせーの顔がすごくだらしなくゆがんだ。これはあれだ、ものすごくしょうもないことを考えてるとき。

 

 と、そんなことはいいんだ。今はとりあえず避難が優先である。怒れる速水さんから逃走しなくては……!

 

 ☆

 

「……え、なにごと?」

 

 校舎を出ようとしたタイミングで突風に巻き込まれた。と思ったら殺せんせーの隣でグラウンドにいた。いつものように超展開。一日一回超展開だ。

 

「すいませんねぇ宇井戸君。これから緊急授業なので校庭に来てもらいました」

 

「来てもらったってより連れてきただよねコレ」

 

 僕の指摘にどこ吹く風。せんせーはせっせことサッカーゴールなんかをどかしたりしはじめる。なにがしたいんだろう?

 

「ときに宇井戸君。君は勉強についてどう考えていますか?」

 

「……え、そんなにヤバいですか僕」

 

「いえ、ただの世間話です。だからそう緊張しないでください」

 

 待っている間、手持ち無沙汰にしている僕に気を使ってかせんせーが話しかけてきた。

 いや、緊張するなと言われても、教師にそんな話切り出されて緊張しない生徒が果たしているだろうか。カルマ君とかはもちろん例外として。とりあえず、ここは素直に答えておくべきか……?

 

「まあ、好きなモノではないです……」

 

「そうですか……。では暗殺とテスト、どちらが大切ですか?」

 

 ……なんだこの一問一答。診断テストか何かか?あなたはクールタイプです!!なんで5個の質問でそんなの分かるんだよ。

 それで、テストと暗殺だっけ。おかしなことを聞くなぁ。そんなの考えるまでもないのに。

 

「そりゃもちろん……なんかゾロゾロ出てきたよ?」

 

「おっと、時間切れですねぇ。どうやら全員集まったようです」

 

 質問に答えようとして、校舎から出てくるクラスメイト達によって中断された。どうやらみんな呼ぶタイプのヤツだったらしい。成績不振の個別懇談的なのかと思ってたから少し安心した。

 

 え、じゃあなんなのコレ。

 

「お、宇井戸はもう来てたのか」

 

「あ、磯貝君。なんか急に連行されたんだけどさ……なにこれ?」

 

「さあ?なんか急に校庭に出ろって……『暗殺者の資格がない』とかどうとか」

 

 もくもくと校庭を整理する殺せんせーを尻目に、最初に出てきた磯貝君に事情を聴いてみる。ただ結果はよくわからず。どうやらみんな正確に把握できていないらしい。

 

「──イリーナ先生。プロの殺し屋として伺いますが」

 

「……なによいきなり」

 

「あなたはいつも仕事をするとき、用意するプランは一つですか?」

 

「……いいえ。本命のプランなんて思った通りいくことの方が少ないわ」

 

 何がはじまるのか見守っていると、突然に事態は動き出した。教師陣の問答に僕らは黙って聞いていることしかできない。

 

 続くビッチセンセーの「不測の事態に備えて予備プランを作っておく」という台詞のあと、殺せんせーは烏間センセーに「ナイフ術を生徒に教えるときに重要なのは第一撃だけか」と質問を投げかけた。

 

 烏間センセーが「次の動きも重要だ」と答えると、殺せんせーは満足したようにうなずいてくるくると回りだした。マホイップできちゃうね。

 

「今聞いたように、自信の持てる次の手があるから自信に満ちた暗殺者になれる。対して、君たちはどうでしょう」

 

 殺せんせーの意識が僕らに戻ってきた。くるくる回転がどんどん速くなっていく。

 

 どうやらせんせーは僕らが暗殺にかまけて勉強をおろそかにしていることが気に入らないらしい。もし自分がこの場を逃げてしまえば。もし100億が他の人の手に渡ってしまったら。暗殺という拠り所を失った僕らは、E組という劣等感しか残らない。そういう未来のビジョンが見えていないのだと。

 

「第二の刃を持たざる者は──暗殺者を名乗る資格なし!!」

 

 言葉の強さとともにくるくる回転は激しさを増し、それはいつしか大きな竜巻となる。

 

「もしも君たちが自信を持てる第二の刃を示せなければ、相手に値する暗殺者はこの教室にはいないと判断し校舎ごと平らにして先生は去ります」

 

 竜巻がおさまってせんせーがそう口を開いたころには、なんと凸凹や雑草の多かった校庭がバッチリ綺麗な状態に手入れされていた。匠の技、ビフォーアフターだ。

 

 なんて、のんきなことを言ってる場合じゃない。すごいことになってきたぞぅ……コレ。

 

「第二の刃……いつまでに?」

 

「決まっています。明日です」

 

 殺せんせーははっきりと、迷う間もなく言い切った。明日と言えば、中間試験の日だ。そんなことを思い浮かべてピンときた。それも、悪い方向に。

 

 まっ、まさか……さっきの質問って……!?

 

「明日の中間テスト、クラス全員50位以内を取りなさい」

 

「「「!!?」」」

 

 やっぱりだー!?突然すぎるだろそういうこと言うの!!なんで急に変なこと聞いてきたのかと思えば、くそっもっとソレっぽいこと答えておくべきだったッ!!

 

「自信をもってその刃を振るってきなさい。仕事を成功させ、恥じることなく笑顔で胸を張るのです」

 

 自分が暗殺者であり、E組であることに

 

 

 最後にそう締めくくり、自身が教えた生徒への期待と自信たっぷりに、ソイツは緊急授業を終えたのだ。

 

 

 ☆

 

 

 テスト当日のことは語るまでもない。今、僕らの手元にある紙きれが何よりも如実に物語っているからだ。

 

 端っこに書かれた111位の文字。何度見ても変わらないソレが答えだ。僕は第二の刃とやらを示せなかった。平均ちょい上、躍進っちゃ躍進だ。

 周りの様子を見るかぎり、僕以外も同じような結果らしい。無理もない、そもそもテスト範囲が違ったのだから。

 

 僕らは知らされていなかったことだが、どうやらテスト2日前に出題範囲を全教科大幅に変える通知があったらしい。本校舎では理事長自ら教壇に立ち指導したとかなんとか。いつものことながら我らE組、流石の好待遇だ。今も烏間センセーが本校舎と連絡を取っているが、返答は色のいいモノではなさそうだ。

 

 最初はよかったんだ。思ったよりも躓かずに問題も解けていた。これなら第二の刃も示せそうかな?なんて調子に乗った瞬間に見たことない問題だ。絶望した。3箱買ったパックの最高レアが全部被ってたときより絶望した。

 

 ……これで、宣言通り殺せんせーは去るのだろうか。さっきからこちらを振り向こうともしないから分からない。

 

「……先生の責任です。この学校の仕組みを甘く見ていた。……君たちに顔向けできません」

 

 しんみり……

 

 教室内殺せんせーも含めてそんな言い回しがピッタリの空気の中で、僕はふと思った。

 

 これ、僕ら側に不備なくない?

 

 だってそうだろう?テスト範囲の変更なんてどうしようもない。勉強してないなら点数の取りようがないのだ。

 もしもこれにも『不測の事態への備えが足りない』なんて言うのなら、ソレは殺せんせー側の備えが足りていないのだ。テスト範囲が変わることにも備えて勉強を教えないヤツが悪い(暴論)

 

 よし、そうと決まれば詰めてやるぞ~!!なんて晴れ晴れとした気持ちで立ち上がろうとする僕よりも先に、行動を起こしていた問題児がいた。

 

 カルマ君だ。なんとカルマ君、急なテスト範囲変更にも関わらず全教科90点後半と超高水準な結果をたたき出していた。殺せんせーの後頭部にナイフを投げつけたカルマ君はその流れのまませんせーを大煽り。

 

 というわけで、そんなカルマ君に僕も便乗することにした。倍プッシュだ!

 

「くっそー、E組の殺せんせーが本校舎の理事長に格付けされたー。コレじゃ教師単位で格下だよー」(裏声)

 

「はっはぁっ!?誰が格下ですか!!小声で言っても聞こえますよどうせ宇井戸君でしょう!?」

 

 僕が言ったことはバレなかったらいいなと思って小声かつ裏声で言ってみたんだけど一瞬で看破された。すごいや。両隣の速水さんに神崎さん、前の三村君がぎょっとした目で僕を見てる。そっか、そりゃ近かったら分かるよね。

 

 やるんじゃなかった……ッ!!

 

「ぷっ……!そういやそうじゃん。完全に読み負けてるし、これよく考えたらせんせー側の不備だよね~宇井戸?」

 

「間違いないね。でも言っちゃだめだよ、やっと逃げる大義名分得たんだから。殺されるの怖いもんね」

 

「うっわそっかそーだよねせんせーごめ~ん☆」

 

「イッラァ……!!!」

 

 ここの正解はただ一つ。とりあえず滅茶苦茶煽ることだ。殺せんせーはああ見えて極度の負けず嫌いだ。ガキっぽいともいえる。

 カルマ君も速攻で乗ってきた。ナイス連携だ。僕らで世界を取ろう。ただ最初に笑った理由、ソレが僕に対する笑いなら話は別だ。

 

「……なーんだ。殺せんせー怖かったのかぁ」

 

「それなら正直に言ってよも~」

 

「ねー?『怖いから逃げたいです』って」

 

 みんなも便乗してきた。お、おぉ……。誘導しておいてあれだが、なんて煽りカスたちなんだ。殺せんせーの顔を見てほしい。青筋めっちゃ浮かんでるから。

 

「にゅやーッ!!逃げるわけありません!期末テストでアイツらに倍返しでリベンジです!!」

 

 ただ、今回に関してはまったくの無問題。むしろ最高。喋るカメもきっと狂喜狂乱だ。

 

 殺せんせー残留決定の瞬間である。よかった。コレで人類滅亡は免れたのだ。グッジョブカルマ君。フォーエバーカルマ君。君への感謝は3日間くらい忘れない。

 




女の子のエミュがまるでできていないことを懺悔します
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