普通に中学生してたら超展開に巻き込まれたヤツ   作:はごろも282

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今回いつもより繋ぎであることを懺悔します


旅行の時間

 修学旅行。それは中学生活を彩る大切な1ページ。友達と、あるいは好きな人と。同じ班になったりなんかしてたまたま急接近しちゃったり普段と違うシチュエーションにいい雰囲気になってみたり。要は僕ら中学生にはケッコーな一大イベントである。

 我らが椚ヶ丘中学もそんな修学旅行が来週へと迫っていた。

 

 そんな中で、僕こと宇井戸那月はというと──

 

「なー、悪かったって」

 

 はじまる前からガン萎えしていた。

 

 ☆

 

 事の発端は修学旅行の班編成だった。そんな事すっかり忘れていた僕は、急ピッチでグループに混ぜてもらう必要ができた。というわけで、いつものように周りの席の人にどうなっているか聞いてみたのだ。

 

 もちろん、既にグループができていた場合はしかたない。僕自身わりと誰とでも話せると自負しているし、余っているところにいれてもらえたらいいな、なんて気持ちでいたんだ。最初は。

 

 結果として得られたのは、僕を囲むようにして速水さん、岡島君、三村君がグループを組んでいたという事実だった。

 

「ち、違うって。ちょうど宇井戸がいない時に話がまとまってだな……」

 

「そーそー。ホントにちょうど誘われたんだよ」

 

 気まずそうに説明する三村君。岡島君はあんまり気にしていないようだ。僕らは仲がいいと思っていたが、そう思ってたのは僕だけだったようだな。

 

「見損なったぞまったくっ!僕らの絆はそんなものだったのか!」

 

「本当にそんな仲か?」

 

「比較的仲がいい自覚はあるけどソコまででもないだろ」

 

「そっそんなことないさ!僕らの間で裏切りなんて──」

 

「まえ女子に詰められたとき平然と俺を見捨てたやつがよく言うぜ」

 

「切り捨てる判断が速かったねアレ……」

 

 ばっさりと切り捨てられた。なんてことだ。僕らの友情はそこまでだった。だが正直、その発言については心の底から同意せざるをえない。席が近いからよく話すだけで、僕らは磯貝君と前原君みたいな関係ではなかった。

 

「と、というか静観してる速水さんもだよ!えっ僕岡島君以下!?」

 

「友情って言葉の意味知ってる!?」

 

 岡島君たちでは話にならないと速攻で見切りをつけて、ターゲットを速水さんに絞る。隣に座る速水さんは、僕ともそれなりに話す間柄だし変態野郎の岡島よりは好感度が高いはずなのに……!

 

 急に視線が集まってビクッ!とした速水さんだったが、それも一瞬のこと。すぐにいつものクールな表情に戻ると、彼女は僕をジトっとした目で睨みつけた。

 どうやら怒っているみたいだけど……はて?思いあたる節なんてとくに──

 

「……中間テストの前日」

 

「……あ」

 

「あのとき、しれっと見捨てたよね?」

 

 その一言で十分だった。

 

 あっぶない。思いあたる節バリバリにあった。そういえば僕ってば速水さんに分身で疲れはてた殺せんせーへの発砲を焚きつけたりしたんだった。第二の刃騒動でうやむやになっていたけど、完全に思い出してしまった。あちゃあ……藪蛇だったか。

 

「くそぉ……じゃあ何処か空いてるグループ探さないと」

 

「それよりもまずアレ対処しろ!?」

 

「速水めっちゃこっち見てるって!巻き込むなよ!?」

 

「僕は知らない。君たちのグループだッ」

 

「「押し付けやがった!?」」

 

 まあ、きっと速水さんだってそんなに怒っていないはずだ。それはそうとして、今は振り向く時じゃないだけだ。だから力づくで向きを変えさせるのはやめろ二人ともっ……!

 

 結局、速水さんが女性陣に呼ばれて席を立つまで攻防は続いた。無駄な争いだった。

 

「……で、まだ空いてるトコ心当たりある?」

 

「俺はないなー。三村は?」

 

「俺も知らないなぁ……」

 

「なんだよ役立たずか」

 

「おっ?喧嘩か?」

 

「もうコイツおいて帰ろうぜ」

 

「ウソじゃん冗談じゃんもー!」

 

 危ない。思わず口が滑ってしまった。こいつ等本当に帰るからな。せめて僕の班が決まるまでは道づれにしたいところだ。

 

 さて、とはいってもどうしたものか。ぶっちゃけ僕も面倒になって来たし、できればさっさと決めてしまいたい。

 

「面倒だなぁ……。この際どっちかかわってくんない?」

 

「無理だっつの」

 

「逆になんでいけると思った?」

 

「──あ、あの、ちょっといいかな?」

 

 そんな中身のない会話に、唐突に凛とした声が入り込んできた。声の主は神崎有希子さん。僕の隣の席の少女だ。ちなみに速水さんが左サイドなら神崎さんが右サイドだ。コレから分かるように、実は僕は両手に花なのだ。ついでにいうと基本的に僕が会話しているのは前の木村君か後ろの岡島君だ。微塵も華がない。

 

「あ、神崎さん。ごめんね岡島君がうるさくして」

 

「俺!?」

 

「あはは……。そ、それよりね?宇井戸君まだ修学旅行の班入ってないって聞いたんだけど、本当?」

 

 岡島君の不手際も笑って受け流す神崎さん。さすがクラスのマドンナと言われるだけのことはある。おしとやかで美人、無敵か?

 

 っと、そんなことは置いといて。えっと、班について……だっけ?

 

「いやーお恥ずかしながら……」

 

 少し自分を情けなく思いながらもそういうと、神崎さんはパッと花が咲いたような笑みを浮かべた。

 

「あ、やっぱりそうなんだね!」

 

「「「……」」」

 

 どうやら彼女は僕が班に困っていることが嬉しいらしい。

 

 思わず、男3人で顔を見合わせる。おそらく僕らの思いは一致している。そう、僕らは今、神崎さんがナチュラルドSな可能性に恐怖していた。

 

「……あれ?みんなどうしたの?」

 

「いいいいいやなんでもないよ!?」

 

「そっそうだぜなんでもないぜ!というか神崎は宇井戸に用あるんだよな!?長くなりそうだし俺ら先帰るわ!」

 

「じゃ、お疲れ二人とも!!」

 

「あっオイ……ッ!」

 

 お、おいていかれた!?この状況で!?なっなんて薄情なヤツらだ!人にさんざん言っておいて、自分たちだってとんでもない速さで僕を見捨てるじゃないか!

 

「……ふたりとも急いでたね。宇井戸君は大丈夫?」

 

「う、うん!僕は平気!!」

 

 お、落ち着け僕!神崎さんがなんだっていうんだ!だいたいまだそうと決まったわけじゃないし、いざとなったら僕の足で逃げ切れるはずさ。

 

 ……ふう。そう考えると少し落ち着いてきた。よし、これなら動揺せずに会話に臨めそうだ。

 

「あっそれでね?さっきの続きなんだけど……」

 

 よし本題だ!既に覚悟はできた!どんな内容でも問題なしだ、ばっちこ~い!!

 

「あの、私の班1人空きがあるから。よかったらどうかなって……」

 

「……えっ」

 

 神崎さんはただの天使だった。

 

 ☆

 

 そんなこんなで一週間。修学旅行当日だ。自然と閉じようとする目をこすりつつも必死に集合場所に向かうと、既にちらほらと生徒の姿が。

 ……いや、それにしても少なすぎやしないだろうか?そんなに早く来たつもりはなかったけれど、存外みんな時間にルーズみたいだ。

 

「あ!烏間先生!宇井戸来ました!」

 

「やあ磯貝君、今日はいいてんってなになになにごと!?」

 

「バカ!もう出発すんだよ!」

 

「磯貝君の言う通り君が最後だ!」

 

「んん!?」

 

 どうやら他の生徒は乗車済みらしい。僕が早かったわけではなかった。引きずられるように指定の車両に駆け込むのと扉が閉まるのは同時だった。始まる前から終わるとこだった。

 

「あっぶねぇ~……!!」

 

「俺らの台詞なそれ!!」

 

 僕の心からの安堵に勢いよくツッコんできたのは杉野君だった。彼は僕が混ぜてもらった班の一員だ。僕の姿が見当たらなくて心配してくれていたらしい。優しい。

 

 結局、あのあと僕は神崎さんの好意に甘えさせてもらった。班員は渚君、杉野君、カルマ君、奥野さん、茅野さん、神崎さんだ。すごく普通のいいグループだった。カルマ君以外。

 そんな彼らを心配させてしまったのだ。申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

 

「いやー、申し訳ない……」

 

「あはは……。まあ、間に合ってよかったよ」

 

「ホントだよ。暗殺コースとかもあるけど、やっぱ一緒に回れないのは寂しいからな」

 

「や、優しい……!!」

 

 渚君と杉野君の温かい言葉に数々に思わずじーんと来てしまった。これは暗殺コースの誘導、足を引っ張らないようにしないとな。

 

 今回の修学旅行、僕らにはある使命がある。ソレが本物の殺し屋のサポート。僕らの付き添いをする殺せんせーを殺しやすい場所まで誘導したりするのだ。当然、普通に楽しむこと前提ではあるけれど。

 

 なんて言って、実際のところぼくは暗殺スポットの把握はいまいちできていない。回る場所の話し合いとかあんまり参加できなかったし、なにより神崎さんの件で疲れ果てていてそれどころじゃなかったのだ。

 だから、今回の僕の最低ミッションはただひとつ。決して足を引っ張らず、変な空気にせず、いい感じの空間を班員に提供することだ。

 

「杉野君……。神崎さんとの仲普通に邪魔しようとか思っててごめん……っ!!」

 

「お前そんなこと考えてたの!?」

 

 絶対やめろよ!?という絶叫はバックに、渚君と班員の元に向かう。

 

「あ!宇井戸君来た!」

 

「間に合ったんだ宇井戸~」

 

「よかった!これで全員揃いましたね!」

 

 班員のもとへ着くと、みんな僕の到着を喜んでくれた。ヤ、優しい……!!なんていい人たちなんだ皆……!

 

「でも、ホント間に合わないかと思ったよ」

 

再びの渚君の台詞。何度も言うあたり、やっぱりだいぶ心配してくれていたみたいだ。

 

「うん、自分自身安心してる。遅れでもしたら殺せんせーがうるさそうだし」

 

「確かに!『君は自己管理能力が足りていない!!』なんてね」

 

「うっわ言いそォォオオおおおお!!!??」

 

「!?」

 

 渚君と話しながら何気なく窓を見ると、そこには見慣れたタコの姿が窓の外に張り付いていた。滅茶苦茶ビビった。

 

「なっなんで窓に張り付いてんだよ殺せんせー!!」

 

「いやぁ……駅中スイーツを買っていたら乗り遅れまして。次の駅までこのままいきます」

 

 殺せんせーも遅刻していた。これは──過失で言えばトントンか?

 

「宇井戸、自分だけじゃないからセーフみたいな顔しないで反省して」

 

「……っス」

 

 怒った渚君は怖かった。

 




色がついて狂乱したことを告白します
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