普通に中学生してたら超展開に巻き込まれたヤツ   作:はごろも282

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ほぼ18日なので懺悔しません


台無しの時間

 新幹線にて、菅谷君が殺せんせーに自作のつけ鼻をあげたりだとか、友人たちとカードゲームをしてみたりだとかで楽しい時間を過ごしながら僕らは無事に京都についた。旅行はやっぱり普段と違ってみんなの新しい一面が見えるのが醍醐味だ。

 

 1日目はクラスでの行動だ。殺せんせーの暗殺は2日目と3日目の班別行動時。つまり、今日はゆっくりと楽しめる……のだが……。

 

「……い、1日目で既に瀕死なんだけど……」

 

「新幹線とバスでグロッキーとは……」

 

 皆の言葉通り、ターゲットである殺せんせーが瀕死状態だ。どうやらせんせーは乗り物に弱いらしい。まあ、それでも岡野さんのナイフを避けているあたりまだまだ余裕はありそうだ。

 

「──ねね、大丈夫?」

 

 そんな風に少し離れてみんなの様子を伺っていると、倉橋さんが声をかけてきた。

 

「ん、大丈夫ってなにが?」

 

「顔色悪いから。宇井戸君も乗り物強くないんじゃない?」

 

 心配そうな顔。少し驚いた。気づかれるとは思っていなかったから。

 

「大丈夫だよ。元気すぎて夕飯のこと考えてたくらいだから」

 

 言いながら少し大げさに元気なポーズをとってみる。せっかくの旅行なんだ。彼女にヘンな心配をしてほしくはない。

 

「というか班員でもないのによく気がついたね。流石の洞察力だ」

 

 なおも心配そうな目を向ける倉橋さん。このまま話してても変わらなそうだから、僕の方から話題を変えることにした。

 

「ふっふーん!できる女は周りを見てるものなんだよー!」

 

 僕の台詞に気をよくしたのか倉橋さんは鼻高々な様子。よかった。コレならうまく話を逸らせそうだ。

 

「お~。それなら暗殺にもいきそうだね」

 

「でしょー?って、そこは暗殺じゃなくてもっと違うとこにつなげてよー」

 

「……?」

 

「うわ、これホントに分かってないじゃん……。宇井戸君って女心が分かってないねえ……」

 

 唐突に酷い貶され方をした。

 だが、こんな言い方をされればムッとくるのが男というもの。どれ、いっちょ女心をつかんで離さない返しをしてやろうではないか。

 

 そうだな、まずは会話のおさらいだ。流れからして、僕は彼女の視野が広いことへの誉め言葉を出さなければならない。そこまではオーケーだ。

 それならば、ここからさらにシチュエーションにあった女の子が言ってほしそうなセリフを当てはめるだけだ。

 

 ……ダメだ。とくに思い浮かばないな。

 

 まっまて落ち着け。一般論がダメなら個人論だ。倉橋さんの好きなものは何だった?よく思い出せ僕。倉橋さんの好きなモノ……知るか!僕は彼女とそんなに仲良くないぞ!

 

 あっいや待て!烏間センセー!烏間センセーだ!!あと虫!確か彼女は昆虫が好きとか言っていた気がする!

 

 よーし!これでパーツが揃った。好きなものを理解したうえで、それに絡めて相手を褒める。これは男女問わずだれでも嬉しいはずだ。この勝負、貰った!

 

 僕が考えた女心をぶっさす回答、ソレは……コレだっ!!!

 

「倉橋さんのそのトンボみたいな視野なら、授業中気を抜いた烏間センセーの胸元とかこっそり見れちゃうねっ!」

 

 ぽかんとした表情の倉橋さんに、勝ち誇った表情の僕。この時、僕の脳内は完勝のファンファーレが響きわたっていた。

 

「どうして陽菜ちゃんにセクハラしてるの宇井戸君!?」

 

「ごべっ!?」

 

 だからだろうか。背後から振り下ろされる矢田さんの荷物攻撃に気がつかなかったのは。

 

「ぐ、ぐおおお……ッ!?」

 

「大丈夫陽菜ちゃん!?変なことされなかった!?」

 

「う、うん……。どっちかというと私より宇井戸君の方が……」

 

「いいのあんなケダモノ!!」

 

「既に人として見られてない……だと!?」

 

 真剣な表情だ。矢田さんの純度100パーセントの本心に後頭部の痛みも忘れて戦慄する。嘘だ、やっぱり痛い。

 

「う、腕を後ろで組んでっ!弁明があるならそれからだよ!」

 

「と、桃花ちゃん?落ち着いてほしいな~って……」

 

「ダメだよ陽菜ちゃん!こういう時は強気で行かなきゃ!」

 

 扱いが捕虜のソレだった。僕はどうしてクラスメイトからこんな扱いを受けてるんだろう。

 とりあえず、言われたとおり降伏のポーズを決める。

 

「……よし。それで、弁明は?」

 

 ようやく発言権が回ってきた。ここは誤解を生まないように、かつできるだけ短くまとめたいところだ。長々と喋って変に解釈されると最悪だ。

 よーく考えて、誤解のない様に短く……よし。

 

「矢田さん。僕はただ、倉橋さんの女心をくすぐろうとしただけなんだ!」

 

「陽菜ちゃん、今後はひとりで宇井戸君には近づいちゃダメだよ?」

 

 おかしい。矢田さんの警戒がさらに増した。

 

「ま、まって!違うんだ!僕は純粋に倉橋さんが喜ぶと思って!」

 

「セクハラで喜ぶと思ってるのはセクハラ親父と同じだよ!?」

 

「そうじゃなくて!──そう!倉橋さんが好きなんだよ!」

 

 虫と烏間センセーが!!

 

「そうなの!?」

 

「違うよ!?」

 

「違うの!?」

 

「なんで宇井戸君は驚くの!?」

 

 あんなにいつも言ってるのに!?頭撫でられたいみたいなこと言ってたのに!?

 

「ぼ、僕はてっきり好きなんだとばかり……」

 

「だからどうしてかな!?」

 

「普段からよく話してるの聞くし……」

 

「話してるの!?そんなことを!?私の知らないトコで!?」

 

「話してないよ桃花ちゃん!信じて!!」

 

「……?矢田さんだっていつも聞いてない?」

 

「聞いてるの私!?」

 

「ちょっと宇井戸君は黙っててっ!!!」

 

 結局、誤解が解けるまでしばらくかかった。

 

 ☆

 

 不幸な悲劇を乗り越えて2日目。暗殺用班別行動の時間だ。

 余談だが、あの後しっかりと二人とは和解することができた。アレはお互いのすれ違いの末起こった不幸な事故だったんだ。矢田さんからは攻撃の謝罪を、倉橋さんからはジト目を頂戴した。僕も彼女たちには非常に申し訳ないことをしたと反省している。

 

「でもさー京都に来た時くらい暗殺のこと忘れたかったよなー」

 

 と、そんな杉野君の言葉で意識が戻る。いけないいけない。せっかくの班行動、今は楽しまなくっちゃ損だ。

 

 こんな暗殺関係ない場所で、という杉野君の台詞を否定した渚君の京都にまつわる暗殺うんちくを聞きながらみんなについて歩く。

 

 例えば、今僕らが向かっている場所は1867年に坂本龍馬が暗殺された場所、ここより少し先の本能寺はご存じ織田信長が。そんな感じでずっと日本の中心だったこの京都は暗殺の聖地でもあるらしい。

 

 こんなふうに事前知識を仕入れてきて実際に目の当たりにするのも修学旅行の楽しみなのかもしれない。すごい、今僕らめちゃくちゃ修学旅行してる……!

 

「なるほどな~。こりゃ確かに暗殺旅行だ」

 

 暗殺の名所を回る旅行。なるほど、言い得て妙だ。

 

「さ、ここもいいけど、次は八坂神社だよー!」

 

「えーもーいいから休もうぜ。京都の甘ったるいコーヒー飲みたいよ」

 

「いいねコーヒー。景色もいいけどやっぱり僕は花より団子派でね」

 

「俺も~」

 

「くぅ!食べ盛りの男子どもめっ!」

 

「あ、あはは……まあ、時間はありますから」

 

「渚君。八坂神社の暗殺話はないの?」

 

「あっうん。八坂神社の祀られてる須佐之男命はね──」

 

 そんな感じで、寄り道しつつも仲良くしゃべりながら色々な場所を回るのはとても面白かった。

 

 

 

「へー……。祇園って奥に入るとこんなに人気ないんだ」

 

 ところ変わって祇園の奥地。風情があると言えばそうだが、観光地とは程遠い閑散とした場所だ。人っ子一人見つからない。

 えっと、確かここは……誰の希望だったっけ。

 

「うん。一見さんお断りの店ばかりだから目的も無くフラッと来る人もいないし、見通しが良い必要も無い。だから私の希望コースにしてみたの」

 

 なんて考えてたら、ちょうどよく説明の声。どうやらここは神崎さんのおすすめコースらしい。なるほど、真面目な彼女らしい、暗殺向けのコースってわけだ。

 

「さすが神崎さん!下調べカンペキ!」

 

「じゃ、ここで決行に決めよっか!」

 

「──ホントうってつけだ。なんでこんな拉致りやすいトコ歩くかねえ」

 

「!!」

 

 殺せんせーの暗殺場所を決めてわいわいしているところに、粘っこくて聞きなれない声が混じった。

 

「うげぇ……。このタイミングでくんのかよ……」

 

 傍観とともに振り返ると、そこには案の定とでもいうべきか。見るからに不良といった連中が群れて立っていた。いつもならソッコーで逃げの一手だが、今は女子がいるためそうもできない。

 

「……何お兄さん等?観光が目的っぽくないんだけど」

 

 好戦的な笑みを浮かべて対応するカルマ君。そうだ、今は僕だけじゃなくて不良のカルマ君もついてる!これは心強いぞ!

 

「男に用はねー。女置いておうちにかえ──ガッ!?」

 

 不良が話している途中だった。カルマ君は問答無用で顎に一撃ぶち込んで黙らせながら不良の後頭部を電柱にたたきつけた!

 

 一瞬でノックダウンする不良A。流石場慣れしたカルマ君だ、鮮やかな動きだった。だけど、まだ甘い。

 

「オラぁっ!!……ダメだよカルマ君トドメはキッチリ刺さないと。君はよくても僕らは非力なんだ」

 

「……俺も大概だけど、ケッコーエグいね宇井戸」

 

 倒れる不良の金玉を蹴り上げて意識がトンだのを確認してからカルマ君に声をかける。相手はまだ多いんだ。確実に仕留めてほしいものだ。電柱にも後頭部じゃなくて顔面から叩きつけて減り込ませるのが定石だ。

 

「ホラね渚君。目撃者いないとこならケンカしても問題ない──」

 

「そーだねぇ!」

 

「かっカルマ君!?」

 

 会話の途中で、仕返しのように今度はカルマ君が不意打ちされた。どうやら後ろの影に一人隠れていたらしい。鉄パイプのような獲物でおもっきりぶん殴られたんだ、カルマ君と言えどしばらく起きられないだろう。

 

 にしても、後ろからなんておかしい。これじゃまるで僕らがここに来ることが分かってたみたいだ。なにか仕掛けがあるのか……?

 

「おい、女さらえ」

 

 不意打ちしたボスみたいなやつの号令で再び動き出す不良ども。

 

「……ま、まーまー落ち着きましょうよ一旦」

 

「あ?テメーはよんでねぇ……よ!」

 

「宇井戸君!?」

 

 咄嗟の判断で茅野さんの前に身体を出してみたモノの、高校生の攻撃にはなす術もない。無様に顔面を殴られて思わずよろけてしまう。

 

「いってーな……」

 

 どうする?僕じャ女子3人を守りながら動くことは不可能だ。カルマ君が起きてくれるならソレが一番だけど、それも難しい。靴とか舐めたら許してくれないかな?

 

「おっオイ!なにすんだお前ら!」

 

「ちょっ杉野くん……!!」

 

 僕が殴られたのを見て飛び出してくれた杉野君に気を取られた一瞬が隙となる。直後、脳天に突き刺すような痛みが走った。

 

「宇井戸!」

 

 誰かの声が響く。だけど、今はそれどころじゃない。

 アー、誰だ殴ったやつ。思いっきりやりやがって。いってーなって……

 

「言ってんだろ……つーの……!」

 

「ああ?まだ意識あんのかしぶてーな。オラッ!」

 

 必死の思いで近くの不良のズボンを掴んだ手は軽々しく振りほどかれた。

 そうして再度鈍い音が聞こえたのち、僕は意識を完全に手放した。

 

 ☆

 

 ……い……ん!……いどさん!宇井戸さん!

 

 誰かに名前を呼ばれる感覚に意識が覚醒する。光が目に入って眩しい。

 う~ん、頭がじんじんする……。なんなんだいったい?

 

「あっ!よかった!目覚めたんですね!」

 

「……んだ、天使か」

 

「違いますよ!?」

 

 視力が戻って、一番に目に入ったのは嬉しそうな顔をした奥田さんだった。夢かと思って二度寝しようとして、奥田さんに呼び止められてやめた。

 ……ん?どうして奥田さんがいるんだ?というかここは……っは!?

 

「そうだ!不良はってイタァイ!?」

 

 飛び起きようとして身体に激痛。特に僕のリトルボーイから。なっ何が……っ!!

 

「む、無理しないで!宇井戸さん、気絶した後も執拗に蹴られてましたから……その、局部……」

 

 少し恥ずかしそうに教えてくれる奥田さんの言葉に、ようやく理解する。アイツら、仲間に僕がやったことをし返してきやがったんだ。痛すぎる。なんて残虐なことをするんだ。

 

 それから、なんとか起き上がれるようになるまでに今の状況を共有した。

 どうやら、僕が気絶した後杉野君も渚君も為すすべなくやられてしまったらしい。それで、茅野さんと神崎さんの二人は不良につれていかれてしまったと。奥田さんは隠れていたおかげでなんとか気づかれずに済んだんだとか。

 

「……ごめんなさい。思いっきり隠れてました」

 

「いいよ、奥田さんが無事でよかった」

 

 コレは本心だ。こうして僕ら男連中に説明してくれているだけでもありがたい。他の3人も同意見みたいだし、この場に彼女を責める奴はいないのだ。

 

「車のナンバー隠してやがった。多分盗車だし、相当犯罪慣れしてるよアイツラ」

 

 頭を押さえながらそう吐き捨てるカルマ君。最初に手痛い一撃をもらってたのに、流石の洞察力だ。

 

「通報してもすぐ解決できないだろうね。……てか俺が直接処刑したいんだけど」

 

 確かに、盗難車でどこに行ったのか分からないのなら警察だってすぐには動けない。カルマ君の台詞にみんな不安そうだ。

 

 だけど、それなら問題ない。

 

「場所は分かるよ」

 

「!?ほっホントか宇井戸!?」

 

「うん。ズボン掴んだ時、発信機つけといたからね」

 

 言いながらケータイを見せる。画面に映ったマップには、移動する赤い点が。

 

「おおっ!ナイスだ宇井戸!でもなんで発信機!?」

 

「不良とか絡まれ慣れてるからね。救難信号用に持ってるんだ」

 

「悲しい解答!!でも今はソレに感謝!」

 

 解決の道筋が見えて杉野君もハイテンションだ。他のみんなもどこかホッとした様子。

 

「じゃ、これであとは〆るだけだね」

 

「うん。さっさと動いて、あのカスどもに地獄みせよう」

 

 カルマ君の殺る気満々な声にハッキリと同調する。茅野さんたちを拉致ってることも、楽しい旅行に水を差したことも許せない。ソレになによりも……

 

「全員、キンタマ蹴り潰す」

 

 アイツ等、マジで蹴りすぎだ。




毎回当日に書いてるのでストックもプロットもないことを白状します
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