普通に中学生してたら超展開に巻き込まれたヤツ 作:はごろも282
誘拐騒動も無事に片がついた。僕の鬱憤は溜まったままだったが、殺せんせーがアイスを奢ってくれたから許すことにした。
そんなこんなで無事に元の修学旅行に戻ることができ、再びみんなで京都を堪能しなおして気がつけば宿に戻る時間だった。ちなみに、僕らは参加できなかった暗殺計画は全部失敗で終わったらしい。ま、そんな気はしていた。
「うおお!!どーやって避けてるのかまるでわからん!!」
「フフっ。恥ずかしいななんだか」
「おしとやかに微笑みながら手つきはプロだ!!」
既に食事も温泉も堪能して今は休憩時間。僕らは卓球台とかが置いてある場所にみんな集まっていた。
目の前では湯上がりに旅館浴衣の神崎さんが旅館備え付きのゲームをしている。僕らのグループはそれを見学しているのだ。
すっげー。手元が。グワングワンなってる。慣れた手つきだ……。
「す、すごい意外です。神崎さんこんなゲーム得意なんて」
奥田さんの言葉に、心の中で同意する。僕の中の神崎さんと言えば、真面目でおしとやか、まさに大和撫子という表現がぴったりの少女だ。アーケードゲームをやるイメージとか全然ない。やるとしてもツムツムとかだ。
「……黙ってたの。遊びができても
少し自嘲するような声色。なるほど、だから隠していたのか。まあ、うちの校風的にそう思う気持ちは分からなくもない。
「でも、周りの目を気にしすぎてたのかも。服も趣味も肩書も、逃げたり流されたりして身につけてきたから自信が無かった」
今、服だけに身につける、なんて言ったら総スカンをくらいそうだ。僕の煩悩よ、でていけ。
「殺せんせーに言われて気づいたの。大切なのは中身の自分が前を向いて頑張ることだって」
神崎さんがこうして僕らに新しい一面を見せてくれたのは多分、誘拐騒動があったからだ。起こった事態は最悪だったけど、アレで僕らの仲はさらに深まった。
だから、その意味では彼らにも感謝……できるかアホ。許さねーよ絶対。
でも、神崎さんが吹っ切れたようでなによりだ。いつもより何割かマシで楽しそうに見えるし。
にしても、楽しそうに遊ぶなぁ神崎さん。見ているうちに、僕までちょっとやりたくなってきたぞ……?
「……渚君渚君。僕らもゲームしよう。対戦出来るヤツ」
「うん、いいね。神崎さんのプレイ見て僕もやりたくなってたところ」
「やったね。みんなには黙ってたけど、何を隠そう僕もゲームは好きでね」
「多分クラスメイト全員知ってるよ?」
「お、格ゲーあるよ格ゲー」
「じゃあこれにしよっか。あ、杉野もやる?」
「なになに?ゲーム?俺もやる!」
ちょうどいい感じの対戦ゲームを見つけたからすんなりとソレに決める。渚君が呼んだら杉野君もついてきた。
「負け交代でいっか」
「オーケー。悪いけど負けないよ」
「宇井戸より強いよ。僕は」
「え、俺やったことないんだけどコレ。お前らあんの?」
「「ないね」」
全員初心者。これは接戦が期待できそうだ。
「あ、そうだ。上手くなったら神崎さんに挑戦しようよ」
「お、いいなそれ!」
そんなセリフを最後に、僕らは対戦に熱中した。
余談だが、途中で乱入した神崎さんに僕たちは一掃された。
☆
「へ~、面白そうじゃん。俺も行けばよかったかな」
大部屋までの帰り道、カルマ君にさっきまでの出来事を伝えた反応だ。
あの後、ついぞ誰も神崎さんにダメージを負わせられないまま格ゲー大会はお開きとなりみんなして大部屋に戻る事になった。その道中、僕だけ自販機に立ち寄りたいということで別れることに。
それで、自販機を求めてさまよっている最中、その先でカルマ君と合流したのだ。
「面白かったよ。神崎さん鬼強いんだ」
「ウケる。全然イメージないわ」
「せっかく出した超必殺技全ガードしてきたからね。男3人で絶叫しちゃった」
集大成だったのに、僕らの心はへし折られた。涼しい顔してあの対応、おそらく相当な猛者だ。
「てか大部屋遠すぎるよね。自販機から」
「E組だけ孤島みたいな扱いだ、徹底してるわホント」
「まあ、おかげでああして遊べるわけだけど」
今回、本校舎とE組はまず泊まる宿が違う。本校舎の連中は個室なんだそうだ。さっき岡島君から聞いた。
対して、僕らE組はオンボロ宿で大部屋2つ。カルマ君の言う通り、ホント徹底してる。
ただ、個人的には大部屋はキライじゃない。修学旅行って感じがしていいよね。それに、本校舎と一緒だとそれこそ寝るまで気が休まらなさそうだ。そういう意味では、この圧倒的な待遇に感謝したほうが良いのかもしれない。
なんて、そうこう話しているうちに大部屋に着いた。ガラ……とカルマ君がふすまを開ける。
「お、面白そうなことしてんじゃん」
楽しそうに部屋に入っていったカルマ君に遅れて中を覗くと、なにやら男子みんなで輪になって集まっていた。
「カルマに宇井戸、いいとこ来たな」
磯貝君に歓迎された。なんだろう、僕ら二人でいいトコって。みんなして悪だくみでもしてるのか?
「おまえら、クラスで気になる娘いる?」
「みんな言ってんだ。逃げらんねーぜ?」
奥に入って確認するよりも先にそんな声で合点がいった。なるほど、コイバナってやつだ。
ひとり納得して身を乗り出すと、みんなが壁になって見えなかった輪の中心が目に入る。そこには気になる女子ランキングと書かれた一枚の紙。やっぱりだ。
「……うーん、奥田さんかな」
紙に書かれたランキングを覗き込もうとしていると、カルマ君のそんな恥ずかしげもない声が聞こえてきた。滅茶苦茶堂々としている。
彼が名を上げたのは今日一緒に行動していた眼鏡の少女。驚いた。まさかそういう感じだったとは。
「お、意外。なんで?」
「だって彼女、怪しげな薬とかクロロホルムとか作れそーだし」
俺の悪戯の幅が広がるじゃん?なんてにこやかに話す様子は悪魔そのものだ。
「……絶対くっつくかせたくない2人だな」
同感だ。奥田さんもああみえて結構ファンキーなとこあるし、混ぜるととんでもないことになりそうだ。
「ま、まあ!カルマは置いといてさ!宇井戸はどうなんだよっ?」
「うぇっ、僕?」
怪しげな内容から話を逸らすためか、急に僕の番が回ってきた。とはいえ、困った。そんな相手急に思いつかない。
「……みんなはどうなのさ」
「俺らは言ったんだよ。お前がいない間に」
「逃げよーとしてんのか?オージョーギワわりーぞ観念しろ」
「そういわれてもなぁ……。うーん……倉橋さんとか?」
「お、宇井戸は倉橋か。ケッコー人気だよな倉橋も」
「あ、やっぱ人気なんだ。昔からそーだったからね」
名前を挙げたことでようやく閲覧が許された紙を覗きに行く。えーっと、1位は……っとお!?
「ちょっ!?何すんのさ!僕も見せてよ投票用紙!!」
前に向かう途中で首根っこをグイっと掴まれた。びっくりした。こ、この野郎、人に言わせといて自分たちのは見せないつもりだな?
反抗の意思を込めて後ろを振り返ると、僕よりもなぜかみんなの方が驚いた顔をしている。なんで?
「待て待て待て。紙よりも先に、お前今なんつった?」
「は?だから倉橋さんだって。前原君さっき自分で言ってたじゃん」
「いやチゲーって!お前今、聞き間違いじゃなきゃ昔から~とか言ってなかったか?」
な!?と周りに確認する前原君に頷くみんな。気がつくと、みんなの目線が僕に集中していた。何をそんなに気にしているんだろう。ここにきてまだ分かっていない。
「えぇ?言ったけど……それがどしたの?」
「どしたのじゃねーよ!?なんで倉橋の昔とか知ってんのお前!?」
さっきからテンションがおかしい。うるさいぞ普通に。というか倉橋さんの昔を知ってる理由だって?
なんでってそりゃ……
「倉橋さん、小学校同じだし」
昔から人気あったような気がする。あんま覚えてないけど。
いやぁそういえばビックリしたな最初。まさか同じ中学に来ているとは思いもしなかった。E組で再会したのは普通に悲しい出来事だった。僕らの小学校はカスだということになってしまうから。
てかみんなの動きずっと止まってる。おーい聞こえてるー?
「「「な、なにィィィィィィっっ!?!?」」」
うるっっっさっ!!!ぶち殺すぞ!!
「どっどーいうことだ宇井戸お前!!なんだその新設定は!?」
「そうだぞ!なんでそんな美味しい情報を今まで隠してたんだお前!」
「う、うるさ……って近いわボケ!!てか磯貝君とかには言ってなかったけ!?」
「聞いてないが!?」
どうやら誰にも話してなかったらしい。おかしーなぁ。どっかで言ってるもんだと思ってたのに。
「宇井戸ォ……お前を殺す」
「誰か岡島を取り押さえろぉッ!?」
「何だコイツ力つよっ!?どっからそんなパワーが!?」
岡島君が殺意に目覚めた。コレは危険だ。
「ごめん岡島君。僕は君とはステージが違うんだ」
「どうして油を注いだんだ今!!?」
「同じスケベでモテない仲間だと思ってたやつからの裏切りだぞ!岡島が壊れる!」
「──ッ!!」
「やべーぞ岡島がついに言語失った!!」
滑稽だ。畜生となり果てた岡島君を肴に自販機で購入したオレンジジュースを飲む。美味しい。
「うわぁ……カオスだ」
「というかホントにどうして言ってなかったの?そんな話聞いたこともなかったけど」
荒れた光景を眺めていたら、いつの間にか僕の近くに避難していた渚君が声をかけてきた。
「別に理由はないよ。同じ小学校だっただけで関わりなんて全然なかったし、向こうは僕のことなんて知らないんじゃないかな」
本当だ。クラスだって1回同じだったかどうかくらいの関係だ。話したことだって全然ないし、むしろE組に来てからの方が深くかかわってるんじゃないだろうか。
「おい!今の話で岡島が落ち着きを取り戻したぞ!」
「ラブコメみたいな幼馴染展開じゃなかったからだ!前原ならこうはいかない!」
「これが宇井戸クオリティ!絶好のフラグも消し飛ばす!」
「キミらだって変わんないだろ彼女なし童貞ども!!」
「あ、あはは……」
これがクラスメイトのあるべき姿か?本当に。
「まあそんなわけだから、本人には伝えないでね。覚えてなかったらただ僕が大ダメージくらうだけだし」
自分でそう思ってるのはいいけど、本人に言われるのは別だ。多分僕は3日くらい枕を濡らす羽目になる。
「なぁんだおもしれー話かと思ったのに。結局宇井戸は宇井戸だったか」
「ケンカかい?僕は知り合いに売られたケンカは全部買ってから考えるタイプだよ?」
「こえーよ!?」
「ま、まあまあ!それよりみんな、宇井戸じゃないけどこの投票結果は男子の秘密な。知られたくないヤツが大半だろーし」
そういって磯貝君がまとめにはいる。流石頼れる学級委員長だ。僕のことも考慮してくれているに違いない。
「女子や先生には絶対に……ぜったい……なんかいるなぁ……」
そして、そんな気遣いをぶち壊すのがうちの担任だ。
殺せんせーは僕らの秘密の会合を窓越しに覗き込んでいた。表情はこれでもかと緩んでいる。
「……(カキカキ)」
バッ!(飛び去る音)
「メモって逃げやがった!!殺せ!!」
最悪の大人だ。コイツはもう教師として死んでるんじゃないだろうか?
「全員で行くぞ!ぶっ殺してやる!」
「待って!僕はまだみんなの見てない!!」
「今じゃねーだろバカか!?」
「待てやタコ!!生徒のプライバシー侵しやがって!!」
「ヌルフフフ。先生の超スピードはこういう情報を知るためにあるんですよ」
クソタコっ!!僕だってみんなの気になる人見たかったのにっ!!
女子視点の話を入れるか迷っていることを告白します
女子部屋視点
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それは”アリ”だ(書く)
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それは雑魚の思考だ(書かない)