学校でカウンセリング部を始めたら病んだ美少女たちの激重ハーレムができたんだが   作:崖の上のジェントルメン

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1.きっかけ

 

 

「中原くんになら、なんでも相談……したくなっちゃうな」

 

 

俺にとって一番最初の……カウンセリング部を始めようと思ったきっかけは、この言葉だった。

 

とある日の放課後、クラスメイトである東野 円香さんから相談を受けていた。

 

その内容は、進路に関することだった。

 

「……でね?私としてはアイドルになりたかったんだけど、親とか先生にはやっぱり……反対されて」

 

「うん」

 

「当然親たちからは、安定した職についてほしいって言われてて。何回か説得しようと思って話し合ったんだけど、全然了解してもらえなくて」

 

「……………………」

 

誰もいない教室で二人、席を横並びに座って、俺は彼女の悩みを聴く。

 

東野さんは、この二年三組のみならず……二年生、いや学校全体で見ても抜群に可愛いと評されるほどの美少女だ。

 

長く美しい黒髪をなびかせて歩く彼女の姿を、男たちは無意識の内に振り返って眺めてしまう……それくらいの魅力がある。だからアイドルになりたいという夢があると聴いた時、「東野さんならそうだろうな」と内心納得していた。

 

しかし……。

 

「だからね、私も……諦めたの、夢」

 

「え?」

 

「アイドルになるのを諦めて、親や先生の言うように……安定した職につこうと思って。もちろんそれは、強引に親や先生たちから言われたからじゃなくて、ちゃんと自分でも考えて……自分で決めたことなの。だからあんまり、後悔はしてないの。アイドルって仕事のことを改めてたくさん勉強して、その上で……確かに自分には合わないかもなって、そう思ったから」

 

「……そう、なんだ」

 

話を聴いていくと、どうやら彼女でさえも……中々人生、真っ直ぐ順調に……というわけではないらしかった。親や先生たちからの反対を受けながら、夢と現実との折り合いをつけようとしている。学校のマドンナである東野さんにも、他の同年代の者たちと同じような等身大の悩みを抱えていた。

 

「私もね、諦める前にたくさんいろいろやってみたの。オーディションを受けてみたり、ネットで頑張って自分を宣伝してみたり。でも、それでも全然芽が出なくて」

 

「……………………」

 

「それでね、いろいろ頑張っていく中で、改めて『なんで私はアイドルになりたかったんだろう?』って考えてみたの。どうしてだろう?なんでだろう?って考えていったら、私はアイドルみたいに他人を笑顔にできる人になりたいなって、それでアイドルになろうとしてたことを……自覚っていうか、改めて分かったのね?」

 

「うんうん」

 

「でも、人を笑顔にって、別にアイドルに拘らなくてもできることでしょ?」

 

「それは……まあ、確かに」

 

「だからそれで、踏ん切りがついたの。私はアイドルにはなれないかも知れないけど、別の仕事で人を笑顔にできるようになろうって」

 

「……………………」

 

この時、東野さんはやっぱりさすがだなと思った。自分のことをよく理解した上で、きちんと夢を諦めている。これは中々できることじゃない。この辺が、東野さんが単なる“顔の可愛い人”以上の……学校のマドンナ足り得る、真に魅力のある人だなと思わせるところなんだと思う。

 

(こんなに凄い東野さんですらアイドルになるのは厳しいんだから、驚きだよな……)

 

胸の中で、俺はひっそりとそんなことを思っていた。

 

そして、東野さんの話には、まだ続きがあった。

 

「ただ……そのせいで、友だちからちょっと……嫌なこと言われちゃって」

 

「嫌なこと?」

 

「『そんなにすぐに夢を諦めるのはダサい』とか、『簡単に親の言うこと聞くなよ』とか、そんな感じのこと」

 

「……………………」

 

「本人たちとしては、私を元気づけようとしてくれてのことなんだろうけど、なんだかすごく……モヤモヤしちゃって」

 

「……………………」

 

「ごめんね、全然大した話じゃなくて。でも……どうしても、心に残っちゃって」

 

東野さんは視線を下に落として、眉をひそめていた。

 

……正直俺は、これを聞いた時非常に……腹が立った。

 

(なんだその言葉……?応援しているようで、まるでしていない。東野さんの気持ちを無視してるし、何より言葉が上っ面だ)

 

彼女ははっきりと、『親に言われたから止めたわけじゃない』と言っている。もちろん、それもひとつの要因ではあるだろうが、それでもきちんと自分で努力した上で、諦める決断を下したんだ。その想いにケチをつけるのは、無粋という他ない。

 

ふつふつと心に沸く怒りを、俺はぐっと堪えた。そして、何度か深呼吸をして自分を落ち着かせる。

 

「……俺はさ、東野さん」

 

俺は自分の考えをきちんと整理しながら、言葉に要らぬ棘が出ないよう、慎重に話す。

 

「確かにその友人の言うように、夢を諦めずに努力するのも凄いことだとは思う」

 

「……………………」

 

「だけど、夢を諦めることも……それと同じくらい凄くて、立派なことだと思う」

 

「……え?」

 

東野さんは目を真ん丸にして俺を見る。

 

「夢を諦めるって、端から見ると単に挫折しただけのように思えるけどさ、実際はその決断を下すまでに……いろいろな想いがあったわけじゃないか」

 

「……………………」

 

「特に東野さんの場合、自分が本当にやりたいことは何か?をきちんと自覚して、その上で『アイドルじゃなくてもいい』って道に行こうとしてる。これは、中々できないことだと思う。大抵の場合、その夢の肩書きにみんな囚われて、遮二無二にでもアイドルになろうとすると思う。自分のことを冷静に見て、一歩前に進もうとしている東野さんは、本当に凄い」

 

「……中原くん」

 

「夢を叶えられたかどうかは、実はそこまで大事じゃないんじゃないかな。本当に大事なのは、夢を叶えようとして努力したこと……懸命に何かと戦おうとしたこと、その行為そのものにあると思う」

 

「……………………」

 

「懸命に戦ったからこそ、成功したとか挫折したとかが産まれるわけで、戦わなかったら挫折すら存在しない。挫折したからダサいっていうのは、戦ったことのない奴らの言い分だ。そんなの糞食らえだよ。成功した者も、挫折した者も、同じくらい立派だ。戦わない奴らよりも、ずっとね」

 

「……………………」

 

「だから俺は、全然東野さんがダサいとは思わない。友だちの言葉の真意は俺にもわからないところがあるけど、少なくとも俺はそう思う」

 

「……………………」

 

「……ん、ダメだ。なんか上手く話せてないかも。ちょっと言葉も荒くなっちゃったし……もし気分を害してしまったら、ごめんよ」

 

「……ううん、そんなことない」

 

ふと見ると、東野さんは泣いていた。潤んだその瞳から、一筋の涙が頬を伝っていた。

 

「ひ、東野……さん?」

 

俺が恐る恐るそう訊くと、彼女は涙を拭い、鼻をすすってから、とても穏やかな……緩く柔らかい笑顔を俺に向けた。

 

「中原くんって、優しいね」

 

「え?」

 

「私の気持ちも汲んだ上で、前向きな言葉をくれた」

 

「いや、そんな大層なもんでもないよ。それに、なんか上から目線っぽく言っちゃった気がして、むしろ申し訳なくて……」

 

「ふふふ、やっぱり中原くんは優しいね」

 

「東野さん……」

 

頬杖をつき、優しい眼差しで彼女は俺を見つめた。その視線に耐えきれなくて、俺は彼女から顔を背けた。

 

「その……東野さん、今さらなんだけど、なんで俺に相談したの?」

 

「なんでって?」

 

「いやだって、東野さんは人気者で、友達もたくさんいる。他に相談できる奴なんていっぱいいるのに、なんで隣の席ってだけの接点しかない俺へ相談をするのだろう?って」

 

「……………………」

 

彼女はしばらくの間黙っていたが、ぽつりぽつりと小さな声でこんなことを語り始めた。

 

「もちろん、他の人にもたくさん……相談したの。でも、なんだか胸のつっかえが取れなくて」

 

「……………………」

 

「中原くんとは、隣の席になってからちょっとだけ話すようになったくらいの仲だけど、それでも優しそうな人だなっていうのは分かってたの。だから……せっかくなら、相談してみようかなって。ふふふ、やっぱり私の勘は、間違ってなかった」

 

「……東野さん」

 

「あんな風に、私が思ってたモヤモヤをはっきり形にしてくれて、そしてあんなにあったかい言葉をくれたのは……中原くんが初めて」

 

「は、はは……なんか照れるな」

 

「中原くん、将来はカウンセラーとか向いてるかも」

 

「カウンセラー?」

 

「うん、中原くんになら、なんでも相談……したくなっちゃうな」

 

「……………………」

 

「あ、そうだ。どうせなら部活とかさ、やってみたら?」

 

「部活と言うと?」

 

「お悩み相談部っていうか、カウンセリング部っていうか」

 

「か、カウンセリング部って……俺、そんな人の悩みを上手く解決できるような人間じゃないよ」

 

「解決しなくてもいいの。中原くんみたいに優しい人に話を聴いてもらいたいって、そう思う人はたくさんいると思うな」

 

「……………………」

 

「また何かあったら、中原くんに相談してもいい?」

 

「……本当に、お、俺なんかでいいの?」

 

「ふふふ、もちろん」

 

 

 

──中原くん“が”いいの。

 

 

 

……その時の、彼女の嬉しそうな顔が未だに忘れられない。

 

だから俺は、カウンセリング部というものを始めた。

 

……はっきり言って俺は、平凡な人間だ。勉強も運動も平均で、顔立ちも普通な凡人だ。

 

でもそんな俺が、こうして誰かの役に立てることがあるなら……いいかも知れない。

 

これからたくさん、俺の部室へ悩み相談に来る人がいるだろう。その人たちに、精一杯真摯でいてみよう。上手くできるかどうかはわからないけど、どうせなら何かやってみよう……と、そんな気持ちだ。

 

これは、心を病んでいった人たちみんなを、なんとか救おうと奮闘するお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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