学校でカウンセリング部を始めたら病んだ美少女たちの激重ハーレムができたんだが   作:崖の上のジェントルメン

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10.入部希望

 

 

 

 

……中原くん。俺はね、君はとても強い子だと思うんだ。

 

あれだけの境遇の中にいながら、自分の自我をしっかり持とうとしてた。それは、並大抵の精神力じゃないと思う。

 

だから、もっと誇りを持っていいんだ。君は自分のことを過小評価しているけど、とんでもない。

 

君は、強い。間違いなく。結果がどうだったとか、上手くいったかどうかとか、そんなの関係ないさ。

 

あの境遇の中で、懸命に戦った。そのことを、絶対に誇っていい。

 

俺が保証するよ、中原くん。

 

 

 

 

 

「……………………」

 

……授業と授業の間にある、中休み。

 

クラスメイトたちが隣の席同士で談笑している中、俺は一人頬杖をついて、昔言われた言葉をぼーっと思い出していた。

 

「どうしたの?中原くん」

 

隣の席の東野さんが、俺に声をかけてくる。彼女はなぜかわからないけど、いつも何かと俺のことを気にかけてくれる。

 

「なんでもないよ、東野さん。ただちょっと……昔のことを思い出してただけ」

 

「昔のこと?」

 

「うん」

 

「それって、いつの頃?中学生?小学生?それとももっと昔?」

 

「……つい最近だよ。去年の……一年生だった頃。この学校に転校してくる前のことだ」

 

「え?中原くんって転校生だったの?」

 

「来たのが6月だったからね。まだみんなも新入生気分だったから、わりとすんなり馴染めたよ。もちろん、クラスのみんなが優しかったからだろうけど」

 

「へえ~!なんで中原くん、そんな微妙な時期に転校してきたの?前の学校、4~5月までしかいなかったってことだよね?その学校のことを思い出してたの?」

 

「いや、その時はどこにも通ってなかったよ」

 

「え?」

 

「……まあ、なんていうか、話すと長くなる」

 

「……………………」

 

「それに、話して聞かせたいほど面白い話でもないよ」

 

「……そっか。ごめんね、変なこと訊いて」

 

「いや、いいよ。気にしてない」

 

東野さんはちょっと罰の悪そうな顔をしていた。聞いてはいけないところまで聞いてしまったのかも?みたいな、そんな顔をしていた。

 

まあ、俺も好き好んで昔の話はしたくない。話すこと自体は別に大したことじゃないけど、絶対相手に気を使わせるし……。

 

「……あ!あの、そう言えば中原くんさ」

 

彼女はさっきとうって変わって、少し笑顔を浮かべながら、明るく話しかけてきた。そこに、空気を変えようという彼女なりの気遣いを感じた。

 

「カウンセリング部って、今は中原くんの他に誰かいるの?」

 

「いや、俺だけだよ」

 

「えー?増やさないの?部員」

 

「……ん。あ、そうか、そうだね」

 

東野さんに指摘されて、ようやく俺は部員募集とかをしてなかったことに気がついた。

 

今まで俺は、カウンセリングは自分一人できちんと聞かないといけない……という、変な固定観念があった。個人情報を漏らすわけにもいかないし、俺が一人で対応しなきゃいけないと。

 

でも確かに先日、西田さんと北川さんが部室に来た時、俺はどっちを優先すべきか迷った。普通に考えれば、先約だった西田さんなんだろうけど、あんなに泣いてた北川さんを放っておくのもさすがにどうかと思い、結局二人を中に入れた。

 

たぶん、あれは本当はよくないことだ。マンツーマンで話を聞く方が彼女たちにとっても安心感があるし、何より誠実だ。

 

だからああいう場面で、俺の他にも部員がいてくれれば、めちゃくちゃ助かるのは間違いないない。

 

(最近はだんだんと相談者も増えてきたし……そろそろ部員を集めた方がいい時期かもな)

 

そう思いながら、俺がうーんと顎に手を当てて唸っていると、東野さんがさっきよりもっと明るい声で「ねえねえ」と言ってきた。

 

「私、入部しちゃってもいい?」

 

「……え?東野さんが?」

 

「うん」

 

「……………………」

 

「ダメ、かな?」

 

「いやいや、ダメじゃないけど……え?東野さんって他に部活入ってなかったっけ?」

 

「うん、バスケ部のマネージャーしてる」

 

「うちの学校、確か兼部ダメでしょ?大丈夫?」

 

「うん、バスケ部の方は、辞めちゃおうかな」

 

「ええ?ほんとに?」

 

「うん」

 

なんの迷いもなくあっさりと……「消しゴム貸して」と言われて「いいよ」と返事するくらいの感覚で、東野さんは答えていた。なんなら彼女よりも、むしろ俺の方が困惑していた。

 

「嫌だったら、嫌だって言ってくれていいよ?中原くん」

 

「いやいやほんとに、嫌なわけじゃないよ。ただ……ちょっとびっくりして」

 

「ふふふ、私も中原くんほどじゃないけど、人の話聞くの好きだよ。それに、誰かを笑顔にしたいっていう私のポリシーにも合う気がして」

 

「……………………」

 

「バスケ部のマネージャーも、その感覚で入ったところあるんだけど……なんとなく、肌が合わなくて」

 

「……そっか、わかった。東野さんが納得してるなら、俺は構わないよ」

 

「ほんと?ありがとう!」

 

そう言って、彼女は眩しいくらいに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……その日の放課後、俺は東野さんとともに、カウンセリング部の部室に来ていた。

 

「へー!ここが部室なんだー!」

 

東野さんは床から壁、天井にかけてじっくりと室内を見渡した。

 

俺も彼女もフローリングの床に座り、テーブルを挟んで対面している。

 

「もともと、ここはただの物置兼休憩所的なところだったらしいよ」

 

「なるほど~、確かにそれっぽいかも」

 

彼女は一通り辺りを観察した後、俺の方へ目を向けた。そして、にこっと口元を緩ませて、テーブルの上に肘をつき……両手で頬杖をついた。

 

「ここで中原くんは、どんな感じで聞くの?」

 

「どんな感じって?」

 

「いつも一人ずつ?」

 

「……まあ、相談者はだいたい一回につき一人かな。たまに複数人で来ることもあるけど」

 

「じゃあ、かわいい女の子とも、マンツーマンになる時があるんだ?」

 

「そうだね、女の子と二人になる時もある」

 

「そんな時、ドキドキする?」

 

「ドキドキ……いや、全くしないかと言われると嘘になるけど、相談事を聞いてるとそっちに集中するから、あんまりそういう気持ちにはならないかな」

 

「ふふふ、そうなんだ」

 

東野さんは、なにやら含みのある笑顔をずっと浮かべていた。目を細めて、俺の心をじっと見透かそうとするような目差しを送ってくる。

 

「女の子の方は、どうなのかな?」

 

「え?」

 

「中原くんに相談事を聞いてもらって、嬉しくなって……。そしてだんだん、中原くんがカッコよく見えてくる」

 

「……………………」

 

「もしかしたら、そんな女の子もいるかも知れないね」

 

「……まさか、俺は大したことしてないよ。ただ、少しでもいいから、苦しむ気持ちが軽くなってくれたらいいだけで……」

 

「でもほら、その人にとっては“大したこと”かも?」

 

「止めてよ東野さん、俺をからかうのは」

 

「ふふふ」

 

……一体、彼女は何を考えているのだろう?

 

まるで掴み所のない彼女の微笑みから、俺は思わず目を逸らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……放課後のチャイムが鳴ったと同時に、私はまた今日もカウンセリング部へと向かっていた。

 

最近、カウンセリング部へ訪ねに来る人が増えている。そのせいで、中原くんと一緒にいる時間が減ってしまっている。

 

(少しでも一緒にいられる時間を……増やしたい)

 

もちろん、中原くんのカウンセリング部としての仕事は邪魔したくない。だからせめて中原くんの手が空いている時間に……私のことを、見てほしい。

 

そういう思いから、私の足はいつも以上に早かった。

 

「……あっ」

 

「ん?」

 

……でも、カウンセリング部へと向かう途中の廊下で、あの例の橙色の髪をしたツインテールの女の子とばったり出会してしまった。確か……中原くんは彼女を北川さんって呼んでたっけ。

 

「「……………………」」

 

お互い、その場に立ち止まって、じっと顔を見つめ合った。彼女は私よりも若干背が高い。それだけで、なんとなく私は尻込みしてしまう。

 

この廊下の先を考えると、たぶん、カウンセリング部へ行こうとしていることは、お互いになんとなくわかっているような気がした。

 

「……あなたも、カウンセリング部ですか?」

 

私がそう訊くと、彼女はこくんと頷いた。

 

「あたし……手紙にした」

 

「え?」

 

「中原に言いたいことを、手紙に」

 

そう言って、彼女は鞄から封筒を取り出した。鞄への入れ方が不味かったのか、若干その封筒にはしわが寄っていた。

 

「口に出して話すと、長いし、意味わかんないこと言いそうで怖いし、手紙にした。それを渡しに行くだけ」

 

「……なるほど」

 

「あんたはなんで?」

 

「え?」

 

「なんでカウンセリング部に行くの?」

 

「……なんでって……」

 

「中原に会いたいから?」

 

「!」

 

そう訊かれた瞬間、私の心臓はばくんっと激しい音を鳴らした。

 

「……………はい、ちょっと中原くんに相談事をしに行こうと思いまして」

 

「ふーん」

 

私がだいぶ緊張した具合に答えたのと対象的に、彼女はあんまり興味がなさそうに答えていた。

 

そうして、私のことは無視して、そのままスタスタと前に進んで行ってしまった。

 

(あ……先を越される)

 

なんとなくそれは嫌だなと思った私は、少し小走りで彼女の横に並んだ。

 

「「……………………」」

 

お互いになんの会話もないまま、その廊下をコツコツと歩いた。

 

中原くんに言いたいことって、なんなんだろう? もしかして……告白、とか?

 

いやいや、でもそれなら初対面の私にわざわざ「手紙にした」とか言わないはず。

 

(でも本当に……どんな内容なんだろう?)

 

静かに歩きながらも、私の頭の中はそのことで騒がしく考えを張り巡らしていた。

 

 

コンコン

 

 

部室の前についた私たちは、扉を軽くノックした。すると、女の子の声で「はーい」という返事があった。

 

「……え?」

 

「……………………」

 

私と北川さんは、思わず二人で目を合わせた。中原くん以外の人が中にいる……?

 

妙な緊張感に包まれながら、私はドアノブに手をかけた。

 

「あ、どうぞいらっしゃい~。お悩み相談ですか?」

 

そう言って話しかけてきたのは、中原くんと対面して座っている、黒髪の女の子だった。

 

(わあっ……!)

 

正直、本当に驚くほど可愛かった。隣にいる北川さんも可愛いけど、この黒髪の子はオーラが可愛いの他にオーラがある。

 

さらさらのロングヘアに、透明感のある肌、そして愛らしい瞳。同性の私も緊張で固まってしまうほどの顔立ちだった。

 

芸能人だと明かされても「そうですよね」と答えてしまいたくなるくらいだ。

 

(こ、こんなに可愛い子が、なんでカウンセリング部に……?)

 

たぶん、今この場で一番ブサイクなのは、私。

 

中原くんにこの二人から比較されてしまうのかと思うと、もう走って逃げたくなってしまった。

 

「やあ、西田さん、北川さん」

 

中原くんが私たちにそう言って手を振ると、その黒髪の子が彼に対して「知り合いなの?」と尋ねた。

 

「うん、西田さんはよくここへ遊びに来てくれる友だちだよ。北川さんも最近こうして訪ねに来てくれるんだ」

 

「へえ、友だちね」

 

黒髪の子はにっこりと笑って、私と北川さんに向かって「どうも~」と言って手を振ってきた。

 

「ど、どうも……」

 

私はどもりながら、彼女へそう返事をした。でも北川さんはそれに答えることはせず、中原くんへ質問を投げかけた。

 

「中原、今相談中?」

 

「うん?」

 

「この女の相談、受けてるところ?」

 

(こ、この女って……なんか、冷や冷やする言葉使い)

 

私は北川さんの物言いに、密かに困惑していた。喧嘩腰というわけじゃないけど、かなりぶっきらぼうな言い方だった。

 

中原くんは「ああ、相談じゃないよ」と、北川さんの質問に返答していた。

 

「彼女は東野 円香さん。今日、カウンセリング部に入部してくれたんだ」

 

「入部……?」

 

「どうも、よろしくね」

 

黒髪の女の子……東野さんはまたにこにこと笑っていた。

 

(入部……! そっか、入部っていう手があった……!)

 

この時私は、心底ショックを受けていた。中原くんと一緒の時間を過ごすために、カウンセリング部へ入部する。そんな簡単なことにどうして今まで気がつかなかったんだろう。

 

(そうだ、私も……私もカウンセリング部に……)

 

そう思いながら、もじもじとその場に立ち尽くしていたその時……北川さんが中原くんへ言った。

 

「中原、入部って誰でもできんの?」

 

「え? そりゃ……まあ」

 

「じゃあ、あたしも入る」

 

「え?」

 

ええ!?

 

私は内心、すごく驚いていた。まさかここで北川さんがそんなこと言うとは……。

 

異様にむすっとしている北川さんの横顔を、私はじっと見つめていた。

 

「あ、北川さん? だっけ? あなたも入るの?」

 

東野さんが明るく彼女へ話しかけると、北川さんは眉をしかめて、彼女を見下ろした。

 

「……なに? なんか文句ある?」

 

「ううん! そんなことないよ」

 

「……………………」

 

「でも、結構いきなり決めたみたいだったから、どうしたのかなって」

 

「……悔しいから」

 

「悔しい?」

 

北川さんは、思い切り歯をギリギリさせて、いよいよ眉をひそめるとかじゃなくて、睨みつけるというくらいな表情をしていた。

 

「なんか、よくわかんないけど、悔しいから」

 

「……………………」

 

その時の北川さんの顔を見て、私はなんとなく察した。

 

(北川さんも……もしかしたら中原くんのことを……)

 

いや、それだけじゃない。この東野さんだって……その可能性はある。

 

(ど、どうしよう……もしかして、だいぶ捻れた感じなのかも……!?)

 

バクバクと心臓が揺れて、おさまらない。

 

(わ、私……どうしよう、この流れに乗って、入部のこと……な、中原くんに……)

 

だけど、私の口はずいぶんと重たかった。この場に漂う奇妙な緊張感が、私の臆病癖を刺激していた。

 

「……………………」

 

 

 

『西田さんはよくここへ遊びに来てくれる友だちだよ』

 

 

 

……でも、でも、私だって……私だって、中原くんの近くにいたい。

 

中原くんは、私のこと友だちだって、はっきり言ってくれた。

 

私のこと、拒絶しないでいてくれた。

 

私に居場所をくれるのは……彼しか、いないの。

 

「あ、あの……私も」

 

そうして、ようやく私は、絞り出すようにして言葉を発した。

 

すると、その場にいる全員が、私の方へ視線を向けた。

 

(ひぃーー! ちゅ、注目を……注目を、浴びてるぅーーー!)

 

目立つことが本当に苦手な私にとって、もうそれは苦行意外の何物でもなかった。

 

北川さんは、つんとした感じで怖いし、東野さんは「おやおや?」的な笑顔で怖い。この二人から見られるのが、すごく緊張する。

 

「……西田さん?」

 

でも、中原くんが心配そうに優しく声をかけてくれたから、私はなんとか平静を保てた。

 

ごくりと生唾を飲んで、なるべく中原くんの方を見るようにして、はっきりとこう言った。

 

 

 

「私も……入部、させてください」

 

 

 

 

 

 

 

 

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