学校でカウンセリング部を始めたら病んだ美少女たちの激重ハーレムができたんだが   作:崖の上のジェントルメン

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23.好きじゃない

 

 

……生徒会選挙。

 

これは、今までの俺には全く縁のないものだった。

 

生徒会になろうと思ったこともなかったし、生徒会自体にそもそも関心がなかった。

 

だが、この生徒会へ入らなければ、カウンセリング部のチラシや放送はさせてもらえない……。それが、伊集院会長……つまり、南美さんに下された条件だった。

 

 

「………………」

 

お昼休みの時間。俺は弁当を食べることもなく、自分の席に座っていた。

 

「おっ!お前のからあげ、うまそうじゃん!」

 

「そういえばさー、うち最近ダイエットしてるんだけどねー?」

 

教室で昼食を取るクラスメイトたちの声が、周りから聞こえてくる。

 

(……どうする?どうすればいい?)

 

俺は机の上にノートを開き、シャーペンを持って固まっていた。ノートの中央には「生徒会選挙」という文字があり、その下に二重線をシャーペンで入れた。

 

(生徒会選挙に出なければ、カウンセリング部の宣伝はできなくなる……。南美さんの言い方から考えて、下手すると廃部にまで追い込まれる可能性もある……)

 

 

『言っておくけど、ボクは本気だからね。やろうと思えば、カウンセリング部を廃部に追いやることだってできるんだから』

 

 

南美さんの言葉が、頭の中で反響している。

 

(正直なところ、カウンセリング部の廃部を避けるためなら、生徒会に入るのも仕方ないと思っている。だが、この話を安易に受けてしまうと……俺が南美さんの告白を容認したことになる)

 

そう、それはつまり、事実上の恋人関係を受け入れたことと同義だった。

 

 

『好きって、言ってもいい?』

 

 

 「………………」

 

あのイケメン女子で名を馳せる南美さんが、あんなに顔を赤らめて告白してくるなんて……。西田さんの告白も、まだ心の整理ができていないのに。

 

(くそっ……。何かいい方法はないか……?)

 

俺は口を閉じたまま、歯をぐっと噛み締めていた。

 

まず、今俺が思いつける対応は、二つある。

 

一つ目が、そのまんま南美さんの条件を飲むこと。カウンセリング部の存続のためには、致し方ないと割り切る。

 

だがこれは、南美さんの告白を受け入れたことにもなるし、なにより二度目三度目の条件を要求される原因になってしまう。

 

一度要求を飲んでしまうと、「あれもこれもお願い」と、どんどん要求がエスカレートしてくる可能性も考えられる。下手すると、「カウンセリング部を辞めて生徒会に専念して」と言われかねない。

 

二つ目の対応案は、この条件を飲まずに、再度交渉すること。

 

南美さんの私情だけでカウンセリング部の活動を妨げるのはおかしい、その条件は飲めないと断る。個人的には、こっちの案で進めたいところだ。

 

だがそれは、生徒会に……南美さんに敵対するとこになる。もしかすると、部員のみんなに迷惑をかけてしまうかも知れない。

 

それに……。

 

「………………」

 

俺は、南美さんの告白を断るのが、少し……辛い。

 

あんなに俺を好いてくれている人の気持ちを拒絶するのは、物凄く罪悪感が沸く。

 

もちろん、これは俺の私情だ。カウンセリング部のためを思うなら、最も無視すべきこだわりだ。だいたい、西田さんの告白も宙ぶらりんにしているのに、こんなところで安易に答えを出していいわけがない。

 

でも、それが頭では分かっていても……胸の痛みは消えてくれなかった。この条件を断ったら、彼女は悲しい顔をするんだろうか……。

 

「……はあ」

 

俺はため息をついてから、シャーペンをノートの上に置いた。

 

「どうしたの?ため息なんかついて」

 

その時、俺へ声をかけてきたのは、東野さんだった。口許に薄く笑みを浮かべながら、優しげな声色で尋ねてくる。

 

「お弁当も食べないで、ノートとにらめっこ?」

 

「ん……そうだね、ちょっと考え事があって」

 

「ふふふ、カウンセリング部の部長さんも、悩みが尽きないね」

 

東野さんは隣にある自分の席に座って、頬杖をついた。

 

「水臭いなあ、中原くんも。私に遠慮なく相談してくれていいのに」

 

「東野さんに?」

 

「うん、もちろん」

 

「………………」

 

正直……俺はこの話を、他人へ話すのを躊躇っていた。それは東野さんだから話せないわけではない。南美さんの告白を、当事者以外へ話していいのだろうか?という、そんな気持ちだった。

 

もし自分が誰かへ告白したとしたら、それはあまり、他の人へは話してほしくないと思う。だから俺も、南美さんの気持ちは、俺の中で留めておくべきなんじゃないかと思っていた。

 

「ふふふ」

 

そんな俺の気持ちを見透かしているのか、東野さんは意味ありげに笑いながら、こう言った。

 

「中原くんはさ、凄い人だと思う」

 

「え?」

 

「たくさんの人に寄り添えるし、たくさん素敵なことを話してくれる」

 

「………………」

 

「でも、そんな中原くんも、1個だけ弱点があるよね」

 

「弱点?」

 

東野さんは頷きながら、目を細めた。

 

「中原くんは、人に頼るのが下手っぴだね」

 

「………………」

 

「他人のことは率先して助けるのに、自分のことは蔑ろにしちゃう。ふふふ、そんなところも、魅力的だけどね」

 

「……東野さん」

 

「ね、何か困ってるなら、話してみてよ。私だって、カウンセリング部なんだから」

 

「………………」

 

他人を頼るのが下手……か。

 

「……分かった。東野さん、放課後になったら……俺の話、聞いてくれないか?」

 

俺がそう言うと、東野さんは満足そうに頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

放課後の、誰もいない教室。そこで俺は、東野さんと二人だけで話していた。

 

いつぞやにあった東野さんからの悩みを聞いた日と真逆で、俺が東野さんへ悩みを打ち明けていた。

 

「へ~~~!伊集院さん、もうそんなに中原くんのこと気に入ってるんだね!」

 

東野さんは目を大きく見開いて、感嘆の声を上げていた。

 

「部長という立場としては、彼女の条件は断りたいところだけど、個人的には……ちょっと断りにくい気持ちもあるんだ。そこの折り合いが難しくてね」

 

「うーん、なるほどね~」

 

「東野さん、君だったらどうする?君の意見を聞きたい」

 

「そうだね~、確かにこれ、難しい話だね」

 

東野さんは口を尖らせて、人さし指で顎の先を触っていた。

 

「まあでも個人的には、この話は承諾してもいいと思うよ」

 

「そうかな?」

 

「だって、伊集院さんが望んでるのはあくまで一緒の生徒会に入って欲しいってところまでだし、そこから先の関係性については、今のところ明確には言及されてないでしょ?なら、要望通りしておく方が、お互いに角が立たずに済む。しかも中原くんが生徒会に入ることで、カウンセリング部の要望が前よりも通りやすくなる。だから結構、メリットがあると思うの」

「……まあ、それは確かにね。付き合ってくれとはっきり言われたわけじゃない。でもあの告白は……もうそれも含めた表現だったと思う」

 

「うん、伊集院さんの気持ち的にはそうじゃないかな。でもさ、交際を強引に強制するのは、本当は伊集院さんとしてもやりたくないんじゃない?だって、罪悪感に胸が苦しくて、泣いてたんだよね?だからそこまでは応えなくていいと思う。応えるのは、あくまで生徒会選挙への立候補まで」

 

「………………」

 

「それに、この話を先生へ暴露したら、不利になるのは伊集院さんの方だと思う。だって私情で部活の活動を邪魔するなんて、あっちゃいけない話でしょ?」

 

「それは……確かにそうだね」

 

「ま、先生には信じてもらえないかも知れないけどね。でも伊集院さんは、あまり自分の評判を落としたくないと思うよ」

 

「………………」

 

やっぱりすごいな、東野さんは。

 

理路整然としているし、客観的で冷静だ。告白されて動揺して、狭くなっていた俺の視野を、綺麗に広げてくれる。

 

「ふふふ、それにしても、中原くんはやっぱり罪なお人だね」

 

「え?」

 

「だって、あの伊集院さんを泣かせたんでしょ?すごいよほんと!だってバレンタインデーの時なんて、チョコを二桁貰うのが当たり前なくらい、人気な人なんだから!」

 

「い、いや……なんかそう言われると、照れるな」

 

俺は東野さんからの言葉に照れ臭くなって、鼻の頭を指先で掻いた。

「あとは私の個人的な気持ちとしては、中原くんが生徒会に入るのは、すごく面白そうって思う!」

 

「面白そう?」

 

「うん!だって中原くんなら、生徒会でも大活躍できそうだから!」

 

「いやいやそんな……買いかぶりすぎだよ」

 

「そんなことないよ~!私、中原くんが生徒会で活躍するとこ、見たいな~!」

 

「う、うーん……」

 

「それにさ、私はやっぱり、中原くんにはモテて欲しいの」

 

「モテて欲しい?」

 

「うん」

 

東野さんは、首をこてんと傾けて、俺のことをじっと見つめた。

 

「だって、中原くんは、私のアイドルだもん」

 

「アイドル……?」

 

「そう、アイドル。みんなの憧れて、いつもいつもキラキラしてて、どんな時も素敵で……」

 

「………………」

「私はね、中原くんにはもっともっと、輝いて欲しいの。だから生徒会に入って、みんなの憧れの視線を、もっともっと受けて欲しいの」

 

「……東野さん」

 

「ねえ、中原くんのことだからさ、もう気がついてるよね?」

 

「気がついてるって?」

 

「西田さんと北川さんが、中原くんのこと好きだって」

 

「!」

 

俺の表情が強張ったのを見て、東野さんは嬉しそうに微笑んだ。

 

「中原くんの周りには、もうたくさん、女の子が集まってる」

 

「………………」

 

「でも、もっともっと、中原くんの周りに集まって欲しい。中原くんには、それだけの魅力があるもの」

 

「……ねえ、東野さん」

 

「うん?」

 

「こんな質問をするのは……ちょっと、なんだかなと思うんだけど」

 

「うん、いいよ?」

 

「……なぜ君は俺のことを、そんなに買ってくれるんだ?」

 

「………………」

 

「良い評価をしてくれるのは嬉しい。だけど、いささか過剰に思えるところもある。なんで君は、俺のことをそこまで……」

 

「……ふふふ、なんでだと思う?」

 

「……無粋な言い方かも知れないが、君もまた……俺のことを恋愛対象として好意的に思ってる。そう考えて、間違いないかい?」

 

「そんなそんな、好きって気持ちとは全然違うよ」

 

「違う?」

 

「うん、違うの。“好き”じゃない」

 

「……じゃあ、なおさら分からない。君は一体、なんで俺のことを……」

 

「……ふふふ」

 

東野さんは、頬杖をついて、にっこりと笑った。そして、はっきりと自信満々に、彼女はこう言った。

 

 

 

 

「だって、愛してるんだもん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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