学校でカウンセリング部を始めたら病んだ美少女たちの激重ハーレムができたんだが   作:崖の上のジェントルメン

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3.仲良くなりたい

 

 

 

……なんだ、口答えする気か?

 

親に向かってその口の聞き方はなに?

 

お前の意見は聞いてない。黙って俺の言う通りにしておけ。

 

 

 

 

 

……ガキのくせに。

 

 

 

 

 

「……………………」

 

最悪の目覚めだった。

 

自分の部屋の天井を見て、ようやくさっきまでのことが夢だったのだと自覚できた。

 

俺がまだあの二人の“子ども”だった時の、二度と思い出したくない時のこと。

 

「ふう……」

 

重い息を吐いて、俺は上半身を起こした。

 

閉じたカーテンの隙間から、一筋の光が入り込む。

 

今日も朝がやってきた。

 

 

「……あらあら、おはよう透くん」

 

リビングヘ行くと、おばさんが朝ご飯をテーブルへ並べながら挨拶をしてくれた。

 

彼女はふくよかな人で、まるく優しい目をした人だった。

 

「もう朝ご飯ができてますよ。あなたもおあがり?」

 

「ありがとうございます、おばさん」

 

俺は軽く頭を下げて、自分の席についた。今日の朝食は、白飯と椎茸と豆腐の入ったみそ汁、それから昨夜のおかずの余りである肉野菜炒めだった。

 

手を合わせ、小さく「いただきます」と告げてから、俺はおばさんの作った朝食をいただいた。

 

「あわわっ!いかんいかん!」

 

その時、寝室からおじさんが慌ただしい様子で出てきた。寝癖がぴょんとハネていて、眠そうに瞬きを何回もしながら、ネクタイを締めていた。

 

「おじさん、おはようございます。ずいぶん慌ててますね」

 

「やあ、おはよう透くん!いやね、実は今日、朝方早くから先方との約束があったことをすっかり忘れててね!うっかりこんな時間まで寝てしまったよ!」

 

「なるほど……」

 

「えーと、すまん透くん!僕の眼鏡をどこかで見てないかい?さっきから探しているんだが、どうにも見当たらなくて……」

 

「……?眼鏡なら、おじさんが今かけてるじゃないですか」

 

「え?」

 

そう言うと、おじさんは自分のこめかみ付近を触った。指先に眼鏡のフレームが当たったことに気がつき、ため息をしながら苦笑していた。

 

「全く……!近くにいるならいると、眼鏡も一言僕に言ってくれればいいものを!」

 

「ふふっ、そうですね」

 

ユーモアのある愚痴をこぼしながら、おじさんは無事ネクタイを締め終えて、ジャケットを着込んでいた。

 

「修二さん、朝ご飯はどうされますか?」

 

おばさんが台所からおじさんの名を呼ぶ。

 

「うーん、じゃあみそ汁を一杯だけ貰おう!」

 

おじさんがそう言うと、おばさんはお茶碗にみそ汁をついで、おじさんへと渡した。それを受け取ったおじさんは、ぐっと一気にそれを飲み干した。

 

「やあ!旨かった!すまないね、それじゃあ行ってくる!」

 

「行ってらっしゃい、修二さん」

 

「おじさん、お気をつけて」

 

俺たちへ手を振りながら、ドタドタと忙しなく家を去っていった。

 

「さて、透くん。あなたもそろそろ学校かしら?」

 

「はい」

 

「どうぞ、今日のお弁当はこれよ」

 

おばさんからお弁当箱をいただいて、俺は「どうもありがとうございます」と答える。

 

「……透くん」

 

「はい?なんですかおばさん」

 

「もう、そんなに丁寧に話さなくてもいいのよ?」

 

「……………………」

 

「あなたはここの家族になったんだから、他人行儀なことはしなくていいのよ?」

 

「……………………」

 

おばさんの優しい眼差しが、俺へと真っ直ぐに当てられる。それから逃げるようにして、俺は顔を背けてしまった。

 

「……ありがとうございます、おばさん。ただちょっとまだ……癖が抜けそうにありません。これからちょっとずつ、変えていけたらと思います」

 

「ええ、分かったわ」

 

おばさんの声は、本当にただただ優しかった。俺はそれが申し訳なくて……どうにも、胸が張り裂けそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふあぁ……」

 

カウンセリング部の、部室内。俺はそこで寝転びながら天井を見上げていた。

 

遠くの方で、野球部たちが練習している声がうっすら聞こえる。

 

……おばさんもおじさんも、絵に描いたような優しい夫婦だ。俺をすんなり引き取ってくれたし、愛情を持って育ててくれていることがとても分かる。

 

だからこそいつも……申し訳ない気持ちにかられてしまう。

 

こんなに自分が愛されていいのか?みたいな、そんな気にさせられる。このことを二人に話したら、きっと悲しい顔をされるだろう。あの二人に、そんな想いはさせたくない。

 

「……ん、くぅ~……!」

 

俺は寝転がりながら、肩を上げて背伸びをした。

 

「はあ……人が来ないと、この部活って暇すぎるなあ……」

 

小さな独り言をぶつぶつ呟いていたその時、部室の扉がノックされた。

 

「はーい、どうぞ~」

 

上半身を起こして、その扉の方へ目をやった。ゆっくりと開けて入って来られたのは、西田さんだった。肩掛けの鞄を重そうに持って、部室の中を覗き込んできた。

 

「……中原くん、お邪魔します」

 

「やあ西田さん」

 

「あの……漫画、返しに来たの」

 

「あー!ありがとうありがとう!」

 

西田さんは少しだけ笑うと、おそるおそるこちらへとやって来る。フローリングの方へと上がり、座布団を下に敷いて座った。

 

彼女がここへ初めて来た日から、今日でちょうど一週間。その間にだいぶ彼女とは仲良くなった気がする。毎日のようにここへ訪ねてくれるし、いつもいろいろと談笑させてもらってる。

 

今日に至っては、いつも正座だった彼女が少し脚を崩して、いわゆる女の子座りをしていた。些細な変化かも知れないけど、俺はそれがたまらなく嬉しかった。

 

「あ、ありがとう、中原くん。漫画……貸してくれて」

 

彼女はそう言って、テーブルの上に漫画を置いた。

 

「どうだった?西田さん」

 

「うん、すっごく……面白かった」

 

「ほんと!?それはよかった!どのシーンが好きとかある?」

 

「あの……アラビアの過去編で、死んじゃった恋人の墓に訪ねるシーンで、私……泣いちゃった」

 

「あー!うん、俺もあそこは泣いたなあ……。いいよね、あのシーン」

 

「うん、アラビアっていつも泣かないキャラだから、泣いてるのを見ると余計に胸に来る」

 

「わかるわかる、普段とのギャップがね」

 

「うんうん」

 

いつものように、彼女と漫画談義に花を咲かせる。

 

西田さんは、初めて会った時よりも表情が柔らかくなった気がする。心なしか笑顔も増えたような……。

 

「それにしても西田さん、早かったね読むの。もっと借りててもよかったのに」

 

「そ、そんな……人様のものを、そんなに長く借りられないもの」

 

「そ、そっか」

 

西田さんは律儀だなあと思いながら、俺は彼女から漫画を受け取り、自分の鞄へとしまった。

 

「あの……中原くん」

 

「うん?」

 

「……………………」

 

「……?なに?どうかした?」

 

「あ、あのね?もし中原くんがよかったら……」

 

 

コンコン

 

 

その時、部室の扉がまたもやノックされた。「はーい」と言って答えると、静かに扉が開け放たれた。扉の向こう側には、見知らぬ男子生徒が立っていた。

 

「あの……ここって、カウンセリング部でいいんすよね?」

 

「ええ、そうですよ」

 

「相談って……何でもいいんですか?」

 

「もちろんもちろん、なんでもどうぞ」

 

「えーと、じゃあちょっと……いいですか?」

 

「あ、うーん、今ちょっと取り込み中なので、少し待っててもらっても……」

 

そう俺が彼に言いかけた時、西田さんはすくっと立った。

 

「あの、中原くん。今日は私、この辺で……」

 

「え?いいの?さっき西田さん、何か言いかけてたけど……」

 

「大したことじゃないから……大丈夫」

 

「そう?」

 

「うん」

 

「ごめんよ西田さん、気を遣わせちゃって」

 

「ううん。それじゃあ、また明日」

 

「うん、また明日」

 

俺がそう言うと、西田さんはまた少しだけ笑った。そして、いそいそと部室を出ていった。

 

カウンセリング部には、こうして相談しに来る者が時々いる。そんな時、西田さんはいつも気を遣って部室から出ていく。それがちょっと、いつも追い出してしまってるような気持ちにかられて、なんだか申し訳なくなる。

 

(それにしても、彼女が言いたかったことってなんなんだろう?)

 

「あの、すみません。どこに座ればいいですか?」

 

その時、今しがた入ってきた男子生徒から声をかけられた。

 

「あー、えっと、俺の前にでも座ってもらえれば」

 

「はい」

 

彼は座布団の上へ腰を下ろすと、早速相談事を話してきた。

 

「あの、恋愛系のでもいいですか?」

 

「はい、どうかしました?」

 

「えーと、自分、今好きな人がいるんですけど、その人にどんな風に告白しようか悩んでて……」

 

「ほお、告白を」

 

「Limeとかメールでコクるのはやっぱ違うかなって思ってるんですけど、でも……正直ちょっと、面と向かっては恥ずかしくて」

 

「ふーむ、なるほど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……カウンセリング部に相談者が来てしまったので、私は部室を後にし、一人家へと帰った。

 

「……ただいま」

 

鍵を開け、誰もいない家の中へと入る。玄関で靴を脱ぎ、静かな家の中を黙って奥へと進み、自分の部屋に向かう。

 

ぎぃ、ぎぃと床が軋む音さえも、この家ではうるさく感じる。

 

「……はあ」

 

自分の部屋に入った私は、制服のままベッドへと寝転んだ。私の重みでベッドが若干軋んだけど、その音は軽く、私の体重がそこまでないことを示していた。

 

……今日も1日、辛かった。クラスには全く馴染めず、疎外感と孤独感だけがまとわりつく。

 

それを終えると、こうして死んだようにベッドに横たわり、死んだように眠る。そんな毎日……。

 

「……………………」

 

でも最近は中原くんのお陰で、だんだん学校へ行くのも苦じゃなくなってきた。

 

もっと正直に言うなら、中原くんがいるから学校へ行ってるところもある。放課後にカウンセリング部へ寄って、中原くんと他愛ないお喋りをする……。それだけで、1日今日、頑張って学校に来て良かったって思える。

 

「中原くん……」

 

私はスマホを手にとって、Limeのアプリを開いた。

 

「……今日も訊けなかったな、連絡先」

 

そう、カウンセリング部に相談者が来る前に中原くんへ訊こうとしていたのは、Limeの連絡先だった。

 

Limeがあれば、カウンセリング部以外でもたくさんお喋りできる。だから欲しいんだけど……でも、どうやって言えばいいのかわからない。

 

何かそれらしい理由をつけようと思って、理由も何個か考えた。「好きなアニメのPVを送りたいから」とか、「好きなweb漫画のURLを送りたいから」とか、いろいろと。でも正直……その場で教えたらいいよねって感じに思われてしまいそうで、結局理由をつけるのは止めてしまった。

 

かと言って、直球で「Limeの連絡先教えて」というのも、それはそれで恥ずかしすぎて……。今日も勇気が出ず、なんの成果もないまま終わってしまった。

 

「はあ……」

 

小さなため息をつきながら、私はLimeのアプリを閉じた。

 

「……………………」

 

そうだ、そう言えば中原くんって、彼女とか……いるのかな?

 

もしいるんだったら、私がLimeの連絡先欲しがるの……よくないよね?彼女さんにも申し訳ないし、中原くんだって困るよね。

 

あーあ、私はやっぱりバカだなあ。自分のことばっかり考えて、中原くんの立場になれてない……。

 

せっかく、今いい関係になれそうなんだから、この関係は……絶対壊したくない。

 

先輩に裏切られてから、もう誰とも仲良くなれる自信がなかったけど、中原くんなら……信じられるかも知れない。

 

中原くんの恋人になりたいとか、そんな贅沢言わない。ただ、心の許せる友人として……近くにいさせてもらえたら……。

 

「……………………」

 

私は枕に顔を埋めて、視界を真っ暗にした。

 

どこか遠くで、カラスの鳴く声が微かに聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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