メーテルリンクは驚愕した。
なぜ、あの事をカラスが知っているのか。
そして、決意した。
確実に口封じしなければならない。
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オールマインドに部品を発注した。
3機分。武装は下記の通り。機体は共通だが、ジェネレータとFCSが違う。
連携行動が取りやすいように機体速度も揃えてある。
617 LOADER 1
R-ARM UNIT:ガトリングガン
L-ARM UNIT:パルスブレード
R-BACK UNIT:3連プラズマミサイル
L-BACK UNIT:パルスキャノン
620 LOADER 3
R-ARM UNIT:4連ハンドミサイル
L-ARM UNIT:パルスブレード
R-BACK UNIT:高誘導ミサイル
L-BACK UNIT:6連プラズマミサイル
621 LOADER 4
R-ARM UNIT:重ショットガン
L-ARM UNIT:パルスブレード
R-BACK UNIT:レーザードローン
L-BACK UNIT:重ショットガン
機体共通
HEAD:VP-44D
CORE:07-061 MIND ALPHA
ARMS:AA-J-123 BASHO
LEGS:2C-3000 WRECKER
BOOSTER:ALULA/21E
FCS:FC-008 TALBOT,FCS-G2/P12SML,IA-C01F: OCELLUS
GENERATOR:VP-20C,DF-GN-06 MING-TANG,IA-C01G: AORTA
EXPANSION:ASSAULT ARMOR
2脚にしては姿勢安定性が高く、マッシブな見た目が好みな機体構成だ。
さて、独立傭兵といっても、ピンキリで大型輸送ヘリを持ってるウォルターは裕福なハンドラーなのだ。
ほとんどはアリーナ圏外で(あのラミーでもそこそこ強い方だ)ACの整備などは傭兵支援システムが保有する共同ドックの世話になっている。
今日はアーレア海を越えて、べリウス地方にあるオールマインドのドックの一つに訪れていた。
中央氷原の方では設備が揃っていなかったのだ。
「登録番号 Rb23、識別名レイヴン。本日は傭兵支援システム、オールマインドをご利用ありがとうございます」
整備スタッフが忙しく動き回る中、俺にそう声を掛けてきたのは、黒髪緑メッシュのショートボブに緑色の瞳に黒いスーツを着こんだ若い女性。
集団幻覚で散々みたオールマインドの擬人化の姿。
スーツを押し上げる豊かな双丘に飾られる名札には「ケイト・マークソン」とある。
おい。独立傭兵じゃなかったのか。
独立傭兵が受付として雇われてる。とで言うつもりか。
「工場では世話になった。…今日はオールマインドの受付か?」
「…そ、うです。こちらの方が安定しているので、ふ、普段はこちらをやらせて貰っています」
(* ̄- ̄)ふ~ん
「…なにか?」
「いや、なにも」
そう言って、調整中の617と620の機体を見上げる。
組み立て済みで引き渡してくれるし、コックピット内部のフィッティングも行える。
傭兵支援システムとしての気遣いは一級品なんだよなぁ。
先輩2人のコックピットも強化人間仕様の耐Gタイプにしたので、身体を固定するパーツのフィッティングが必要だ。
それに二人とも身体が小さいので、調整部品が多いこちらで行う必要があったのだ。
「レイヴン。ここは人が多いですね」
物珍しそうに周囲を見回すのは、黒いぴっちりパイロットスーツを着込んで上から俺のミリタリージャケットを羽織ったエアだ。
ジャケットから覗く、むっちり太ももがとてもセクシー。
エアに返事して応対していると、オールマインドの表情が変わる。
流石にここならコーラル検知センサーくらいあるか。
ウォッチポイントを外から観測して、変異波形を検出していたのだから、エアが変異波形だと気が付くか。
…あれ
いや、この前アリーナ潜った時、エアがエフェメラ持ってきたけど…まさか、パイロット名と機体名を「エア」と「エコー」にしたままでは…
思わず頭を抱えたくなった。
どうっすかな。
計画には修正が必要です。
そうこうしてると、フィッティングが一区切りついた617と620が戻ってくる。
二人ともぴっちりパイロットスーツの上に特注サイズのミリタリージャケットを羽織っている。
右肩のナンバーと左肩のハウンズのエンブレムは気に入って貰えたが、ジャケットにハウンズのワッペンと「617」「620」と入れたのも気に入って貰えたようだ。
お揃いのミリタリージャケットだったが、俺のはエアに取られた。
猟犬を主張する強化人間’sにウォルターは曇っていた。
「なんだぁ?お嬢ちゃんがAC乗るのか?ACに乗るより、俺に乗ってくれよ」
下卑た笑い。つか、617と620にそんな事を言うのは変態だろ。ぺったんこだぞ。
共同ドックをねぐらにしてると思しき独立傭兵。その中でも頭の悪そうな奴が絡んできた。
どうするかな。
…エアにも好色な視線を向けている。良し殺そう。
俺が思っている間に617がスタスタとそいつらに近づいていってしまう。
「お、なんだ相手してくれるのか?それなら、お嬢ちゃんのACは俺が貰ってやる――」
肉を強く叩く湿った音がした。
下卑た笑いを浮かべた奴が吹き飛んでいる。
前に突き出された617の細い脚が、すっと折り畳まれた。
「…ハンドラーは私に意味を与えてくれた。それを否定するなら誰であろうと許さない」
ぞっとするような冷たい視線と声だ。
うん。ウォルター、治療ついでに身体強化し過ぎでは?
617は前蹴りで腹を蹴ったのだ。
それで自分より遥かに大きな成人男性を吹き飛ばして、一撃でKOするとか大分強化されている。
股間じゃなくて良かったね。
きっと、ぱぁぁん!って破裂してたよ。
立ち上がれないところを見ると内臓に重篤なダメージを負ったようだけど、股間よりはマシだったろう。
「手前!死にてぇらしいな!」
そいつの仲間が襲い掛かってくる。
「生き方はわからないけれど、死に方はわかる。ハンドラーの為に私達は死ぬ」
が、620が回し蹴りで意識を刈り取った。
あの…顎が砕けたようなんですが…首もやったな。
先輩方、怖ぇ。
逆らわないようにしよ。
「まだやるなら、俺が相手になるけど…そう、いない」
とりあえず俺が前に出て、ぐるっと周囲を見回す。
「なんだあれ?」「やべぇ強化人間だ」等々のざわめきが聞こえる。
これ以上、ちょっかいを掛けてくる奴はいないようだ。
倒れた二人はスタッフが引き摺って行った。外に捨てるらしい。
そのまま死んだら、ACはドックで引き取るとか。
AC世界は厳しいなぁ。
後でウォルターに聞いた話だが、617と620はスペースコロニー出身らしい。
資源の限られたスペースコロニーなんかだと空気や水も消費者は少ない方が良い。治安を悪くするだけの貧民の孤児などプログラムには不要。
そんな倫理が死んでる地域の児童売春施設から更に人倫がゴミみたいな研究施設に厄介払いとして売り飛ばされた連番ロリっ子強化人間シリーズが先輩方らしい。
あれ?俺は?
五体満足な成人男性なので、借金で身を持ち崩したとかお人よし過ぎてハメられて売り飛ばされたとかじゃないかとの事。
覚えてないから、改造前の人生なんてどうでも良いけどね!
そう言ったら、ウォルターが曇った。
ごめん、ごす。今のは狙ったわけじゃ…。
新しいLOADER 4と今まで使ってきたNIGHTFALLを新しく購入した輸送ヘリに乗せ、LOADER 1とLOADER 2を今まで使ってきた輸送ヘリに乗せる。
結構、一杯だな。
4脚とかタンクだったら、入らなかったかも。
ゲームで常に単機だったのは、これも理由なのかな。
積み込み作業を行っていると、オールマインドもといケイト・マークソンが、617と620をアリーナとインテグレーション・プログラムに招待していた。
ライセンス発行したばかりのランク圏外なんだが、なんだかんだと理由をつけてデータを取ろうとしている。
パーツも貰えるし、訓練にもなるから良いかな。
ステッカー?ステッカーかぁ。AMステッカーはなぁ。
あーデータ、データどうしようかぁ。
そうだ!
機体制御に食わせるデータ。良い宛があるじゃないか。
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と言うわけで、やってきましたヴェスパー基地。
フロイトにメールも貰っていたし、申し込んだら即OKでした。
ウォルターと617、620は先にグリッド086へ向かい、俺はエアと二人で輸送ヘリでやってきた。
「ようこそお越し下さいました。この度は我がヴェスパー部隊第一隊長の申し出を受けて頂き、誠にありがとうございます。直接の対面は初めてですので、改めて。アーキバスグループ傭兵起用担当ペイターと申します」
出迎えてくれたのはV.VIIIペイターだった。
仕事の出来る好青年といった感じだが、これであれなのかと思うとシュールな感じだ。
「同じくアーキバスグループのヴェスパー部隊V.Vホーキンスだ。アリーナ1位となった独立傭兵レイヴンに会えて光栄だ」
ペイターが余計な事を言わないようについてきたのだろうか。
AC6はゲームで1ステージしか出番がないのに存在のある人たちが多かった。
修正してやる!とか言ってくれないだろうか。
「こちらこそ知己を得て光栄だ。登録番号 Rb23、識別名レイヴンだ。こちらは俺のオペレーターのエア」
ウォルターの真似をして挨拶し、握手。続けて待っていたエアを紹介する。
「レイヴンのオペレーター、エアです」
エアも真似して、ペイターとホーキンスと握手する。
「ハウンズのナンバー入りジャケットを着ているので、こちらのお嬢さんがレイヴンかと思いました。ですが、サイズがあっていませんね。こちらのジャケットは貴方の?」
「気に入ったようで、とられてしまいました」
ペイターにそう答えていると、ホーキンスはすかさずエアに寒くないかと問うていた。
流石、人間が出来てる。
「空調が効きすぎていましたか?」
「ありがとうございます。寒くはないので大丈夫ですよ」
社会人だな。
「では、ペイター君。二人をシミュレーションルームまで案内しましょう」
「はっ、了解しました。第五隊長殿。それではご案内します。どうぞこちらへ」
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ヴェスパー部隊はナンバー付きが部隊長なだけあって基地も大きい。
ルビコン3に降りてきている規模だけでも、レッドガンより遥かに多いだろう。
この時点でベイラムの戦略的敗北が決まっているような気がする。
シミュレーションルームも広く明るく清潔だ。
大豊娘娘のグラビアポスターがベタベタ貼り付けられたレッドガンとは違う。
俺はあっちの方が好きだな。
「来たか!ウォルターの猟犬。待ちかねたぞ。さぁやろうか」
精悍な顔に子供のような表情を浮かべてきたのが、フロイトだ。
迷わず俺に声を掛けるとシミュレータの座席を示し、さっさと自分はシミュレータへ潜り込む。
「第一隊長殿はまるで躾のなってない犬のようですね。待ての出来ない駄犬で申し訳ございません」
「ペイター君は本当にズバズバ言うね。スネイルの前では言ってはダメだぞ。本当に怒るからね」
気にしてないと手を振って、俺もフロイトに指定された座席へ入る。
手早く自分の機体構成を入力し対戦準備を整える。
「お前、アセンが違うな。レーザードローンはどうした?」
「シミュレータだからね。仕込みが足りない」
目ざとく機体構成の違いに気が付いたフロイトが声を掛けてくる。
「それは残念だ」
「なに…些細な事さ。気にならないくらい楽しませてやるよ」
「それは楽しみだ。ウォルターの猟犬」
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フロイトと対戦は多岐に渡った。
自分の機体構成、617、620の機体構成。ベイラム系で固めた機体構成で対戦。アーキバス系で固めた機体構成。様々な武器、フィールドでの対戦。
対戦データを617、620の機体制御に活かす。ベイラム系で固めた機体構成の対戦はデータをレッドガンに売るつもり。
幾らでも付き合ってくれるから都合が良い。
フロイトも途中から色々な武装を試している。
機体構成を弄ると習熟に手間取るが、武装は平気らしい。
それでも逆脚、4脚、タンクと一通り試して、2脚に戻ってきたと言うのは流石。
まーフロイトなら、未強化人間状態でも機体構成チェンジ直後から乗りこなしても違和感ない。
そんで機体武装構成について、あーでもないこーでもないと意見を交わしながらシミュレーションを続ける。
一方、エアはせっせとハッキングに勤しんでいた。
色々アセンを試していたら、ジェネレータ談義になったりもした。
「しかし、シュナイダーのフレームにVP-20Sは使い難くない?」
「そうだな。ラスティも使っていないな…そうか、なら俺も使って良いな」
「やめてやれよ。スネイルが泣くよ」
ロックスミスのジェネレータはアーキバス製品のVE-20A。軽量だけどEN武器適性が高い。しかし、フロイトは実弾ばっかり使ってる。
「いや、楽しいな。ウォルターの猟犬…いや、レイヴン。お前がこんなに(アセンを)話せる奴だとは思わなかった。今日は泊まって行け。夜通し語り合おうじゃないか」
「それは大丈夫なのか?」
「大丈夫だ。スネイルが何とかする」
それは大丈夫じゃない奴!
「ペイター!スネイルにレイヴンを泊めると伝えてきてくれ」
「はっ!第一隊長殿、部屋はどう致しましょう」
客人として泊めるなら、それなりにしないとアーキバスの沽券に関わるよね。
多分、お客のグレードに合わせて松竹梅とか用意してあるんだろうな。
「俺の部屋に泊める」
おいおい。学生かよ。
ペイターくんどころかホーキンスさんまで、こいつ正気か?って表情してる。
「…オペレーターの方は?」
「適当に用意しろ」
念のためと言った風に尋ねたペイターにある意味予想通りの答え。
隣にいたホーキンスが流石に咎めるように名を呼ぶが届く事はない。
「…フロイト」
「私はレイヴンと一緒が良いです」
「…こう仰っていますが」
こちらも空気読まないエアの声。
だが、流石フロイトは長らくアリーナ最強だった事はあった。
「なら、二人とも俺の部屋に泊まれば良い」
「はぁ」
ペイターの心底呆れた表情と声。
それ上司に見せちゃダメな奴だよね。
「あーうん。構わないよ」
別に豪華な部屋に泊まりたいわけでもないので、了承しておいた。
俺がこう言わないと今度は「泊まっていけ」の連呼になるだけだし。
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フロイトはスネイルに呼ばれて離席している。怒られているのだろう。
ヴェスパーの食堂はアーキバスの社章が入ったエプロンをした女性スタッフにコック帽をかぶったシェフまでいた。
メニューはビュッフェスタイル。お洒落だ。
これだけ美味しそうな食事があるのに、どうしてオキーフさんは味気ないレーション発言をしたのだろう。
ストレスに悩みが多そうだし、これで食事が美味しくないとは病んでたのだろう。
最後の言葉は「ようやく…まともに眠れるか…」だったしな。
食事の時間になって手が空いたのか、我らが戦友ラスティも来てくれた。
シミュレーションルームでは会えなかったから、今回は機会がなかったかと思ったが良かった。
「戦友、こうして会うのは初めてだな。V.IVラスティだ」
「独立傭兵レイヴンだ。こっちはオペレーターのエア」
同じテーブルについて食事を始める。
うーん、マナーなんて知らんぞ。
ナイフにフォークにスプーン!
箸だ!箸をくれ!
すげぇな。サラダあるぞ。
食べながら、ゆっくりと会話を楽しむ。
フロイトとだと、お互い早口でアセンを語り合ってしまうが、ラスティとだと不思議と落ち着いて話せる。
このイケメンめ。
「戦友はベイラムの依頼でアーレア海を越えたようだが、差し支えなければ教えて欲しい。ベイラムに先行してどうやって?」
中央氷原でフロイトと遭遇しているし、ベイラムの依頼を受けたのもバレているだろう。
依頼内容は兎も角、どうやって海を越えたかは喋っても良いだろう。
「物資輸送用のカーゴランチャーで飛んだのさ」
「カーゴランチャー?あれは物資輸送用の筈だ」
不思議そうにするラスティに続ける。
「パイロットはACの手荷物扱いさ。…うちの優秀なオペレーターの提案でね」
「レイヴン。それはもう良いではないですか」
困ったようなエアに笑いかける。
「エアでも失念する事があると気づきを得たよ」
「もう怒りますよ、レイヴン」
もう、と一寸ムスッとしたエアが可愛い。
そんな俺たちにラスティは話題を変えてくる。
「互いを想い合っているように見える。二人の関係を聞いても?」
「妻です」
即答のエア。
フンスと胸元に手を当てて、得意げだ。
「エ、エア?」
「ほう。やるな、戦友」
興味を引かれたように食いつくラスティ。
「子供も授かりました」
ちょッまッ!おわぁぁぁぁ!
「写真を見ますか?」
「是非とも」
「…これは?」
エアの差し出した端末に表示されていたのは、何かの制御ユニットを抱えた俺と満面の笑みを浮かべるエアの姿。
普通は意味わかんないよね。
「私とレイヴンの情報から組み上げたAIです。私は全身義体で遺伝情報を持たないですが、私とレイヴンの情報から組み上げたAIは私達の子供と言っても過言ではありません」
「なるほど、その通りだ」
大人な対応だ。
ありがとう、ラスティ。
「ところで俺からも質問を良いだろうか」
「なんだい、戦友」
いろんな集団幻覚がリアルになっている世界だが、これはどうなのだろうと思っていた。
ごくり、と唾を飲み込む。
「…メーテルリンク先生が「フロイト×スネイル」もしくは「スネイル×フロイト」の同人誌を執筆していると聞いたのだが…」
「「フロイト×スネイル」もしくは「スネイル×フロイト」…?すまない、戦友。それは聞いた事がない」
あ、向こうで大きなバイザーをつけたパイロットスーツの女性が吹いてる。
メーテルリンクか?
「ああ、ちょうどメーテルリンクが。…聞いてみようか、戦友」
「いや、大丈夫だ。ありがとう」
その後、フロイトが戻ってきて朝までフロイトの部屋で語り明かした。
強化人間の俺は一徹くらい平気だが、フロイトは通常業務どうするのかと思ったら、俺が帰ったら寝るそうだ。
自由人過ぎる。
/*/
ACの機体構成について、夜通し語りたいから独立傭兵を自室に泊める?貴方は社会人なのですよ?ヴェスパーの主席隊長と言う自覚がないのですか?
俺は広告塔なのだろう?広告塔の役目は果たす。社会人としての責務は、スネイル…お前が務めてくれる。お前がいるから、俺が好きにやれるんだ。
…はぁ。今回のシミュレーションデータを寄越しなさい。それとおかしな情は持たないように。
戦場で合ったら喜んで殺すさ。