AC6の輸送ヘリって時速何キロくらいなんだろう。
どうしてこうなった。どうしてこうなった。
引き続きグリッド086。
RaDの技術者にお願いする事が結構あるのだ。
まずは新しく買った大型輸送ヘリのジェネレータ交換。
元々ウォルターの使っていた大型輸送ヘリ。ゲームに出てくる奴は、ジェネレータをコーラルジェネレータ2機に交換していたそうだ。
これを新しいヘリも同じ仕様にする
2機のコーラルジェネレータを交互に復元させる事で無補給での超長距離移動を可能とする。
ゲームでアーレア海をちょくちょく往復していたが、からくりはこう言う事だった。
地図の縮尺的にアーレア海は太平洋と同じくらい。多分横断すると8800kmくらいある筈なので、輸送ヘリの巡行速度を300km/hとすると30時間くらいで横断できる。
ちなみにカーゴランチャーだとマッハ15位まで加速できるようなので数十分~1時間程度だ。速い。
勿論、素人間は死ぬ。
一応、エアにコーラルジェネレータ使用のお伺いを立てたが。
「最初は驚きましたが今更です。私のような明確な自我のあるコーラルが焼かれているのでもないですし…」
EN制御されたコーラル群知能の声はピクミンのようだと言っていた。
そして、今まで使ってきたコーラルジェネレータ搭載のNIGHTFALLをLOADER 4へ。新しく組んだLOADER 4をNIGHTFALLに識別名を入れ替える。
LOADER 4の方はエンキドゥを組み込んでウォルターの乗るヘリの直掩機にする。
勿論、一悶着あった。
「俺に護衛は不要だ」
当然、ウォルターは言う。
では、620お姉ちゃん、どうぞ。
「生き方はわからないけれど、死に方はわかる。ハンドラーの為に私達は死ぬ」
ほら曇った。
ウォルターに何かあったら、617と620が無事じゃすまないのです。
これから更にハウンズの名前を売ると、ハンドラーを狙ってくるのもいるだろうから護衛は絶対に必要。
「だが、大型輸送ヘリに3機は乗らない」
その為のコーラルジェネレータとAIですよ。
24時間365日、不眠不休で護衛を続ける無人機。
補給と整備の時だけドック入りすれば良い。
でも、そうすると武装はダブル重ショットガンじゃなくて、ダブル・ランセツ-RFの方が良いね。
BAWSのバーストライフル。とても丈夫で使いやすいのに、解放戦線で意外と使ってない。
ドルマヤン、フラットウェルくらい。何故かヴェスパーのラスティが使ってる。
あ、そうだ。
パルスブレードだけど、ヒートシンク大きくして冷却性能すこし上げられませんか?
冷却時間が1秒縮まると嬉しいのですが。
流石、RaD!
相談して良かった!褒めても何も出ない?俺の財布から費用は出ます!
それにしても近接武器使う人少ないのは何故?
「強化人間でもなけりゃ、至近距離での切り返しが連続する白兵戦はGがきつくてやってられないのさ」
なるほど納得。
ところで、ウォルターに相談です。
「どうした、621」
エアに頼んで星外の複数の証券会社に口座を作って貰って、口座の管理AIに財テクをさせてるんですが、ベイラムとアーキバスの株を買い進めたいです。
資金を増やして、上手くやる方法はありませんか。
「見せてみろ…なんだ、この資産は」
あれ?ウォルターと稼いだ金だよね。
「お前とこれほど…仕事をした、か?…したような…気もする」
俺が憑依してきた世界改竄の影響かな?黙っとこ。
「複数に分散するのは悪くない。ベイラムとアーキバスの株を買いたいと言うことだが、どの程度だ?」
大株主になって経営に嘴突っ込めるくらいが良いです。
「エア、管理AIをどの程度まで掌握できる?」
「回線が安定するなら、完全掌握できます」
「それならばやりようはある…こことここ、それとこれだな。このファンドの管理AIを掌握して、資産を管理させろ。買いと売りの条件は…そうだな。こんなものか…それと、このあたりを買って…」
段々難しい話になって、理解らなくなってきました。
エアはふんふん聞いてます。
「ウォルターはハウンズの活動資金を稼ぐのに金融商品を扱ったりしていたからね。この手のやり口には詳しいのさ」
話についていけなくなった俺にカーラが話しかけてくる。
ウォルターってなんでも出来るよね。
「それだけ苦労してきたのさ。…星外への回線なら用意してやるよ!必要になったら言いな」
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エアとウォルターの話も区切りがついたところで、俺の本題を切り出す。
話始める前に姿勢を正した俺に何を言い出すのかと、カーラとウォルターも表情を引き締めた。
「…本題なんだけど、オーバーシアーにお願い。コーラルを焼かない方法を探したいです」
「言い出すとは思っていたよ。あたしらの事を知っているのも、ハッキングかい」
ウォルターを手で制して、カーラが代表して口を開いた。
「そんなところ。アイビスの火以降、ルビコンは寒冷化が進み不毛の大地となった。これは大気中に漂うアイビスの火の余燼である不活性コーラルの所為?」
「そうだね。このままでは全球凍結になって、ルビコンは人の住めない廃星になる。それならそれで構わない。コーラルはルビコンに封じられ、忘れ去られる」
憑依したとは言えないので、ハッキングで知ったとボカシて答える。
そして、気になっていたルビコン3の寒冷化は全球凍結まで進むのか。
ラスティの事もある。ハッピーエンドは難しいようだ。
「ルビコンでのコーラル増殖だけじゃない。企業が星外にコーラルを持ち出せば、どこかで必ずコーラルの爆発的な増殖が起こり、アイビスの火以上の災害が起こる。そうなる前にコーラルを焼く必要がある」
そう言い切ったカーラの表情は、真剣で…真面目で、コーラルを焼く。無関係の人々も巻き込む。それを避ける方法を、破綻を避ける方法を、半世紀に渡って考え続けてきた重みがあった。
「コーラルの危険性を訴えれば…」
だから…俺の考えつく方法なんかで、止まらない。止まれない。
「それで止まるなら技研も止まっていたさ。それが可能であればどんな技術でも実現せずにはいられない、人間の本能みたいなもんさ」
強化人間を始めとしたコーラル技術の開発と発展を見てきた重さ。
けれど…。
「コーラルリリース…リリースが成されれば、既存の財産は何の意味も無くなる。上層部、資産家には何よりも恐ろしい筈」
物質世界からの解放。
逆に言えば、それは支配階級にとっては全てを否定される究極の革命。
あらゆる贅沢が意味を成さなくなるのだ。
「ふむ…続けな」
根が研究者であるカーラにとっては興味深い視点だったようだ。
まだ話は聞いて貰える。
「コーラルは地下資源でもある。ルビコンを粉々にしない限り根絶は不可能だ」
だから、半世紀かけて回復してきた。
言葉を続ける。
「政府と人権屋と自然保護屋とマスゴミとネットなんかにコーラルの情報を開示して、「コーラルに人権を!」「封鎖地域に取り残された人々に救いの手を!」って世論を動かすのは…」
「同じ事さ。企業がコーラルを求めてルビコンに進駐してきている段階では、圧力に負ける」
理想だけで世界は動かない。
カーラの言葉の意味。痛いほど知っている。
知ってる。それは知っている。
けど、でも、憑依転生し、類い稀な力を持った今は…
…諦めたくない。
憧れた、恋焦がれた、あの主人公たちのように…諦めたくない。
全身全霊で叫びたい。絶対に諦めないと。
「その上でコーラルの有用性を唱えて、ルビコンに進駐している勢力を巻き込んで合同で新企業を立ち上げて、コーラル製品を独占販売して、争うよりも利益があると見せていく。アーキバスにいるスネイルと敵対する幹部を引き込んで、スネイルを新企業に追い出すとかなら協力も引き出しやすい筈だ」
「その為にベイラムとアーキバスの株を買いたいと言い出したのか」
ウォルターの問いに頷く。
「アイビスの火から半世紀。ノーメンテで動き続けてるだろう技研都市のヘリアンサスのジェネレータとか売れると思うんだ」
「売れはするだろうが…まて、何故それを知っている」
「元々、人間が地下から組み上げなければコーラルは無限増殖しなかったわけだし、それで時間を稼いでコーラル増殖の抑制とか研究が進めば破綻を避けられる筈」
カーラとウォルターの眼を順に見つめて言葉を紡ぐ。
それに対して、カーラは呆れたように肩を竦めた。
「そうだねぇ。あんたの言ったこと全部積み上げて一度に押し流せば…あるいは、なんとかなるかもよ…でも、脆い希望だよ。工業製品は売り出した瞬間にリバースエンジニアリングされるしね」
「コーラルによる危機を未然に防ぐ…オーバーシアーの命題にそぐわないかな」
少し疲れたように笑い。はにかんで笑う。
「ビジター。やっぱり、あんたは笑える奴だ。あたしらは半世紀、破滅を避ける為…燃え残った全てを焼き尽くす事だけを考えてきたってのにさ。…若さってのは、本当に向う見ずだね」
そう言って、カーラは笑った。
笑って肩を竦めた。
それはカーラの胸の奥にあった…燃え殻。それに火が点いたような笑いだった。
「それで、あたしたちがNoと言ったら、ビジターはどうするんだい?」
「何も変わらない。
戦うよ。
世界を変えたいと願ったんだ。
エアも、ウォルターも、カーラも、チャティも、617も、620も、もう誰も死なせない。死なないハッピーエンドが俺は欲しい。
だから、ダメでも戦う。一人でも、何度でも、諦めなければ終わりは始まりへ変わる。そう信じて…戦うよ。
俺は暴力担当だから…やり方が一寸、泥臭くなるだけだ」
俺に出来るのは戦う事だから。
ルビコンに進駐するアーキバス、ベイラムを皆殺しにして、次に来るのも全部殺して、外の世界がコーラルを諦めるまで殺し続ける。
そして、誰か手を貸してくれる人を探し続ける。
選ぶ事が出来るから、俺はそれを選ぶ。
そして、笑うのさ。
エアが俺の傍らに立った。
そして、俺の手を取って言ってくれる。
「私は…あなたの選ぶ未来を見てみたい。何が待っていても、私があなたをサポートします」
ありがとう、エア。
ウォルターがゆっくりと口を開いた。
掠れた声で沁み沁みと重く言った。
「621…そうか、お前にも守りたいものが…カーラ、悪いが…俺は、オーバーシアーを抜ける」
そう言った。
人生の全てとも言えるオーバーシアーを抜ける。
ウォルターにとって、どれほど重い決断だろう。
自分の背負った使命に、積み上げた犠牲を忘れない人。
だからこそ、かもしれない。
やれやれ、とカーラが肩を竦めた。
「…ウォルター、あんたせっかち過ぎるよ。いいさ、ビジター。あんたの若さに…あたしも賭けよう」
ありがとう。
「ふん、これから忙しくなるよ。星外でも活動が必要になるんだ」
俺の暴力、エアのハッキング、カーラの技術に、ウォルターの経験があれば、なんだって出来るさ。
/*/
621、なんでシリアスになってるの?
ごすとお姉ちゃん’sでわちゃわちゃする予定だったのに!?
作者は知恵熱が出ました。