どうして…どうして…
2023.10.31.20.25
宇宙船が小さく感じたので、縦横5倍増量。
「ところで、封鎖機構に不正アクセスしたって話だが、どこまで潜れたんだい?」
「強制執行システムまでは触れました」
カーラの問いにエアが答える。
強制執行システムの本体はウォッチポイント・アルファの地下。
レーザー障壁を展開する大深度地下施設の中にそれはある。
「おいおい…それは、あたしらも何処にあるか解らなかったやつだよ」
流石に衛星砲は出来なかった模様。
セキュリティが別個になってるようで、ゲーム中のようにエフェメラを使って直接アクセスしに行かねば制御が奪えないようだ。
「それで封鎖機構の保有戦力に封印状態のIA-02…通称「アイスワーム」と言うものがあったのですが…」
「あれが残ってるのかい!?」
カーラの驚愕。
あんな全長1kmもあるトンデモ兵器の製造よく許可が下りたよねぇ。
「ええ、それでこれは動力にコーラルを使っています。…今なら、私、動かせますよ。これ」
「本当か!?…いや、今動かすのは得策じゃない。今は良いよ」
カーラは驚愕した後、一つ息を吸って冷静さを取り戻したようだった。
流石に今動かしたら、大変な騒ぎになりそう。
主に封鎖機構がね。
「封鎖機構が動かした時に割り込んで、優先命令で暴走した風に出来ない?」
と、俺から提案してみる。
「それは可能です」
「そいつは良い。封鎖機構が慌てる様子が目に浮かぶようだ」
カーラは手を叩いて喜ぶ。
その横からウォルターがエアに尋ねる。
「強制執行システムそのものを乗っ取る事は出来ないのか?」
「それは出来ませんでしたが、一部を誤魔化す程度は出来そうです」
ブランチのLOCステーション31襲撃によって、ルビコンの封鎖には大きな穴が開いている。
そこに強制執行システムへの欺瞞工作も可能となれば、ルビコンへの出入りの安全性は大きく高まる。
「それじゃ密輸入をしている独立商人に繋ぎを付けようかね」
「ウォルターの星外活動の為?」
「そうだ」
俺の問いにカーラは頷いた。
「護衛は617と620を付けよう。…でも、もう1枚欲しい」
「617と620は警備向きじゃないからね」
それに俺と違って情緒が壊れたままの二人はウォルターから引き離すと不安定になる可能性が高い。
「621、何か当てがあるのか?」
「うん。先ずはレッドガンの…イグアスのところに行こう」
まさか、あの人を頼る事になるとは思わなかった。
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レッドガン食堂の一角を借りて、その人物との面会が叶った。
その人物と繋ぎを取ってくれたイグアスと軽口を叩き合う。
「なんだって、ジジィに長期の仕事を依頼したいとか…誰か殺したい奴でもいるのかよ」
「それなら自分で(ACで)殺しにいくって」
「まぁそうだな」
その眼前でウォルターとその人物…裏社会のベテラン…コールドコールが席について向き合っている。
「イグアス坊やに呼ばれて来てみれば、あの悪名高いハンドラー・ウォルターとはな」
コールドコールがこちらを向いて、ふむふむなるほどと独り言ちる。
「なるほどな。流石、ウォルターの猟犬と言う事か。イグアス坊やでは、まだまだ相手になるまい」
「ちッ」
ナチュラルに煽られるイグアス坊や。
「最近のイグアスは結構、強くなってるよ」
「手前はそうやって上から目線で…」
「ほう、それは楽しみだ」
楽しみなんだ。
やっぱり、この人も頭・戦闘民族か。
ウォルターから長期護衛依頼の話を受けて、コールドコールは一口お茶を飲む。
プーアル茶?なんでこんな高級品あんだよ。
「…なるほどな。それで長期護衛依頼と言うわけか。なるほど…良かろう」
あまり検討した様子もなく、コールドコールは依頼を受けた。
「受けるのかよ、ジジィ」
「覚えて置け、イグアス。これが強者の匂い…勝ち、生き残るモノの匂いだ。…生き残るには、こういう匂いの奴とは戦わぬ事よ」
殺伐とした世界で恐らく半世紀以上、生き残ってきた人の嗅覚に引っ掛かるものがあったようだ。
勝機があると思うとしよう。
勝って、生き残る為に、万難を排して挑もうか。
「イグアス、年長者の言葉は真摯に聞いた方が良いよ。この世界で老い耄れになれるってのは、それだけ強かに生き残ってきた証明なんだから」
「本当かよ」
「イグアスは周囲に恵まれてるから、わかんないだけだよ」
こいつは…。
俺もウォルターって、ごすに恵まれてるけれど、それ以上に周囲に恵まれてるのに…もちっと自覚して、大事にせんかい。
「コールドコールさんも、ミシガン総長も、ナイル参謀もとんでもなく強い人だよ」
「手前に言われてもな」
「よし!それじゃ解放戦線のサム・ドルマヤンとやってこい!半世紀以上前の(多分、設計の)機体でアリーナ上位にいる可笑しい人だぞ」
「…あれ、そんな年代物だったのかよ」
BAWSはなんだかんだいって、ジェネレータやらは開発してるけれど、MTに力入れてるようだし。AC開発はエルカノの方が今は積極的に見える。
多分、それ以外の部分…発電機とかのインフラに力を入れているんだろう。
BAWSやエルカノには是非とも近接武器を開発して欲しいところだ。
「そうだよ!それで最新機種に乗ってる総長とかフロイトと並ぶ評価を受けてんだよ。控えめに言ってYABAい」
「やべぇな」
ほんとにわかってんのかぁ?
ジト目でイグアスを見るが、恐らく分かってないだろう。
勿体ない。
その後、ウォルターから本社とのやり取りが改竄されていると聞かされていたミシガンは、ナイルを本社へ向かわせる事にする。
ウォルターたちにナイル参謀も同行する事となった。
RaDから運び屋(独立商人)を紹介して貰って、ウォルター、617,620、コールドコール、ナイルは星外へ出発する事となった。
俺の資産のほとんどはこれからの工作の為、ウォルターに預けた。
ACでの戦いなら引けを取らないつもりだが、盤外での政治的な戦いになると俺では力不足だ。
ウォルターたちがルビコンでの集積コーラル到達を俺に賭けるように、俺もコーラルとの共生の可能性をウォルターに賭ける。
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南べリウス地方。
グリット135の南西方向に位置する平原に俺たちはいた。
エアによる強制執行システムへの妨害に合わせて。RaDが使っている独立商人の船が降下してくるのだ。
物資を得ようと近づいてくるドーザーや解放戦線、妨害に来るであろうアーキバス勢力から船を守るためにレッドガンからも護衛が出ている。
小型の船で細々と降りてくるのなら、なんとでもなるらしいが、今回のようにACを何機も詰める大型船で降下するのは危険すぎて、余り例がないそうだ。
ステーション襲撃事件以降、衛星砲のカバーに穴が空いてる。
そのお陰で僻地に降下するのは比較的安全なのだと言う。
企業等の補給物資は僻地に降下もしくは投下されるので、回収が色々と大変らしい。
俺が撃墜されたのは、降下後に迅速に活動する為に活動の活発なところに降下する軌道だったから。
今回は本来なら衛星砲の狙撃圏内の場所に降下する。
発覚すれば、封鎖機構は危機感を覚えるだろう。
僻地への降下で良いと思うのだが、ウォルターたちには何か考えがあるのだろう。
大気圏外から減速を開始した船がズームしたカメラに捉えられる。
あと10分くらいで着地だろうか。
大気圏内での機動は考慮されていないのだろう。
降下してくる宇宙船は、ずんぐりとした長球型の船殻は高さは500mを超え、横幅1500mを超えている。
このタイプは積載能力も高く、民間でも多く利用されているタイプらしい。
恒星間物流を支えるバックボーンともなっているが、民間用としてはかなりの武装も可能で様々な勢力が利用していると言う。
見慣れたメガストラクチャーと比べると小さなものだが、一度に一万トン近くを運搬できる宇宙船が恒星間を行き来してるとは未来だなぁと思う。
そうだよね。
恒星間入植船ザイレムなんて、全長20kmだ。
このくらいの宇宙船なんて小型に違いない。
だって、ルビコプターの全高約112mだしね。
宇宙空間戦闘用のマシンとかもあるのかなぁ。
G2ナイル参謀の出発とあって、レッドガンからはG1ミシガン総長、G4ヴォルタ、G5イグアスが出ている。その他、コンテナ引き摺ったMT部隊だ。
G3五花海とG6レッドは留守番。
やっぱり、五花海は信頼されてるよ、ね。
RaDからはカーラとチャティ、荷物運びのMT部隊。
折角なので物資を大量に買い付けたのだ。
これだけ動いていれば、他の勢力にあいつら何かするつもりだってバレる。
着陸予定地の周囲に陣地つくっている間に物見高い連中が遠巻きに眺めていたし。
「送迎バスも降りてくる。楽しい遠足の始まりだ!役立たず共!無賃乗車共への歓迎の準備は出来ているか!」
次々と隊員たちの威勢の良い返答が上がる。
「今回はイグアスも出るのか」
「最近、負け越してるイグアスだろ」
「オールバニー!イグアスは貴様らの100倍は強い。G13はその20倍も強い。貴様らの何倍か計算してみろ!」
ミシガン総長の大声を聞きながら、俺はイグアスに通信を繋げる。
「傭兵の本懐とはナメられたら殺す!イグアス一寸とっ突いて来い!」
「手前、何言ってやがる。死ぬだろ」
だからだろ。
ガリア多重ダムでやったろ。
「だから殺すって言ってるだろ。ナメた奴は殺って良いんだよ!」
「俺は野良犬じゃねぇ!」
「なんで身内に甘いんだ!」
「手前の頭が可笑しいんだよ!」
「G5!G13!お喋りに余念が無いようだな。ついでに仲良く刺繍でもして、その舌を縫い付けておけ!」
ミシガン総長に止められたのなら、まー今回はこれ以上は良いかな。
次も言ってたら、シめるけど。
船が降下し、ハッチが開くと、補給物資に群がるように、先ずドーザー達が殺到してきた。
AC重なってモヒカンが幻視できる。
ドーザーの主力っぽいBAWSの4脚MTだが、整備状況は余り良くないようだ。なんか異音がする。
頭に乗っている大砲をもたもた展開する前にヴォルタに砲撃され、その爆風に紛れてアサルトブーストで接近するイグアス。
アサルトブーストの慣性で滑りながら、左手のパイルバンカーを展開チャージ。
炸薬の炸裂と共に長大な槍がBAWS4脚MTを貫いた。
「1つ!」
血とオイルが混ざった名状し難い液体が塗れた槍を引き抜き、すぐさまブーストを吹かして飛び立つイグアス。
以前と違って機動兵器らしい戦いになってきた。
ミサイルと軽リニアを撃ちながらアサルトブーストで飛び回る。
「2つ!」
おお、滑りながらチャージパイルでMT串刺しにした。
立派なパイル職人になって…ホロリ。
AB出力の高いブースターBUERZEL/21Dを使わせてみたいな。
シュナイダー製品だから、レッドガンで取り扱ってないんだよね。
イグアスの単独火力が上がったから、G4G5コンビの殲滅速度が半端ない。
レッドガンのMT部隊が接敵する前に次々と敵を粉砕していく。
俺も負けてられない。
今日は見通しの良い平原なので重ショは置いてきた。BAWSの名銃バーストライフル・ランセツRFをダブルで。
重ショットガンと射程が違うから、開けた場所だと、ランセツRFかバズーカが良い。
ん?警告音。
なんか狙われてる。
クィックブーストで回避行動に入るが…避けきれない!?
視界が紫のプラズマ爆発に包まれる。
これはプラズマキャノンのチャージ砲撃!?
「死ね!カラス!」
って、メーテルリンク!?
アーキバス雇用の傭兵に紛れてた!
『ACインフェクション。識別名メーテルリンクです』
EN適性の高いジェネレータと合わさって、両手パルスガンと肩のプラズマキャノンは侮れない。
シールドを展開しながら、インファイトで頭上と飛び越えトップアタック。こちらの死角からパルスを浴びせかけてくる。
流石はヴェスパー。戦闘が上手い。
「先生!新刊は冬ですか!」
「それ以上、口を開くなぁぁぁッ!」
どうしよう…撃墜するのは簡単だけど、死なすには惜しい。
良し。
FCS解除マニュアルエイム。機体制御、完全神経接続・人機一体。
アサルトアーマー発動の予兆で距離を取らせ、ラスティを真似てアサルトアーマーの閃光に紛れて、アサルトブーストで直上へ飛ぶ。
こっちを見失ったインフェクションの右のパルスガンをランセツRFの連射を叩き込んで破壊。
降下もブーストで加速。
加速度を加えたパルスブレードで左腕を破壊!
直後に機体を反転!ズン!と地面に機体の脚が地面にめり込んだ。
流石は2C-3000 WRECKER土建向け脚パーツ。極めて高いと言われる剛性で、こんな無茶してもなんの異常もないぜ。
「両腕が破壊されただと…クッ、任務安定遂行が不可能と判断。撤退します!」
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ドーザーやアーキバス雇用の傭兵を蹴散らし、着陸と荷下ろし積込みは無事に終わった。
手に入らないなら、いっそと船を攻撃しようとする馬鹿もいる事にはいたが、少数であった事もあり集中砲火を喰らって、逆にこの世からログアウトしていった。
ナイル参謀はベイラム本社への手土産として、以前、俺が持ち込んだバルテウス(AIユニット無し)を持っていくそうだ。
AIユニット以外、あまり壊れてなくて良いサンプルだと褒められた。
それなら、バルテウスの超弾速のグレネード。ベイラムで製品化してくれないかなぁ。
独立商人から普段は入手できない物資を購入できて、レッドガンもRaDもホクホクだ。
個人購入も許可されていたから、レッドガンの士気は上がるだろう。
エロ系の物品の需要が高かったようだけど…ハッ!?
ここで仕入れて、オールマインドのショップで売り出せば独立傭兵相手に一儲け出来たのでは!?
失敗したなぁ。
次はやってみよう。
割と安全に降下できたので、次回も欺瞞工作してくれるなら呼べば来てくれるとの事。
ただ、余り長時間滞在するとSGのヘリコプターが見回りにくるだろうから、手早く積み下ろしを終えると慌ただしく離陸して帰っていった。
ごす、617お姉さん、620お姉ちゃん。そして、コールドコール。
星外活動よろしくお願いします。
( ー`дー´)キリッ
と、空に向けて敬礼してたら、イグアスに馬鹿にされたので蹴飛ばしてやった。
イグアス!手前!レッドガンの隊員に馬鹿にされた時は向けなかったのに、俺にはパイルバンカー向けんのか!?
イグアスは主人公。
はっきしわかんだね。
お父さんは出張です。