気が付けばルビコン3   作:ぶーく・ぶくぶく

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お世話になりました。

 

 

アーキバス再教育センター襲撃作戦。

解放戦線の幹部2名が出撃だ!

 

清廉で士気も高く見敵必殺を誓う烈士だ!インデックス・ダナムACバーンピカクス。

ACは揺りかご!みんなのアイドル!リトル・ツィイーACユエユー。

 

雇われた独立傭兵は1名の筈だが、何故か2名参加!

 

今では失われた古典芸能に造詣が深いインテリだ!六文銭ACシノビ。

活動再開後からランキング急上昇!今を時めく独立傭兵レイヴンAC試作AC。

 

…あのさ。

 

重要拠点の襲撃・捕虜救出作戦って難易度高いよね。

なんで!そこに!ナイトフォールじゃなくて、新兵向け試作ACで参加とかさせるんですか。

 

機体武装構成縛りのミッション。火力が…火力が足りない。

せめて、パルスブレードを…拡張機能をAAに…。

新兵向けの機体で、捕虜収容所襲撃して救出作戦とかの精鋭部隊がやる作戦して来いって、控えめに言って、死んで来いって話だよねー。

 

「断りましょう、レイヴン」

「どこも上の奴らは現場を知らないからねぇ」

 

 

「まぁ…なんとかするけど、この実戦データは新兵向けには役に立たないと思うよ」

 

 

頭の固い幹部たちへのPR用のプロモーション映像にでもするんだろうか。

 

 

/*/

 

 

再教育センターに捕らわれた解放戦線のAC乗りの救出作戦なので、輸送ヘリ(アーシル)も同行。

目的の場所は以前フロイトにお呼ばれした時、ヴェスパー基地からエアがデータを抜いているので問題ない。

俺たちが提供すると不味いので、フラットウェルがさる筋から提供された情報となっている。

 

ヘリには歩兵部隊(特殊作戦部隊)30名。

おお、この世界にきて歩兵初めて見たかも!

 

なんか隊長さんの長い三つ編みと眼帯は見たことあるようなデザインしてる…

 

帥父ドルマヤン救出の時もいたの?

アーシルに先行して捕虜収容所に潜入工作して、発煙筒焚いて、ポイント毎に捕虜救出してたんだ!

 

YABA!

 

精鋭部隊じゃん。

フラットウェルに雇われた傭兵部隊なんだ。

 

へー。隊長の名前がベルナドット?

へー。お宅の部隊「ワイルドギース」って言うんだ。

 

すげぇ、フラットウェルさん。当りを引いてる。

 

「なんだ?あんたAC乗りの癖に俺たちを軽くみねぇんだな」

 

ベルナドット隊長が意外そうに俺を見る。

この世界のAC乗り。しかもランカーとなれば、MT以下全部下に見てそうだしね。

 

「そりゃ壊したり、殺したりはACの方が良いだろうけど、こういう特殊作戦やら制圧占領とかは歩兵がいないと出来ないじゃん」

 

人は逃げるし、隠れるし、紛れるし、アイビスの火でだって全滅しなかった。

 

「それに言うじゃん。歩のない将棋は負け将棋。ポーンはチェスの魂って」

「はっは、あんた気に入ったぜ。暇と金が折り合えば、あんたの依頼も受けてやる」

 

視界にベルナドット隊長の長い三つ編みが踊る。

がっと肩を組まれて、快活に笑うベルナドット隊長からはタバコの匂いがした。

 

 

/*/

 

 

ヘリのハンガーにベルナドット隊長の珍妙なセクハラソングが響いている。

 

「エスキモーの(ピー)は冷凍(ピー)♪オレによーしおまえによーしみんなによーし♪」

「エスキモーの(ピー)は冷凍(ピー)♪オレによーしおまえによーしみんなによーし♪」

 

ああ!うちのエアになんてもの教えてやがる!

 

「レイヴン。男性はこのような物言いを喜ぶと聞いたのですが、違うのですか?」

 

違います!

と言うか、人によります。

 

「…そうだったのですか」

 

エアがしゅんとしてしまった。

やはり、やっちまうか!

 

「やめてくれ!そんなんでも、うちの隊長なんだ!」

「うるせぇ!はなせぇぇッ!」

「お前ら!手伝え!」「力強ぇぇ!」「強化人げぇぇん!」

 

ワイルドギースの面々とくんずほぐれつの取っ組み合いに、ゲラゲラ笑うベルナドット隊長。

そこに響く冷静なエアの声。

 

「作戦領域到達まで残り3分」

 

ピタっとバカ騒ぎを止めて、機体の最終確認やら装備の確認に戻る傭兵たち。

無線の向こう。後方を飛ぶヘリでバカ騒ぎを聞いていた解放戦線の面々は呆然としている。

この作戦の指揮官はベルナドット隊長だ。解放戦線の幹部とは言え、ダナムやツィイーには特殊作戦の指揮は取れない。

 

「作戦の確認だ。先ず電子戦で再教育センターの通信を遮断する。ACが降下する。警備のAC、MTを排除する。ヘリが着陸する。俺たちが突入し、捕虜を救出する、だ」

 

再教育センターの図面も入手済み。

各自の端末に転送されている。

 

「バーンピカクス、ユエユーは敷地外まで敵を引き付けて殲滅。シノビとテスト機は敷地内から出てこないMTなんかを排除。敷地内では要救助者のいる建物を潰さないようにしろ」

 

ちょっとツィイーが不満そうだったのが心配。

それはそれとして、エアに悪い事を教えたベルナドット隊長は後で〆ねばならない。

 

 

/*/

 

 

「ハッキング開始…通信回線、レーダー掌握しました。敵機および人員の位置を各員の端末へ表示」

 

輸送ヘリから作戦開始となるエアのハッキング報告が届く。

 

「さあ、レイヴン。仕事を始めましょう」

「強化人間C4-621戦闘モード起動」

 

エアとCOMの声を聞きながら、ヘリから機体を降ろす。

ヘリから降り立ったAC4機は再教育センターへ向けて進軍を開始した。

 

「…敵の反応が薄い?」

「エアがハッキングしてる。目視されるまでは発見されないよ」

 

ハッキングによる欺瞞を今一つ理解してないダナムを促して、再教育センターに接近する。

こちらを視認したのか、音で気が付いたのか、サーチライトが動き出した。

 

「シノビとテストで敵を敷地外に釣り出す。それまでバーンピカクスとユエユーはマップにある敵の監視塔、砲台をミサイルで潰してくれ」

 

六文銭と合わせて、アサルトブーストを全開にして再教育センターに突っ込んでいく。

背後から合わせて40発近いミサイルが一斉に発射され、監視塔や砲台に突き刺さる。

 

「トラトラトラ!」

 

オープンチャンネルで叫びながら、敷地内に飛び込む。着地せずに上空からMTや装甲車をランセツARのバースト射撃で破壊する。

 

「き、奇襲だと!?」「警備は何をしていた!?」

 

あちこちが爆発炎上する再教育センターから、悲鳴や怒号が無線越しにも機聞こえてくる。

 

「不義なる雇われよ。トラトラトラを知っているのか」

「あのさ、六文銭。不義なる雇われよって長いから名前呼びにしない?」

「断る!」

「判断が速い!」

 

六文銭とじゃれ合いながら、施設内の装甲車やMTを破壊していると、VP系のパーツで構成されたAC3機が出撃してくる。

更に1機。

ヴェスパーVIIIの乗機デュアルネイチャーだ。

 

量産型は全身VP系に右手レーザーライフル、左手レーザーダガー、両肩レーザーキャノン。

 

おそらくジェネレータは欠点がないさん(VP-20C)。

乗り手もゲームで名前を貰ってないとしても、ヴェスパー隊員ならば強化人間。

そうなれば、ブースターはALULA/21E。かなりの高機動機だ。

 

あーもう!

 

せめて、パルスブレードがあれば速攻で1機落として数の優位を作れるのに。

デュアルネイチャーの左手武器もぎ取れないかな。

 

「六文銭。手筈通り奴らを敷地外に引き摺りだすぞ!」

「承知!」

 

AC4機へ牽制攻撃をしつつ、後退していく。

AC4機を敷地外に引き出したら、アーシルの操縦する輸送ヘリが再教育センターに降下。

エアのハッキングで隔壁などを味方に付けたワイルドギースが突入して、捕虜になったAC乗りを救出する算段だ。

 

「やあ、ペイターくんじゃないか!」

「おや、あなたは独立傭兵レイヴン。先日は主席隊長殿が失礼致しました」

 

オープンチャンネルで呼びかけると、律儀にデュアルネイチャーから返事が返ってきた。

 

「おかげさまでV.VIIとなりました。以後お見知りおきを」

「ああ、なるほど。それはおめでとう」

 

スウィンバーンが再教育センター送りになって、8から7に昇格したのを知らせてくれる。

 

「輜重部門のサポートしながら、会計も担当するのは大変じゃないかい?」

「とても大変です。激務をプレゼントしてくれた貴方にお礼が出来るとは、とても嬉しいです」

 

「あ、怒ってる?」

「それもありますが、貴方のおかげでV.VIになれそうな雰囲気です。とても感謝しています」

「やっぱ怒ってんじゃん!」

 

ペイターくん、パルスブレードもキックも上手いんだよね。

 

微妙に噛み合っていない会話をしながら、パルスブレードを掻い潜り、六文銭の方に行った3機の内1機にランセツARを撃ち込む。

地面を蹴って飛び上がり、デュアルネイチャーの上を飛び越えながら、ランセツARを叩き込む。

 

ああ!パルスブレードがあれば、擦れ違いざまに一撃叩き込めたのに!

 

敷地外に出て、本格的なAC戦闘が始まった。

量産型3機は軽量の六文銭から落とす事にしたようだ。

 

数の優位が作れれば勝利は近づく。

その為に撃たれ弱い軽量機から狙うのは利に適っている。

 

ただ、易々と討たれるほど六文銭も易しくはない。

 

レーザーライフルは時々被弾するものの、脚が止まるレーザーキャノンは確実に回避している。

逆に脚を止めた機体がミサイルとバズーカの集中攻撃を受けてボロボロになっていく。

 

「機体が軽い…まるで羽が生えているようだ」

 

ツィイーの口から思わずと言った言葉が漏れる。

手脚が同じBASHOとは言え、きちんと整備されたそれはカタログ通りの性能を発揮する。

そして、BASHOの運動性は決してVP型に劣るものではない。

 

ダナムの攻撃も本人の適性による影響の少ないミサイルに統一された事で的確に命中していっている。

発射数も多く。六文銭を追い掛ける敵に横から撃ち込まれるミサイルは確実に機体耐久度を削っていく。

 

そして、1機が集中攻撃で倒れるとランチェスターの法則通りに一気に解放戦線AC側に戦局は傾いていった。

 

その間、ペイターくんを引き付けていた俺は中々苦戦を強いられていた。

ペイターくんの相手をしながら、量産型に適時ちょっかいを掛けて気を引いていたのだ。

 

ランセツARでは威力が無さ過ぎて辛い。

キックしても軽量機過ぎて辛い。

 

何より素人間新兵向け機体だから、神経接続無しで操縦してるのが辛い。

 

「どうしました?主席隊長殿とやっていた時の貴方はこんなものではなかったでしょう」

「ハンデだよ。ハンデ!」

「なるほど、ありがとうございます。私の査定UPの為に死んで下さい」

 

あっちの戦局が傾いたなら、もうこっちに集中して大丈夫だな。

 

パルスブレードをスウェーで躱し、ランセツARを全弾叩き込む。

バースト射撃で6発撃ち込んだのに、軽量のデュアルネイチャーをACS負荷限界に追い込めない。

 

「器用な真似を!」

 

クィックブーストで距離を取ろうとしたデュアルネイチャーをアサルトブーストで追い掛け、ロック解除!ドロップキック!

強化人間仕様では無いコックピット内部がシェイクされ、ベルトで固定されている身体が座席から放り出されそうになる。

頭もあちこちにぶつけながら、モニターを必死で追う。

 

ブースターをちょんと吹かし、あとはオートバランサーに任せて姿勢を戻す。同時に目の前のデュアルネイチャーに向けて、両肩の4連ミサイルを全弾発射。

 

あーまだ、ダウン――ACS負荷限界――しない!

 

以前のイグアスと同じに左肩にシールドを抱えているデュアルネイチャーだが、キックとパルスブレードを使いながら、パルスガンとパルスキャノンでトップアタックで削ってくるので強敵だ。

 

幸いこちらの武装は低威力でもリロードは速い。

 

豆鉄砲と侮ってくれるとマシンガンより50mほど長い性能保証射程のおかげで負荷を維持できる。

左肩のミサイルを撃って回避させながら、逆サイドから右肩のミサイル。

 

こちらをジャンプで飛び越え、ミサイルを回避しようとしたデュアルネイチャーの下からアサルトブーストで突撃。

タックル――ほとんど頭突きで吹き飛ばし、ランセツARとリロードの済んだミサイルを発射。

 

今度こそACS負荷限界…入った!

 

空中で動きが止まったデュアルネイチャー目掛けて、もう一度アサルトブースト。

姿勢を制御しながら、ブースターの推力を乗せて、廻し蹴り!

 

「こ、こんな!無茶な機動ッ!うわぁぁぁッ!」

 

空中で蹴飛ばされたデュアルネイチャーは凄い勢いで吹き飛んで、敷地の反対側まで吹き飛んでいった。

数秒して遠くで土煙が上がる。

 

これは…気絶くらい…してくれたかな。

 

 

「脚部負荷限界。出力10%低下」

 

 

COMの警告がコックピットに響く。

解除していた動作ロックを戻すと機体を降下させる。

 

 

量産型3機との戦闘は解放戦線側の勝利で終わっていた。

 

 

/*/

 

 

「スウィンバーン隊長。当センターは現在解放戦線と思しき勢力の襲撃を受けております。安全の為、こちらへ」

「…元隊長である私の安全だと?」

 

スウィンバーンの独房にも先ほどから砲撃と思しき振動が伝わってきていた。

自身がAC乗りでもあるスウィンバーンは複数の振動の中にACの戦闘機動らしい振動がある事も理解していた。

 

「はっ!再教育の後に原隊復帰されると聞き及んでおります」

 

その再教育の後の私が私である保障はないがね。

元隊長であるスウィンバーンには再教育の内容も、結果も、わかっていた。

良く理解していないであろう兵士への皮肉は胸におさめ、立ち上がる。

 

その時だ。

 

独房の壁と天井が崩れたのは。

 

「スウィンバーン隊長!」「おい、早くロックを解除しろ!」

 

移送係の兵士と看守、スウィンバーンの悲鳴が木霊する。

コンクリートの破片が落ち、鉄骨が曲がり、舞い上がった埃がおさまる前に、拡声器で増幅された声が響いた。

それは思いもしない声だった。

 

 

「助けに来たよ、スウィンバーン!」

 

 

星空とミサイルの爆炎を背後に、ACがスウィンバーンに手を差し伸べていた。

 

「…その声は、貴様…独立傭兵レイヴン!…何故?」

 

思いもよらぬ声。思いもしなかった相手から差し伸べられた手にスウィンバーンは困惑する。

その返事も思いもしなかったものだった。

 

 

「え?スウィンバーンの生命買ったじゃん!120万COAMで!」

 

 

不思議そうな、何も考えていなそうな、朗らかな声。

不幸な事に、その声は社内闘争や社内政治に疲れ果てた男の胸に、すーっと沁み込んでしまった。

 

 

「…っはっはは、貴様は馬鹿者だな」

 

 

スウィンバーンは格子を隔てて固まる兵士たちに語りかける。

 

「お前たち、スネイル閣下に伝えてくれ。今までお世話になりました。スウィンバーンは今日を持って、アーキバスグループを退職すると」

 

スウィンバーンは差し伸べられた手に乗ると、星の輝く夜空へワタリガラスの翼で飛び立った。

その男の行き先は…脱サラか。それともブラックな未来か。

 

それはまだ、誰にもわからない。

 

 






転職。
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