こいつがなければ二次創作なんてしないね。
『あなたは強化人間C4-621 レイヴンでよいのですよね?』
格納庫の機体を一望できる作業室っぽいところで端末を弄りながら休憩してると、ウォルターとの会話中は黙っていたエアちゃんが質問してきた。
(うん。レイヴンではあるのだけど、コーラルを浴びた時に脳にどこかの誰かの記憶が転写されたみたい…コーラルとかルビコンの事もその時に少し知識を得たよ)
例えば君がコーラルに生じた意識波形の一人だとか。
その言葉に息を飲む音が脳内に響く。
身体を持たない波形生命なのにいちいち人間臭い。
『…そう、ですか…では、それを知った上でのあなたにお願いがあります。集積コーラルに到達するまで「交信」を続けさせて欲しいのです』
エアちゃんに了承の意を伝えながら、機器を操作し、非武装から重ショットガン等のガチ武装に変更していく。
このまま行くと次はエアちゃんが仕事とってきてグリット086侵入になるだろうから、肩は片方3連プラズマミサイルでいいかなぁ。
タキガワ・ハーモニクスのパルスブレードは手放せない。
あ、ジェネレータがコーラル型のままだとACエアちゃんも動かせるのかな?
『レイヴン。ウォルターが持ち込んだデータにより、ベイラム・インダストリーより先行調査の依頼が来ています』
うんうん。それじゃその依頼を受けるとウォルターが帰ってくるまで単独行動になるから遠足の用意をしよう。
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休憩しつつ回想した時に知ったが、この621の記憶は俺が知ってるゲームの621とは若干違うルートを辿っているようだ。
例えば、壁越えでG1ミシガンのライガーテイル率いるMT部隊が戦っていて、V.Ⅱスネイルに先を越される前に壁内部に侵入しろと言われたりした。ゲームではベイラム本社の無茶な指示で先行せざるを得なかったG4ヴォルタが壁近くで撃墜されていたのだが…。
2つの記憶の差異を確認する為に俺はベイラムの依頼を受けるのを口実にレッドガンの駐屯基地に来ていた。
ボディチェック等は受けたが、意外とすんなりと中に入れて貰えた。これもウォルターの人徳だろう。
あと、お土産に先日ひろったバルテウスを持ってきたのもあるのかな…でも、ベイラムだしな。どうだろう?
バルテウスの制御ユニットだけは使い道がありそうだったので自分で保管してある。
回想するとガリア多重ダムでG4ヴォルタとG5イグアスを撃墜した記憶があった。
その後、ゲームではヴォルタだけ、壁越えに参加して戦死してしまうのだが…。
俺の武装はベイラム製品が多いので弾薬等の買い付けを理由に基地に入れて貰った。部外者なのでお目付け役として、G6レッドがついている。
そして、今現在、目の前でぎゃあぎゃあ文句いってるのは、G4ヴォルタとG5イグアス。その言によれば、ガリア多重ダムで俺に撃墜された所為で壁越えに(機体が無くて)参加できなかったそうだ。
「(壁越えで)戦死しなくて(本当に)良かったね」
「「なんだと手前ぇッ!!」」
「独立傭兵を後ろに置いて貶しまくったら撃たれるだろう? 実力も敵か味方かもあやふやな奴にマウントとるからだ」
自業自得だよ、と肩をすくめて見せれば熱くなったイグアスが殴りかかってくる。
あえて1発は受けた。
痛いィ。
「…誇れるような仕事でもないからね。1発は受けるけど、次からは反撃する」
カッコつけて言う。
「ハッ…野良犬が吠えやがる」
「飼い犬だよ。この首輪が見えないの?」
こちらを見下そうとするイグアスに、首に装着された金属製の首を指さして見せる。
「首輪自慢かよ」
「そうだよ。ハンドラーの気分一つで爆発する素敵な首輪。…羨ましいだろ?」
「…な、んだ…それ…」
思った通り、顔面蒼白になるイグアス。
狂犬の割に根は素直だよね。
『レイヴン。その首輪は出発前にレイヴンが用意していたハリボテではないでしょうか?』
(そうだよ)
『…なぜでしょうか?』
(はったりを効かせる為かな)
本当はイグアスの情緒が乱れる姿でした得られない栄養があるからだけど。
案内役G6レッドを手で制止ながら、G4ヴォルタに声をかける。
「ヴォルタは…殴らないの?」
少し考える素振りを見せた後、ヴォルタは肩を竦める。
「冷めちまったぜ。馬鹿みてぇだ」
「そう…ま、五花海には凄い目で見られたから、殴って貰えたら少しはマシになるかと思ったのだけど…」
G3は後輩思いなんだねぇと、通路ですれ違った五花海を思い出しながらヴォルタに言う。
「五花海が…そうか」
ヴォルタの雰囲気が少し柔らかくなる。
「それで手前は何しに来たんだ?」
詫び入れに来たわけじゃねぇだろう?と余裕のある表情を取り戻したヴォルタが続ける。
「G13のナンバーそのままにしてくれて、仕事まで回してくれるから、弾薬買い付けのついでに二人に詫び入れに来た」
あとナイル副長の見舞いね。
「馬鹿正直か手前…まて、どうして副長が負傷してるのを知ってやがる?」
ヴォルタに問いに眼を逸らす。
一拍おいて、ヴォルタ、イグアス、レッドが何かを察した表情になった。
「…解放戦線の依頼を受けた時に、ね」
「!うちの捕虜収容所を襲ったの手前だったのか!」
「節操無しか!野良犬!」
「独立傭兵だからなぁ。ヘリ1機の護衛依頼だったから受けたら、あんな大部隊がいるとは思わなかったよ」
ハハっと笑って見せる俺を呆然と見る面々。
あれだけの部隊を壊滅させたのは解放戦線のAC1機と聞いていたが、まさか本当に1機だとは思ってなかったようだ。
「解放戦線…当りをひいたか」
「ちッ野良犬がよ」
「まさか…ハークラーも…」
レッドに疑いの眼差しを向けられる。
基地に来る時に汚染都市を通るついでに撃墜されていたG7ハークラーの機体を引き摺って来たのが裏目に出た!?
「ハークラーは汚染都市で機体を見つけただけだって!流石に自分で殺して連れてくるほどサイコパスじゃない!」
「「本当かよ?」」
うわ、ヴォルタとイグアスがハモリやがった。
でもなぁ。
本来G13になる予定だったであろう訓練生を撃墜したのも俺だしなぁ。あの子は脱出できなかったんだなぁ。
遠い目になる。否定しきれない。
そんな様子の俺を見て、ヴォルタとイグアスはオイオイこいつマジかよ見たいな表情をし始める。
泣くぞ。
そんな俺に救世主が!
「…冗談だ。G13レイヴン!MIAだったG7ハークラー(遺体)を連れ帰ってくれて感謝する!」
真顔になり、ビシッと綺麗な敬礼を向けてくるレッド。
いい子だぁ。
彼がレッドガン最後の一人にならないようルート回避に気を付けよう。
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買い付け品の用意が出来るまで、シミュレーターで模擬戦を行い食堂で食事まで出来た。
シミュレータでは勿論1対1なら負けなかったし、G4G5との2対1でも負けないし、なんならG4G5G6の3対1でも負けなかった。
結果、同じ旧世代型…俺と手前で何が違う。とイグアスが拗らせていたので満足。
「手前、それだけの腕があってなんで飼い犬してやがる?」
食堂で美味い飯を食べているとヴォルタが問うてきた。
大豊が大豊核心工業集団となり食品事業から撤退したとは言え、ベイラム系の飯はやっぱり美味い。
口の中で咀嚼していた八宝菜を飲み込むと答える。
「冷凍保管されていた廃棄寸前のポンコツを買い取ったのが、ハンドラーだから」
「冷凍保管だと?」
「強化手術の影響だかで、冷凍される前の事は何も覚えていない」
闇医者の元で冷凍保管されていた不良在庫だったらしいから、もともと碌な人間じゃなかったろう。
カッコつけて言ってみる。
「ハンドラーの元で稼いでいれば、いつかは再手術して人生を買い戻せる日も来る…多分な」
同情したのか沈痛な表情になるレッド。
良い雰囲気が醸し出せていたようだ。
そんな事より、シミュレーション中に気になっていた事をイグアスに告げる。
「…それより、イグアス。その耳鳴りは強化手術の影響だろうから、再調整を受けた方が良いじゃないか?」
「うるせぇ…野良犬」
模擬戦で負けまくった所為か不貞腐れたように食事を突っつくイグアス。
俺から言っても再調整は受けてくれなさそうだ。
オールドンマイちゃんに目を付けられないと良いんだけど…。
「G13レイヴン。貴様はベイラムからの依頼を受けたと言っていたが、ずいぶんな量を仕入れたな」
レッドは弾薬レーション等の事を言っているのだろう。
「詳しい事は言えないんだが、しばらく単独行動になりそうなんだ。その間のちょっとした贅沢に大豊のレーションが欲しかった…アーキバス系列のレーションは不味いから」
「違いない!」
「あんな泥水みたいなもん飲めたもんじゃねぇぜ」
シミュレータに大豊娘娘のポスター貼ってあったし、この世界は集団幻覚であった設定があちこち反映されているようだ。
もっともアーキバスのレーションが味気なくて、珈琲が泥水みたいなのは公式だったハズだが。