気が付けばルビコン3   作:ぶーく・ぶくぶく

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主人公の53億COMA。
53兆円くらいと思ってましたが、最近の円安を見るとドルにすると目減りするのが寂しい。

作者のCOMAは5億3千万くらいです。


5/11 12:32「ああ、待たせたな。フロイト…仕切り直しだ」の下に一文追加。



強敵と共に競い合った風の中でも

/*/

 

 

そのフロイトだが、広域無線で呼びかけながら飛行してたら引き返してきた。

 

「お前も新型か。いつもの奴はどうした?」

 

空中で向き合う2機のラマーガイアー。

フロート形態だ。

 

「修理中。解放戦線のドルマヤンとやり合って大破したんだよ」

 

俺は器用に機体の肩を竦ませて答える。神経接続している強化人間ならではだ。

 

「眠れる獅子だと思っていたが…俺もやりたかったな」

「目覚めたようだから、いつでもやれるよ。でも…ACが好きな人ではないぞ、ドルマヤンは」

 

俺の言葉に、心底、残念そうなフロイトの声が聞こえてきた。

 

「ミシガンと同じか…」

「ミシガンは戦争が好きなタイプだろう。ドルマヤンは…そうだなぁ。ACを肉体の延長と思ってるタイプだな」

「まあ、いい。今は…お前がいる!」

 

ガキン!とフロイト機の拡散バズーカがこちらを向いて挨拶変わりの1発を放つ。

俺は0.3秒だけのイニシャル・ガードに合わせてシールド展開。拡散バズーカのダメージを9割カットしながら、レーザードローンを展開する。

 

フロイトが拡散バズーカに合わせて展開したあちらのレーザードローンを迎撃。

 

そして、間髪入れずルビコニアン縮地…近接格闘推力がデカいブースターを利用した高速移動。

今回は直前にアサルトブーストを入れて、初速を稼いで+前クィックブーストに近接ブーストの3段ブーストだ!

瞬間最大速度はマッハに達する。

ラマーガイアーのフロート速度の約3倍。

 

避けられない!

 

通常では、だ…フロイトの操縦は普通では無い。

こちらの行動を読んでいたように避ける。速度に劣る以上、こちらが動作に入った瞬間には回避動作が始まっている。

驚異的な読み。どこの天パだ。

 

 

「銃口や手足の動きで、こっちの動作を読んでる」

 

ランクマでも一杯いた手合いだ。

 

『レイヴン。シミュレータでは兎も角、実戦ですよ…強化されてない人間がGに耐えながら、そこまでは…』

 

エアの声を聞きながら、避けたフロイトのラマーガイアーを更にルビコニアン縮地で追う。

 

 

「…レイヴン、そう来ると思っていた」

 

 

俺のラマーガイアーの機動に、フロイトのレーザーブレードが置かれていた。

それを見て近接動作をキャンセル!無理矢理に機動を変えてルビコニアン縮地で上方に逃れる。

 

 

「…強化人間なら避けられる。お前なら上を取りにくると思っていたぞ」

 

 

フロイトのセリフ。

冷却の済んだ拡散バズーカがこちらを向いている。

 

“それ”は俺も読んでいる。

 

 

「レーザードローン展開!」

 

 

エアにレーザードローンを展開して貰いながら、パルスハンドミサイルのチャージ発射。

直線的な連射で相手に回避を強制しながら、拡散バズーカをイニシャル・ガードで受け止め、アサルトブーストで突っ込む。

 

フロイトが回避に入ったところでルビコニアン縮地を発動。

今度は逃がさない。

 

 

「お前はいつも前へ、前へと詰めてくるな」

 

 

フロイトの言葉。

俺の機動が読みやすいと言いたいのか…それとも。

 

 

「俺は勝つのが好きなんじゃない!ACで戦うのが好きなんだよぉッ!」

 

 

俺の叫び。レーザーダガーを避けながら、フロイトが落ち着いた声で返してくる。

 

 

「お前のそういうところ…嫌いじゃない」

 

 

続けて「スネイルの次くらいだな」と聞こえた気がする。

 

ところで、エア…なんで機嫌悪いの?

 

 

『そんな事はありません』

 

 

そうかなぁ。

 

内心で首を傾げながら、フロイトの猛攻を捌いて行く。

まるでガンダムのニュータイプ…具体的に言うと天パのように何手も先を読んでくるフロイトの攻撃はゲームの時以上に苛烈だ。

 

横薙ぎのレーザーブレードを躱しても、溜めレーザーブレードの2撃目を引っ掛けてくる。

ネストでのランクマでも、ブレード使いによくやられた戦法だ。

 

こっちはゲームの時には出来なかった機体を微妙に縮こませる方法でブレードを紙一重で避けて見せる。

それでも――上部整流板もとい頭部ユニットがメインカメラごと吹き飛んだ。

 

 

「まだだ!たかがメインカメラをやられただけだ!」

 

 

ウキウキで、言ってみたいセリフNo1を言いながら、機体をチェックする。

神経接続しているので、おまけ見たいなメインカメラが吹き飛んでも全身のセンサーで支障なく戦闘起動を継続できる。

 

…ん?

 

『エア、機体のチェックシステムおかしくない?』

『そうですね。頭部が吹き飛んだのにジェネレータ供給出力が上がっていますし、頭部がレッドになりませんね』

 

『機体COMのOSをチェックします』

 

戦闘中に俺のオペレーターをしながら、レーザードローンを制御しつつ、OSのデバッグまでやっちゃうエア。

 

 

マルチタスクすげー。

 

 

「…人間の脳には僅かだが、常温量子ビットの演算能力がある事は知っているか?」

 

 

戦闘に関係ない事をフロイトが言ってくるのは珍しい。

 

聞いた事があるようなないような。…でも、このタイミングって。

 

 

「どうやら――俺にはそれが他人よりも活かせる能力があるらしい」

 

 

「…それが生身で強化人間と渡り合える秘密?」

 

 

それは喋っても良い情報なのか?

嫌だよ。戦闘後に粛清されるとか。

 

 

「お前は面白い。どれだけ先読みしても幾千万の戦闘経験があるかのように対応してくる」

 

 

それはランクマで戦いまくった経験かなぁ。

毎日ネストに潜って何時間も対戦したっけ。

 

ミッションも何十何百何千と繰り返して53億COAMとか稼いだんだし。

 

 

「ああ…俺も強化人間になれれば、お前ともっと戦えるんだろうなぁ」

 

 

脳を弄るとそれが失われるからデータ取りしてる間は強化手術できないとか?

 

フロイトの独白。

返事を求めている風ではない。

 

 

「ああ、残念だ。本当に残念だ」

 

 

なんか咳き込んでる

 

…血ぃ吐いてる?

 

 

「お開きにする?」

 

「お前ととことんやり合える機会を逃せるものか」

「だよねぇ」

 

「それより何十手か毎に動きが鈍っているぞ。オペレーターと話過ぎだ。今戦っているのは俺だぞ。レイヴン…俺だけを見ろ」

 

ゲームと違ってエアの補助があるとAC制御は段違いに楽になる。

ネスト的なシングルマッチがしたくて堪らないフロイトの気持ちもわからんでもない。

 

(エア。レーザードローンの制御を俺に戻して)

『…』

 

沈黙は返ってきたが、レーザードローンの制御が帰ってこない。

 

(エア?)

『私と貴方で戦うのではないのですか』

 

拗ねたような声で問いかけられた。

 

(ごめん。フロイトが望んでるのはサシの勝負なんだ。…俺もそれに応えたい)

 

はぁっと、大きな溜息が脳内に響く。

同時にレーザードローンの制御が俺に帰ってきた。

 

『…今回だけですよ』

 

(やめて!絶対に今回だけでは済まないし、それ言われるのはダメな男って相場なの!)

 

『ふふ…では、レイヴンはダメな男で確定ですね』

 

脳内でエアが柔らかく微笑した気がした。

 

 

「…もう、良いか」

 

「ああ、待たせたな。フロイト…仕切り直しだ」

 

 

/*/

 

この戦いは面白い。

フロイトは胸中で呟いた。

 

普段のロックスミスは幾重にも安全装置が搭載され、高価な小型慣性制御装置まである。

 

おかげで未強化の身体でも存分に戦える理由だが…

…このラマーガイヤーは空力の為に他の全てを捨てた機体だ。

 

当然、ロックスミスにあるような安全装置もなければ、戦闘兵器とし最低限の装甲すらない。

 

機体を切り返す度に骨は軋み、血は逆流し、偏った血で視界もチカチカと明滅する。

脳震盪を起したかのようにくらくらするが…面白い。

 

血沸き肉躍ると言う奴だ。

 

極限の環境下でACを制御し、死の舞踏を舞う。

脳内ではアドレナリンを始めとした脳内物質が分泌され、体感時間が引き延ばされる。

 

加速した時間の中で、これまでにない生の充足を感じ、フロイトは笑った。

 

それは獰猛な肉食獣の牙を剥き出す狩りの笑みだった。

 

 

/*/

 

 

「お前は面白い。何手先を読んでも別人のように手が変わる。まるで幾千万の相手をしているようだ」

 

『レイヴン…貴方は…貴方の脳内ネットワークは…存在しない領域と、ネットワークを構築している…?』

 

 

ああ――そうか――。

 

幾千万のレイヴン達の――ネストでの対戦データが俺に降りてきているのか。

 

 

最後まで全身全霊で勝利を目指す黒い鳥たちの情熱がここにあるのか。

 

 

ありがとうよ、フロイト。

その言葉で『俺たち』は報われる。

 

 

ただ理由も無く。

 

 

楽しいから、ACが好きだから、――戦い続ける『俺たち』の積み上げた戦績は…お前の『面白い』で報われたよ。

 

 

だから、証明する。

 

 

『俺たち』の方がAC戦強いってな!

 

 

何手先を読もうとも、反射速度で上回ろうとも、避けられない一撃を。

 

 

ただ最後の一撃を。

 

 

交差戦。

高速での擦れ違い様に武装を叩き込み合う。

 

強化人間の反射速度で致命となる攻撃だけパルスシールドを展開して。イニシャル・ガードで9割ダメージをカット。

 

左手のレーザーダガーを手動で展開。

逆手で隠すように展開したレーザーダガー。それで左手を後ろに伸ばしながら、すれ違ったフロイト機の背部ジェネレータを切り裂く。

 

 

徹頭徹尾。

 

 

強化人間の反射神経と強味を活かした機動。

決まった動作を組み合わせ、生きているように機動するフロイト機では出来ない手動作。

 

「…そんな手があったとは、な…暗い…?…目が…」

 

「フロイトの身体が限界になる前に仕留めたぜ――どうよ、(俺たち)は…強いだろ?」

 

「俺の…限界まで…読んでいた、だと?」

「いや、そこは結構ギリギリだった。体力勝負で勝って、試合は勝ち逃げされるかと思ってハラハラしてた」

 

 

カラカラと笑って見せる。

 

 

「『今回は』俺の負けか。…今日は良く眠れそうだ」

 

 

『今回は』とか不穏な、フロイトらしい言葉を残して通信が終わる。

 

(終わった)

 

凄い疲れた。

ヘルメット脱いで一息つきたい。

 

『…レイヴン。フロイトのバイタルが低下していますよ。このままでは死亡するのでは?』

 

 

ダメ―――ッ!!

 

 

死ぬな!フロイト!

お前が死んだらミッション失敗じゃねぇかッ!?

 

 

お願い、死なないでフロイト!

あんたが今ここで倒れたら、スネイルの機嫌と依頼はどうなっちゃうの?

ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば、回収班が多分くるんだから!

 

 

 

次回「フロイト死す」デュエルスタンバイ!

 

 

 

じゃ!ねぇッ!!

 

 

ジェネレータが停止し、墜落していくフロイト機を追い掛け、不器用なマニュピレータで機体を引っ掴む。

なんとかバランスを取りながら森林に着地。

 

機体を固定しながらコックピックハッチを解放する。

 

フロイト機に飛び移り、外部非常用コックでコックピットハッチを解放。

内部からは血の匂いがした。

 

吐いた血が飛び散ったモニタ。

 

シートベルトとヘルメット、耐Gスーツでも耐えきれない機動を繰り返して瀕死のフロイトが力なくシートに横たわっている。

 

『…レイヴン。アーキバスの回収班がこちらに向かってきています。ヴェスパーI.フロイトに後遺症が残らないように救急対応を要請されました』

 

エアの声。

貴重なサンプルだろう。そりゃ常温量子ビット演算が出来る天然物の脳みそとか呼吸停止したら不味いね。

 

 

って、呼吸止まってるぅぅぅ!

 

 

救急、救急キット…ない…?

 

シュナイダーの奴ら軽量化の為に救急キットまで外しやがったなッ!?

 

ああ、フロイトが吐いた血で溺れてるぅぅぅ!?

 

仕方ねぇ。

 

俺は意を決するとフロイトの鼻をつまんでに口付けして、喉に詰まった血を吸い出す。

ペッと血を吐き出し、今度は心臓マッサージをする。

 

30回の心臓マッサージと、2回の人工呼吸のサイクルを繰り返す。

 

何度かサイクルを繰り返すと咳き込みながらも自発呼吸が戻ってきた。

あとは専門のメディックの仕事だ。

 

 

シュナイダーの頭空力班め。

救急キットの件はスネイルにチクってやる。

 

 

/*/

 

 

回収班はV.ⅥメーテルリンクとV.Ⅶペイターの二人に指揮された部隊だった。

 

ペイター君に「ヴェスパーIXになりました。先輩よろしくお願いいたします」と挨拶したら、先輩呼びに喜んでいた。

 

事後になるが、ルビコンでのこの騒ぎが終結した後、どこぞの即売会で俺とフロイトの特殊な掛け算な薄い本が販売されていたらしい。

メーテルリンク、貴様!見ていたなッ!

 

そのまま現地で解散できると思っていたのは甘かった。

 

フロイトが余計な事を喋っていないか確認し、場合によっては口封じする為にヴェスパー隊長が二人派遣されてきたのだろう。

基地まで連行されてしまった。

 

だが、基地に着くまでにエアが2機のレコーダを改竄してフロイトの常温量子ビット演算の会話のあたりを差し替えてくれたので無事に帰れる公算だ。

 

はは、勝ったな!

 

 

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