気が付けばルビコン3   作:ぶーく・ぶくぶく

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オタクならば…語りたい。


修理費で死ね

 

 

コヨーテス撃退後、俺の口利きでイグアスもRaDから補給と修理を受ける事となった。

小遣い稼ぎに出て、失機して帰還とか出来ないよね。

 

RaDの巨大なハンガーで修理を待つ間、壁際に座り込んだイグアスに近づく。

 

「アドバイス聞く?」

「ふざけんな!誰が手前の世話なんかに!」

 

勝つのが好きそうなのに、勝つ為にプライドを捨てられない。

対戦では2~3戦すると大概プライドを捨てたアセンが出てくるのだけど。

 

「支払いはこんくらいだってさ」

「クソッ!金が」

 

幾らAC乗りのエリートと言っても、企業付きでは給料だろうから、自費で修理するとなると財布に大ダメージだろう。

小遣い稼ぎとかしなければACの維持費は企業持ちだから気にならないだろうけど。

 

(エア。イグアスは君の声で耳鳴りがするようだから、しばらく静かにして貰えるかな)

 

ACに乗ってる時の獰猛さが嘘のように落ち込んでいるイグアス。

しばらく、黙って傍に立っている。

 

 

「…クソみてぇな旧世代型。俺と手前で何が違う」

 

 

やがて、大人しく立ち去った方が良いかと思い始めた頃に、イグアスはポツリと零した。

 

「…人の話を聞く事かなぁ…クソみてぇなプライドを捨てられない。エリート気取りの匂いがプンプンするよ」

「エリート…俺が、エリート気取りだと?」

 

あ、これは本当に自覚なかったようだ。

 

「ベイラム専属AC部隊レッドガンのG5である事を誇り、それ以外を見下してるのがエリート気取りじゃなかったら、なんだろうね。そのくせ戦闘スタイルは引き撃ち型で臆病さが透けて見えるから、そこにつけ込まれる」

 

俺は生命が惜しいので重ショットガン2丁持ちだけど(誉は狭間に捨てました)。

 

 

「手前ぇッ!!」

 

 

こちらをキッと見上げ、睨みつけるイグアスを本当は理解してるんだろう?との思いを込めて、じっと見つめる。

しばらく睨み合う。

やがて、イグアスの視線が落ちる。

 

 

「…俺は、どうすれば良い」

 

 

ハンガーの喧噪、機械音に紛れて、微かに弱々しい声が聞こえた。

 

「戦術の基本は相手の嫌がる事をするだよ。俺はイグアスに出来てるだろ?」

「ああ、野良犬。最高にイラつくぜ」

 

何も付いていない首を指さしながら言ったが、イグアスはそれに気づいてくれなかった。

 

「…ACはコア理論からの近接戦闘が重要視されてるから、武装を見直して近接格闘訓練だね。押す戦術も取れるようになった方が良い。強化人間手術を受けてるんだから、機動も普通人用じゃなくて強化人間仕様にして縦横に飛び回らないと人間のように戦ってる限り、人間以上にはなれないよ。機動兵器に乗ってるんだから、もっと動き回らないと。あと近接武器の選定だけど、ベイラムのパイルバンカーの威力は魅力的だけど、最初はタキガワのパルスブレード。左肩はメリニットのソングバードが良いと思う。ベイラムの拡散バズーカも良い武器だけど、ちょっと重い…」

 

人の仕込みに気づいてくれない事にガッカリしながら、戦術の見直しとそれに合わせたアセンブルについて語る。

こっちに来てから語る機会がなかったから、思わず早口になっていた。

 

「…お前、パーツ丸ごと覚えてるのかよ」

 

FCSは~…と気持ち良く語っていたら、相変わらず弱々しい表情ながらも呆れたようにイグアスが笑った。

 

「そりゃ商売道具だし、相手が持ってる武器が分からないと戦術が組み立てられないからね。…シゴかれてるだけで、積極的に学んでないな」

 

そのうち死ぬぞ、と言いながら肩を竦めて続ける。

 

「そもそも、ヘッドブリンガーとキャノンヘッドのコンビは強いけど、キャノンヘッドは単体でも戦える火力がある。

 対してヘッドブリンガーはキャノンヘッドの火力が無いと火力不足。ベイラム、レッドガンの物量で推す戦術は正攻法だけど、ルビコンには大戦力が降ろせない。だから…」

 

「なぁ、話なげぇ」

 

「HAHAHA、手前ぇぶっ飛ばすぞ。…じゃ、武装変更案は教えた通りだから、後は総長と副長に教えて貰いなよ

 あと、オールマインドのアリーナは1対1しか想定してないから、あれだけやってると馬鹿になるよ」

 

野良犬はお前の方だと思いを込めて、イグアスをジト目で見ながら忠告する。

オールマインド開発の武器。特にマルチエネルギーライフル 44-142 KRSV 連射力とチャージ威力は素晴らしいが、装弾数が少なすぎる(フルチャージで8発しか撃てない)上に重すぎる(中量級AC腕部に匹敵する重さ)。

あれは絶対、1対1の戦闘しか想定していない。

 

「オールマインド…ああ、土着の傭兵支援システムか」

 

小遣い稼ぎするくらいだから、オールマインドに登録してるだろうと思ったら、一応使っているようだ。

 

「ACフレームは良いもの作るけど、武器は微妙。そもそも許可とって製造してないようだから、企業付きだと使用許可でないだろうね」

「パチモンか」

「そうだね。でも、各社の良いトコ取りしてるから使いやすくはあるよ」

 

バルテウス戦の後、ハンガーに戻って整備する時にコアの内部を覗いたら、本当にベイラム系とアーキバス系の良いとこどりで笑った。

封鎖地域限定の商売と割り切ってるのか、特許とか気にしてる様子がない。

安心安定のオールマインド製品。エアにバックドア仕掛けられてないかチェックして貰おう。

 

 

去り際のイグアスの表情は一寸すっきりしていた。

オールマインドに目を付けられないと良いんだけど。

 

後日、なんで野良犬がアリーナランク1位なんだとメールを頂いた。

 

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心配だぁ。私は上手に語れたでしょうか。
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