気が付けばルビコン3   作:ぶーく・ぶくぶく

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コーラルが溢れる。
嗚呼、甘美也。

なんか速度考えたら、ミサイル並みの速度で発射してるのでは?と思ったので所要時間を変更。


南斗人間砲弾

 

 

/*/

 

 

キングクリムゾン!

 

シースパイダーは撃破されるッ!

 

 

『…コーラルを、動力に…』

(あ、うん。なんかゴメン)

 

シースパイダーを撃破すると全身から赤いコーラルを吹き出し停止した。

ジェネレータ破損と言っていたので、コーラルジェネレータから流出したコーラルだろう。

 

ブースターの色がカッコよくなる理由でコーラルジェネレータを愛用している者として申し訳なく思う。

あと、今回はしばらく補給できないから、コーラルジェネレータ一択なんだ。

 

『人間で言うと切った爪や髪を燃やされている感じでしょうか』

(微妙に気持ち悪い?)

『人間と違うのは切った爪や髪にも意思があるので、声が見える事でしょうか』

 

何も言わないなら爪や髪が燃料になるのは便利くらいにしか思わないけれど、悲鳴が聞こえてくるのは嫌だなぁ。

 

(悲鳴みたいな?)

『そう言った感じでは無かったですね。…頑張るぞー的な感じ…でしょうか』

 

悲壮感は無いのか。EN干渉で方向性を揃えられているのかな。

ピクミンみたいなものだろうか。

 

中央氷原に渡ったら、キャンプの時にアーカイブから呼び出してプレイしてみよう。

 

 

「面白いものを見せて貰ったよ、ビジター。さっさとコンテナに乗り込みな」

 

 

はーい。

カーラさん、残骸は有効利用してね。

 

1つ目のコンテナを開けて、橋下をスニーキングミッションしてきた補給シェルパを3機、詰め込む。

自分はACに搭乗したまま、隣のコンテナに乗り込んだ。

 

「ああ、それからもう一つ」

 

コンテナがドッキングするガチャンと言う重い音が中まで響いてくる。

何を言うのか分かっているが、思わず身構えた。

 

「こいつは、あくまで物資輸送の為の代物だ。

 有人で打ち出されるのはあんたが初めてになるだろうね」

 

空力に喧嘩売っているコンテナカバーが装着される振動が伝わる。

 

「人間が耐えられるのが7Gくらいだっけ?」

『レイヴン!?』

 

COMに身体制御をONにさせる。

「強化人間C4-621。戦闘モード起動」

 

人間の耐G性能は考えてなかったか。エアの慌てた声が脳内に響く。

身体を持たない波形生命体に耐Gとか分からないから仕方ない。

コンテナが飛行カバーの爪でがっちりと固定され、加速用ブースターが点火。

 

「そうだね。こいつの加速度はもっとあるが…ビジターなら大丈夫だろうさ」

「10Gくらいで済むかなぁ」

 

俺が呑気な声を出す間にリニアレールが帯電し、発射までカウントダウン開始。

 

 

「不運なあんたの、幸運を祈るよ」

 

 

カーラの声と共にこれまで経験した事のない強烈なGが襲ってくる。

 

 

「ひゃっほー!!」

『レイヴン!?』

 

 

ジェットコースターなんて目じゃない加速度に(舌を噛むので)脳内で歓声をあげる。

打ち出された後も飛行カバーで加速を続け、しばらくするとカバーが分離していく音が響く。

 

外部カメラなんて上等なものはない。着陸?までコンテナ任せだ。

 

やがて、コンテナも分離し、最終加速ブースターが点火したようだ。

アーレア海は縮尺的に太平洋くらいあるようだし、数時間はこのままだろう。

 

『レイヴン、すみません。カーゴランチャーの加速度に人間は耐えられないのですね』

「強化人間だから大丈夫。ダメだったら、最初に言ってるよ」

 

エアと喋っているとコンテナが対流圏界面を突破したのだろうか?

急に外部カメラも無いのに視界が開ける。

 

赤く染まった空を赤い筋のように漂うコーラルたち。

 

『レイヴン?

 ああ、あなたには見えているのですね。

 このルビコンを対流するコーラルたちの声が』

 

(エアはこの子たちが何を言ってるのか分かるの?)

 

『いえ、私にも見えるだけで何を言っているのかまでは分かりません』

 

(そうすると、エアは他のコーラルと意思疎通できない?)

『そうですね。ウォッチポイントにいた間も、コーラルたちの声は見えていましたが、会話は出来ませんでした』

 

(エアがコーラルとしては特別なのかな。一人は寂しいね)

 

『…ですが、レイヴン。今はあなたがいます』

 

(ありがとう。嬉しいよ)

 

エアとそんな話をしながら数十分。

コンテナはバートラム旧宇宙港近傍に着陸?した。

 

いや、これ、減速ブースターついてるけれど、コンテナが壊れない最低限の減速しかしてくれないんだね。

 

コンテナを開けて、雪原に降り立つ。

あーふらふらする。

 

「あー!死ぬかと思った」

 

『すみません。レイヴン』

「楽しかったし、いいよ。気にしないで」

 

笑いながらエアに答え、COMに戦闘モードをOFFにさせる。

 

 

「強化人間C4-621。通常モード移行」

 

 

ぐるっと周囲を見まわし、近くに着陸?したコンテナを確認。

これからどうしようか考えてる俺の脳内にエアの声が響いた。

 

 

『ウォルターの見立ては当たっています。

 コーラルは…この捨てられた極地のどこかに』

 

 

 

/*/

 

 

 

バートラム旧宇宙港付近から範囲を広げながら、調査ドローン設置開始。

惑星封鎖完了前に封鎖機構が利用していた放棄された拠点も探して座標を報告する。

 

レッドガンの拠点に出来そうな場所を2~3見つけて置いた。

どうせ、後で封鎖機構と陣地取りになるから多目に見つけておこう。

これでアーキバスに先行されなければ良いのだけど。

 

ヒアルマー採掘場はアーキバスと鉢合わせしそうなので外している。

それで1日の作業が終了したら、ウォルターのヘリが来てないので膝付いたACの足元でキャンプだ。

 

冬キャンプというより極寒キャンプだが、ACのコックピットで寝るのは無理だ。

 

あんなの戦闘モード起動しないと確実にエコノミークラス症候群を起こす。

そう言えば、カーラから注文の品をウォルターのヘリに送っておいたと連絡があった。ちゃんと梱包してくれてるんだろうな?

 

『レイヴン。どうしてACの外で睡眠を取るのですか?コックピットの方が安全ではないでしょうか』

「ああ、生身の人間は数時間くらい身体を動かさないだけで血栓が出来て、肺なんかに詰まって致命傷になる事があるんだよ」

 

エアの疑問にずっと戦闘モード起動してるのも負担掛かるし、と続けながらペグを十字架にして雪の中に埋めて、雪を踏み固める。

雪が深くて、地面にペグダウン出来ないのだ。

 

『生身と言うのは不便なのですね』

「まーね。でも、生身があるから戦えるし、食べる事も出来る。不自由も楽しいものだよ」

 

テント内に簡易ベッド(コット)を設置し、マットを敷いたら寝袋。

電源はACが引っ張ってこれるし、荷物は補給シェルパ持ち出し、キャンプとしては快適だ。

 

外気温が氷点下なのを除けば。

 

今日は何を食べようか。

大豊のレーションを食べてみようか。

 

「これは何かな?」

 

カニチャーハン、白米、麻婆豆腐だと。これは当りだ。

電熱器でお湯を沸かし、レトルトパウチを加熱する。

 

十分に加熱できたら、金属製のトレーに盛り付ける。

 

「うんうん。綺麗に取り出せた」

 

食欲をそそる豆板醤やオイスターソースなどの中華らしい香りが漂う。

中央氷原…と言うかルビコン3は野生動物もいない不毛の地だから、多少匂いがしても大丈夫だろう。

 

カニチャーハンのカニは残念ながらカニカマだったが、卵とシイタケの優しい香りもあり、おかずがなくても十分食べられる。

麻婆豆腐の刺激はそれほど強くなく、ピリ辛で食べやすい。何の肉かは知らないが、挽肉の量も多くて、肉の旨味が口内に広がる。

 

間違っても味気ないレーションなんて言えない。

オキーフに必要だったのは大豊のレーションだったのではないだろうか。

 

「美味い美味い」

 

おやつには杏仁豆腐がついていた。甘味が沁みるねぇ。

こりゃあ取り合いになるわ。

 

あ、でも飲み物はインスタントコーヒーなんだ。

 

泥水かと思ったら、開封したてのインスタントコーヒーで、しっかり香りも生きていました。

大豊のレーションすげぇ。

 

折り畳みの小さな椅子に座り、インスタントコーヒーのカップを両手で持ちながら、風が凪ぎ、晴れた夜空を見上げる。

 

地球ではないので、ルビコン3の夜空には星座も何もあったものじゃないが、星空の美しさは変わらない。

 

 

『レイヴン。一つ質問なのですが、人間にとって食事とは栄養補給以上の意味を持っているのでしょうか?』

 

 

「…美味い美味いと飯を食い。食後のお茶とデザートに舌鼓を打ち、好きな人と寄り添い星を見上げる。それで結構、心は満たされる。幸せを感じられる」

 

『確かにあなたの脳波は安定…リラックスしているように感じられます』

「エアが隣にいてくれるからね」

 

『わ、私ですか』

「うん」

 

 

「それに身体があるからかな。戦闘以外にも満足を覚える事は一杯あるし、それが良いと思えるんだ」

『…そうですね。私ももっとあなたに寄り添ってみたいと思います』

 

赤い光が身体にそっと重なったように思えた。

 

ホームである輸送ヘリを出る時に端末にダウンロードしておいた、過去ゲームを起動する。

 

「エア、ちょっとこのゲームやってみない?」

『ゲーム?これはピクミンと言うのですか?』

「人間はたくさんいて、個別に興味を持っていた色々なものを創造している。これもその一つだよ」

 

 

/*/

 

 

「俺はそろそろ眠るけど、エアはどうするの?」

『私に睡眠は不要ですからね』

 

簡易テーブルにタブレットを置き、簡易ベッドの上の寝袋にモソモソと潜り込む。

ピクミンの続きをしないなら、オールマインドの事を調べてくれないかと頼む。

 

『オールマインドをですか』

 

「うん。以前も言ったけど、俺にはウォッチポイントで脳に焼き込まれた記憶がある。

 その中にはこれから起こる事も含まれていたんだ」

 

外は氷点下だが、テントの中は電気ストーブで快適な温度が保たれている。

 

「それが本当かどうか分からない。確かめようもないからね」

 

寝袋のチャックを首元まで引き上げて横になる。簡易ベッドに敷いたマットはふかふかで背中を気持ちよく包み込んでくれる。

 

「でも、グリット086で襲ってきた所属不明機。あれがオールマインドの秘密戦力だって記憶もあるんだ。

 この記憶が出鱈目なのか…それとも本当なのか。確かめる意味も兼ねて、オールマインドにバレないように調査して欲しいんだ。

 俺には電子戦の能力は無いから」

 

 

『お任せて下さい、レイヴン。

 あなたの為になるなら、やれるだけやってみせましょう』

 

 

なんかエアのやる気が天元突破してる。

 

 

「うん。ありがとう。それじゃ、おやすみ。エア」

『はい。おやすみなさい、レイヴン』

 

 

「強化人間C4-621。スリープモードへ移行」

 

COMのアナウンスが脳内に響くと、眠気が襲ってくる。

強化人間の脳深部コーラルデバイスの操作により、速やかに入眠できるのは便利だ。

バイタル管理もCOMに頼っているので、本体がAC側にあるみたいな気がしてくるが。

 

 

/*/

 

 

寝て起きたら、脳内彼女が傭兵支援システムに不正ハッキングしていた件。

いや頼んだの俺だけど。

 

 

『レイヴン。オールマインドは確かにコーラルに関する情報を秘匿していました。

 他にもインテグレーション・プログラムを調べていたところ興味深いものを見つけました。

 どうやらオールマインドは…まだ世に出ていない新型機体の情報も集めています。

 …裏口は作っておきました。後で中身を覗いてみましょう。レイヴン』

 

 

出先で通信回線細いのに一晩でこの成果。コーラル変異波形はスーパーハッカー。はっきしわかんだね。

コーラルリリース。それは人類の進化と可能性とオールマインドは言っていた。

 

資料は難解過ぎたので、エアに噛み砕いて説明して貰う。

 

真空状態に大量のコーラルを集め、指数関数的に増殖、高密度化させて爆縮を起こさせる。

疑似ブラックホール状に相転移したコーラルは周囲の波形情報をコーラル、人間問わず飲み込み、事象の地平面に記録。

トリガーとなる変異波形の号令により、疑似ブラックホール化したコーラルは自身を自壊させ、一斉にホーキング放射を行って蒸発。

その際に起こる超新星爆発により、波形生命体(コーラル)へと進化した人類は宇宙に拡散していく。

 

 

コーラルリリースのキーとなる変異波形は人間のニューラルネットワークをコーラルに学習させる事で、人間と交信可能な存在とする。

 

 

と資料にあったけど、別の資料にはコーラルの群知能は接触した生命体とネットワークを繋いで知覚を拡大させる習性?性質?がある見たいな記述もあった。この接触による知覚の拡大とネットワークへの散逸がコーラル汚染なのだろうか。そして、それを制御したものが強化人間手術なのだろうか。

 

 

「…もしかするとコーラルは、生態系を拡大するため宇宙に出ようとする本能があって、異種族にアプローチして宇宙へ自分たちを運ぶように仕向けるような遺伝子的なものがあるのかもしれない」

 

そうすると今の自分の名義は状況にピッタリなのか。

 

 

「ちょうど、俺レイヴン(渡り烏)だし。鳥に自らを食わせ、新天地まで運ばせるロイコクロリディウムみたいだね」

 

 

『でも、それでは…あなたと一体になってしまうのは素敵ですが、共生とは言えませんね』

 

一体になるのは素敵だと思うんだ。やっぱり所々で感性が人間と違う。

どちらかと言うとコーラルによる捕食のような気がする。

 

「そうだね。コーラルが人間を取り込んで、人間的な精神を持ったコーラルになるって事だね」

 

進化するなら人間では無い別物になるのだから、さもありなん。

それは人間である事を捨てる事で、ドルマヤンやオキーフは人間である事を選んだのだろう。

 

俺はどうだろう?

人間である事を捨てても良いけど、ウォルターやカーラ、戦友なんかには人間でいて欲しい。

我儘だな、俺は。

 

 

「ところで、エア」

『なんでしょう?』

 

 

「いつもより周囲がキラキラしてるように見えるんだけど」

 

そう、いつもよりも周囲のコーラル濃度が高いような気がする。

具体的にはコーラルを吸っていないのに、うっすらと身体にまとわりつくエアの波形と思しき、コーラルの靄が見える。

 

『すみません、レイヴン。オールマインドのコーラルに関する全データをコピーしたのですが、端末に保存するには容量が足りず…私のネットワークを増強して一時保管しているのです』

 

ええ…どんだけデータぶっこ抜いて来たの。

 

『人間の感覚で言うと太った…と言うのでしょうか。その、あまり見ないで頂けると嬉しいです』

 

「あ、うん。ごめん」

 

視線をなるべく遠くに送って考える。

これだけキラキラして見えるって事はかなり高密度でネットワークを増強してるのだろう。

人間の脳みそ何個分のデータだろう。

 

自分の意思で記憶容量増やせるのは羨ましい。

 

「それにしても困ったな。保存できそうな容量持ってるのは、カーラくらいだろうし」

『カーラに何か問題が?』

 

確かに彼女はドーザーですが、そもそもドーザーがそれほどの容量のストレージを所有しているのでしょうか?

とのエアの疑問も最もだ。

 

「えっとね…俺の記憶が確かなら…」

『観測者たちの結社、オーバーシアーですか』

 

俺の説明にエアは、しばらく考え込む。

 

『いえ、レイヴン。情報はもっと必要ですし、オーバーシアーに情報を提供しつつ保存して貰いましょう』

「大丈夫?」

『全部焼かれては私も消えてしまうので困りますが、あなたを取り込んで一体になるよりも、私はあなたに寄り添い共にありたい。

 

 彼女たちもコーラルの撃滅だけが目的なら、コーラルが自己増殖するのを半世紀も見守っている筈がないです』

 

 

共にありたいとか…これもうプロポーズでは?

(´∀`*)ウフフ

 

いやいや、そうじゃなくて。

 

本当に連絡とって大丈夫か?

これは俺にとってのルビコン川だぞ。

 

どうする?

どうする?

 

”何かあったら心で考えろ、今はどうするべきか…ってな。 そうして笑うべきだとわかった時は…泣くべきじゃないぜ。”

 

俺の心の中にいる幾人ものヒーローたち。

その声が聞こえた気がした。

 

”選ぶのは良い事だ。選ばない奴とは敵にも味方にもなれない”

 

ふつふつと胸の奥から闘志が湧いてくる。

きゅぅぅっと口角が上がるのを止められない。

 

そうさ。答えはいつだって。

 

 

「カーラに連絡を取ろう」

 

 

大丈夫。エア、君は俺が守るよ

 

 






マッハ15くらいまで加速して減速しても、強化人間だから平気へーき。
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