奥さん事件です。
認知して下さい。
以上の3本、お送りします。
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「強化人間C4-621 通常モード移行」
脳内でCOMボイスが響き覚醒する。
輸送ヘリは本当にバカでかい。ACハンガーである筒の上部が居住区になっている。
AC格納してるサイズ感から相当でかいとは思っていた。
んで、どうしてエアが一緒にいる?
寝る前はハンガーで端末弄ってるって言ってた筈だけど。
俺が腕枕して抱え込むようにしてるのは寝れる間に俺が抱き枕にしたんだろうけれど…。
ああ、スカートは外してるのか。
って!?
こ、この感触は…お、お尻!お尻だ!
あの衣装。食い込みが凄いから、後ろも当然…。
全身義体で人形みたいなものなのに、エアが入ってると思うと凄いドキドキする。
なんでだ?
ああ、お尻の感触が。
手が離せない。
肉感的な美少女が腕の中に無防備にいるなんて…だめだめ、叡智すぎます。
と、俺がテンパっていると腕の中でエアが瞳を開く。
「レイヴン、おはようございます」
にっこり。
ああ、眩しい。心が洗われる。
「おお、おはよう。ところで、どうしてこんな事に?」
俺の問いにエアは直ぐに答えてくれた。
「睡眠と言うものに興味があったので。…人間の睡眠と同じには出来ませんでしたが、あなたに包まれて休息を取るのは素敵ですね。とても温かい感じがしました」
「ああ、うん。それは構わないけど、寝る前に教えてね。びっくりするから」
「わかりました。気に入ったので、義体が使える時は出来るだけ一緒に寝ます」
ああ、そうなるんだ。
ん?頭の中のいつもいる感じがしない?
義体の方をメインにしてるからか?
って、ことは…
今なら、今なら!?
「ちょっと、トイレ行ってくる!」
しばらく後…。
( ´ー`)フゥー...スッキリ
久しぶりに一人の時間を楽しめた。
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リビングダイニングルームに向かうが、誰もいない。
ウォルターが起きていないのは珍しいな。
「…621。そこにいるのは、お前なのか…」
掠れた声でウォルターの声が聞こえてくる。
スマートハウスの管理AIによる通信だ。
なんで小声?
手を貸してくれとウォルターが呼ぶので、ウォルターの部屋に向かう。
来たことを告げると電磁ロックが解除され、微かな音と共にスライドドアが開く。
「ウォルター、どう…した、の?」
そこで見たものは壮年期を過ぎていると思われる男性…ウォルターに左右から抱きついて眠る少女達の姿。
二人とも可愛らしい、ゆったりとしたパジャマを着ている。ウォルターが選んだものだろう。
事案だな。
「…ウォルター」
「ち、違うぞ、621。これは二人が勝手に…」
ジト目になってみせると面白いほど慌ててくれる。
うんうん、大丈夫だよ。ウォルター、俺はわかってるよ。
「お父さんとかパパとか寝言で言われて、振りほどけなくなったの?」
図星だったのだろう。
ウォルターは沈痛な面持ちで予想通りのセリフを絞り出した。
「…俺にそんな資格はない」
「親になるのに、そんな資格なんて必要ないよ」
曇らせてゴメンね、ウォルター。
心の中のスッラが悪いんだ。
とりあえず、617先輩の腕から解き…解き…くっ、力強いな!
「なんでこんな力が強いんだ!?」
俺、成人男性型の強化人間なのに!?
「すまない、621。治療する時、次にこんな事があっても死に難いようにと身体強化を行ったのが裏目に出た」
過保護の方向ー!
もう覚醒させた方が速いのではないだろうか。
え?ゆっくり休ませたい?それはそう。
でも、ウォルター。ぷるぷるしてるよ。
「すまない…621」
トイレか!トイレだな?
結構、限界まで頑張ってたな!
猫を膝に受けた飼い主みたいなムーブやめろ!
ウォルターの尊厳の為に頑張って617と620の腕と脚を解いた。
肉が薄くて、ぺったんこだから、変な気が起きなくて本当に良かった。
解放されたウォルターはトイレに飛び込んでいった。
どうやら間に合ったようだ。
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昨夜のような豪勢な食事は終わりだ。
レーションの消費に戻る。
最も俺が仕入れた大豊のレーションがまだまだあるのだよ。
精製装置から作られた真水を鍋に入れてお湯を沸かす。
これは空気中の水分とか、そこらの雪から真水を精製するものであり、真水過ぎて飲む分には不味い。
水には多少の不純物(ミネラルとか)がないと美味しいと感じないのだ。
レーションを湯煎する分にはそのままで大丈夫。
5人分を用意するとなると鍋も複数必要だ。
ん?617と620にはレーション1人前は多すぎるか?
まーいいや。
多かったら残して貰おう。
様子みて調整だ。
今日のメニューは何かな?
筑前煮と五目飯?筑前煮か、渋いね。
里芋、タケノコ、人参が入ってる?いや3Dプリントで成形した合成野菜か。
こんにゃくも入ってる!
温めたものを取り出して、トレーに盛り付ける。
トレーはエアが配膳してくれた。
「「621、おはよう」」
617と620。次いでウォルターがやってくる。
「621。朝食の用意までさせてすまない」
「楽しんでるから気にしないで」
「ウォルター、どうぞ」
エアが椅子を引いてウォルターを座らせる。
617と620にも同じようにしてやり、甲斐甲斐しく世話を焼いている。
620がキッチンとダイニングテーブルを往復するエア、キッチンの俺を交互に見る。
「エアと621。パパとママみたい」
皆で食事と言うところに思うところがあったのだろうか。
「私がママですか?いいですね、617も呼んで見てください」
エアは乗り気で、617にもママ呼びを求める。
しかし、617は首を横に振った。
「お父さんはウォルターだから、ダメ。…それに621は弟だから」
それを聞いて、620も「あーそっか。それじゃ違うね」となる。
エアはがっかりしたようだ。
「それじゃ、エアと621はなんていうのですか?」
好奇心を刺激された620は、俺とエアの関係性をなんと呼ぶのか気になっているようだ。
620はウォルターに向かって質問している。
俺とエアを交互に見たウォルターは何を思ったか。
「そうだな。関係性の呼び方か…夫婦…だろうか」
「ウォルター?」
「…夫婦!良いですね、ウォルター!良い表し方です」
俺は何を考えてるのかとウォルターに白い目を向けたが、夫婦の意味を検索したらしいエアは一瞬の間を開けて、それは名案と両手を合わせて喜ぶ。
「では、617と620は私から見ると小姑になるのですね」
「…小姑」
いや、エア。小姑ってあんまり良い意味じゃないぞ。
「小姑、了解」
「小姑って何すれば良いの?」
「えっと、私が掃除した後を指で擦って「あら、エアさん。こんなに埃が残っていますわよ」と言えば良いらしいです」
それは本当にあっているのか?
そもそも居住区内は掃除ロボットが掃除してるじゃないか。
色々と言いたい事はあったけれど、良いや。
ごはん食べよう。
「いただきます」
大豊のレーションと言うと中華のイメージだが、和食もいける。
上品な鰹節の良い香りが漂う。
少し甘味が目立つ味付けだが、これならエアも617も620も食べやすいのではないだろうか。
ちゃんとコボウやシイタケなどの旨味と香りが口内に広がる。
本当のシイタケなど使っている筈もないので、これは香料で上手くやっているのだろう。
里芋はしっかり歯応えがあり、人参は柔らかく煮込まれて甘味もある。タケノコはシャキシャキ。
未来技術の3Dプリントすげぇ。
620はどうやら人参が苦手なようだ。可愛いか。
五目飯は醤油ベースの味付けで、ご飯全体に出汁を含んだ旨味が沁み込んでいる。
筑前煮との相性も良く、一緒に食べると味の幅が広がるのも良い。
「食事とは栄養を補給するだけの作業では無かったのですね。なんと言うか、この味の刺激が凄く、情報量が凄く多くて、凄いです」
エアの食レポが凄く凄いになっている。
身体を使って受ける刺激は初めてだから、何もかもが新鮮なので上手く言葉に出来ないのも仕方ない。
俺は先に食べ終えると、デザートとコーヒーの用意を始める。
コーヒーはインスタントだが、泥水とは言えない香りだ。
やっぱり、オキーフはベイラム陣営で美味しいご飯を食べると良いのに。
本日のレーションのデザートはあんみつだった。
缶を開けて、パイナップル、ブルーベリー、バナナなんかに見えるドライフルーツのようなものを器にあける。
残りのフルーツと寒天を上に載せ、パッケージから「こしあん」と「黒蜜」を絞り出し、仕上げにウォルターの隠し在庫から酒を取り出し、ちょっとだけ振りかける。
ほんのりアルコールが甘さを引き立てる。
ドライフルーツ(風の何か)が思ったより水分を吸わないが、逆にサクサクとした食感が楽しめる。
3人はコーヒーの苦味はお気に召さなかったようだが、甘味は気に入ってくれたようだ。
甘味で幸せになってる女の子って良いよね。
ウォルターと俺はコーヒーで一息つく。
ああ、もうこんな呑気に過ごしていたい。
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バルテウスの制御ユニットを覚えているだろうか。
そう憑依した直後に戦ったあいつである。
ヘル&ヘヴンでAIをユニットごと引き摺りだしてやったのだが、なんか使い道あるのではと手元に残して置いた。
修理して中身を書き換えたら、ヘリの操縦くらい出来るのではと思っていた。
俺にはそこまでAIを書き換える技能はないので、暇を見てカーラに頼もうとしていたのだが…。
エアが書き換えが完了したと言うので、ハンガーに見に行く。
なんかディスプレイに繋がれた制御ユニットをエアが抱えていた。
「オールマインドのインテグレーション・プログラムを参考に、私のネットワーク構成にレイヴンの戦闘データを統合してAIを組み上げてみました」
どうぞ、と制御ユニットを渡される。
「私たち二人の情報から生まれたこの子は私たちの子供ですね」
衝撃の一言が。
「?」
「人間は二人の遺伝情報を使って繁殖するのですよね。なら、私とレイヴンの情報を使って生まれたAIは私たちの子ですよね」
OK
解った。
言いたい事は良く分かった。
少し落ち着こうか。
私は今…冷静さを欠こうとしています。
えーと、これが俺の子かぁ。腕にずしりと掛かる責任の重み。これが生命の重みか…いや、重ッ!制御ユニットかなりの重さだぞ。
戦闘情報だけ抜き出して生まれたって、どんな修羅。
変異波形であるエアは情報生命体であるから、これでもOKなんだな。これが異種族間のギャップ。
エアの笑顔が眩しい。
これを曇らせるのか…。
「良し!お前の名前は「エンキドゥ」だ」
「エンキドゥ!素敵な名前ですね、レイヴン」
ああああああああ!やっちまった!もう逃げられない!
いや、逃げるつもりはないけどさ。何もしてないのに子持ちになってしまった。
え?エアさん?どうしたの?
え?ウォルターに報告に行く?
え?勿論!喜んで行くよ!
うぉうぉうぉうぉうぉうぉるたぁ、どうしよう。
「…621。そうか…お前が…父親に…」
ちょっとなんでしんみりしてるの?
やめて!カーラに報告しないで!
ちょっとウォルターが壊れてます。
RaDのチャティ・スティックだ。
ボスはお前と出会ってから楽しそうだ。今日も笑い過ぎて緊急搬送された。
要件はそれだけだ、じゃあな。