仲正イチカとオリ生徒のはなし   作:すねーく

2 / 6


 

どこか肌寒さを感じて目が覚める。横を見ると、あどけない表情で眠る少女が、私の分の布団まで奪い取っていた。ベッドから出るには少し早く、二度寝するには目が冴えてしまった朝。先に朝ごはんでも用意しようかなと少しだけ迷って、結局眼の前で気持ちよさそうに眠る少女を眺めることにした。

 

 

かわいいなと思う。そして、随分と印象が変わった、とも。

第一印象はキレイな人だった。真面目で、いつも笑っていて、トリニティの学生にしては珍しく棘がなく穏やかで。それでいて、仕事もできて色んな人から慕われていて。同じ仕事場の同期だけどちょっと高嶺の花。色んな人に期待されていて少しだけ生きにくそうだなぁ、なんて勝手に思ったりもしていた。そんな人が、実はまだまだ子供で理性的な立ち振る舞いを頑張って身に着けていただなんて。付き合わなかったら、絶対知らないままだった。

 

 

「ん...もう、おきるっすか......」

 

「もう少し寝てていいよ」

 

布団をとられたお返しにと彼女の柔らかいほっぺたを堪能していると、日中あまり見ることのできないあお色が少しだけ顔をのぞかせる。触りすぎたかもしれない。いつもはどこまでも見透かしてきそうなキレイなあお色が、寝ぼけている時はひどくやわらかい。こういうところがかわいいと思う。普段は委員会の仕事があって朝は早いから、こうやってベッドの中でゆっくり過ごすことは無いけれど、今日みたいに何もない日はイチカが満足するまで寝かせてあげるのが私の中のルールになっていた。理由は、いつも忙しいイチカにちゃんと休んでほしいのが半分。もう半分は、私がイチカを甘やかしたいだけ。世話焼きで人助けが趣味な少女は、自分自身にあまり優しくない。要領が良くて大体のことは人並みにこなせるくせに、自分には無頓着なのだ。だから、私と二人きりの時くらいはしっかりしなくてもいい時間を彼女にあげられたらいいな、と思ってそうしている。実際、こういう風に甘やかしていると、委員会の人たちには見せないような一面を私にだけ見せてくれる。いやぁ、いつもかっこいいイチカ先輩が寝る時に手をつながないと拗ねるだなんて、後輩たちは想像できないでしょ。

 

 

 

 

しばらくイチカの寝顔を眺めて満足したので、スマホに何か通知が入っていないか確認しようと、てきとうに手を動かす。枕元にあるはずのスマホが中々見つからない。仕方なくベッドから体を起こそうとすると、それを妨げるように腕が腰に回された。どうやらお姫様が目覚めたらしい。イチカの方に顔を向けると、澄み切ったあお色とばっちり目が合った。

 

「おはようっす、ツムギ」

 

「おはよう、イチカ。よく眠れた?」

 

「う~ん、誰かさんの視線が熱くて、まだ少し寝足りないかもしれないっす」

 

「ごめんね、随分と可愛らしい寝顔だったから。じゃあ、私ももう少し寝ようかな」

 

イチカの冗談に苦笑いしてこたえる。付き合ってから知ったことだが、意外とイチカは自分の顔の良さを自覚している。付け加えると、私がイチカの顔をとても好きである、ということも。例えば、自撮り。私は旅行に行った時風景の写真を沢山撮ってそれを彼女に共有するだけだが、彼女は絶対に自分の自撮り写真を送ってくる。しかも、かわいかったり美しかったり自撮り写真の雰囲気は毎度異なるが、SNSに載せたら絶対バズるだろうなと思うようなクオリティの写真ばかりだ。いつだったかSNSに載せないの?と聞いたことがある。そうしたら、

 

「かわいく撮れた写真はツムギにだけ見てもらいたいっす」

 

と言われた。このお嬢さん、とんでもなくないですか?破壊力、やば。思い出すだけで頬がゆるんじゃう。

 

「も~、何ニヤついてるんすか」

 

「昔のイチカのこと考えてた」

 

「可愛い彼女が目の前にいるのに、昔の女に思いを馳せるなんて良くないっすよ」

 

しろくほっそりとした指が私のゆるみきった頬をつまむ。こうやって今の自分を見て!と冗談を交えながら主張する姿は微笑ましい。以前は、こういうことを言った後にすぐ冗談っすよ、とか、重くないっすか?なんて聞いてきたけれど、私がそのたびにそんなことないよと伝えたおかげか、今じゃ私をからかうために言うようになってきた。素直で自分のかわいさを自覚していて素敵でしょう、うちの子。ほんと、こういうところがかわいいんだよ、イチカは。

 

「あぁ、もう。いい加減起きるっすよ!」

 

頬から手を離して勢いよく体を起こしたイチカにビクッとする。イチカのことはよく知っているつもりだけど、時々こういう不思議な行動をするところは未だに慣れない。そういうとき、イチカの顔を見れないことが多いけれど、雰囲気からして不機嫌というわけではなさそうなので、まあいいかと突っ込まないようにしている。とりあえず今はどこかご機嫌なお姫様の朝ごはんを考えなければ。今日は何にしようかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんな、かわいくて仕方ないって目で見られたら、恥ずかしくてしょうがないっす」

 




・成瀬ツムギ

身長:161cm
役割:STRIKER
ポジション:FRONT
クラス:タンク
武器:ステンMk.II SMG
攻撃タイプ:貫通
防御タイプ:重装甲


<基本情報>
トリニティ総合学園2年、正義実現委員会所属。趣味は風景写真を撮ること。時々写真を撮りに行って寮の門限を破ることがあるが、基本的には常識人。正実では、現場写真の撮影や現場資料の回収・押収を主に担当している。とある一般委員と付き合っている模様。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。