仲正イチカとオリ生徒のはなし   作:すねーく

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巷では、随分と手慣れていたり刹那的な生き方をしたりするイチカを多く見かけますが、うちの子達は穏やかな日々を過ごしていてほしいし、これくらいゆるやかにじっくりと関係を進めていってくれたらいいなという話です。



熱量

 

「手、ちいさいっすね」

 

カメラのお手入れをしている私の目の前で、イチカがぽつりと言葉をこぼす。しっかりと手を拭いてからイチカに向かって腕を伸ばすと、何も言わずとも素直に手を合わせてくれる。手を合わせて比べてみると、私の方が一回り小さい。

 

「いいなぁ、イチカは手がおおきくて」

 

「なんでっすか?」

 

「カメラ使うときちょっと不便なんだよね。もう少し大きい手でありたかった」

 

「あぁ、確かに、ものを掴むときに困ったことは無いっすね」

 

身長はほとんど同じくらいなのに、なんでだろう。手の大きさと身長ってあんまり関係ないのかな。人類の個体差について考えながらほっそりとした手をすりすりしていると、イチカが身をよじらせる。

 

「くすぐったいっす」

 

「いいじゃん、触らせてよ。イチカの手好きなんだ」

 

私がそういうと、まんざらでもなさそうにイチカが笑う。さっきからされるがままのイチカがかわいい。にぎにぎしてみたり、ぎゅっとしてみたり。しばらく彼女の手で遊んでいると、空いていた方の手で手首を掴まれて触るのを中断させられる。そのままきゅっと手を恋人繋ぎにされて。びっくりして顔をあげると、大好きなあお色が楽しそうに私を見つめていた。

 

「好きなのは、手だけっすか?」

 

「イチカの目もすごく好き」

 

「お、そういう感じでくるんすね。全部っていうかと思ったっす」

 

「もちろん、イチカのぜんぶが好きだよ」

 

「もー、調子いいんすから」

 

私が即答すると、照れ隠しの言葉とともにイチカがはにかむ。さっきまでしろかった頬に赤みがさしていて、私の中に”かわいい”がじわじわと溜まっていく。

 

 

ほんと、食べちゃいたいくらい、かわいい。

 

 

最近、イチカと過ごしているとこういう気持ちになることが多くて少し困っている。付き合い始めてから確実にスキンシップは増えたと思うけれど、未だに私たちの関係はひどく清らかで、キスさえしたことはない。別に、そういうことをしたくないわけじゃないし、イチカも知らないわけじゃないと思う。だけど、それについて二人とも何か言ったりはしないし、私も急いでこの関係をどうにかしようとは思っていない。だって、こうやって話すだけでもイチカはいっぱいいっぱいになってしまうし、まだ早いかなって。子供扱いしてるわけじゃないけれど、私だけこんな気持だったらかっこわるいし。だから今日も、少しだけ熱を帯びたかわいいに蓋をする。そうして気を紛らわせるように、恋人繋ぎをしていた指をゆるゆるとほどいて中断していたお手入れを再開した。

 

 

「まだまだ好きなところあるんだけど、」

 

「お腹いっぱいなのでもういいっす!」

 

作業を見ていてもつまらないだろうし、イチカの好きなところをもっと言ってあげようかなと思って話を続けようとすると、どうやらもう十分らしい。食い気味に返答される。ほらね、こんな子に今すぐこれ以上の関係を望むのはさすがに時期尚早ってわけ。じゃあ何について話す?と聞くと、私の問いに答えることなくイチカが立ち上がる。飲み物でも取りに行くのかと思えば、目的地はどうやら私の膝の上で。キレイなあお色がいつもより少しだけ高い位置から私を見下ろした。

 

「これじゃあお手入れできないですよ、イチカさん」

 

「可愛い彼女に構うことよりも大切なことっすか?」

 

そう言われてしまえば、どうしようもない。お手入れするのをあきらめて本日二回目しっかりと手を拭いてからイチカの腰に手を回す。二人きりのときは、随分とあお色を見れる時間が増えたと思う。委員会では私よりも他の子の方がイチカと一緒にいることが多いけれど、そんな彼女たちよりも自分がこの瞳の色を独占しているんだと思うと、ひどく満たされた気分になる。本当に、いつ見てもキレイな瞳。

 

「ツムギは分かりやすいっすね」

 

しばらくじっと見つめあっていると、イチカがそう言って私の頬を両手でつつみこむ。そのまま頬を撫でられて、ぱっと手離したかと思うと今度は首の後ろに腕を回してきて。イチカとの距離がぐっと縮まって、あ、と思ったころには唇に柔らかい感触が。

 

 

 

「あは。顔、真っ赤っすよ」

 

 

 

言われなくても、わかってる。キス、された。このタイミングでされるとは思わなくて。不意打ちでされて赤くなっているのがどこか恥ずかしくて。そんな表情を見られたくなくて、イチカの肩に顔を押し付ける。恥ずかしすぎる、と肩に顔をうずめたまま呟く私をイチカがくすくすと笑う。本当に恥ずかしくて仕方ない。分かりやすいって、そういうこと。ちゃんと蓋をして、イチカにはバレてないと思っていたのに。イチカにはまだ早いだなんて思っていた数分前の自分に言ってやりたい。ちゃんと隠せてないよ、もうバレバレだよって。この熱量が一方通行ではないということを、イチカ本人が言葉にして行動で示してくれるとは思わなくて。嬉しさよりも恥ずかしさが先行してしまったけれど。ちゃんと、すごく、嬉しい。それと同時に私だけじゃないんだ、とイチカの言葉にひどく安心した。

 

 

「ツムギだけじゃないっすよ。そういうことしたいって思ってるの」

 

 

まだまだ恥ずかしくて、もうしばらくこのままでいたかったけれど。いつまでも恥ずかしがっているわけにもいかないから、そっと顔をあげてイチカを覗き込む。そうしたら、いつもより濃いあお色が愛おしそうに私をみていて。せっかく元通りになった顔がまた赤くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今度はツムギからしてほしいっす」

 

「ぅ゛ん゛」

 

 




イチカとオリ生徒の話もっと増えてくれ~
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