仲正イチカとオリ生徒のはなし   作:すねーく

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※がっつり水着イチカメモロビの話です。イベストの話もほんの少しだけ入っています。未読の方は注意してください。

水着イチカ本当にありがとう。メモロビでトキメキとドキドキが止まらなかった。このトキメキとドキドキを消化しようと思ったのに、イチカは中々でてこないし先生とツムギがコントしているのがメインになってしまった。
先生は性別どっちともとれるように書いてます。


先生!

 

 

書類の山とそれに埋もれるように机に突っ伏した先生。シャーレの光景は、だいたいいつも変わらない。久しぶりに当番で先生の部屋を訪ねると、やはり今日も同じ風景がそこにあった。

 

 

「おはようございます、先生」

 

とりあえず挨拶をして、返答がないことを確認してからコーヒーの準備を始める。勝手知ったるシャーレではあるが、コーヒーミルで豆を挽く──なんてことはしない。インスタントの粉にお湯を注ぐだけ。

 

 

「せーんーせーいー」

 

「ぅん......」

 

 

コーヒーができたタイミングでもう一度声をかけてみたが、先生は机に顔を押しつけたまま、寝言のような音を漏らしただけだった。仕方がないので、カップを机に置いて、今度は少し声を張り上げて呼びかける。

 

 

「先生!起きてください、始業時間ですよ。起きないと書類の山に飲まれますよ」

 

「......それはもう飲まれてる気がする......」

 

 

ぼそりと返ってきた声と同時に、机に押しつけられていた顔がゆっくりとこちらを向いた。寝ぐせと、紙の跡と、絶妙に焦点の合っていない目。

 

 

「おはようございます。コーヒーどうぞ」

 

「......ありがとう」

 

 

渡したコーヒーをグイッと飲み干し、頬を数回ぺちぺちと叩く先生を横目に、私は今日の書類の量を確認する。今日も多いなぁ、なんて思いながらしばらく待っていると、先生はようやくスイッチが入ったような顔になり、大きく息を吐いた。

 

 

「おはよう、ツムギ!ごめんね、情けないところ見せて。最近ちょっと忙しくて」

「いえ、大丈夫です。でも先生、せめてソファーで寝ましょうね」

「あはは。気をつけるよ」

 

 

全くもって改善する気がなさそうな返答をしりめに、私は机の端から書類の山をひとまとめにする。大まかに分けて、必要そうなものを先生の手元に滑らせた。

 

 

「さて、今日も頑張りますか」

 

「本当に頼りにしてます。ツムギさん、よろしくお願いします」

 

 

先生はわざと真面目ぶった声で言いながら、ぺこりと小さく頭を下げた。

 

 

 

+++

 

 

 

「......そういえば、この前イチカと海に行ったんだけど」

 

突然会話が始まるのも、いつものことだ。私は手元の書類をめくりながら、続きを待った。

 

「夜に散歩した時さ、面白い話をきいてね」

 

 

この前というのは、最近一般開放されたティーパーティーのプライベートビーチに行った時のことだろう。イチカからティーパーティーの護衛として行くという話を聞いた覚えがある。護衛が終わってからも、一般開放されたビーチでのパトロール業務が忙しいようで、まだその時の思い出話をそんなに聞けていないのだけれど。それにしても、へぇ。先生、イチカと夜に散歩か。どうせ二人きりだったんだろうなぁ。

 

 

「ひとの彼女との夜の逢引で、どんな面白い話を?」

 

 

冗談交じりに言うと、先生は想像以上に動揺した様子で慌てはじめた。

 

 

「ま、まってツムギ!確かに二人きりだったけど、そういうんじゃなくて......!」

 

「......本当に二人きりだったんだ」

 

「ちがっ......くはないけど!でも、私も生徒に手を出すほど落ちぶれてないから!実際ほぼ面談みたいなものだったし!それに、イチカはちゃんとツムギのことが大好きだって言ってたし!」

 

 

最近イチカと過ごす時間がとれない不満と、恋人が頼りにしている大人と二人きりで夜の浜辺を歩いたという事実への嫉妬。そのふたつを飲み込んで、肩をすくめて軽く笑った。

 

 

「わかってますよ先生、冗談です冗談」

 

「だ、だよね......つい取り乱しちゃったよ......」

 

 

先生は恥ずかしそうに頭をかきながら、安心したように息をついた。ここで先生にいろいろぶつけるほど子どもではないが、先生相手に嫉妬をしないほど大人でもない。この場にイチカがいなくてよかった。こんなふうに気持ちを持て余している顔なんて、見せたくないし。あと多分、せっかくイチカが私に配慮して黙ってる思い出を本人がいないところで聞いちゃったのも申し訳ないし。

 

 

「さ、また書類片づけていきますよ。今日は絶対時間内に終わらせるんですから」

 

「う、うん。そうだね。喋ってたら終わらないからね......」

 

 

少しだけ微妙な空気になったけれど、書類は待ってくれない。私は椅子を引き直して、手元に意識を戻した。

 

 

 

+++

 

 

 

時計の針がもうすぐ終業時間を指し示すころ、ようやく一息つける時間ができた。小さく背伸びをしてから、私は先生のほうにちらりと視線を向けた。

 

 

「そういえば先生、面白い話って結局なんだったんですか?」

 

「え?......あぁ、さっきの話か。大した話じゃないんだけど、正実の子たちって皆チョーカーつけてるじゃん。あれ、首輪なんだってね」

 

「意識したことなかったですけど、首輪......?」

 

「あ、あれ?違った?確かイチカはそう言ってたんだけどな......」

 

「うーん、イチカが何を根拠にそう言ったかはわかりませんし、私も本当のところどうなのかは知りませんが。さすがにおしゃれ的な意味だと思いますけどね」

 

「そっかぁ。イチカに壁ドンされてドキドキしてたから、ちょっと記憶が曖昧だったのかも。確かに、首輪だと、こう......アレだも「先生、今壁ドンって言いました?」」

 

 

先生は相変わらずこういう話が好きなんだなぁ。トリニティで首輪だなんて、そんな......なんて思っていたけど、今聞き捨てならない言葉がありました。つい食い気味で聞き返してしまった私に、先生があっ、みたいな顔をして目をそらす。

 

 

「イチカに!夜の浜辺で!壁ドンされたんですか!?何してるんですか、生徒相手に!」

 

「いやいや!私はされた方だから!壁ドンしてない!されたの!圧倒的受動側!」

 

「それはそれで問題ですから!夜の浜辺で壁ドンって、どういう状況ですか!先生なら回避できたはずです!」

 

「ちょっと語弊があって、いや、事実としてはそうなんだけど......その、勢いというか、流れというか――」

 

「私より先にイチカに壁ドンされるなんて!この泥棒猫!」

 

「そこ!?」

 

 

私が机を回り込んで詰め寄ると、先生は慌てて椅子ごと後ずさり、壁までじりじりと追い詰められていく。ついには私が片手を壁につき、先生を挟んだまま言い募っていたそのとき、かちゃり、と部屋の扉が開く音がして、私たちは同時に動きを止めた。

 

 

「もー、二人とも、何やってるっす......か」

 

 

振り向いた先には、廊下の明かりを背にイチカが立っていた。その視線が、壁際で先生を追い詰めている私と、顔をひきつらせている先生を交互に見て、ぴたりと止まる。最悪のタイミングだ。しばらく無言が続いて、この空気に耐えられなかった先生が先陣をきって口を開く。

 

 

「え、えーと。ツムギにも壁ドンされちゃったね、あはは......」

 

「......にも?......先生。墓場までもってくって言いましたよね?」

 

テキトーなことを口走った先生に対するイチカの声が少し冷たくてちょっとこわい。というか、墓場ってなに。

 

「ち、ちがっ、いやその、思わず口が滑ったっていうか――」

 

「あと、なんでツムギが壁ドンしてるんですか?」

 

「......イチカが先生に壁ドンしたって聞いて、その、問い詰めてました」

 

 

目の据わったイチカに言い訳をしながら、私はそっと先生から距離をとる。それをみたイチカの雰囲気が和らいだような気がして少し安心した。

 

 

「とりあえず、当番の仕事は終わったっすか?」

 

「「それはもう、もちろん!」」

 

「じゃあ帰るっすよ、ツムギ」

 

「あ、はい......」

 

「それじゃあ先生、お先に失礼するっす」

 

「お、お疲れさまでした!先生、今日はせめてソファーで寝てくださいね」

 

 

挨拶もそこそこに、先に歩き出したイチカの背を小走りで追う。追いついてそっと彼女の顔色を窺うと、変な顔をしていて思わず笑ってしまった。それにつられてイチカも表情をゆるめた。

 

 

「もー、何で笑うんすか」

 

「いやぁ、イチカがかわいい顔してたから」

 

「これでも私、おこってるんすよ」

 

「私は久しぶりにイチカと話せて嬉しいよ」

 

「......壁ドンのこと、黙っててごめんなさい。先生との秘密にしたかったわけじゃなくて。言い訳になっちゃうけど、ツムギに伝えたら嫌な気持ちになるかなって」

 

「大丈夫、わかってるよ。確かにちょっと嫉妬したけど、秘密を全部共有する関係が健全だと思わないよ」

 

 

変なところを見られたけど、イチカと一緒に帰るのも久しぶりで本当に嬉しいし、イチカがちゃんと考えて黙っていたのもわかっているというのに、まだ落ち込んだ顔をしているものだから。先生の話を思い出して一つ提案してみる。

 

 

「チョーカー、首輪なんだって?お揃いにしようよ」

 

 

私がそう言うと、イチカは一瞬だけ目を見開いて、それから、ふと目を細めて笑った。お揃い、いいな。何気にお揃いのもの持って無いし。あんまり派手なものは付き合ってるのがバレそうだし、いい感じのがあるといいな。名前入れるのってありかな。そうやって一人でちょっとうきうきしている間に、イチカも調子を取り戻したようで。

 

 

「首輪、つけてくれるんすか?」

 

「イチカも私に首輪つけるんだよ」

 

「壁ドンもしてほしいっす」

 

「えー、私にもしてくれるなら、まあいいよ。あ、一緒に海も行こうね」

 

 

夏休みに思いをはせる私の手をいつの間にかイチカがぎゅっと握って。「全部、約束っすよ」と小さく笑った。はにかんだその笑顔が本当に可愛くて、もしイチカが私以外の人を好きになっても手放してあげられないなぁ、なんて思った。

 

 

 




水着イチカ本当に本当にありがとう。イベストではカスミにキャンキャン吠えててかわいかったし、メモロビでは心臓爆発するかと思ったけど、最高の夏イベだった......。メモロビで先生だけっすよて言われたときにはツムギに顔向けできなかったけど、無理やりどうにかしてみました。ちょっと無理やりすぎたかも。お手柔らかに。
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