黎明のフリーレン   作:新グロモント

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01:旅路

 ある日、森の中、エルフに、出会った。

 

 それが、彼の最初の感想であった。彼は、この世に生を受けて、早20年……電気・ガス・水道などライフラインが無い中で頑張った。時折、前世の生活が恋しくて涙で枕を濡らすことは多々あった。

 

 彼としてもライフラインだけが問題なら何とかなっただろう。しかし、人類では太刀打ち出来ない様な化け物……更には、同じ言葉を使う魔族という特級にヤバイ存在がいる。魔族は、まさに「人の心とかないんか」と言いたくなるレベルで人類を嫌悪している。言うならば、人類がゴキブリをみるような感情と等しい。

 

 そんな彼の名は、ボンドルド。どこぞの白笛と同じ名を持つ、魔法がほどほどに好きな転生者であり、常識人だ。

 

 森の中で呆然と立ち尽くす男に、エルフがようやく顔を向けた。ツインテールの銀髪エルフ――背丈こそ低いが、その身に秘める膨大な魔力は見た目とは異なり、相当な年齢である事が窺えていた。

 

 そこで、ボンドルドは気が付いた。

 

「あれ?ロードス島じゃなくて、フリーレンじゃない?ここ」

 

「最近、人とは関わりを持った記憶はないけど……だれ?」

 

 剣と魔法の古き良きファンタジー世界というのは、数多い。だからこそ、主役級の人物にでも会わない限り、どの世界か判断出来ない。そんな中、彼は幸運に恵まれた。

 

 この出会いこそが、未来において魔族を滅亡寸前にまで追い込み、人類に光をもたらす存在を生む。

 

 後に、彼はこう呼ばれる……【黎明卿ボンドルド】と。

 

 

◇◇◇

 

 勇者ヒンメルが死亡して、27年後。

 

 フリーレンとその弟子であるフェルンが過去に魔王討伐をした仲間を訪ねて旅をしていた。だが、心の機微がわからないフリーレンは目的地を告げておらず、それに不安を感じたフェルンがそれを質問する。

 

「フリーレン様。何処に向かわれているのでしょうか?ヴァルムからグレーゼ森林へ向かうには少し道を外しております」

 

「あぁ、そういえば伝えてなかったね。少し、厄介な事を片付けたいから戦力補充をしたくてね。魔法使い二人と言う事もあり、バランスが偏る戦力調整にも最適な奴が一人居る」

 

 この時、微妙な顔をしているフリーレン。そんな顔は、今までフェルンも見た事が無かった。そもそも、交友関係が絶望的だと言っても過言でないフリーレンにそんな都合の良い存在が居るのだろうかと、弟子であるフェルンは思っている。

 

 何年も共に生活をしてきて、師の人となりを理解してきたフェルン。そんな師に付き添える人物など、頭のネジが外れた存在だけだと思う次第だ。無論、その中に自分が含まれている事は重々承知している。

 

「そうなのですか、しかし……フリーレン様にそのようなお知り合いが居たとは初耳です」

 

「フェルンも酷い事を言う。私にだって人付き合いはあるさ。尤も腐れ縁に近いけどね。――ボンドルド。過去には北側諸国において英雄とまで呼ばれた対魔族戦における頭のネジがいかれた奴さ。この際、背に腹は代えられない」

 

 これからの旅路を考えての選択をしたフリーレン。一度は、行ったことがある道だとは言え大事な弟子であるフェルンが同行する旅だ。以前とは異なり、パーティーメンバーに不安がないとは言い切れない。

 

 その為、僧侶、戦士、更には魔法使いまでこなせそうな万能なお助けユニットを思い出した。

 

「黎明卿ボンドルド様ですか、そのような方とお知り合いだとは存じませんでした。しかし、どういったお方なのですか?」

 

「知り合いというか、弟弟子。フェルンにも良い刺激になるはず。………尤も、性格については、ゲス外道だから気をつけてね」

 

 フリーレンの口からゲス外道という言葉が出た事に驚くフェルン。

 

 他人への関心が薄い師がここまで言うのだから、相当な人物なのだろうと思っていた。だが、人づてや書籍などで聞く黎明卿ボンドルドのイメージとは懸け離れていた。人を慈しみ、愛を広める宣教師であるとまで言われている男だ。

 

 その懐が広すぎる故に、魔族まで保護していると言われている。

 

「しかし、フリーレン様の古くからのお知り合いとなれば同じエルフの方でしょうか」

 

「いいや、アイツは人間だよ。――そういえば、なんで、アイツはまだ生きているんだ」

 

 フリーレンの弟弟子という事で、存命中のエルフだと思っていたフェルン。だが、師の口からは人間だと判明して、驚くばかりであった。何に驚くかと言えば、常識的に考えて師がボケてしまった可能性があるという事だ。

 

 見た目は若いが実年齢が不詳のエルフ。人間と違って、その手の病気などへの実例が全く無いため、ボケの不安を拭えない。

 

「フリーレン様、今度、民間魔法でボケ防止の魔法を探しましょう。大丈夫です、まだ間に合います」

 

「へぇ~、フェルンも言うようになったね。久しぶりに、実践的な魔法訓練をしようか」

 

 その日、フェルンは師から防御魔法のピンポイント展開を学ぶ事になる。

 

 発展しすぎた防御魔法のお陰でほぼ全ての魔法攻撃を防御可能となった……その歴史も学ぶ事になり、フェルンは魔法使いとして更なる高みへと足を踏み入れ始めた。

 

………

……

 

 国家間の緩衝地帯に設けられたボンドルドの研究所……イドフロント。そこに、麗しい二人の女性が足を運んでいた。フリーレンとフェルンである。

 

 巨大な施設のインターホンを鳴らし、案内役に従い施設内部へと踏み入れた二人。その施設の中を見て、首を傾げるフェルンがいた。

 

「フリーレン様、この明かりってどのように光っているのでしょうか。何かを燃やしているわけでもなく、魔法でもありません」

 

「あぁ、確か電気とかいった科学らしい。私は、その専門分野じゃ無いからよく分からないけど、ボンドルドはそう言うことが好きだった。300年ほど前には既に実用化していたはずさ。世間には出回ってないみたいだけどね」

 

 300年前と軽く言うが、エルフの感覚で言えば普通だろう。しかし、常人の感覚で言えば、300年前など大昔だ。

 

 この建物の作りもそうだが、この施設全体に漂う魔力。更には、研究員達(アンブラハンズ)も三級魔法使いと言ったレベルの者達が揃っており、どういう場所だとフェルンは勘ぐるばかりであった。

 

『フリーレン様、ボンドルド様が来られるまでお部屋で過ごされますか?いつでも、帰ってきて頂ける用にフリーレン様のお部屋は以前のままにしております』

 

「ありがとう、グェイラ。今は、客間で良いよ。自室じゃ狭いからね」

 

「フリーレン様って宿無しじゃなかったんですか!? 後で、お部屋を見せてくださいね。ダメですよ、お部屋は掃除しないと汚部屋になっちゃうんですから」

 

 そんな、フリーレンの知られざる一面を知る事になったフェルンは、少し嬉しかった。嫌そうな顔をするフリーレン。だが、そんな顔の師をみるのが大好きであると歪んだ感情が彼女の中に芽生え始める。

 

 そして、客間で待つこと5分。彼女達は最高のお持てなしを受けていた。

 

「このお茶菓子美味しいですね、フリーレン様」

 

「ここのメルクーアプリンは最高だね。いつきても変わらぬこの味」

 

 コツコツコツと足音が聞こえてきて、客間の扉が開く。

 

 ソコには、怪しげな黒装束を着込んで紫に縦ラインが光る鉄仮面を着けた大男が居た。本来この段階で警戒すべきだが、フェルンは動けなかった。フリーレンの方は一瞬、目を向けただけでそれだけだ。

 

「おやおやおやおや、これはフリーレンさん。52年3ヶ月10日5時間ぶりの再会ですね。それに、そちらのお嬢さんは……」

 

「フェルンと申します、ボンドルド様。フリーレン様の弟子です」

 

 立ち上がり頭を下げるフェルン。

 

 ボンドルドは、フェルンを確認して始まったかと全てを理解した。そして、フリーレンの成長を喜ばしく思った。あの、人間に全くと言って良いほど興味が無いエルフが、人の心を理解する為、弟子をとり故人に会いに行く。同じ師の下で学んだ古き良き友人として何かしたいと思うのは当然である。

 

「で、本題なんだけどボンドルド……」

 

「引き受けましょう」

 

 何用を聞く前に全てを承諾したボンドルド。

 

 そのあまりの回答の早さに、客間が沈黙してしまう。フリーレンとしても、最終的に承諾してくれるとは思っていたが、何かしら条件を突きつけられるかと思っていた。だが、その条件すら無く承諾されてしまう。

 

 ボンドルドの事をよく知るフリーレンとしては、少し考えにくかった。

 

「フリーレン様は、ボンドルド様の弱みとか握っておられるんですか? 交渉すら無く、快諾されてしまいましたよ」

 

「いえいえ、そのような事はありませんよフェルンさん。フリーレンさんには、以前来られた際に色々と研究のお手伝いをしていただきましたので、そのお返しです。ご安心ください、私が全力を以て貴方達をお手伝い致しましょう」

 

 仕事に対しての報酬として、英雄と呼ばれたボンドルドが無償で手伝ってくれる。ソコだけ見れば、素晴らしいのだが、一体どれだけの仕事をしたのかと疑問に思うフェルン。フリーレンの性格は、10年に渡る付き合いで理解しており、あの師がそこまで率先して手伝う事は何だったのかと、新たな疑問が生じる。

 

 そんな悩み中のフェルンが、客間の扉からコチラをのぞき込む子供を見つけてしまう。

 

 銀髪のエルフの少女。どことなく、誰かに似ている気がした。その子供は、何も気にしない様子で客間に入ってきた。そして、ボンドルドの横に座る。

 

「パパにお客様なんて珍しいね」

 

「こらこら、いけませんよプルシュカ。お客様にご挨拶が先でしょう」

 

 プルプルプルと何故か震え出すフリーレン。フェルンは寒いのかと思ったが、何故、師が震えているか全く理解出来ない彼女であった。

 

初めまして(・・・・・)、私はパパの娘のプルシュカ。よろしくね」

 

「お子さんが、いらっしゃったんですねボンドルド様。幼いエルフの方は初めて見ました。初めまして、フェルンと申します」

 

「そ、そうだね。初めまして(・・・・・)、フリーレンよ」

 

 滝のような汗を流すフリーレンが、どこか上の空でプルシュカに返事をしていた。

 




アニメをみて、全巻購入して嵌まりました。
その為、見切り発進しましたが、最後まで頑張ります。

ネタが尽きてしまったので、どのようなお話を知りたいか読者様にお伺いできればと思っています。全て何話程度やるかも全く未定です。

  • 過去編(1000年前、初代ボンドルド)
  • 過去編(人類防衛ライン戦)
  • 過去編(50数年前、居候フリーレン)
  • 閑話(ゼーリエとプルシュカの文通)
  • 閑話(プルシュカと女神の魔法)
  • バカか、全部やれ
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