黎明のフリーレン   作:新グロモント

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閑話:一級魔法使い試験④

 何事も無く一次試験を通過したボンドルド一家。彼等が二次試験を待つ僅かな期間で、街は帝国の話題で持ちきりだった。だが、そこは腐っても帝国が死ぬ気で情報隠蔽を頑張っていた。

 

 帝国の教会に女神様からのメッセージが届いた。それも、帝国に繁栄をという内容に書き換えられての宣伝。現在その教会は、魔導特務隊が厳重に警備しており一般人が見ることは叶わない。

 

「まぁ、常套手段ですね。何も問題は、ありません。女神様の啓示を改変して伝えている事が大罪です。さて、久しぶりに本気でゴミ掃除にいきましょう」

 

「賛成だね、ボンドルド。しかし、本当に人間って色々なタイプが居るよね。私が今まで出会ってきた人間は、かなり善人の部類だけだったと理解した。本当に困るよね。……、思ったんだけど、私の人間観を壊しているのってボンドルドだよね?」

 

 フリーレンは、この1000年以上生きる中で善人の部類に入る人間としか、ほぼ付き合いが無い。人類を代表するような大魔法使いフランメ、敬虔なる女神の使徒ボンドルド、勇者ヒンメル、彼等の周りには必然的善人が寄ってくるのは当然だ。

 

「ママは、世間知らずだからね。プルシュカの方が人生経験積んだわ。リコさん隊で世界を回ったときは、そりゃ色々あったんだから。パパやヒンメルさんみたいな知名度が無かったからね。悪い人達もいっぱい」

 

「お姉ちゃんだけズルイです。アリスも旅をして経験値を集めてレベルをカンストしたいです。その為に、酒場で仲間を集めます」

 

 可愛い子には旅をさせろ。だが、アリスの事が心配で飯も喉が通らなくなる未来が見えてしまうボンドルド達。確かに、フリーレンの弟子であるフェルンはその位の年齢から旅をして成長した。だが、エルフの10歳児を旅に出すなど虐待と言われても文句は言えない。

 

「そうですね。一級魔法使い試験に合格できれば、考えてあげます。それと、酒場で集める仲間の面談は私達のお眼鏡にかなう人じゃないと駄目ですよ」

 

「ぱぱからお許しがでたので、アリス一級魔法使いに必ずなります」

 

 その面談に来る面子にボンドルドも顔が引きつる事になる。歴戦のモンクであり過去には勇者の剣を引き抜き世界を救った先輩勇者のエルフ男性。天地創造の女神に一番近いと言われる魔法使いのエルフ女性。世界一崇められているエルフであり僧侶にとって神にも等しい本当に天地創造をした女性エルフ。他にもお酒大好きの商人として、フリーレンの旧友まで現れる。

 

 世にも珍しいエルフ100%のPTが完成してしまう。勇者、モンク、魔法使い、僧侶、商人といったそうそうたる面子になる。

 

◇◇◇◇

 

 二次試験会場となった零落の王墓。

 

 ここは、既に攻略済みのダンジョンだがトラップと魔物は今でも稼働中だ。その為、良い訓練施設として活用されている。最深部には、今は亡きレルネンが作ったゴーレムが鎮座しており、一級魔法使い試験のボス役として稼働中。

 

 これから始まる事にワクワクな一次試験通過者達。だが、ボンドルド一家だけは何やら揉めていた。

 

「生け捕りにして、無限回復魔法で臓器再生をさせつつイドフロントの魔族達に食材として提供しましょう。彼等もいつまでも食べられる食材があると労働意欲も沸くはずです」

 

「ボンドルド、それだと魔族が食べ過ぎたら死んじゃうじゃないか。やはり、転移魔法で生命力の高いGと融合させて、死にづらくしよう。意識は人間のままを保って狂えないようにするから」

 

「やだやだ。プルシュカの人の尊厳を終わらす魔法(ゾルトラーク)の実験台にするの!! 麻疹と水疱瘡と帯状疱疹と虫歯にする魔法も作ったんだから」

 

「アリスは、全部盛りで良いと思います。ぱぱの無限回復魔法を掛けつつ、ままの転移魔法で生命力強化で死ににくくして、お姉ちゃんの魔法で苦しむとか無敵です」

 

 これが親子の絆だ。

 

 その会話が聞こえてしまった受験生は、何を言っているか理解出来なかった。彼等が知る魔法とは知らない次元の話をしており、話にとても脳が付いて行かない。

 

 ゲナウを含むこの話を理解出来てしまう一級魔法使い達は、絶対にエルフに対して不敬なことをしないと子孫代々に伝える事を決意する。こいつらは、ヤバイってレベルではない。普段温厚な人達がキレると何をするか分からないという事を体現している。

 

………

……

 

 ダンジョン。そこにはロマンが詰まっている……筈だった。だが、既に未攻略のダンジョンというのは本当に数を減らしていた。勇者ヒンメル時代に激減し、リコさん隊が残りも平らげていった。

 

 つまり、残っている宝箱など存在しない……筈だった。

 

「うひょーー宝箱だ。しかも三つもあるよ」

 

「アリス、宝箱初めてです」

 

「ふっふ~、アリス。宝箱にはロマンが詰まっているんだよ。プルシュカも久しぶりの宝箱だよ」

 

 浮かれるエルフ女性三人組。

 

 ボンドルドは遠くの柱の陰に目を向けた。そこには、柱から尖った耳の先端と長い金髪が見え隠れしている。こういう気配りができるからツンデレさんと言われるんだなとボンドルドは理解した。

 

 フリーレン、プルシュカ、アリスが揃って宝箱を開ける。そして、全員が宝箱に飲み込まれていった。その様子にボンドルドも理解が追いつかない。

 

「えっ!?」

 

 ボンドルドがこの宝箱を準備した本人に確認する。だが、その本人も驚愕した様子だ。その時ボンドルドの脳内に電波が届く。

 

【私は、ちゃんと中身入りの箱を準備したぞ。お前等がここに来る三分前だ。それから、見張っていた。あれか、フリーレンの奴はよくミミックに食われると言うが、宝箱をミミックにする魔法でも無自覚に使っているんじゃないか】

 

 孫娘みたいなエルフが初ダンジョンを楽しめるようにしっかりと準備をしているあたり、世話焼き加減は昔から変わらないなと思っているボンドルド。だから、弟子達にも好かれる。

 

 それから、ボンドルドは全員を助け出した。

 

「ここに宝箱を設置した奴は、何て酷い奴だ。全部がミミックなんて余程性格が悪い」

 

「フリーレンさん、私は多分そんなこと無いと思います。きっと、何かの手違いだったんでしょう」

 

「パパ、プルシュカもママに賛成だよ。だって、宝箱が三つしか無かったんだよ。パパもいれて四つ無いと駄目だと思うわ」

 

「アリスもそう思います。皆で宝箱を開けたいです」

 

【40分だ。40分だけ時間を稼げ。それで、次の休憩ポイントに準備してやる。何度もやるとばれそうだから、隠し部屋も作る。座標は後で知らせる】

 

 その言葉を聞いたゼーリエは、大急ぎで先回りし宝箱の準備を始めた。ボンドルドは、ゼーリエに対して申し訳ない気持ちでいっぱいになる。 

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