黎明のフリーレン   作:新グロモント

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閑話:一級魔法使い試験⑤

 夢とロマンと冒険が詰まった宝箱のダンジョン。アリスの目は輝いていた。向かってくる魔物と言う名の経験値を光の剣スーパーノヴァでなぎ払う。重量300kgを越える超重量から繰り出される打撃攻撃には、絶大な威力が込められる。

 

 ソレを軽々と振り回すアリスには、勇者BUFFが掛かっており彼女にとっては金属バット程度の負荷しかかからない。他にも、防犯機能が備え付けられており、第三者が扱う事は難しい。例え、それが彼女の血を分けた家族であってもだ。

 

「プルシュカもこれを持ち上げられれば、勇者にーーーー……う、動かない。怪力系の魔法を多重に掛けてもピクリともしない。プルシュカも勇者になりたかった」

 

「よし、ここは発想を変えよう。ママが手本を見せてあげる。スーパーノヴァ自体を持ち上げなくても周囲の物を浮かせれば……あれ?動かないや。周囲に魔法を阻害する何かがあるね」

 

 妹のスーパーノヴァが持ち上げられず悲しむプルシュカ。彼女も一時は勇者に憧れており、自身も少なからず適正があると期待していたが残念だった。魔王装備一式で満足すべきだが、そこは子供故に色々と目移りする。

 

 フリーレンとしては、純粋な興味からだった。過去にヒンメルすら抜けなかった勇者の剣。未解明の魔法など、研究者である彼女の大好物だ。ただ、娘の大事な物を取り上げるつもりはないので、彼女も母親として大分成長をしている。

 

「アリスの専用装備です。でも、この元となった勇者の剣は、ぱぱが持ってきてくれました。つまり、ぱぱも勇者ですか?」

 

 鋭いアリスの指摘だった。

 

 アリスの姉であるプルシュカが魔王装備一式だから、アリスに相応しい物を用意する必要があった。必然的に対となる物を用意するのが親の役目。

 

 アリスの発言に、ボンドルドに注目が集まる。

 

「その通りですよ。考えてみて下さい。私は、フリーレンさんの夫をやれるほどの男性です。勇者として相応しいと思いませんか?」

 

「うん!! パパは、勇者だわ」

 

「アリスも納得です」

 

 凄まじい説得力のある一言で娘二人が納得した。

 

 1000年間も幼馴染みの気持ちに気付かない女性。更には、都合の良い男としてボンドルドを便利に扱い、過去には彼からの愛の告白も無碍に扱った。人類でありフリーレンの為だけに、全てを捧げた男……これは、まさしく勇者だ。

 

 ボンドルドがスーパーノヴァを持ち上げて見せた。

 

「娘達が酷い事をいう。私もボンドルドが勇者だって聞いてないよ。自己申告すれば、色々と立場も安定しただろうに、……あれ?もしかして、私って凄い立場だったりする?」

 

「勇者の妻であり、娘二人は(自称)魔王と(ガチ)勇者です。後、ゼーリエ様から聞くには、エルフ史上でここまで短期間で子供を二人も産んだ人はいないらしいですよ。ゼーリエ様曰く、エルフじゃなくてエロフを名乗って欲しいとか」

 

 褒めてから落とされたフリーレン。勝手に新種族扱いされてしまいヘコむフリーレンを慰める娘二人。頭を二人から撫でられて御満悦のご様子だった。

 

「大丈夫だよ。ママが叡智でもプルシュカは大好きだから」

 

「ままが、叡智でなければアリスは産まれませんでした」

 

 娘二人から熱い抱擁を受けているが、若干納得していないフリーレンだった。たった一人でエルフの総人口の何割かを産んだとなれば、エルフの母とも言える存在。この後の時代、彼女がエルフの血縁ツリーの最上位に位置する事になるだろう。

 

………

……

 

 ボンドルド一家が次の休憩ポイントに到着する。そこで、フリーレンがふと異変に気が付く。突然、壁にすり寄りサワサワする。娘達の前で良いところを見せようと頑張る母親の姿……だったのだが、完全に手の掛かる娘が増えた気分のボンドルド。

 

「ここに隠し扉がある。前回来たときに取りこぼしていたんだね。むふ~、ままは一流だから見落とさない。今度こそ、伝説の魔道書の予感がする」

 

「流石、ママ!! プルシュカが一番いいお宝を引き当てるんだから」

 

「アリスも良い物いっぱい集めます。その資金で、旅の仲間を募集して経験値集めに行きます」

 

「パワフルですね。ですが、気を抜いてはいけませんよ。仮にもダンジョン……何時何があるか分かりませんから」

 

 それから、フリーレン達が隠し通路を進む。なぜか、無駄に強力な結界魔法があり、フリーレンですら解除に一ヶ月掛かる。他にも、服だけ解ける魔法薬が降り注ぐトラップなどもあった。

 

 しかし、アリスの光の剣スーパーノヴァの前にはどのような結界魔法でも無駄。全てのルールを上書きして消し飛ばす消滅魔法。末恐ろしい限りだ。ゼーリエが全力で張った魔法でも消し飛ばす事ができる存在はこの世で片手で足りる。

 

 遂にボスまで現れる。巨大なゴーレム。それは、かつてレルネンが黄金郷マハトと対峙した際に作った物をゼーリエなりにオマージュした物だ。当社比200%の性能を誇る。一級魔法使いの裏試験とも言うべき難関を無事に突破し、ボンドルド一家は遂に4つの宝箱が安置された部屋に辿り着く。

 

「また、99%ミミックだね」

 

「でも、1%は宝だね。プルシュカの豪運を見せてあげるわ」

 

「アリスは、1%の可能性を掴みます」

 

「……えっ!?」

 

 全員が宝箱を判別する魔法(ミークハイト)を使った。だが、ボンドルドの判定では、この場にある全ての宝箱においてミミックの可能性は0%と出ている。それなのに、フリーレン、プルシュカ、アリスの三名は何故か99%ミミック判定されている。

 

 ボンドルドは不安に思い再度全員の宝箱を判定した。だが、結果は変わらず。コレには遠くからその様子を監視していたゼーリエも脱帽だ。苦労して用意したのに、なぜこうなったと。

 

「よーーし、じゃあ誰が一番良い物を出すか勝負しようじゃないか。ママがお手本を見せてっ……」

 

「ママは、エルフの中で最弱!! プルシュカがお手本を見せてぇぇぇ……」

 

「ままもお姉ちゃんも食べられました。でも、アリスは勇者なので食べられませぇぇ……」

 

 物の見事にエルフ全員が宝箱の餌食になる。

 

「「「暗いよ~。暗いよ~」」」

 

 ミミックに上半身を丸呑みにされて、足をジタバタする三つの尻を眺めるボンドルド。折角なので、この状態で記念撮影をする。次回の大陸魔法協会の広報誌に仲良し親子として紹介されるだろう。

 

 ボンドルドは、開いた口が塞がらないゼーリエの方を見た。

 

【私は、今フリーレンの"呪い"をほんのちょっぴりだが体験した

い…いや…体験したというよりはまったく理解を超えていたのだが……

あ…ありのまま 今 起こった事を話す!

私は奴が目の前の宝箱を開けたと思ったらいつのまにかミミックになっていた…

な… 何を言ってるのか わからないと思うが私も何をされたのかわからなかった…

頭がどうにかなりそうだった…

催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ 断じてない…

もっと恐ろしいものの片鱗を味わった…】

 

 この時、ゼーリエは心に決めた。こいつらに物を渡すときは、宝箱なんて遠回しのことは辞めると。




フリーレンの血族には、ミミックデバフが…
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