とある日、平穏に
そして昼過ぎに運命の時が来た。
アウラへの面会者到着。その知らせにアウラは、会わないという選択肢は用意されていない。相手は、命令権を持つフリーレン一行だ。ここ十年くらい来なかった事で油断しきっていた。
『……フリーレン達が来たみたいね。ちょっと、出かけてくるからヒンメル。お昼ご飯は、ちゃんと食べるのよ。洗い物は後で私がやっておくから台所に下げておいて。後、洗濯物の取り込みはお願いね』
『はいはい。行ってらっしゃい、アウラ』
ヒンメルとアウラの家。毎日介護するなら同じ家に住んだ方が効率的だと結論に至った二人は、何年か前から同棲を始めた。最初こそ、ヒンメルも嫌がったが、アウラのお願いで押し切られてしまう。
何だかんだでヒンメルも嬉しかった。彼には肉親と呼べる親しい者はおらず孤独。たまに各地方に出かけて人と関わる事はあったが、寂しさを紛らす事はできない。彼が本当に側に居て欲しかった女性は、何時も側にはいなかった。
だが、その事にヒンメルは一切の後悔の念は無い。
………
……
…
アウラは、面会に来たフリーレン一行と対面し愕然とした。エルフが一人増えていた。これだけで絶望的に感じてしまう。新しいエルフの中身や性格は、アウラも分からないがその身で感じ取ってしまう。強大な魔力と女神様の加護を内蔵した次世代のエルフであると。こんなのが量産されたら、魔族……ひいては人類は終わるとすら予感できるほどに。
後、変な毛むくじゃらの生物には妙な親近感を覚える。
「今日は、アウラさんに紹介したい人がいます。さぁ、アリス自己紹介してください。これから、貴方に経験値を提供してくれる事になる人です。お世話になる人には、礼を尽くさなければいけません」
「アリスです。いつも、パパ達がお世話になってます。アリス、知ってます。最愛のアウラの本を読んだことがあります。本当に死んでも実在しているのは驚きです」
アウラは、ワンチャン野良エルフが見つかったと信じたかった。だが、アリスというエルフは、どう考えてもボンドルドとフリーレンの新しい子供である事は明白。彼女が背負う武器からはとても嫌な感じがする事を肌で感じ取るアウラ。
『えぇ、よろしくね。……で、そっちの毛むくじゃらは?』
「ははは、そうだよな。オイラは、ナナチ。ボンドルドによって作られた魔族だ。正式名称は、アウラ魂型人造魔族第一号。ボンドルドとフリーレンに絶対命令権を握られた次世代の魔族らしい。どうだ、驚いたか」
『う、嘘よ。だって、実験はもうしないって約束したじゃない』
「いや、私はボンドルドに止めるように言った。ボンドルドが止めるとは約束していない。それに、イドフロントの地下でアウラの魂の欠片を使って実験していたんだ。だから、約束は破ってないよ」
止めると約束していない。フリーレンは、ボンドルドに止めてと要請しただけだ。それを実行するかはボンドルドの判断にゆだねられていた。だが、形式上、オレオールでの実験は中止されたという事実はある。
「そのような些細な問題は、後にしましょう。さぁ、ナナチ続きを」
「そうだったな。帝国に魔族だけの国を作る。そこで魔王をやってくれねーか、
アウラは、馬鹿ではない。今までのボンドルドの話が本当だとすると、本当に必要だから頼ってきたのだと理解する。だが、大きな問題がある。
『で、出来るわけないじゃない。私は、ここに
「アウラ、今回に限り私は強制はしない。ナナチから事の詳細を聞いて納得して、この書類にサインするなら、
フリーレンは、ボンドルドと一緒に内容を検討した契約書を出した。酷い事に、無限に条件を追加する事を可能とした白紙の契約書だ。最初の取り決め遵守は絶対として、それ以降も何時でも変更や増やすことが可能となっている。
これに自主的にサインする奴など居るかというレベルだ。だが、魔族を救う為には、コレが必要になる。アウラがサインするだけで何人もの魔族が救われる可能性がある。しかし、ここで頭脳明晰なアウラがいくつか要らない事に気が付いた。
『さっき、そこのナナチの事を私の魂を使って作ったアウラ魂型人造魔族第一号と言ったわよね。一号と言う事は……他にもいるのかしら』
「えぇ、その通りです。第二号は、ミーティ。第三号は、ファプタと言います。彼女達を産みだした事で貴方の欠片を全て使い切ってしまいました。また、採取できれば良いのですが……」
チラリとボンドルドがアウラを確認する。その狂気を感じ取り、アウラがちょろりとお漏らしをした。死者の魂を弄ぶなど、どう考えても常人の発想ではない。
他にも同型機である次世代魔族がいる事は、ナナチにとっても初耳だった。だが、可能性の一つとしては考慮していたから驚く事は無い。同胞が増えただけだと。
『考える時間が欲しいわ。それと、ナナチと言ったかしら。一つ質問があるわ。この魔族だけの国……良い考えだと思う。でも、どう考えてもボンドルドが管理する魔族牧場が拡大されるだけじゃない。これの何処に魔族の幸せがあるのかしら』
イドフロントの地下で飼われている魔族達。その小さな牧場が国家規模の牧場になった体裁の魔族国家。どう考えても魔族の幸せなど無いように感じる。コレの何処に未来を感じたのかアウラは疑問だった。
「なにいってんだ。幸せじゃねーか。管理されて生きるのって」
この時、ナナチのお目々はグルグルとしていた。
産まれながらにしてボンドルドが絶対命令権を持つ次世代の魔族。それを野放しにできる理由は簡単だ。無意識下への刷り込みは、産まれる前から完了済み。ある意味、完全催眠状態だ。
ナナチは、知らず知らずのうちに全魔族を管理し、家畜化する事を目的で動いていた。その事に対して彼女は、それが魔族の幸せであると本気で信じている。決して解けない呪いレベルの行いだ。
『魔族だってここまでやらないわよ……鬼、悪魔、ボンドルド、フリーレン!!』
「そこに私も混ぜるな、アウラ。1000年前に家族を殺されたんだ。その恨みは、一生忘れない。精々考えてよ。結果は変わらないと思うけどね……でも、保険は掛けさせて貰う。《アウラ、■婚しろ》」
魔族の現状など、アウラにも分かっている。自らが犠牲になれば、少なからず助かる魔族も居るだろう。それが管理下で生きる事になっても。
………
……
…
翌日、ツヤツヤになったアウラが干からびそうなヒンメルに見送られ、
「そうか~。相手は、ヒンメルだったか。お約束だけど……昨晩は、お楽しみだったね」
『ち、違うんだフリーレン。聞いてくれ』
童貞臭さが抜けたヒンメルをみて、命令が正しく実行されたとフリーレンは理解する。だが、その反面、人生でこれ以上無い程にテンパっているヒンメルご老人。老人を虐めるのは良くない趣味だと誰もが思った。
そんな元勇者PT同士のやり取りの最中、アウラは
コレより始まる、アウラ建国物語。
元魔王軍七崩賢にして、大魔族アウラ。
魔王軍時代には、人類最強のバグ南の勇者、北側諸国の英雄ボンドルドと戦い生き延び、勇者PTと戦っても生き残った。戦後でも、フリーレン一行と戦い生き残った末、仲間であった大魔族からの不意打ちで死亡。人類史において、最愛のアウラとして魔族の裏切り者として知名度を上げる。
だが、それ自体が敵を騙すには味方からと言う事であったと各地に隠れ潜む魔族は知る事になる。地獄からでも蘇り魔族の為に尽くす大魔王アウラの誕生の日だ。
作者視点で少年誌らしい王道を考えています。