北側諸国オッフェン群峰。
寒い地方で野宿が続いたため、フェルンが体調を崩す。だがこれでも、体調不良の頻度はボンドルドが旅路に加わった事で激減している。フリーレンが行っている旅では、毛布にくるまって地面で寝るのが野宿であった。
だが、可愛い子にそんなことはさせられないのでテントと寝袋をボンドルドが提供している。男女別のテントであり、プルシュカとフリーレンは子供用の寝袋だ。
「熱がある。私でも病気の判別はできるけど、ボンドルドに診て貰った方が正確だからお願い」
「分かりました。おでこに手を当てます。楽にしてください、フェルンさん」
ボンドルドが女神の魔法を使う。
どのような原理で病気が判明するのか、理論が全く分からない謎の魔法。"呪い"と同じく女神の魔法は、人類の魔法技術では解析できない。女神、魔物、魔族……一体何処で繋がっているのだろうかと考えるボンドルド。
しばらくして、病名が判明する。
「扁桃腺炎です。恐らく、体力が落ちていたところでやられたんでしょう。フェルンさん、喉の痛みがあるようでしたら頷いて貰えますか」
「扁桃腺炎?何その病気、初めて聞いたんだけど。症状は風邪だけど違うの?私の判定だと風邪って出たんだけど」
ボンドルドとフリーレンで同じ女神の魔法を使ったのに結果が異なっていた。この面白い事象に対して、研究者としてじっくりと調査したいと思うボンドルド。だが、今は目の前の問題解決に力を注ぐ。
「どっちでも良いけどよ、とりあえず薬草とか集めたら良いんだろう。俺が集めるから何が必要か教えてくれ」
「では、プルシュカを起こしてきてください。あの子に持たせている抗生物質を飲み、体力が回復すれば良くなります。フリーレンさんは、お湯を沸かして彼女の汗を拭いて着替えさせてください」
「分かった」
申し訳なさそうにするフェルン。
不安そうな顔をするフェルンに、ボンドルドが今はゆっくり休んでくださいと優しい言葉を掛ける。その安心感のある声は、こう言うときには効果絶大だ。
その日の夜には、熱が引いたフェルン。その間、フリーレンがずっと手を握っていた。目覚めたフェルンは、フリーレンが付き添って手を握っていた事実を知り恥ずかしくなる。
「フリーレン様、私はもう子供じゃありません」
「知ってる。知ってるよ」
そんな尊いやり取りがテントの外にまで聞こえてきた。寒空の元で、火の番をしているシュタルクとボンドルドにはそれがしっかりと聞こえた。
「俺、役に立ってたかな」
「シュタルクさんは、頑張って栄養が付く物を集めた。その事実に、気付かないほど彼女は鈍くはありません。貴方に出来る最大限をもって対応した。例え、彼女がその事を褒めなくても私が褒めます。よく頑張りました」
シュタルクは、そのような言葉を掛けるボンドルドを素晴らしい大人だと認識した。師であるアイゼンとは異なるタイプの大人。
狭いコミュニティにおいて、対人関係は重要な要素。それを円滑に回してこそ、PTが成り立つ。既に、成人に足を踏み込みつつある者達の見本となるべく、ボンドルドが立ち回る。
数日後、フェルンの体調が回復し無事に旅路に戻る。目的地であった魔法都市オイサーストに向かう馬車にて、フリーレンも魔法使いの試験について調べようと考え始めた。
「フリーレン様やボンドルド様の魔力ならどんな試験でも余裕なんじゃないですか?フリーレン様は制限した状態でも熟練の老魔法使いくらいの魔力が出てますよ。ボンドルド様は……控えめに言って、大魔族レベルかと」
「これでも長生きしていますからね。それとカートリッジのお陰です」
「老魔法使いって言うな。言っておくけどねフェルン。魔法使いの強さを決めるのは魔力だけじゃない。技術や経験、扱う魔法やコントロール、努力と根性……そして、才能。私は今までの人生で自分より魔力が低い魔法使いに12回負けたことがある。その内、4人が魔族。1人がエルフ。残り7人は人間だよ」
その全てを持ち合わせて居るフリーレン。長い年月で磨き上げた事もあり、どれもが全て最高峰レベルになっている。
「人間って、パパもフリーレンお姉ちゃんに勝ったことあるの?」
「ありますよ。但し、勝率は4割に達しません」
ボンドルドは、どこぞの誰かの、自分より先に死ぬ弱い存在に興味が無いという言葉を思い出していた。勝つためには手段を選ばない。
「私が勝ち越している。でも、ボンドルドってあまり本気ださないね」
「お互い本気を出したら、怪我じゃ済みません。フリーレンさんレベルの魔法使いと殺し合うと疲れます」
そうだねとフリーレンも同意する。
………
……
…
魔法都市オイサーストの大陸魔法協会で、困惑している受付嬢がいた。無資格の受験者が三年に一度しか開催されない一級魔法使いの試験を受験させろというのだ。本来であれば、門前払いする。
だが、北側諸国の英雄である黎明卿ボンドルドが相手では、相手も困る。それに、膨大な魔力を持っており、この人の受験を本当に拒んで良いのか。後で、責任を押しつけられてクビにされるのではないかと内心ひやひやしている。
受付嬢は、目線で上司に救いを求める。だが、誰しも責任を取りたくないので無視を決め込む。
「困ります。一級魔法使い試験には、五級魔法使い以上の資格が必須です。黎明卿ボンドルド様とはいえ、特例扱いは……」
「ほら、やっぱり無理だった。フェルン。後は任せた」
ボンドルドは、フェルンに引き留められたフリーレンと同じくダメ元で聖杖の証を受付嬢に見せた。だが、受付嬢の反応はナニコレといって理解を示すことはない。時の流れとは残酷だ。かつての栄光など現代には残らない。
「仕方ありません。一番試験日が近い五級魔法使い試験に合格してから、再申請します。幸い、期間中に一度なら受験が間に合います。大の大人が、規則を守らないのは良くありません。子供にも示しが付きませんからね」
「そうだよ、パパ。決まりは守らないと駄目」
ボンドルドは、受付から五級魔法使い試験の案内を受け取りその場を立ち去った。後日開催された五級魔法使い試験は、筆記試験と簡単な実技試験であった。実技試験では100m離れた岩を一般攻撃魔法で粉砕する物であり、シュタルクを除いてフリーレン、ボンドルド、プルシュカが合格した。
ネタが尽きてしまったので、どのようなお話を知りたいか読者様にお伺いできればと思っています。全て何話程度やるかも全く未定です。
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過去編(1000年前、初代ボンドルド)
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過去編(人類防衛ライン戦)
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過去編(50数年前、居候フリーレン)
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閑話(ゼーリエとプルシュカの文通)
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閑話(プルシュカと女神の魔法)
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バカか、全部やれ