名前も似ているし、ゼーリエが頑張るネタでも良いかなと。
ゼーリエは、この年になって初めて故人メトーデの気持ちが分かった。可愛くて小さい者に対する庇護欲。その対象が、自らを慕って先生と甘い声で崇めてくる。甘やかしてしまうのも当然であった。
彼女自身もまさか自分がここまで子煩悩だったとは、想像できなかった。
大陸魔法協会では、ゼーリエとアリスが一緒に居る事があまりにも多いので親子だと勘違いされる事も多い。その事に満更でもないのがゼーリエだ。
当然、この事に不満を持つのがフリーレン。母親であるフリーレンの立場としては、可愛い娘を構い倒したい。一緒に過ごしたいと思うのは当然の感情だ。確かに、ゼーリエからの直接指導でアリスが強くなる事は、彼女の立場や安全を考えれば良いことだ。だが、その役目なら自分も出来るのに頼られないのがフリーレンは悔しかった。
だからこそ、ゼーリエの元に直訴に来るフリーレン。その同行者にボンドルドとプルシュカも付いてきていた。
「ゼーリエママ様。プルシュカが遊びにきたよ~。見て見て、最近獣化の魔法を部分的に使えるようになって、好きなところをモフモフに出来るの」
「お姉ちゃん、モフモフで柔らかいです」
「よしよし、お前等は本当に可愛いな」
右にプルシュカ、左にアリスを抱きかかえて満足そうなゼーリエ。これが大陸最強の魔法使いで年齢不詳の女性エルフだ。可愛い孫娘的な子供に抱きつかれて最高の気持ちだろう。この時間を得るためならどんな対価でも惜しくないほどだ。
「おや、フリーレンさん。不満そうな顔をしてどうなさいました?別に、あそこに混ざっても構いませんよ」
「ゼーリエ。二人は私の子供だからね。あんまり、甘やかさないでよ。そんなに子供が好きなら自分で産めば良いのに」
フリーレンのエルフの心が分からない一言がゼーリエを傷つける。この瞬間が、フリーレンが初めてゼーリエにクリティカルヒットを与えた瞬間でもあった。
その一言が想像以上に重い空気を作ってしまった事にいち早く気が付いたのは子供達だ。子供は、そう言う事に関しては非常に敏感。
ゼーリエの残りHP:99/100
「ママ。プルシュカは、そう言う事は簡単に口にしたら駄目だと思うよ。結婚も子供も一人じゃできないんだから」
プルシュカは、一般論を言った。恋愛も結婚も出産の経験がないゼーリエに対して、可愛いプルシュカからそれを言われたときのダメージは相当な物だった。フリーレンからの心ない一言の数十倍はダメージがある。
別に、彼女とて好きで独り身で居るわけでは無い。誰も、彼女に寄り添える男が居なかった。それだけだ。
ゼーリエの残りHP:59/100
「アリス知ってます。
アリスの一言に対して、ゼーリエは必死に数千年分の記憶を辿る。過去にエルフがもう少し居た時代には、告白された経験が………無かった。それどころか、誰かと付き合った経験すら無かった。歴史は改竄できない。
ゼーリエの残りHP:1/100
ボンドルドは、妻と娘がゼーリエの心を殺し掛けて居るのを察してフォローをする事にする。全員大きな勘違いをしている。それは、過去にゼーリエの元に居候していたボンドルドだけが知っている事だ。
「皆様、誤解しておりますよ。ゼーリエ様は、子供を(まだ)産めない身体なんです。だから、あまり無理を言ってはいけません」
「………そっか、ごめんねゼーリエ。私が悪かった。(もう)産めないなんて知らなかった。プルシュカとアリスを好きなだけ可愛がって良いよ」
ゼーリエの肉体は、まだ成長過程。恐ろしい事に、フリーレンより肉体年齢は若い。本当にいつまで生きるのだろうかとボンドルドですら予想が出来ない程だ。
「ゼーリエママ様。ごめんなさい、酷い事をいって……だから、しばらくはプルシュカの事を本当の娘だと思って良いからね」
「ごめんなさいです、アリスはそんなつもりはありませんでした。大丈夫です、アリスが
ゼーリエの中で葛藤が始まる。
この誤解を解くべきか、解かぬべきか。結論、誤解を解かなければプルシュカとアリスを甘やかせる事で終了した。例え、ボンドルドの掌の上で踊らされたとしても構わないと思っている。
「なんか釈然としないけど、まぁいいか。それにしても、ボンドルドってゼーリエにも優しいよね。私という者がありながら」
「おやおや、焼き餅を焼いてくれるんですか。簡単な事ですよ。私は、エルフを、家族を幸せにする魔法が使えます。その範囲に、ゼーリエ様も含まれているだけの事です」
フリーレンがボンドルドの腕にしがみつく。そして、ゼーリエと向き合う。
「……ゼーリエ、ボンドルドに手を出したら戦争だからね」
フリーレンの可愛らしい行動にボンドルドは、思わず彼女の頭を撫でる。子供扱いされる事に対して若干思うところはあるが、フリーレンはソレを受け入れていた。
………
……
…
その日は、全員でゼーリエ宅にお泊まりする事になる。女性エルフ達は、雑魚寝をする。本当に、お婆ちゃん宅に遊びにいった子供達という構図になってしまっている。
ボンドルドが庭先で一人でお酒を飲もうとしていた。ゼーリエ秘蔵の名酒であり、今では手に入らない一品。ソレを察してか、ゼーリエが寝床から起きて現れた
「その酒は、もう手に入らない。大事に飲めよ」
「えぇ、存じています。私がゼーリエ様の家にお世話になった日にコッソリと用意したお酒。だから、こうして貴方と飲みたかった」
約1000年の歴史があるお酒。ゼーリエが魔法的に保護していたお陰で現代まで残っている。栓を開けてボンドルドは、ゼーリエのグラスに注いだ。そして、ゼーリエもボンドルドのグラスにお酒を注ぐ。
「素顔を見たのは久しぶりだが……また、身体を変えたのか?」
「えぇ、今度の肉体はフェルンさんとシュタルクさんの血筋も混ざっております。南の勇者の血筋もミックスされており、中々の廃スペックですよ」
ゼーリエの目からしても、ボンドルドの肉体的スペックは相当な物だ。この距離ならば、ゼーリエを殺す事も可能である。魔法使いとしてでは無く、戦士としての戦いでゼーリエがボンドルドに勝てる要素は何処にも無い。
だが、1000年の信頼関係がある。だからこその距離感だ。
「そうか。ボンドルド、私はコレでもお前に感謝している。正直、エルフはこの時代になるまでに全滅するかと思っていた。だが、お前がソレを回避した。誇れ」
「ありがとうございます。後、アリスは養子にあげませんからね」
ゼーリエがボンドルドを見つめて長い沈黙があった。
チラチラとボンドルドに対して、何か物欲しげに目で訴える。
「……どうしても、駄目か?」
「はい、どうしても駄目です。大人の都合で子供を売り買いするような行動は、私の矜持に反します。ですが、代わりに私直筆の子育て完全マニュアルを差し上げます。何時の日か役に立つ日も来るでしょう」
プルシュカとアリスを育て上げたボンドルドの子育てマニュアル。伝説の魔道書以上に価値がある。
人間の愛という無限の可能性を秘めた魔法を知ったゼーリエ。やはり、人間の時代は訪れたと再認識した。ゼーリエの中では、ボンドルドを人類にカテゴライズして良い物なのか悩み所だ。
それから暫くして、ゼーリエは世に出回るクソみたいな叡智な本から有る
嘗て、ゼーリエは言った。
エルフは、人間に追い抜かれる。確かに、叡智な発想という観点で人間はエルフの遙か先を歩んでいた。だからこそ、人類に負けないようにエルフも歩みを止めてはいけない。