世の中には、様々な家庭環境がある。夫婦だけの家庭だったり、夫婦子供の家庭だったり、母子家庭だったり、父子家庭だったり、本当に様々な形態が存在する。
だから、その家庭の一例として、父親であり、母親であり、妹である存在が家庭にいる家もあるかもしれない。だが、ここで問題になるのがその一人が、その全てにおいて最高のポテンシャルを発揮できる人間として最年長の存在だった。
そんな化け物が一人家庭に居るとどうなるか……。
1000年間培った父親として母親としての才覚を余すこと無く発揮したボンドルド。現在は、久しぶりの女性体であり、子供達を優しく包み込む母としての立場も得ていた。そして、年齢的にも血縁的にも妹とも言える存在だ。
永遠の子供体型の
「ママ~。今日は、一緒にお料理したいな~。プルシュカだって、こうみえてお料理上手になったんだから」
「お姉ちゃんばっかりズルイです。アリスもお料理の経験値を溜めて一流になります]
台所には、
だが、そんな美しい絵にもなる光景だが、一人気にくわない顔をしている人物がいる。眠そうなパジャマ姿で食卓の椅子に座っているフリーレンその人だ。彼女視点でも確かに微笑ましい光景だった。親子が仲よく台所に立って料理をしているなど、絵物語でよく聞く。
「可愛い子達ですね。えぇ、勿論構いません。じゃあ、手洗いからですよ」
ボンドルド♀の言葉に従い、子供達は素直に手洗いを始めた。そして、手際よく野菜を洗い、ボールに盛り付ける。危なげなく包丁でベーコンを切り、目玉焼きを作りベーコンエッグを作った。
「お姉ちゃん上手!! アリスも負けません」
「むふ~。これでも旅の経験は長いんだから」
何て幸せな家族の光景だ。人が望む家庭がそこにはあった。だが、一点問題がある。それは……。
「フリーレン
「アリス、知ってます。昨日は、夜遅くまでお部屋の明かりが付いてました。それに、ままが起こしに行ってもフリーレン
「二人とも、今何かおかしいって気が付かなかった?とっても大事な事だよ」
プルシュカとアリスの発言に異議を申し立てるフリーレン。だが、その発言の意図が子供達には全く理解出来なかった。エルフの子供二人は、お互い顔を見合わせて考えた。今の何処がおかしかったのだろうかと。
「フリーレンお姉ちゃんは、もしかしてベーコンエッグは何も掛けない派だった?プルシュカは、塩と胡椒」
「アリスは、醤油派」
「私は、ケチャップ派」
「何も掛けない派だよ……違う!! そうじゃない。ちょっと、ボンドルドこっちにきて」
何か納得できないという感じのフリーレン。
彼女は、目的があるらしくボンドルドを近くに呼んだ。そして、フリーレンと二人で横並びになる。フリーレンは、これからある言葉を一緒に言って欲しいと。二人の不思議な行動にプルシュカもアリスも困惑する。
そして、運命の言葉が告げられる。
「「おいで~、ママですよ」」
膝を床について子供目線となったボンドルド♀。早朝のトレーニングと朝風呂も終えて、身だしなみも整え、エプロンまで装着している。
片方は、寝間着姿で食卓にそのまま来たフリーレン。
プルシュカとアリスは、小走りで大好きなママに抱きついた。柔らかい優しい感触。包み込まれる安心感。何より良い匂いがしていた………ボンドルド♀が。
「ママ、良い匂い。大好き」
「まま~。まま~……えへへ」
勝負は始まる前から決まっていた。その結果を見せ付けられたフリーレン。彼女は諦めが悪かった。
「プルシュカ、アリス。ママはコッチ」
フリーレンがプルシュカとアリスの腕を引っ張って引き寄せる。だが、ボンドルド♀に抱きついて離れなかった。泣きそうになるフリーレンに気が付いたボンドルド♀は、彼女も一緒に抱きしめる事にした。可愛いエルフ三人を腕に抱きしめられるなんて幸運だといえる。
フリーレンは、突然ボンドルド♀に抱きしめられて困惑する。だが、すぐに落ち着きを取り戻した。彼女も思わずボンドルド♀の腰に手を回して抱きしめ返す。そして、包み込まれる優しさを肌に感じていた。
「良い匂い。
「えぇ、ママですよ」
フリーレンは、一度の敗北を認めた。だが、彼女のプライドがある。母親として譲れない物が!!
………
……
…
戦いにおいて、大事な事がある。それは、相手が得意な土俵で戦わない事だ。つまり、自分が得意な土俵で戦う。コレが勝率を高めるコツだ。
そして、フリーレンが得意なのは魔法。こればかりは、誰しもが認める。彼女は、母親である地位を守るため、得意な魔法を持ち出すことを決意した。そして、
その成果を見せ付けるため、フリーレンは家族を一同に集める。
「本当のママが分かる優しい魔法!! 最近、プルシュカとアリスがママの事をお姉ちゃんって呼ぶから……分からせてあげようと思って。凄い魔法を
万が一に備えて予防線を張るフリーレン。最悪、結果次第では他人のせいにできる下準備もしている。
「フリーレンお姉ちゃん。……その魔法って、自分のクビを締めたりしない?」
「アリスは、この先の展開が見えました。予知能力を獲得しました」
「おやおや、この著書はアーニャさん……知らない方です。今時、魔道書を自作できる程の魔法使いが減ってきており、大体は把握していたつもりでした」
この時、プルシュカの記憶が呼び起こされた。嘗ての同級生……講義中に盛大にウン○を漏らして、抱きかかえ赤ちゃんと言い放った狂気の同級生。その後、精神病棟に入院して以来出会うことが無かった事を。
今どこで何をしているかも分からなかったが、まさか魔法使いとして成功を収めているなんて想像すら出来なかった。
「アーニャちゃんか……プルシュカの魔法学校時代の同級生よ。確かに、魔法制御や理論については、プルシュカも認めるくらい凄かったわ。ただ、色々と人として終わってたから、その魔法が心配よ」
「大丈夫だって。一般市場にも流通していて、結構好評の魔法なんだから」
フリーレンは、お小遣い稼ぎも兼ねてこの魔法を一般市場にばらまいた。事実、この魔法は好評だった。優秀過ぎるフリーレンが作った魔法である為、魔法使用者の様々な状況を鑑みて回答を出す。世間体、経済力、教育力、指導力、家庭力、愛情など本当に様々な要素を含んでだ。
「プルシュカ、アリス。フリーレンさんが泣きそうなのでお願いします」
ボンドルド♀のお願いで、この魔法を使う事を承諾した二人。
「「本当のママが分かる優しい魔法」」
プルシュカとアリスの頭部に表示されてしまう。マザーの項目にボンドルドの名がある事が。
そう、この魔法は、血縁的な母親を証明する物ではない。魔法行使者が最も母親だとかんがえる人の名前が表示される事になっている。但し、子供の母親たる資格があるかという点も重要であり、最悪母親の名前が表示されないこともある。
「………欠陥魔法だね。次は、もっと良い魔法を持ってくるから!? 首を洗って待っててね」
失敗は成功の母。
フリーレンは、次なる魔法を開発するため引き籠もる。その魔法は、『本当のママが分かる
次は、本当のママが分かる優しくない魔法です。