黎明のフリーレン   作:新グロモント

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閑話:叡智と破滅は紙一重④

 親子の絆を再確認したフリーレン。これこそ、あるべき姿だと納得の結果だ。

 

 だが、今の現状を理解するまでに時間を要したため、フリーレンは追い詰められている。なぜか、三代目魔王アーニャ討伐の任をアリスが拝命している。そもそも、アーニャの存在はフリーレンが作り上げた実態を持つ分身であり、言い換えれば存在しない人物だ。

 

 過去の経験から、言い出すなら早いほうが良いと分かっていたフリーレンだが……言い出せなかった。実の娘であるアリスが目を輝かせている。

 

「ついに、アリスが勇者として経験を積む機会が来ました。魔王アウラは討伐できないので、諦めていましたが魔王アーニャなら討伐しても問題ありません。早速、仲間を集めます」

 

「はいはい!!プルシュカが一緒に付いて行ってあげる。旅の経験もあるし、色々と教えてあげるわ。ポジションは、デバッファーかな?」

 

 嬉しそうな娘二人をみて、母親は言い出せなかった。折角、母親のポジションが戻ってきたのに、今言い出すと間違いなく失う。娘達から失望の目で見られるのは、心に来る物がある為、彼女はエルフ特有の悪い癖で先送りにした。

 

 だが、決して何もしないわけではない。来たるべき日に備えて、魔法を用意する事を決意する。フリーレンに全く悪気が無かった事を証明する為に……『相手の嘘が分かる魔法』を。

 

 その魔法を使って貰い、自らの無実を証明するつもりだった。当然、その魔法は性能評価をするため、世の中にばらまかれる。

 

………

……

 

 魔王アーニャ討伐に向かう勇者PT選考会場の控え室。

 

 世界各国に甚大な人間不信を与え続ける魔王アーニャ討伐には、大陸魔法協会、魔王国、教会も力を貸す。力を貸す理由は、無実の証明だ。

 

 大陸魔法協会は、魔道書の出来映えから一番疑われている。あのレベルの魔道書を作れる人物が名も知られていないなど考えにくい。真っ先に疑われたのが、ゼーリエだった。元々、魔法の発展の為ならば人類同士や人類と魔族で戦争しても構わないという思考の持ち主だと知られている。

 

 魔王国は、魔道書の出所がここであった事が二番目に疑われている理由だ。そもそも、出所だけ魔王国だとハッキリしている時点で、第三勢力も疑われるが人食いの魔族だ。疑われて当然。更に言えば、二代目魔王アウラは、穏健派だとは言え人類悪で有ることに変わりは無い。

 

 教会は、そもそもトップが怪しすぎる。神父と言えば黒服だが、紫色ラインの鉄仮面とか顔が見えない為、中身が入れ替わっているのでは無いかと巷で噂されている。その証拠に、男性から女性にトップが入れ替わった。何より、黒幕より黒幕らしい雰囲気が、噂に拍車を掛けていた。

 

 そんな、誰が黒幕でも可笑しくない連中が揃いも揃ってアリスのPT選考における面接官だ。ゼーリエ、アウラ、ボンドルド、フリーレンが並んでいる。

 

 その試験が始まる前、一同に腹を割って話していた。第一声を上げたのはアウラだった。

 

「ウチじゃ無いわよ。正直、有らぬ疑いを掛けられて私も困ってるわ。その証拠に、命令して聞き出して欲しい。そうすれば、魔王国の無実は晴れるもの。それと、ボンドルド……あなたよね?なんか、この間まで男性だった気がするんだけど」

 

「えぇ、私がボンドルドです。性別なんて些細な事です。魔王国は、疑っていませんよ。そもそも、逆らえるような状態にはしていません。管理されていない兵器など、危険です」

 

 パチン

 

 ボンドルドが指をパチンとすると亜空の矛が変形し、大岩を豆腐のように切り裂いた。そして、空間ごと飲み込みそこにあった全ての物質が消えて無くなる。その様子にアウラは開いた口が塞がらなかった。化け物が更に化け物になったと。

 

「無駄に力を自慢するなボンドルド。こちらも無関係だ。大陸魔法協会でもアーニャという魔法使いは、知らない。確かに、魔法学校にその生徒が居た。落ちこぼれだったはずだが……顔は知っている。今の年齢でどんな顔になっているかも想像くらいは付いている」

 

「さすがは、ゼーリエ様。教会の方も私の権限で色々と調査をさせましたが、過去にアーニャという人物が教会の世話になったことはありません。どうにも精神病棟に入院してからの消息がどうやっても調べられませんでした」

 

 謎が深まるアーニャという人物。まるで存在しないかのような人物に翻弄され続ける人類最高峰の者達がそこには居た。

 

 横で冷や汗をかいているフリーレン。あれ?これは、想像以上にマズイと。勇気を決して、フリーレンが動こうとした瞬間。会議室の扉が力強く開けられた。

 

 飛び込んできたのはプルシュカとアリスだった。

 

「パパ、大変だよ。アリスと一緒に魔法店を見ていたら、新しい魔道書が出回ってたよ」

 

「大変です。アリスとプルシュカお姉ちゃんで、とりあえず買い占めてきたけど……『相手の嘘が分かる魔法』。こんなのが大量に出回ったら、手の施しようがないです」

 

 人類なんて存在は嘘で塗り固められた存在だ。口に出す言葉の半分は嘘だ。人類の汚い連中と関わりが薄いフリーレンにはソレが分からなかったのだろう。人間関係構築において、嘘とは必須だ。その真偽が分かってしまうと、関係が破綻してしまう。

 

 ボンドルドが魔道書を手に取り、中身を検分する。

 

「相変わらず出来が良い魔法です。それに、人類の痛いところを的確に突いてくる。ここまで人類の事が分かっているという事は……犯人は、人間の可能性が高い。余程、人類の事が憎いのでしょう。調べた限りでは、授業中にウンコを抱きしめて、私の赤ちゃんと叫んだ結果、精神病棟に入院させられたと聞きました」

 

「どう考えても、逆恨みだろう。残当だ」

 

「そうね、同意するわ。魔族でもここまで的確に人間の痛いところを責めるのは出来ないわ。私だって、ここまで思いつかないもの」

 

「………ソウダネ。でもさ、悪気が無かったかもしれないかもよ」

 

 精一杯擁護を試みるフリーレン。だれか、一緒に助けてくれと心の底で願っている。

 

「ママ、悪気が無くても駄目な事は駄目なの。嘘は嘘でも優しい嘘ってのもあるのよ。私達のように本音で話せる人達なんて、あまりいないのよ」

 

「プルシュカお姉ちゃんの言う通りです。この魔法も人類にはまだ早いです」

 

 結局言い出せないまま、勇者PTの選考が始まる。

 

 人類に対して理解が深まったフリーレンは、次なる魔法を考案し始める。ここまで来たら、謝る事を前提にした魔法にしようと。

 

 『謝罪の本気度が分かる魔法』

 

 これで、相手が何処まで本気で謝っているか分かるという優れた魔法の開発を始めた。

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