黎明のフリーレン   作:新グロモント

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見切り発進の閑話ですが、許してください。
原作に行かねばならない気がした。


閑話:リィンバウム事変①

 魔法体系の中でも異質な召喚魔法。費用対効果から、現代においても衰退の一途を辿る魔法。その理由の一つが触媒となる「暗黒龍の角」の入手が困難だからだ。既に絶滅危惧種でエルフと同レベルでその姿を見る事ができない。

 

 更には、希少で高価な「暗黒龍の角」を使ったとしてもランダム召喚だ。ゴミから魔物まで様々な物が召喚される。このような魔法を覚えるならば、他の魔法を覚えた方が一万倍金になるし、効率的だ。本当に使い道が無い魔法と言われている。

 

 だが、このランダム召喚……そのランダムの中からとんでもない者を引き当てる人物も居る。

 

 それを実演しようと、弟子のフェルンの前で張り切るフリーレン(原作)がいた。ヒンメル宅に預けていた「暗黒龍の角」を使って、召喚魔法の希少性とギャンブル性を披露する。

 

 魔法陣を描き、呪文を唱え、触媒を消費して、彼女は呼び出してしまった。

 

「………あの~、フリーレン様。コレはどういう状況でしょうか?」

 

「あぁ、うん。成功だね。いや~、エルフが呼び出されるなんて事もあるんだ」

 

 魔法陣の中央には、寝間着姿ですやすやと寝ている銀髪のエルフの女の子と黒髪のエルフの女の子がいる。フリーレンは、同族のエルフを見るのは久しぶりで、こんな子供のエルフもまだ居るんだと若干喜んで居た。

 

 その反面、フェルンは顔が引きつっている。

 

 この状況……どう考えても誘拐だ。それも、どこから連れ去ってきたか分からないという悪魔的な状況。不幸中の幸いだったのは、エルフという事だ。絶対数の少ないエルフだからこそ、世界中を探せば家に帰せるだろうと。

 

「フリーレン様、とりあえずこの子達を起こして事情を説明しましょう。それから、家に送り返すんです」

 

「そうだね。親元に帰してあげないといけないね。おーーい、起きろ」

 

 ツンツンとフリーレンが、プルシュカとアリスの頬を突く。プニプニとした肌の触感が気持ちよく、思わず引っ張ってしまったフリーレン。

 

「眠いよ~。ママ~、プルシュカの腹時計だとまだ朝の5時なんだから」

 

「アリスの腹時計でも5時なのでお姉ちゃんと一緒に二度寝します。お休み、まま」

 

 まるで実家のような安心感で眠り続けるエルフの子供を眺めるフリーレンとフェルン。親元から誘拐してきた実感が湧いてきて、徐々にコレはマズイと脳の理解が追いついてきた。

 

 フリーレンとて、子供が朝起きたら知らない場所で知らない人に囲まれていたらどういう感情になるか程度予想ができる。今から言い訳を考えるが良い言葉が見つからない。素直に事情を説明して、家に送り届けるしかないと考えた。

 

………

……

 

 初手の対応を失敗すると大惨事になる。

 

 しかし、事の原因はフリーレンであり、同族で同じ女性として、まずは彼女が誘拐してしまった子供達に事情を説明する事になった。二人が起きるまで見守るフリーレン。

 

 最初に目を覚ましたのはプルシュカだった。周囲は明るく、地べたで寝かされていては目が覚めてしまう。寝たときと周囲の状況が変わっている事に気が付いたプルシュカは、瞬時に臨戦態勢に入る。

 

「良く訓練されてるね。目覚めから臨戦態勢に入るまでの時間、状況把握能力。相当な経験を積んでるね」

 

「うーーーん、うーーーーん。ちょっと、タイム!! アリスと少しお話があるので待っててね」

 

 プルシュカの目の前にいるのは、老衰で死んだフェルン。母親であるフリーレンもそこに居るが、なぜかいつもと雰囲気が違う。母性が薄い……胸も薄い。人の特徴を身体的な所で判断するのは良くないが、事実だった。胸とは、揉まれれば育つという事がこの時、実証される。

 

「お姉ちゃん、騒がしいです。アリスの腹時計は、正確なのでまだ………。まま?……っぽいけど、何か違います。あ、ふーーーん。なるほど」

 

 プルシュカとアリスがお互いに目で会話をする。現状を正しく理解した。

 

 これぞまさしく、リィンバウム式召喚魔法。リィンバウム式召喚魔法は、異世界から労働力を強制召喚して、働かせる悪しき行い。召喚された者は生活基盤が無いため、従わざるを得ない最悪な召喚魔法の使い方だ。

 

 そして、ふかーーーーいため息を着いた。

 

「「はぁ~~~~~。また、ママがやらかした」」

 

「なんか知らないけど、絶妙に馬鹿にされた気分なんだけど。それより、二人とも……プルシュカとアリスだっけ?ごめんね。召喚魔法の事故で連れてきちゃったみたい。送り届けるから、家を教えてよ。後、ご両親に早めに手紙を出そう」

 

 絶滅危惧種となっているエルフの若い子供達。流石のフリーレンでも甘い対応になる。この子供達を連れて行った時にしっかりと謝罪しようと考えていた。殴られる程度なら甘んじて受けようとも。

 

「フリーレン様。とりあえず、その子達もお腹が空いているでしょうし朝食にしましょう。それより、自己紹介は済ませましたか?」

 

「フリーレンだ。よろしく」

 

「フェルンです。フリーレン様の弟子です。そして、アッチで朝食を作っているのがシュタルク様です」

 

 プルシュカは、老衰目前で赤玉出すくらいまで絞られて、短い寿命を更に短くされたシュタルクを思い出し、笑い転げそうになった。近接戦闘で魔法使いに負ける戦士など、戦士の風上にも置けない。アイゼンがこの事を聞いたら、泣いてしまうだろう。

 

「プルシュカよ!! 初めまして(・・・・・)、フリーレンお姉ちゃん」

 

「アリスです。初めまして(・・・・・)、フリーレンお姉ちゃん」

 

 自己紹介を終えた二人が、フリーレンPTに臨時加入する。旅の道中、興奮を抑えられないプルシュカとアリスは、年頃の子供のように見えていた。まさか、近似世界の過去に呼ばれるなんて一生に一度できるかできないかの経験だ。

 

 道中数日過ごしただけで、プルシュカとアリスはすっかりとフリーレンPTに溶け込んだ。まるで長年の付き合いがあるかの如くそこに居るのが当たり前になる。

 

………

……

 

「なぁ、フリーレン。プルシュカとアリスは、家に届けないで良いの?イドフロントだっけ?俺は知らない場所だけど、聞けば分かるんじゃ無い」

 

「そうなんだけど、そんな場所はないんだ。中央諸国のそこには、何もない。大きな泉があるだけだ。私も何度か行ったことがあるから間違いない。あの子達が嘘をついているとも思えないんだよね」

 

 謎が深まるばかりのプルシュカとアリスという存在。送り届ける場所がなければ、手も足も出ない。

 

「フリーレン様。二人の両親の写真は、何か手がかりになりましたか?同じエルフなんですから、お知り合いとか」

 

「いや~、それも要領を得ないんだよ。今のパパって見せられた写真が銀髪の女性だったんだよ。そして、一つ前のパパって見せられたのが紫色のラインが入った鉄仮面を付けた男だった」

 

「何を言っているか、よく分かりません。とりあえず、母親について聞いてみましょう。プルシュカちゃん、アリスちゃん。二人のママって誰ですか?」

 

 プルシュカとアリスがこの時を待っていたと。フリーレンに抱きついた。そして、まま~と甘い声をだす。子供特有の甘い匂いと柔らかさに、フリーレンも抱きしめ返してしまう。

 

「酷いよ、ママ。プルシュカの事を忘れるなんて」

 

「そうだよ。ままは、プルシュカお姉ちゃんの事を捨てて旅にでた苦い過去があるのに、またそれを繰り返すの? 鬼、悪魔、フリーレンお姉ちゃん」

 

「ほらね。母親の事を何一つ話そうとしないんだ。それに、私に姉妹は居ないって何度も言っているでしょ。どうしてもって言うなら500年くらいお姉ちゃんをやってあげてもいいよ」

 

 薄い胸に顔を埋めて、可愛さをアピールする二人のエルフ。

 

 嘘一つ言っていない。全て真実だけで乗り切るあたり、間違いなくボンドルドの娘達だ。こう言うことに関しては人一倍得意だった。

 

「フリーレン様の顔を見れば分かります。本当に心当たりは無いみたいですね。置いて行くわけにもいきませんから、引き続き連れて行きましょう。召喚した責任として、フリーレン様が最終的に何とかしてくれます」

 

 長命のエルフだから、この旅路が終わってから最終的にフリーレンが親を探す旅にでればいいとフェルンは思っている。道中で手がかりが見つかればそれでよし。

 

「やったーー。フェルンお姉ちゃん、話が分かる。で、次の目的地ってどこなの?」

 

「アリスは、異世界冒険の経験値を溜めて帰ります」

 

「グラナト領だよ」

 

 グラナト領は、現在元魔王軍にして、七崩賢アウラによって進行を受けている真っ最中。彼女は、知らなかった。己の魔法がメリットよりデメリットの方が数千倍高いという事を。

 

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