路銀を確認するフリーレン一行。思わぬメンバー参加で出費が増え、今後旅を続けるには路銀が少々心もとない。何時終わるか分からない旅だから、稼げるときに金を得る。これが、長旅をする大事な心得。運の良い事にグラナト伯爵領は、今現在魔族の進行を受けている。
「フリーレン様。今後の事を考えて、この街で一仕事しましょう」
「なんで?こういう時は、巻き込まれないように早めに次の街に行く方が経験上いいよ」
フェルンは、お金に余裕があるならその通りだと理解している。だが、状況はそれを許さない。路銀が入った袋をフリーレンに見せた。どんな依頼でもクソみたいな魔道書一つで対応してしまう生きる伝説の魔法使い。世の中、生きていくためには金が必要だ。本来、老後に備えて皆お金を稼ぐのだが、永遠の全盛期の彼女にとってはお金など何時でも稼げる。
この旅は、スポンサーが不在。嘗て、プルシュカが旅をした時にはボンドルドという世界有数の金持ちが着いていたが、ここでは違う。生活水準が低いとは思っていたが、プルシュカとアリスもここでそれに気が付いた。
「プルシュカ達が旅に参加しちゃったせいよね。むふ~、大丈夫よ。こんなこともあろうかと、ママからこっそり貰った"加工できる黄金"があるわ」
「プルシュカお姉ちゃん。それは、緊急時以外で外に出したら駄目な奴です。ここは、ミリアルデさんから教えて貰った水をスピリタスに変える魔法がいいです。酒場からお金を巻き上げにいきます」
加工できる黄金。それだと、加工できない黄金があるみたいな表現だ。更に、ミリアルデとかいう過去の知人も登場してフリーレンは脳内で情報を整理する。
フリーレンが仮説を立てる為に、プルシュカとアリスに質問する。
「ねぇ、二人のパパってもしかして、なんとか
「え!?もしかして、フリーレンお姉ちゃん存在しない記憶が……。そうだよ、パパは何とか
黄金郷のマハトといえば、魔族にとって英雄みたいな存在だ。更には、黒を好む服装。あの鉄仮面を被れば、特徴は酷似しているとフリーレンは思った。魔族とエルフの混血児……遺伝子的にはエルフが勝ったのかと彼女は思った。
プルシュカが一瞬見せた"加工できる黄金"の出所は、マハトだろうとフリーレンは考える。黄金郷のマハトが何を考えエルフと融和し、子孫繁栄をしたのかと頭を悩ます。根絶すべき魔族が、まさか同族と家族になっているなど想像ができなかった。
「フリーレン、さっきから頭をかかえてどうしたんだ。それより、周囲の人から情報を集めてきたぞ。アウラって魔族が、この街に侵攻して交戦状態が続いている。それで、双方疲弊したから、停戦交渉になるって。近々、魔族がここにくるらしい」
「シュタルク様、誰ですかそれ?有名な魔族ですか?」
数十年前に活動をしていた魔王軍幹部である七崩賢アウラ。このご時世、知名度があるかと言えば微妙だ。人間の寿命的には、祖父母の世代で非道の限りを尽くした魔族だから知らない人は知らない。
「フェルンは、今度大魔族について勉強だね。現存する大魔族の一人で強敵だよ。嘗て、ヒンメル達と戦っても仕留めきれずに、逃げられた。プルシュカとアリスは
ここでフリーレンは、カマを掛ける。大魔族が親族にいるなら、当然横繋がりはあると考えた。
「当然よ!! こう見えて、アウラとは長い付き合いなんだから。一緒に旅もした事もあるわよ。なにより、アウラは
「その通りです。つまりは、アロナちゃんの曾婆ちゃんです」
ボンドルド♀。今の肉体は、先代ボンドルドとアウラの娘アルの卵子を勝手に採取し、体外受精させて、アンブラハンズの肉体で育て産み落とした存在。アウラは、知らないうちにボンドルドのお婆ちゃんにされていた。
「????」
「????」
魔族が血縁者にいると暴露するプルシュカとアリス。フェルンとシュタルクは理解が出来ず、頭を傾げていた。魔族がエルフを産み落としているなど様々な想像をしてしまう。
これも、ボンドルドとかいうサラブレッドを生み出すために、あらゆる手を講じた変態が居たせいだ。優秀であれば、魔族であろうと構わないという考え。
フリーレンはこれからの対応に頭を悩ます。
情報を整理した結果、黄金郷マハトが父親。断頭台アウラを祖母。これら血がどこかでエルフと交わり生み出されたのがプルシュカとアリスである。こんな良い子達を生み出せるのだから人類と本当に和解できるのではないかとすら考え始めた。
この事をボンドルド♀が知ったら、あんな人の心が分からない大魔族と同列に扱われるのは悲しいですねとか言うだろう。
そして、黄金郷マハトもアレと一緒にされるのは心外ですとか言うだろう。
そもそも、手当たり次第に優秀な血を取り込み、勝手に魔族の遺伝子まで取り込んだ人間がいるなんて常識外れなフリーレンであっても想像すらできなかった。
◇◇◇
フリーレン一行がグラナト伯爵領の街についた頃、断頭台のアウラは悪夢に悩まされている。最近になり高頻度で見るようになった夢が彼女にはあった。
「いや、止めて。助けて、ヒ◇■ル……死にたくない。死にたくない」
手術台に拘束されて、腹を割かれたり、角を削られたり、同族の臓器を食わされたり、ありとあらゆる臓器をサンプルとして取られ、再生され、繰り返される非人道的な実験。目覚めたときには、夢の内容までは覚えていないが地獄を味わったという事だけは確かに覚えていた。
「アウラ様がまたうなされている」
アウラの拠点では、毎晩悲鳴にも似た絶叫が響いていた。部下であるリュグナーとリーニエも多少の心配はしている。。
魔族もエルフよりマシだが、他人に無関心な所があった。
「理由は分からないが、魔法の代償の可能性もある。アウラ様の魔法は絶対だ。その反動だろう。我々は、当初の計画通り人間達を欺き結界を解除させるだけだ。そうすれば、アウラ様の気も晴れるだろう」
リュグナーが適当に言ったことだが、それは核心を突いていた。
魂レベルで絶対服従させるアウラの究極魔法。その魔法が、ハイリスクハイリターンではなく、ハイリスクローリターンだった事を誰も知らない。魂という存在について、まだ研究過程であるボンドルドとフリーレンですら知らない事が多々有る。
この原作世界は、プルシュカとアリスによって認識されてしまった。この世界の法則に二人という異物が様々な因子を持ち込む。