黎明のフリーレン   作:新グロモント

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閑話:リィンバウム事変⑤

 ゼーリエの元に、白衣を着た死装束(今代ボンドルドの予備)の一人が訪れていた。事前のアポイントなしでゼーリエに会う事は中々骨を折る。ゼーリエ宅に張られた結界を突破しなければ、会うは不可能。無理に突破すれば、攻勢防壁が起動しゼーリエ謹製の攻撃魔法が対象を滅ぼしに来る。

 

 娘がいる家を守る為、ゼーリエが用意した物だ。

 

 並の魔法使いなら何度も死ぬレベルの防衛機能だ。生き残ったとしてもゼーリエが駆けつける。手傷は負ったが五体満足の死装束にゼーリエは一定の評価を下す。流石は、今代の予備だなと。

 

「久しぶりに骨がある侵入者だと思ったら、リメイヨか。何が起こった?」

 

『卿よりの伝言です。プルシュカとアリスが誘拐されました。アロナ嬢の守りを最大レベルまで強化してください』

 

 目を見開いたゼーリエ。普段は眠そうな目をしているが、今この瞬間は事の詳細を聞き出すより子供の安全を優先した。

 

 原子レベルで何も通さない結界。フランメとは別ベクトルに進化を遂げた結界魔法の極致がここに展開される。この世界から隔離された空間だ。

 

 結界を張り終えると即座に子供部屋に向かうゼーリエ。娘がスヤスヤと寝ているのを確認し、一安心したゼーリエは娘を抱きかかえた。何人であろうと、ゼーリエから娘を奪えないだろう。

 

 眠そうに目を擦るアロナにゼーリエは、まだ寝ておけと優しく寝付かせる。

 

「詳細を話せ。ボンドルドが来れないほどの事態なのか?」

 

『卿は、フリーレン様の側を離れる事が出来ません。精神状態を鑑みれば、仕方が無い事ですのでご容赦を。代わりに、私が来ました。アロナ嬢が無事で私も何よりです』

 

 リメイヨからイドフロントで発生した誘拐事件が伝達される。

 

 奇怪な事件としか言えない。イドフロントにある結界を全て素通りして、痕跡一つ残さずプルシュカとアリスを誘拐する神業とも思える手際。同じ事はゼーリエでも無理だと言い切れる。

 

「ボンドルドとフリーレンの二人がいて、何の痕跡も発見できない?それは、本当か」

 

『その通りです。内部犯行を疑い死装束含むアンブラハンズ達、卿とフリーレン様全員が『相手の嘘が分かる魔法』を使い調査が行われましたが無実です。一番疑わしいフリーレン様は、犯行当時、卿と夜を共にしておりアリバイがあります』

 

 母親であるフリーレンが娘を連れ去っても、何の得も無い。それどころか、周りから恨みを買うだけだ。

 

「……私の勘は、フリーレンが犯人だと告げている。確かに、妻であるフリーレンを疑いたく無い気持ちは分かる。だが、私は自分の勘を信じる。ここでアロナに24時間着きっきりでも良いが、万が一もある。イドフロントに一時避難する」

 

『是非、そうしてください。我々含めて24h体制でアロナ嬢をお守り致します。プルシュカとアリスを救うため、どうかお力添えをお願い致します』

 

 ゼーリエは、言われるまでも無く、そのつもりだ。プルシュカもアリスも娘同然の存在。頼まれなくてもこの話を聞けば助力は惜しまない。

 

 

◇◇◇

 

 断頭台のアウラなんて、存在しなかった。

 

 グラナト伯爵は、話が分かる人だった。アウラを八つ裂きにしたい気持ちが彼にはあったが、将来を優先する。プルシュカがフランメの結界魔法を近代改修する事を条件にアウラが見逃される。

 

 世間的には、大魔族アウラを退け、フランメの結界魔法を近代改修する事に成功したという実績がグラナト伯爵には残る。十分に再起可能なレベルだ。

 

 フリーレン一行は、新たな仲間を加えて旅路を進む。

 

「フリーレン様。コレはどういう状況でしょうか」

 

「あぁ、うん。やっぱり、そう思うよね。今日から、私達のパーティに加わったサポーターのアウラだ。テントの設営から料理、洗濯と雑用は何でも頼んで良いから」

 

 断頭台のアウラから、旅のサポーターアウラにジョブチェンジさせられていた。馬鹿ほど魔力があるため、大荷物を持っても苦にすらならない。魔法の知見もある為、フリーレンも中々気に入っていた。

 

「大魔族のアウラを仲間に引き入れたプルシュカとアリスの功績なんだから。褒めてもいいわよ。ほら、アウラ自己紹介しなきゃ。人間関係は、最初が大事なのよ」

 

「今日からタダのアウラよ。よろしくね」

 

 アウラは、前向きに生きる事を決意している。本日の加入に際し、アウラに報酬が提示されている。アリスが天獄からヒンメルの魂を脱獄させると言う物だ。大切な人とまた会えて暮らせる。優しい未来を夢見てるアウラには今日を生きる活力が溢れる。

 

 今のアウラにとっては、魔族?それってヒンメルより大事な物かしら?と言えるレベルにまで、別世界の存在しない記憶をもっている。

 

「紹介も済んだところで、まずはアウラの服装を何とかします。その格好で歩かれると、アリスも仲間だと思われます。教会シスターが身につける覚悟礼装みたいな物を日常的に付けているなんてアリスはドン引きです」

 

「え、これって変かしら?」

 

 変どころか、変態的だと言える。魔王国でもそこまで食い込んだファッションをしている人物はいない。彼女の部下達は、貴族を思わせる上品な服装なのに、上司の彼女がなぜこんな服装なのだろうか。

 

 部下も上司が間違いそうな時は、注意をすべきだ。

 

「シュタルク様の視線を誘導をする為の服装ですか?殺しますよ。後、角も魔法で隠蔽してください。流石に目立ちすぎます」

 

「一体、フリーレンは弟子にどんな教育をしているのかしら。当たりが強すぎるわよ」

 

 アウラは、存在しない記憶から娘のアルが着ていた服装へと着替えた。その服装は、彼女によく似合っている。

 

………

……

 

 それからフリーレン一行の旅路は順調に進む。

 

 その道中でよった剣の里では、勇者の剣が残っていた。フリーレンは、アリスの方を見る。確かに彼女が持つ光の剣は、特別だ。彼女以外が持ち上げることすら叶わない。

 

 その武器製造に使われたのが勇者の剣というならば、ここにある勇者の剣は何だという事になる。シュタルクが全力を出しても抜けない剣をアリスは軽々と抜く。

 

「これがあれば、予備パーツを確保できます。アリスは、激レア素材をゲットしました」

 

「アリスだけいいな。……そうだ!! コッチにだって、魔王装備が有るんだわ!!だから、合成素材にすれば、強化されるはずよ。プルシュカって天才かも」

 

 この世に一本しか存在しない貴重な剣が、この世界から失われる事になった瞬間をフリーレン達は目撃した。だが、誰も文句は言えない。勇者の剣は表向きには、勇者ヒンメルが引き抜き、彼と共に埋葬された事になっている。

  




そろそろお迎えが来る時間かな^-^
色々すっ飛ばして、一級魔法使い編へ進行します。

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