元勇者と自称大魔王が衝突する少し前。娘を目的の場所に届けた母親は、ここで大きな問題に気が付いた。魔王の残留思念として、遠くからサポートをしているのだから住む場所が必要。野宿ができないわけでもないが、何か月もそんな生活を今のフリーレンは送れない。
快適なイドフロントの生活に慣れてしまい、自活能力が著しく低下している。エルフも一度楽を覚えるとなかなか這い上がれない。この際、正体が露見してもいいからプルシュカと同じところに住んで面倒を見てもらおうと思った矢先の事だった。
森の中でションボリと佇んでいると、通りかかった少女がフリーレンに声をかけた。少女の手には、この地で取れた山菜やキノコなど旬の物がたくさんある。そういえば、お昼ご飯を食べていなかったと思ったら、フリーレンのお腹がぐ~~と鳴った。
「これからお昼を作るのですが、よろしければいかがでしょう?」
「食べる。近所のシスターかな。こんな辺鄙な場所にも教会なんてあるんだ」
少女は、この地方に住む一介のシスター。
フリーレンは、少女の手を取りお昼ご飯をGETする事に成功した。
「えぇ。ボンドルド様のご方針で地方の村であっても基本的に教会がございます。ようこそ、フリーレン様。盛大なおもてなしはできませんが、精一杯歓迎させていただきます」
「知ってたんだ。だったら、ついでに宿も提供してくれると助かるんだけど。魔法で恩返しするよ。そうそう、名前はなんていうの?」
少女は、フリーレンが宿が欲しいというと喜んで提供すると伝える。教会に所属する者でフリーレンを知らない者は少ない。最高権力者の妻であり、歴史に残る偉人だ。地方協会にも十分な支援ができるだけの資金と物資を提供してくれる大スポンサーの一族だ。
敬虔な信徒は、今こそご恩を返す時だと気合を入れる。元はいいところのお嬢様だったが、托卵された子供だと発覚し教会に捨てられた。そこで面倒を見てもらった恩を返す時が来たのだと。托卵だとばれたのは、今彼女の目の前にいる大魔法使いが世間にバラまいた魔導書が原因だ。
「はい。私の事はマリーとお呼びください」
「マリーか・・・いい名前だね」
きつね色の綺麗な髪をしたシスター。幼い顔立ちだが、シスター服を着るだけで存在自体が叡知だと村の中では、評判の美少女だ。そんなシスターに良からぬ思いを抱く男も多かったが、回復魔法が使える教会所属のシスターに手を出せばヤバいのは誰もが知っている。
本当に村の存亡にかかってくる。
そんなシスターの元に銀髪のエルフが住み始めたが、女性であることを知り皆が安堵した。
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おはようからおやすみまで、面倒を見てくれるマリーというシスターの存在がフリーレンの怠惰な性格を呼び起こした。イドフロントでは、子供達が毎朝起こしに来るし、大好きな二度寝も惰眠もあまりできなかったが、ここでは違う。
「フリーレン様。もうお昼です。昼食はどうなさいますか?」
「お昼か・・・マリー、髪を直して。後、昼食を食べたらリモートで子供に魔法指導するから静かにしておいてね」
「はい。服はお洗濯をしておきました。お仕事中にお布団も干しておきますね」
「本当にマリーはいい子だね。フェルンの若いころを思い出すよ。そうそう、フェルンも昔は素直でいい子だったんだ。今の子じゃ知らないよね。ほら、ゾルトラーク家ってあるでしょ。あそこの初代当主をやってた子」
衣食住の全てを世話してくれるシスターマリーにフリーレンは満足していた。
この命をかけて恩返しをしたい。尊敬しておりますという気持ちが痛いほど伝わってきており、フリーレンも大満足。機嫌がよかったフリーレンは、村の人が困っていたことを魔法で解決してあげた。
錆を消滅させて金属を新品にしたり、農作物の収穫を魔法で手伝ったり、けがをした子供を魔法で治したり、シスターのストッキングの伝線を直したり、水をスピリタスに変えて村の住人にふるまったり……近所の海岸で発生している謎の爆発や無人島消失事件の調査をしてあげたりと色々貢献した。
「マリー、今日のご飯はなに?」
「マリー、お部屋掃除しておいて」
「マリー、今日はお肉が食べたいな」
「マリー・・・」
という風にシスターの世話になりっぱなしのフリーレン。この様子をボンドルドや子供たちが見たら、彼女に頭を深く下げて謝るだろう。
◆◇◆◇
ボンドルドとアリスがフリーレンとプルシュカを探していた。宛てのない旅だったので、どこに行こうか迷う時もある。こんな場合に役に立つのが、別次元からパクってきた勇者の剣だ。
これを立てて、倒れた方角に向かう。
「ぱぱ、勇者の剣占いでは東です。きっと、ままとお姉ちゃんは東にいます」
「では、東に向かいましょう。今度は、正解だと良いのですが」
ボンドルドとアリスの周囲には、人間であったと思われる残骸が無数に転がっていた。今のボンドルドは絶世の美女の体だ。そして、その傍らには黒髪の美少女アリスまでいる。そんな二人が無防備で旅路を歩けば、カモがネギを背負っているように見える。
つまり、野盗ホイホイだ。
本当に面白いように寄ってくる。優しい親子は、フリーレンの写真を見せて知らないかと言うと、聞いた誰もが知っていると答えて、森の奥へとご招待する。人間関係は信じる事から始まる。そして、当代勇者と先代勇者の期待を裏切った者達は、それ相応の末路が待っていた。
「アリスは、治安向上に貢献しました。これで、勇者アリスの知名度は高まります」
「そうですね。でも、その場合は生存者がいないと難しいでしょう」
勇者が歩けばモンスターに出くわす。それは自然の摂理。女神様の武器に導かれ、治安改善をしつつ妻子を探す。
ボンドルドは、信じて送り出した妻子が何も問題を起こさないようにと心の底から願っていた。
マリーのモデルは、シスターマリーで検索してね!!
勇者の剣が示す方向に、今回の目標がおります。