脳内で思いついたネタなので、本編と関係なく楽しんでもらえればうれしいです。
ボンドルドはイドフロントの地下で謎の地点を発見した。そこには封魔鉱を加工して造られた巨大な扉があり、高度な封印魔法が施されていた。ボンドルドでさえ開錠には年単位を要するほどの代物だった。
周辺を採掘した結果、年代測定により数千年前の異物であることが判明する。扉の一部を破壊しようと試みても、スパラグモスですら歯が立たなかった。ルールを上書きできるほどの魔法でさえ破壊不能だったのだ。
扉に施された封印魔法の防御機構。扉を破壊可能な魔法に対して即座に同種の魔法で打ち消すという、バグみたいな魔法が掛けられていた。
「実に興味深い。観測データによれば、魔法を瞬時に解析し同種の魔法で相殺する自動防衛システムが組み込まれているようです。これほどの異物が数千年前から存在していたとは……フリーレンさんなら喜びそうですが、嫌な予感がするので止めておきましょう」
三度の飯より魔法研究が好きなフリーレン。彼女がこの一件に関われば解析は飛躍的に進み、この“パンドラの箱”が開かれる日は早まるだろう。だが、その魔法技術が世に広まれば大問題になる。
研究者としての血が騒ぎ、フリーレンへの注意がまさかの展開へと繋がるとは、ボンドルドですら予想の遥か斜め上だった。
………
……
…
プルシュカは魔法学校を卒業した経験を持つ。その彼女を姉に持つアリスは、常々「自分も魔法学校に通いたい」と願っていた。その要望に応えたのが、大陸魔法協会とボンドルド達である。
当然、その魔法学校にはゼーリエの子供達も通うことになるため、気合の入り方は段違いだった。国家予算規模の費用を投じて完璧な施設を建造し、生徒についても厳格な審査が行われる。
その結果、生み出されたのが世界最高峰の魔法教育機関――イドフロント魔法学校である。理事長にはゼーリエが据えられ、教員の大半はアンブラハンズが務めることで極めて高水準の教育が実現した。さらに特別講師としてヒンメルやアウラ、そしてオレオールに収監されていた歴代の英雄たち、人類史にその名を遺すフランメ(若返り済み)も教育に加わる。
その中で、歴代の英雄から初代魔王よりも古い魔王についての話が初めて公開された。
「もはや歴史の教科書にも載らない程の昔……魔法を統べる王がいた。名は、魔王フリー……」
キンコーンカンコーン――授業終了の鐘が鳴り響く。
その講義を受けていたアリスは「魔王フリー……」という言葉に強く惹かれた。勇者として未だ魔王討伐を果たしていない彼女にとって、魔王は勇者と対を成す存在。つまり、倒さねばならない敵だった。
彼女は生まれてから様々な経験をしてきたが、魔王に関しては縁がなかった。母フリーレンが原因で、自作自演の魔王騒ぎに付き合わされることはあったが、本物の魔王とは無縁だったのである。
「そこでアリスは思いつきました。今、魔王がいないなら過去の魔王を討伐すればいいと!」
アリスはこの突飛なアイディアを母フリーレンでも姉プルシュカでも父ボンドルドでもなく、師であるゼーリエに相談した。アリスを実の娘のように可愛がっているゼーリエは、彼女からのお願いなら全力で応える。
理事長室に駆け込んだアリス。書類仕事で少し忙しそうだったが、可愛い弟子の来訪にゼーリエは嬉しそうに対応した。これがフリーレンだったら「帰れ」と冷たくあしらっただろう。
「アリスか、いいところに来たな。昨日、聖都から届いた砂糖菓子がある。一緒に食べよう」
「ゼーリエ師匠、少しお時間いいですか?」
ちょろいゼーリエは即座に「構わない」と答える。
「で、何の用だアリス?」
「実はオレオールの英雄さんから聞いたんです。昔、初代魔王より前に存在した魔王について!そこでアリスは考えました。今、魔王がいないなら過去の魔王を倒しに行けばいいって!」
ゼーリエは苦虫を噛み潰したような顔をした。普段アリスの前では絶対に見せない表情だった。その顔はまるで、その魔王に心当たりがあると言っているようだった。
「……その魔王の名は聞いたのか?」
「確か、魔王フリーなんとかって言ってました」
「魔王の名はフリーザという。確かに三千年ほど前に存在した。だが、奴は……うっ、頭が……」
「え?ゼーリエ師匠?師匠?これはいけません。すぐにパパを呼んできます!」
突如頭を抱えて苦しみだすゼーリエ。その様子を危険と察したアリスは急ぎボンドルドを呼びに行った。そしてゼーリエは知恵熱を出したかのように三日三晩寝込むことになる。過去に余程つらい思い出があったのだろうかと、彼女の娘達も心配して付きっきりで看病した。
◆◇◆◇
ゼーリエが頭を抱えて苦しんでいる最中、フリーレンは自分の研究に没頭していた。イドフロント魔法学校の教師として、女神様の魔法を題材に自由研究を進めていたのである。発見済みの魔法の中で、彼女が最も興味を持ったのは過去に意識を飛ばす魔法――フィアラトールだった。
天災フリーレンは、その魔法に手を加えることを思いついた。魔法開発において数々の失敗で人類を滅ぼしかけた前科があるため、この研究は家族だけでなくエルフ族としての認可を得て進められる。誰もが渋る研究であり、ゼーリエは大反対。
三日三晩寝込んだ翌日、ゼーリエは急に反対意見を翻し賛成派に寝返った。そのためボンドルドを含む周囲は「フリーレンがゼーリエを洗脳したのではないか」「裏取引があったのではないか」と疑った。
しかし、ゼーリエに精神魔法を使っても効果はほとんどない。それどころか、エルフの子供達に頼ませた方が百倍成功するだろう。だからこそ、研究の第一人者であるフリーレンもゼーリエの心境の変化を理解できずにいた。
「いや~、さすがゼーリエだね。年の功っていうのかな、予想以上に研究が進んで来月には試運転できそうだよ」
「あぁ、感謝しろ。最初で最後の共同研究だ。それに……まぁ、これはいい」
ボンドルド所有のイドフロント研究施設に運び込まれた女神様の石碑には、見たこともない電子器具が数多く取り付けられており、明らかに魔法文明とは異なる設備だった。ここ百年でフリーレンが科学を学んだ成果により、時代は数百年分早く進んでいた。
そんな異端の施設でゼーリエとフリーレンが共同研究しているなど、普段の二人を知る者からすればまさに青天の霹靂だった。だからこそ、万が一に備えて勇者クラフト、勇者ボンドルド、勇者アリスの三段構えが待機していた。この陣容なら魔王が現代に復活しても十分対処できる。
監視体制の中、女神様の魔法の近代改修がフリーレンの手で進められた。わずか一か月足らずで無機物実験から動物実験まで行われ、ついに人体実験に踏み切ることになる。
意識を過去に送る魔法を改め、自分自身を過去に送る魔法を完成させたフリーレンは、この栄誉ある人体実験を自ら行うことになった。本来ならアンブラハンズを使って過去と現代を行き来できるか試す予定だったが、なぜかゼーリエに止められた。
過去から未来に戻るには莫大な魔力が必要になる予定だ。それをまかなえるのはゼーリエ、フリーレン、ボンドルドの三人ほどしかいない。ボンドルドも志願したが却下された。父であり母でもある特殊な事情を抱える彼を周囲は許さなかったのだ。さらに人間である以上、寿命の問題もある。エルフなら数百年現地で研究や魔力を蓄えて戻ることも可能だが、人間には無理がある。
「人間には無理があると言ったが、果たしてボンドルドを人間の枠組みで定義してよいのか」
「さりげなく酷いことを言いますねゼーリエ様。まぁ、この状況では私が立候補するわけにはいきませんが」
ボンドルドの両足にしがみつく子供達――フリーレンの子供プルシュカとアリス、ゼーリエの子供アロナとプラナ。
「母親なのに引き留められないのは少し納得できないけど……ボンドルド、ちょっと過去に行って魔王を見つけたら帰ってくるからね。その間、子供達を頼んだよ」
「ママ、帰ってきたらプルシュカは恐竜討伐したい!」
「お姉ちゃんよりアリスが先です。魔王討伐したらアリスも恐竜討伐に行きます!」
「むふ~、任せておいて。この魔法は
“むふ~”というパワーワード。この言葉でどれほどボンドルドの人生が狂ったことか。狂った結果が今である以上、否定も肯定も難しい。
「フリーレン。私はお前が大嫌いだ。だが、この魔法開発において一切手を抜いていない。それがなぜか分かるか?」
「そんなのアリスとプルシュカのためでしょ?」
あまりに的確すぎてゼーリエは何も答えなかった。これは予定調和に過ぎない。だからこそ、ゼーリエはフリーレンのことが大嫌いなのだ。
そして皆が見守る中、フリーレンの今世紀最大の魔法――過去へ遡る魔法が発動する。フリーレンの肉体が過去へ転移される最中、ゼーリエが小声で「
マッチポンプにおいてフリーレンの右に出る者は歴史上誰もいないでしょう。