黎明のフリーレン   作:新グロモント

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15:憧れは止められない

 北側諸国の零落の王墓。

 

 そこが一級魔法使いの二次試験会場だ。だが、この王墓は未踏破のダンジョンとして有名であり、生存率が極めて悪い事でも知られている。勇者ヒンメル一行すら攻略に手を出していない。

 

 第二次試験の試験官を務める一級魔法使いゼンゼから、受験生に対して説明がなされる。

 

「迷宮攻略だ。君達には、零落の王墓の攻略を行ってもらう。合格条件は、ただ一つ。零落の王墓の最深部まで辿り着くことだ。私は、平和主義でね。争いは好まない。よって、辿り着いた者は全員合格とする」

 

「はいはーーい!! プルシュカ、質問がありまーす。多分、お姉ちゃんは嘘はいっていないけど、何か大事なことを言ってない気がする。なんで、一級魔法使いの人達がこの迷宮を攻略していないのか教えて欲しいな」

 

 全員が気にしていた事をプルシュカが聞いた。

 

 迷宮攻略は、金と名誉になる。そういった事が好きな連中は数多い。それなのに、未踏破。付け加えるなら、帰還者が居るのだから持ち帰った情報を大陸魔法協会は保有している。

 

「何を言っている。君達が目指しているのは魔法使い最高峰だ。不可能を可能にするのが一級魔法使い。未踏破だろうが、前人未踏だろうがねじ伏せて突き進むんだ」

 

 それから、試験官ゼンゼが最深部到達証明に付きそう事と脱出用ゴーレムというお助けアイテムが配布される。その脱出用ゴーレムの便利さをボンドルドも手放しに称賛する。

 

 試験開始の合図がなされた。

 

 良識があり合理性を考えるデンケンが協力して攻略に望むべきだと提案をする。一次試験を突破した者達が揃っているのだから、全員が得意分野で協力すれば不可能を可能にできると。

 

 だが、癖の強い魔法使いが多い。他人に足を引っ張られるのはごめんだと考える事には一理ある。この場に残る魔法使い達は、多かれ少なかれ力量が低い者に足を引っ張られた記憶がある。

 

 一人、また一人と迷宮へと進んで行く。

 

「行くよ。あれは駄目だね。もう成立しないよ」

 

「いいんですか、フリーレン様?」

 

 迷宮攻略のプロであるフリーレン。その判断にフリーレン一行は従う。このPTのリーダーはフリーレンだ。トップの判断を疑っては、PTが成立しない。

 

 ボンドルド達が迷宮に向かおうとするとゼンゼが同行するという話になる。だが、ボンドルドは難色を示す。

 

「我々にメリットの無い提案です。働かない者を最深部にまで連れて行って、何の得があるのでしょうか?」

 

「私が最深部で到達証明しなければ、誰も合格できない」

 

「それは、大陸魔法協会の都合です。私の知るところではありません。一級魔法使いは不可能を可能にするのでしょう?ならば、一人で最深部へお越し下さい。お待ちしておりますよ」

 

「わかった」

 

 試験官を連れて行くなら、それ相応のメリットの提示があるべきだ。それが無いなら、この提案を飲む意味は無い。知らない者がメンバーにいるだけで気苦労が増える。そのデメリットは重い。

 

 未踏破の迷宮と言う事で、プルシュカは大興奮していた。ちょろちょろと、歩き回り無駄に罠を起動させる。落ちてくる天井トラップをボンドルドが力業で支えたり、飛来してくる毒矢をフェルンがゾルトラーク速射で防いだり、水責めトラップの水をフリーレンが火力で全て蒸発させたり……大変な目に遭っていた。

 

「フリーレンお姉ちゃん。離してよ」

 

「駄目。あの宝箱には、貴重な魔道本がある。私の魔法使いとしての経験が告げている」

 

「フリーレン様、プルシュカちゃん。その宝箱はミミックです」

 

 フリーレンとプルシュカがどちらが宝箱を開けるかで争っている。

 

 フェルンの宝箱を判定する魔法で99%ミミックだと判明しているのだが、彼女達は1%の可能性に賭けていた。

 

「大人はこういう時、子供に譲るものだってパパが言ってたよ~」

 

「駄目だ。ボンドルド、子供の躾は親の仕事だ」

 

 何故か飛び火するボンドルド。

 

 この面白いやり取りをいつまでも見ていたいと思っていた。二人とも都合の良いときだけ、子供になったり、大人になったりするからフェルンも呆れていた。

 

「では、二人で開ければ宜しいのではないですか?」

 

「ボンドルド様、私は今少し先の未来が見えました」

 

 お互いの妥協点が見つかったフリーレンとプルシュカ。二人でせーのというかけ声で宝箱をあげた。99%の可能性でミミックの宝箱だ。結果は火を見るより明らかで、二人とも美味しく開いた空箱に食われてしまった。

 

「「暗いよー!!暗いよー!!」」

 

 ジタバタと暴れる二人の様子は馬鹿丸出し。

 

 ボンドルドは、馬鹿な子ほど可愛いそう思いませんかとフェルンに言おうと思ったが、口を噤んだ。最終的に、助け出されたフリーレンとプルシュカ。

 

「プルシュカちゃんもなんで分かりきった罠に掛かるんですか。フリーレン様もですよ、まったく」

 

「だって!! 宝箱って夢とロマンがあるの。憧れは止められないわよ」

 

「良いこと言うね、プルシュカ」

 

 

………

……

 

 フリーレン一行が迷宮内を右手の法則で宝箱の全回収を進める最中、デンケンPTは一番乗りで最深部手前までやってきた。そのPTには、ゼンゼも同行していた。デンケンもお荷物となるゼンゼを放置したかったが、今後の付き合いも兼ねて承諾した。

 

 だが、彼等でも最深部に繋がる部屋で待ち構える二人(・・)を見て困惑する。

 

「……デンケン。あれも対処できるか?」

 

「一つだけ言える事は、これが試験でなかったら儂はとうに瓶を割っておる」

 

 リヒターの問いに対して、正直な気持ちを伝えたデンケン。

 

 ソコには、この迷宮が未踏破の理由となっている原因が立ち塞がる。迷宮の最深部にいる水鏡の悪魔が迷宮に立ち入った者の複製体を自らの護衛につけていた。恐ろしい事に、その複製体のスペックは本体同等というインチキ過ぎる。

 

 一人は、すました顔をしてるフリーレン。

 

 一人は、全ての魔力を解放し獣化状態のボンドルド。

 

 油断を誘って殺すフリーレン、全力で相手を殺すボンドルド、この二人を同時に相手にする必要がある。

 




業務連絡:
作者は、明日から函館旅行の為、本当に投稿が止まりますのでご容赦ください。

ネタが尽きてしまったので、どのようなお話を知りたいか読者様にお伺いできればと思っています。全て何話程度やるかも全く未定です。

  • 過去編(1000年前、初代ボンドルド)
  • 過去編(人類防衛ライン戦)
  • 過去編(50数年前、居候フリーレン)
  • 閑話(ゼーリエとプルシュカの文通)
  • 閑話(プルシュカと女神の魔法)
  • バカか、全部やれ
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