宝箱から集めたゴミやお宝を大量に背負っているプルシュカが元気いっぱいに歩く。最深部手前で座っている受験者達に元気に手を振り、成果を自慢しに行く。
「おじさん達に追いついちゃった!!」
「ようやく来たか、随分待っていたぞ」
デンケンが待ち人がやっと来たと喜んだ。
最深部で待たずに、何故ここに居るんだと少し疑問に思うフリーレン。その事について、デンケンが扉を少しだけ開けて説明した。
「あれらが、陣取ってる。もう半日になる」
「ふーん。面白くなってきた。迷宮攻略は、こうでなくちゃ。それにしても、本気モードのボンドルドとは……少し大人げないんじゃない」
「人の切り札を本人の許可無しに披露するのは止めて欲しいものです。それにしてもカートリッジまで再現しているとは、実に興味深い」
ここに来て、ボンドルドは未踏破である原因をハッキリと理解した。
その上で、壁際に座っているゼンゼの方を見る。
「私は答えんぞ」
「私達の複製体が居ると言う事は一級魔法使いゼンゼさんの複製体もいる。だから、後方の安全を確保するため、本体が死亡した場合の検証をしましょう。居るだけでマイナスな存在。プラスにならないならば、天秤の針を0に戻しておくべきです」
ボンドルドの意見は、当然であった。
この場に居る誰もがそれを考えた。居るだけで複製体が作られてしまう。その上で働かないならば、潜在的な敵と同じだ。酷い事に、ゼンゼはこの展開も想定の範囲だった。
「不可能を可能にしてこそ、一級魔法使いだ。フリーレンとボンドルドの複製体が偶然、最深部前を陣取った。お前等は運が悪かった。運も実力のうちだ」
「それは違いますよ。私とフリーレンさんの複製体が徘徊していたら、受験生達は皆殺しになっています。今の状態だったのが不幸中の幸いです」
ボンドルドの発言に、その場にいる全員がその通りだと頷いた。
この試験の何処が平和的だというのだと。受験生が死ぬ確率が高すぎる。協力したとしてもフリーレン(偽)やボンドルド(偽)から逃げられる受験生がどれだけ居る事か。
「………」
「情報を提供しないのならば、それで構いません。手持ちの情報で攻略するだけです」
幸いな事にこの場に揃っているのは、知識ある魔法使い達。加えて、デンケンが複製体との交戦経験があった。各々が持っている情報を整理して、迷宮攻略の糸口を探る。
物は試しに、最深部の広間手前からボンドルドが
「やはり、駄目か。黎明卿の魔法ならばと思ったのだが、相手も同じか」
「そうなるでしょうね。私でも同じ行動をとります。私とフリーレンさんが、複製体を相手にしている間に、"命懸けで宝物庫の扉を閉じる魔法"を解除することは現実的ですか?」
こんなクソ面倒くさい魔法を使えるフリーレン。これがなければ、楽だったと誰もが思った。格上魔法使いが、命懸けで守るという意思で使った魔法を解除できる自信がある者が誰も居ない状況になる。
この程度の苦難、二人は経験済みだ。勇者PTであったフリーレンや英雄とまで呼ばれるようになったボンドルドは、解決方法は幾つか浮かんでいた。ボンドルドが提案したその一つがこれだ。
「残り時間ギリギリまで私とフリーレンさんが外で待機しますか。道は覚えたので20分程度あればここまで戻ってこれます。試験終了ギリギリまでに残った皆様で攻略するという方法を提案します」
「ボンドルド様。その方法は有り寄りの有りだと思います。しかし、あの複製体達はいつ消えるのでしょうか。それに、複製体のフリーレン様は、魔法の都合であの場からうごけないでしょうが、ボンドルド様の複製体は……」
「私の見立てでは、自由に動ける。多分、私やボンドルドが後詰めでいるからあの場を動いてない。私達が居なくなったら残りのメンバーが本気のボンドルドと対峙する事になる。それに、私の魔法なんだけど……多分、複製体が死なないと消えても二日くらいは解けないよ」
フェルンの問いにフリーレンが回答した。
味方であれば有能なフリーレン。敵になったら、面倒で仕方が無い。その事を痛感させられていた。攻略方法を皆が悩み、フェルンがある事に気が付いた。
「あの複製体が心の働きを精密に模倣しているなら、行動パターンによる弱点も本人と同じですよね。ボンドルド様も同じ場所にいなければ、なんとかなったかもしれませんが」
「フェルンさんは、フリーレンさんをよく観察されていますね。昔から治らない悪い癖です。恐らく、複製体の私がそのあたりをサポートするので危険です。タイムリミットも迫ってきています。それなのに未だに情報提供がないので仕方がありません」
この方法は、ボンドルドも乗り気では無かった。
この後の試験を考えれば、間違いなく不合格にされるのは分かっている。だが、不合格が自分だけならそれでも良いと考えていた。フリーレン一行の誰かが一級魔法使いの証があれば良い。便利な通行証は一枚あればいい、そう言うことだ。
「ゼンゼ、最後の通告だ。今この時がゼンゼの分水嶺。居るだけで、マイナスになるなら不要だと。ゼロどころかプラスにされる。ボンドルドは、私ほど優しくない」
「何を言っている?」
フリーレンの言葉が理解出来ないゼンゼ。
「複製体の特性について、分かった事があります。これは、コピーされた時点での能力が反映されます。コピーされた時点より強くなればよい。つまりそれだけの事。幸いな事に、貴方は一級魔法使いです。空きスロットの一つを埋めるにはちょうどいい。すこし奥でお話をしましょうか、ゼンゼさん」
ゼンゼが死ぬかも知れないのに、どの受験者も助けようとしない。
それもそのはず。こんなクソみたいな試験につれてきた張本人だ。しかも、フリーレンやボンドルドが参加している時点で、クソ展開になるのは想定済み。
ゼンゼは、死の恐怖から命を守るため魔法が勝手に発動した。髪をバネのようにしてこの場からの逃亡を図る。
「くっ」
「複製体が闊歩する迷宮で、試験官に何かあったらいけません。私が、魔法を使って追います。
ボンドルドの鉄仮面から追尾性のある攻撃魔法が発射された。それは壁に反射されて確実に相手に命中する。威力が調整されており、即死しない程度だ。
………
……
…
わずか一時間で一級魔法使い一人分程度の魔力量が増大したボンドルドが戻る。何でもかんでも一級魔法使いなら乗り越える壁だとしか言わない無能試験官は要らぬと誰もが思った。
三年に一度しかない試験。
この試験を受けるために各地から来る手間暇は膨大だ。試験官の気分一つで不合格になるなど、受験者側として許せない。だからこそ、この場に居る者達は、ボンドルドの言い分を信じることにする。
「惜しい人を亡くしました。まさか、ダンジョンのトラップで亡くなってしまうとは。では、私とフリーレンさんが、中にいる複製体を始末するので、背後の守りは皆様に頼みます」
「はーーい!! 頑張ってね。パパ」
ボンドルドは久しぶりの強敵にワクワクしていた。無論、それはフリーレンとて同じ。強敵との出会いが自分を強くする。
最初からフルスロットルで戦いに望むボンドルド。獣化には獣化で対応する。
「期待していますよ。歴史上でもっとも迷宮を攻略したパーティーの魔法使いさん」
「子供の前で恥ずかしい姿は見せられないよ。世界でただ一人のエルフのお父さん」
ボンドルドの右腕とフリーレンの杖が触れあう。カツンと音が響くと二人は広間へと入場した。
説得の末、ゼンゼの協力を得ることが出来ました。
ネタが尽きてしまったので、どのようなお話を知りたいか読者様にお伺いできればと思っています。全て何話程度やるかも全く未定です。
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過去編(1000年前、初代ボンドルド)
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過去編(人類防衛ライン戦)
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過去編(50数年前、居候フリーレン)
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閑話(ゼーリエとプルシュカの文通)
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閑話(プルシュカと女神の魔法)
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バカか、全部やれ