大陸魔法協会は、今年度の二次試験結果に対して議論がなされていた。
試験官であったゼンゼが、試験中の事故死。迷宮最深部と思われる場所が巨大な空洞化。受験生からは自己申告により最深部到達の報告。
大陸魔法協会は、個別に調査団を派遣して迷宮が踏破されている事は確認できた。ココで問題になるのが、受験生達の取り扱いだ。合格、不合格、再試験など色々な案が提示される。その間、受験生達への合否判定は一時保留となっていた。
最深部到達の受験生達は、事を荒立てても仕方ないので大人しく街で時間を潰している。その時間を利用して街中をかけずり回っているボンドルドがいる。最後に辿り着いたのがリヒターが経営している魔法店だ。
リヒターは、残念ながらゼンゼの複製体により失格となっている。ボンドルドがあと少し早ければと、お詫びを言っていた。リヒター自身は、力不足を感じており、三年後受験する事で頑張ると新たな目標を立てていた。
そんな世間話をしつつ、リヒターはボンドルドの求める品を聞いて耳を疑っていた。
「すまない、黎明卿。もう一度、聞いても良いか。何が欲しいって?」
「未開封の宝箱。できれば、
精度99%の魔法で判定されてミミックだった場合、放置されるのが世の常。だが、1%にかける強者もいる。
しかし、そのような宝箱自体が世間に流通するかと言われれば、難しい。80年前に勇者PTによって、攻略された迷宮は数知れず。更には、迷宮の隅々まで調べて全ての宝箱を開けていた。宝箱の取りこぼしなど無い。
現存している迷宮で、金にもならない可能性が高い99%ミミックの宝箱など誰も持ち帰らない。魔法店ですら買い取り拒否だ。
「俺の人生でそんな品物は、市場流通しているなど聞いた事が無い。参考までに、聞きたいんだが、何故それが欲しいんだ?」
「プルシュカが、口を利いてくれません。普段は良い子です。娘はため込むタイプでそれが今回爆発してしまいました。余程、楽しみにしていたのでしょう。代わりになるか分かりませんが、夢とロマンが詰まった宝箱をプレゼントしたいと思いました」
「父親って大変だな。残念だが、俺の店では取り扱っていない」
「そうですか、ありがとうございます。三年後、頑張ってください」
ボンドルドが魔法店を出たところ、遠くに信じられない光景を目にした。
プルシュカが何処に出しても恥ずかしいレベルの痴女スタイルをしている金髪エルフの手を引いて服飾店に入っていった。
ボンドルドは、金髪エルフに見覚えがあった。数百年経っても変わらぬ服装。一人で世界を滅ぼせると言われても納得できる魔力を持つエルフ。何かの見間違いであって欲しいと考えていた。
◇◇◇
ボンドルドがミミック判定された宝箱を探し回っている最中、プルシュカは街で買い食いをしていた。ベンチに座りアイスを食べていると、彼女の目の前で一台の馬車が止まる。一瞬だけプルシュカは視線をあげたが、アイスが優先された。
馬車の主は、自分よりアイスが優先された事を察する。
「見ない顔だな。お前、名前は?」
「………」
プルシュカが目の前に現れた金髪エルフを確認した。顔、胸、腰、足といった風に全身を上から下までしっかりと。そして、プルシュカは理解してしまう。時代に取り残されたエルフがここにいると。この時代で1000年前みたいな服装をしているエルフがいては、あらぬ誤解が広まってしまう。
「どうした?名前はなんだと聞いている」
「人に名前を聞くときは、自分から名乗るものだってパパが言ってたわよ」
ゼーリエにとっては、新鮮な返しであった。目の前の子供エルフは、人間レベルで一人前の魔法使いの領域にいる。ゼーリエの魔力を把握してなお、怖じけずにこの物言い。
「ゼーリエだ」
「プルシュカよ。だけど、流石に無いわ。プルシュカがお金出してあげるから、お買い物行きましょう。ゼーリエちゃん」
「お前、舐めているのか。私の方が年上だ」
「そう言うこと言える格好じゃないわ、下着姿みたいな格好を止めたらお姉ちゃんって呼んであげるわ。エルフって数が少ないらしいから、そんな格好で街中をあるかれたら私まで誤解されるわ」
透けていないがネグリジェみたいな服装にお高いマントを羽織っている。彼女の部下達が忠実すぎたため、誰も改めようとはしなかった。
………
……
…
大陸最強のゼーリエ。伝説の大魔法使いフランメの師であり、神話の時代から生きているエルフ。全知全能の女神に一番近い存在とされており、名実ともに最強の魔法使い。
彼女は、大陸魔法協会のトップ。そして、今回の一級魔法使い試験における問題について判断すべく、魔法都市オイサーストにまで足を運んでいた。
「第二次試験の合格者は10名以上。異例の合格者数だ。多すぎる。全員協力型の試験は大いに結構だ。今の一級魔法使いには協調性がないからな」
「面目ありません」
ゼーリエは、合格者が多い事を責めてはいない。弟子の一人であるゼンゼが望んでやったことだ。だが、ゼーリエの言葉には圧があった。それが感じ取れないほど、彼女の弟子達は愚かではない。
「だが、その中にあってはならない程の実力者が居た。そして、ゼンゼは死んだと」
「・・・フリーレン様とボンドルド様ですね。ゼンゼの事は残念です。受験者達からの情報を纏めますと、恐らくボンドルド様が手に掛けられたようです」
ゼーリエにとっても、知らない二人ではない。双方の性格も知っている。だからこそ、気にくわない。結果的に、ゼンゼが望んでいたような結果にはなった。だが、その唯一の犠牲者がゼンゼであるというのは問題だ。
「お前達が謝る必要は無い。これも全て、フリーレンとボンドルドが悪い。異例には異例を。第三次試験は私が担当する。平和的に選別してやる」
ゼーリエは、受験生名簿にプルシュカと名前が載っている事に気が付く。その注意事項にボンドルドの娘と書かれていた。
旅行から戻ってきたので、再開します。
PS:
色々考えた結果、読者様への配慮という観点でアンチ・ヘイトのタグを追加しました。
色々お騒がせしました。申し訳ありません。
ネタが尽きてしまったので、どのようなお話を知りたいか読者様にお伺いできればと思っています。全て何話程度やるかも全く未定です。
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過去編(1000年前、初代ボンドルド)
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過去編(人類防衛ライン戦)
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過去編(50数年前、居候フリーレン)
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閑話(ゼーリエとプルシュカの文通)
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閑話(プルシュカと女神の魔法)
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バカか、全部やれ