三年に一度の一級魔法使いの試験が終わった。今年は、ゼーリエすら豊作という年で沢山の一級魔法使いが新たに誕生した。その日の夜に、特権授与が行われる。ゼーリエによる魔法贈与だ。
自らの経験ごと他人に魔法を与える魔法だ。これにより、習熟度に関係無く、完璧な魔法を行使できる。
大陸で50人も居ない一級魔法使いになるため、授与式には同行者も許されている。フリーレン一行から唯一合格したフェルンが気を遣う。
「今夜、特権の授与があるのですが同伴者がいてもいいそうです。折角ですし、皆で一緒に行きましょう」
同伴者可能でも、ボンドルドとフリーレンはゼーリエと喧嘩別れに近い状態。そんな二人まで同行を許すほどゼーリエは心が広いのだろうかと、ボンドルドは思っていた。
いやそうな顔をするフリーレン。だが、対照的にプルシュカはワクワクしていた。それは、お友達の家に遊びに行く子供のようだった。洋服まで選んで着せ替え人形にしたのだから、実年齢はどうあれ、プルシュカにとっては妹分みたいに思っている。
なお、その事はゼーリエも薄々分かっているが甘んじて受け入れている。
「パパ、ゼーリエお姉ちゃんの好きな物って何?仲良くなるには手土産って大事だと思うの」
「ゼーリエ様の好物ですか……フリーレンさん、心当たりはありますか?私より付き合いが長いので一つや二つくらい」
「口に出して言わないけど、弟子のことが大好きだよ。それこそ、今まで弟子にした人達の事は全部覚えているほどに」
ボンドルドも本当なのかと思った。魔法が好きというなら理解できた。1000年前には魔法は特別であるべきだ。人間に誰が魔法を教えるかなど色々言っていた記憶があったからだ。
ボンドルドは、その理論だと……弟子の弟子に当たるフリーレンや自身の事も大好きという事では?と考えたが、口には出さなかった。フリーレンが凄く嫌な顔をしていたからだ。
「ふーーん、ゼーリエお姉ちゃんってツンデレなのね」
その日の夕方、フリーレン一行はフェルンの特権の授与式に同伴すべく大陸魔法協会へと足を運んだ。受付の女性が、フリーレンとボンドルドの二人を見ると一瞬顔が引きつったが、直ぐに笑顔に戻すプロ根性を見せる。
「あの同伴者ありって聞いたんですけど…」
フェルンが受付に同伴者同行の意思を伝える。
「申し訳ありません。ゼーリエ様からの通達で、フリーレン様、ボンドルド様は出禁です。今後30年は大陸魔法協会の施設に立ち入らないようにと」
「フリーレン様とボンドルド様がなにをしたって言うんですか」
受付の塩対応に抗議するフェルン。今や大陸魔法協会は各地にある。特権の事もあり日々その勢力を伸ばしていた。その関連施設に30年も入れないなど酷い仕打ちだとフェルンは思い込んでいる。
「仕方が……うん?300年の間違いじゃなくて、30年?」
「その通りです。ゼーリエ様より両名30年間出禁となっております」
フリーレンとボンドルドは、桁を間違っていないか再確認をした。だが、結果は変わらずだ。なぜ30年と中途半端なのか、二人は気が付かなかったがプルシュカだけは気が付く。その事により、プルシュカは更にゼーリエの事が好きになっていた。
「おかしいな。ゼーリエの機嫌を損ねたんだから1000年くらいは出禁にされると思ったんだけど。あの人子供みたいなところあるから」
「プルシュカ、分かっちゃった。ツンデレなんだよ!! 仕方ないから、プルシュカとシュタルクが付き添ってあげるね」
フェルン達を見送り暇になったフリーレンとボンドルド。お互い、大陸魔法協会の施設が出禁となったので街で時間を潰すことにした。
………
……
…
街を散策し露店で軽食し、魔道本巡りを終えた二人。ベンチに座り、フェルン達の帰りを待っていた。
「そろそろ、特権の授与が終わる頃かな。一級魔法使い。この世界でも50人もいない魔法使いの頂点か……フェルンも立派になったね。この時代では、フェルンのほうが有名な魔法使いなんだろうね」
「そうかもしれません。私なんて、今では魔法使いとしての名声は無いも同然。僧侶としての方が有名です。いつか、世間で聖杖の証を知る者がいなくなっても、私は忘れません。私にとって、世界一の魔法使いはフリーレンさんの指定席です」
「へぇ~、ゼーリエやフランメよりも?」
「女神様に誓って」
フリーレンとボンドルドがお互いの聖杖の証を見せ合い、大人の会話をしている。その最中、一人の来訪者が二人の前に訪れた。
ボンドルドは相手を確認して、警戒する。一級魔法使いゼンゼと比較して遙かに高みにいる魔法使いである事が分かった。その力量は、0.6フリーレンほどだ。運次第ではジャイアントキリング可能な範囲。
「フリーレン様、ボンドルド様。一級魔法使いのレルネンです。ゼーリエ様の弟子の一人です。ゼーリエ様がご迷惑をお掛けしたようで…」
「構わないよ。昔からそういう人だったから。うーん、やっぱり見えているね。魔力の揺らぎが。とんでもない手練れだ。平和な時代に似つかわしくないね」
「失礼ですが、どのようなご用件ですか?レルネン殿」
ボンドルドは、年寄りの話は長いと実感している。それに、これほどのまでの使い手が自ら足を運んでくるのだから、碌な事ではないと過去の経験から知っていた。
「あのお方の弟子で歴史に名前を残したのは大魔法使いフランメ様のみ。私が老いて死ねば、ゼーリエ様の生きた証が一つ消える事になります。私はあの方を未来で一人にさせたくないのです。それが例え伝説の魔法使いフリーレン様や北側諸国の英雄ボンドルド様を討ち取った悪名であろうとも」
ボンドルドは、レルネンの発言が理解できなかった。
不老長寿のゼーリエの傷跡になりたいから、悪名で良いから歴史に名を残したい。先日、三次試験で試験官を殺したから不合格にされた身としては、一級魔法使いがこれでいいのかと協会勢力をフル活用して大陸魔法協会に問いただしたいと思った。
ゼーリエには、狂犬の首輪をしっかりと握っておいて欲しいと本気で思ったボンドルド。
しかも、レルネンは初手でフリーレンを狙いその防御魔法を貫いた。フリーレンが多重で展開した防御魔法を貫ける魔法使いは少ない。その実力を素直に褒めるボンドルド。
「手合わせ願えますか、フリーレン様」
「手合わせはしないよ。時間の無駄だ。歴史に名を残す必要なんて無い。ゼーリエはちゃんと覚えてる」
ボンドルドは、レルネンを殺せるチャンスを狙う。二人が揃っている場で殺しに掛かってきた。更には、女性であったフリーレンから狙った。会話に集中している最中、不意打ちしても文句を言われることはない。
ボンドルドが完璧なタイミングで殺そうと思ったらフリーレンが目で制止する。
フリーレンの説得でレルネンが己が誤った行動をしてしまったと理解したのだ。
「レルネン殿。大陸魔法協会への"貸し"にしておきます。……さぁ、フリーレンさん、肩の傷を癒やします」
「あ~ぁ。フェルンに怒られるかな。血って、なかなか落ちないんだよね」
「私も一緒に謝りますよ。今回は、良い所がありませんでしたから」
戻ってきたフェルン達と一緒に宿へと戻るフリーレン一行。フェルンが新しく手に入れた伝説の洗濯魔法が早速披露される時が来た。彼女の手に掛かれば、血の汚れなど綺麗さっぱり無くなる素晴らしい魔法。その効果にフリーレンも驚く程だ。
ボンドルドも彼女の指導により洗濯魔法を覚える努力を始める。長い旅路、衣服洗濯は重要な課題の一つだ。
ネタが尽きてしまったので、どのようなお話を知りたいか読者様にお伺いできればと思っています。全て何話程度やるかも全く未定です。
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過去編(1000年前、初代ボンドルド)
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過去編(人類防衛ライン戦)
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過去編(50数年前、居候フリーレン)
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閑話(ゼーリエとプルシュカの文通)
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閑話(プルシュカと女神の魔法)
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バカか、全部やれ