北側諸国ザオム湿原。
朝食準備を始めてるフェルンの所に、ボンドルドとシュタルクが食用可能な山菜やキノコ、魚を持って戻ってきた。朝の仕事の分担は、大体このような感じだ。エルフ二人は寝床でぐっすり、朝ご飯と同時に起きてくる。これが定番の流れ。
だが、珍しい事にフリーレンが早起きをしていた。プルシュカが旅に参加し始めた頃は、早起きして見本を見せていたのだが、段々と堕落していった。10年程度は、早寝早起きを頑張れるかと思っていたボンドルドだが、こう言うときのエルフの時間感覚は早い。主に、諦める方向への判断の速さは人間と変わらない。
「フリーレンさんが早起きとは珍しいですね。あれは、何をやられているんでしょうか」
「何か気になる事があって目覚めてしまったみたいです」
「あった。これは大物だね」
茂みから目的の物を見つけたフリーレン。彼女の手には、500mlのペットボトル程度ある封魔鉱が握られていた。魔法行使を阻害する、魔法使い殺しとも言えるアイテム。それが転がっていることにボンドルドも驚いた。
フリーレンから封魔鉱を受け取ったシュタルク。綺麗な石だな程度の感想を抱いて居た。だが、これがどれほど有用なアイテムなのか、彼は理解しきれていない。特に、対魔族で最前線で頑張っている前衛職にとって、喉から手が出るほど欲しいアイテムだ。
「これはこれは、市場でも見かけることが少ないレベルのサイズです」
「・・・あれ?火の魔法が出ませんね」
「この純度なら半径3mは無効化できるかな。シュタルク、ちょっと離れてみて」
フェルンの火の魔法が無事に発動する。
「とても希少な物でね。小石ほどの大きさで金貨数枚はくだらない。その大きさなら豪邸が買えるね」
「すげーな・・・」
「シュタルクさんは、あまり価値を理解されておりませんね。その石を身につけていれば、拘束魔法や精神魔法などを受け付けない。対魔族戦における前衛必須アイテムともいえます。考えてもみてください、魔法が使えない魔族が貴方の脅威になるのかと」
成体のドラゴンを一撃で葬る事ができるシュタルク。魔法を無効化できる彼が敵陣に特攻するだけで敵が乱れるのは明らかだった。勿論、味方の魔法も無効化するので一長一短だ。
だが、魔法使いが多いフリーレンPTではメリットよりデメリットが多いと判断される。フェルンの一言で封魔鉱は捨てる方向へとなった。
「地表にこれほどまでの封魔鉱があると言う事は、大規模な鉱脈が近くにあるかも知れません。アンブラハンズ達に連絡して、この付近一帯を調査させます。万が一、魔族達に利用されては世界のバランスが崩れます」
第二のイドフロントとなる可能性があるとボンドルドは考えていた。重要物資の独占と管理。種の存続を大事にしているボンドルド、魔族を保護した時の為にも封魔鉱は大事な物資だ。
北側諸国では、それなりの地位と権力があるボンドルドならば、この地をお買い上げする事が実現可能であった。
順調に進んでいたが、湿地帯の脆い足場が崩れ落ちる。それに巻き込まれてしまいフリーレン達も一緒に穴へと落ちる事になった。だが、空を飛べる魔法使いが居る為の油断が致命的な問題を引き起こす。
空を飛べるから落とし穴なんて無効。そんな思い込みが誰にでもあった。落ちた先が封魔鉱の鉱床があるのは想定外。しかも、過去に例を見ないほどであり、洞窟全体が封魔鉱で囲まれていた。
「あぁ、素晴らしい。これ程までの鉱床が見つかるとは。早急にアンブラハンズ達に連絡を入れて、周囲を封鎖します。第二のイドフロント建設を考えれば20年程度は欲しい所ですね」
「ボンドルドは、封魔鉱が好きだね。イドフロントだけで満足すればいいのに」
「フリーレンさん、戦略物資は安全に管理する必要があります。これらは、魔族側、人類側、どちらの手に渡っても危険です。安全に管理できる人が対応すべきです」
人間に似た姿をしている魔族が増えている昨今。人類側にコンタクトを取って入り込んでいるスパイがどれ程居るか、ボンドルドでも把握していない。更に言えば、魔族達は美形揃いという事も問題だ。
古今東西、美女に弱い連中は多い。
「パパ。なんで人類側に渡したら駄目なの?パパが管理しないでも、誰かに任せちゃえばいいじゃん。ゼーリエお姉ちゃんとかでもいいんじゃないかな」
「私と違って一枚岩ではありません。利益に目がくらんで、良からぬ事をする者達もいるでしょう。情報とは知る者が少ないほど漏れにくい」
その答えに納得するプルシュカ。今は、対魔族の脅威があるから一致団結している国が多い。だが、戦後を考えれば戦略兵器となる魔法使いをどうするかという課題が生まれる。そうなれば、対魔法使いでも有用な封魔石が重要なアイテムとなる。
「本当に、これは人類にはどうしようもない物だよ。管理は任せたよ、ボンドルド。とにかく、ここを登るのは無理だから他の出口を探そう。頼りにしているからね。シュタルク」
「そうだよ、プルシュカ達は魔法が使えない女の子なんだからね」
「そうそう、魔法が使えないただの女の子だ」
エルフ女性二人から頼りにされる前衛シュタルク。こんな時だけ頼りにするのかこの二人は。似た者同士めとシュタルクは思った。だが、シュタルクは二人の発言に疑問を感じた。
「女の子…?」
「私はシュタルクがクソババァって言ったこと忘れてないから」
「フリーレンお姉ちゃんは、プルシュカと比べたらね~、そりゃそうだよね」
若さを誇るプルシュカ。だが、現実を突きつけるのがシュタルクであった。
「プルシュカも俺の二倍以上生きてなかった?」
「はぁ~、シュタルク様はバカだったんですね。もう良いですから、先頭を歩いてください」
女性への対応が明らかに出来ていないシュタルク。見かねたフェルンが口を挟む。だが、狭いコミュニティ内でシュタルクが対女性に対して経験値を積むのは難しい現実がそこにはある。
助け船を出そうかと思ったボンドルドだが、今は最後尾からメンバーを温かく見守る。
ネタが尽きてしまったので、どのようなお話を知りたいか読者様にお伺いできればと思っています。全て何話程度やるかも全く未定です。
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過去編(1000年前、初代ボンドルド)
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過去編(人類防衛ライン戦)
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過去編(50数年前、居候フリーレン)
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閑話(ゼーリエとプルシュカの文通)
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閑話(プルシュカと女神の魔法)
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バカか、全部やれ