北部高原ビーア地方にある街。
そこは北部高原唯一の穀倉地帯で、酒造が盛んな地域だ。魔族との戦いにおいて、食糧需給を支える大事な要所である。特に、酒の需要は何処でもある為、かなりの兵力がここの防衛に当たる。
街に長期滞在するのが好きなフリーレンだが、この街への滞在は思うところがあった。できれば、早々に立ち去りたいと思う程だ。
「この町には長居したくないから、買い出しを済ましたら――」
「フリーレン!フリーレンじゃないか!100年振りだな」
フリーレンの旧知であるドワーフのファス。勇者PTであった時代に縁があったドワーフだった。同じく勇者PTであった酒好き僧侶ハイターと意気投合し、伝説の酒を探すなど色々と大変だったと言う思い出が彼女の脳内を巡る。
そして、ファスはフリーレンPTを確認した。以前とは異なる顔振り。80年という月日が人間にとってどれだけ重たいかを痛感した。
「黎明卿か。魔族を根切りにするのか」
「どこかでお会いしておりましたか、ファス殿。魔族とて、この世界に生きる生命体の一つです。私は、種の保存に力を入れており魔族保護にも力を入れております。根切りにするなど、とんでもない」
「80年前、人類防衛ラインを押し上げる作戦で黎明卿を少し見かけた」
ファスの記憶には、仮面を付けた集団が魔族前線を吹き飛ばす光景が鮮明に残っている。空を切り裂くような閃光が飛び交い魔族達が気持ちよく吹き飛んでいく。前線の士気を支えた英雄的存在。
「魔族が死のうが、儂には関係無い。そんなことより、皇帝酒の所在が分かった。手伝ってくれんか?フリーレン、お前さんは魔法が使えるんだろう」
「皇帝酒と魔法と何の関係があるの?」
乗る気でなかったフリーレンだが、ファスに付いていく。フリーレン一行は、後を付いていき坑道の中にまで足を運んでいた。そこに一つの石碑がある。
石碑は古エルフ語で書かれていた。魔道書にも使われている言語であり、魔法使い必修の言語。石碑に書かれた文字をフェルンが読み聞かせる。
「古エルフ語ですね。皇帝酒が最上の銘酒であることを讃える碑文です。ミリアルデ。この碑文を書いた人でしょうか」
「……やっぱり、ミリアルデか」
フリーレンが懐かしむように、石碑の文字を再確認する。だが、そこには、間違いなく知人の名が刻まれていた。
「懐かしいですね。私は、お会いしたことは殆どありませんでしたがお酒が好きな人でした。エルフにしては、珍しく大人の女性でした」
この時、プルシュカの脳内で「大人」というキーワードが復唱される。プルシュカが出会った女性エルフは、フリーレンとゼーリエという子供のような者達だった。だが、ここで父親が口から『大人の女性』という単語がでてきた。
結婚は、大人がするもの。子供は、大人から産まれてくる。まるで、全てが繋がった感じがしたプルシュカ。母の名すら知らないプルシュカ。空気が読めるプルシュカは、父親に母について聞かないと決めている。ここに来て、重要なヒントを手に入れたと思っている。
「パパ!ミリアルデお姉……ミリアルデ
「美人な人です。長い人生で何を目的にして生きるかという人生の命題に挑む人でした。エルフの中では、比較的人類への理解が深い方です」
「なるほど。プルシュカも会えるかな?」
「貴方が良い子にしていれば必ず」
ボンドルドは、ミリアルデの所在は知らない。各地にいるアンブラハンズ達からの発見報告もない。死んでいなければ、是非イドフロントで余生を過ごして貰いたいと本気で考えている。望む物を全て用意して、永遠に好きな研究だけをして欲しいと。
ボンドルドから満足いく答えを手に入れたプルシュカは、ニコニコで上機嫌。
………
……
…
ファスに連れて行かれて皇帝酒が保管されていると思われる石室前までフリーレン達はやってきた。そこは、強固な封印がされており、1000年近く経っても健在。長寿のエルフが独自で編み出した封印技術は、常軌を逸していた。
フリーレンが封印を確認し、三ヶ月かかると判断する。
フェルンやシュタルクが居る状態で三ヶ月という滞在期間は長すぎると分かってきた。だが、今回に限ってはフェルンとシュタルクが報酬のライヒ金貨20枚という報酬に是非受けるべきだと言い始めていた。
「えぇ~、お金なんていいじゃん。ボンドルドが出してくれるんだし」
「フリーレン様、金貨20枚ですよ。いい加減、ボンドルド様に頼りすぎです」
「大金だぜ。しばらくは生活に困らないぞ」
フェルンは、自分達の懐事情を正しく把握している。魔道本が報酬である事が多く、大事な現金が少ない。旅路の支払いは、殆どボンドルドが出している。金が必要である時は少ないが、これは宜しくないとフェルンは考えていた。
「ボンドルド、
「無論です。中身を保証しないで良ければ」
力業で封印解除をしようとするボンドルドを止めるファス。金貨20枚も払って、石室の中身が保証されないのは駄目との事だ。地道な封印解除作業となる。ボンドルドも協力する事になり、二ヶ月で解除出来る目安が立った。
坑道から街への帰りに、フェルンはフリーレンとボンドルドが皇帝酒について知っていると思い質問してみた。
「フリーレン様、ボンドルド様、皇帝酒ってどんなお酒なんですか」
ファスが聞こえない距離にいることを確認して二人が答える。夢を壊すだけでなく、金貨20枚の仕事が無くなっては困るので小声で答えた。
「最低の安酒だね」
「エルフの口噛み酒と聞きました。当時の衛生状況を考えたら、お腹を壊す覚悟が必要です」
それでも、一部の女性エルフが造ったお酒は人気があったとかなかったとか話を聞いた事をボンドルドは思い出した。当時の高級なお酒は、女性エルフが足踏みで製造した葡萄ワイン。
いかに性欲が薄いエルフであっても、男が作った口噛み酒や男が作った足踏みワインは忌避感があった。
無論、それらのことをボンドルドがファスに伝える事は無い。
それから三ヶ月後、当時の状態のまま保存されていた皇帝酒が原因で集団の細菌性食中毒が発生する。本当に道連れにされた街の者達を哀れに思うが、古代の酒を飲んだのだから当然の結果。
フリーレン一行も抗生物質がなければ危なかった。
やっと8巻!
黄金郷編まで近付いてきたぞ。
早く12巻を発売してくれ少年サンデー。
そうしないと、青年サンデーみたいな展開になっちゃうぞ。
ネタが尽きてしまったので、どのようなお話を知りたいか読者様にお伺いできればと思っています。全て何話程度やるかも全く未定です。
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過去編(1000年前、初代ボンドルド)
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過去編(人類防衛ライン戦)
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過去編(50数年前、居候フリーレン)
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閑話(ゼーリエとプルシュカの文通)
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閑話(プルシュカと女神の魔法)
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バカか、全部やれ