メトーデは、不謹慎とは分かっていたが幸せだった。膝の上に、プルシュカを乗せてクッキーで餌付けする。ナデナデしても、抱きしめても可愛い反応を返してくれる。追い打ちを掛けるように、フリーレンを魔道書で釣って一緒に撫でたり、抱きしめたりしていた。
今の時代、両手にエルフの女性を抱きしめて悦に浸れる機会に恵まれるのがどれだけ幸運な事なのかとメトーデは、肌で感じていた。
「むふ~。可愛いプルシュカにメトーデお姉ちゃんはメロメロね」
「えぇ、本当にこの仕事を受けて良かった。このまま、お持ち帰りしても宜しいですか黎明卿」
ボンドルドは、この手の人は長い人生で沢山見てきた。
悪意が無く本心から小さくて可愛い子供が好きなのだと分かるが、女性で無ければ大惨事だ。こう言うとき、女性という性別は最強だといえる。フリーレンとプルシュカを両脇に侍らせて悦に浸るのが男だったら、犯罪臭が漂う。
メトーデもその事を理解しており、女性に産まれてきたことを女神様に感謝している。
「娘は差し上げられません。大事な一人娘ですから」
「パパは、プルシュカが居ないと寂しいもんね」
全員分の夜食を作るボンドルド。どこから取り出したのか、エプロン姿をしていた。メトーデは、脳が破壊されそうになる。一級魔法使い試験からは想像できない。
ゲナウは、フリーレン一行の戦力を加味した対応を考えていた。一言で言えば、過剰戦力。魔族戦においてプロフェッショナルの意見もあり、魔族の潜伏場所もおおよそ見当がついた。
………
……
…
魔族が潜伏していると思われる放棄された砦。ここで二チームに分かれる。
砦に向かうフリーレンチームと埋葬する死体をノルム商会に引き渡してから合流するボンドルドチームだ。このチーム分け、メトーデがプルシュカを担いで離さないため、必然的に女性チームと男性チームに分かれる事になった。
「黎明卿までコチラに残って良いのか。あちらには前衛が居ない。神技のレヴォルテを相手に厳しいぞ」
「戦力の均等配分です。敵襲に備えて、僧侶が一人くらいは残った方が良いでしょう。それに、フリーレンさんが付いているから問題ありません」
ゲナウも合理的な判断だと納得した。魔族の将軍で歴戦の猛者。正面から戦えば負傷は避けられない。フリーレン達の方は全員が魔法使いだ。飛行魔法で逃げれば時間も稼げる。
「分かった。黎明卿は、武術に優れた魔族とも交戦経験はあるのか」
「勿論。殺し方も熟知しております。魔法使いなら誰でも簡単ですよ、特に今の時代ではね」
魔族にも得手不得手がある。自分の魔法に適応した鍛え方が結果的に武術であったレヴォルテの殺し方は簡単だ。現在の魔法使いからすれば、戦いにすらならない。
その方法をゲナウに伝授するボンドルド。ゲナウは、一級魔法使いになり忘れていた初心を思い出した。この世で魔族を一番殺した魔法の事を。魔族の天才が開発した殺し特化の貫通魔法。
その魔法は、ゾルトラーク。
勿論、ゾルトラークを防ぐ防御魔法がある。だが、魔力を分散させる性質に特化しており、物理攻撃には弱い。つまり、シュタルクが前衛として攻め続ける限りゾルトラークを防ぐ防御魔法は張れない事になる。
「要するに、俺はいつも通り前衛として攻め続けていいんだな」
「頼んだ。だが、黎明卿がいると逃げ出しかねないから隠れておいてくれ。その紫のラインは、遠くからでも目立ちすぎる」
仲間外れにされてしまうボンドルド。夜の中で怪しく光る紫のラインに近付く魔族などいない。それが魔族の常識だ。悲しく一人で奥に引き籠もるボンドルド。顔を見たら逃げ出すと言われたら、どのタイミングで顔を出せば良いのか迷うばかりだ。
暫くすると、鴨が葱を背負って来る。
四本の剣を持ち、下半身が蛇の魔族。昨今では絶滅しかけているタイプの魔族であり、ボンドルドの興味を引いた。だが、残念な事にサイズが大きすぎたため、箱詰め出来ないと判断される。
ゲナウとシュタルクが応戦する。ゲナウの
「善戦しておりますね。これでは、私の役目はなさそうです」
フリーレン達の手伝いに行こうかと思ったボンドルドだが、建物の影でタイミングを窺っている角の生えた女の子を見つける。こんな夜更けに危ない場所を訪れる女性を放っておく事は紳士的でないと判断するボンドルド。
気配を消して、角が生えた女の子の背後に回り込む。そして、肩にポンと手を置いた。その瞬間、拘束魔法を発動し身動き一つ取れないようにする事を忘れない。角が生えた少女は、紫色の輝きを見てしまった。
「ヒィ」
「仲間の数と配置は?」
「し、知らない」
夜に響く優しい声を耳元で聞かせてあげる。だが、角の生えた女性の心拍数が急上昇する。埋められない絶対的な差を感じ取っていた。大魔族レベルの魔力から威圧されては、並の魔族など血の気が引いて、お目々がクルクルとなってしまう。
だが、魔族に容赦する程ボンドルドは甘くない。左拳に力をいれて魔族の顔面を殴りつけた。首がぐるりと一回転し、ねじ切れる寸前までになる。その勢い余った魔族は、地面に叩きつけられて、シュタルク達の所にまで吹っ飛んでいった。
一瞬全員の注意を引いてしまう。
だが、紫のラインを見た瞬間、ゲナウの行動は早かった。隙だらけであったレヴォルテをゾルトラークで貫いて殺す。
「これはお恥ずかしい。私とした事が手元が狂ってしまいました。まだ息があるとは、魔族とは生命力が高いですね。さぁ、回復魔法で治して差し上げましょう」
「凄まじいレベルの回復魔法だな、黎明卿」
ゲナウがボンドルドの僧侶としての力を目のあたりにした。首がねじ切れそうだった魔族が一瞬で回復する。
「本職ですから。シュタルクさんは、フリーレンさんの所に行って下さい。取りこぼしがないか確認したら私も追いかけます」
「分かった!」
走ってフェルンの元に急ぐシュタルク。何カ所か切られているにも関わらず恐ろしい耐久力をしているとボンドルドは関心していた。ゲナウは、ボンドルドが何をするにしても静観を貫く。
「二度目の質問です。仲間の数と配置は?」
「だから、知らないって!」
魔族だって痛みを感じる。これは、実験結果から得られたデータであり間違いない。それなのに、首がねじ切れそうになる痛みを味わって仲間のことを漏らさない魔族。彼等にも仲間意識がある事に感動していた。
「素晴らしい。魔族の貴方が、仲間を守ろうとする。これが愛、愛ですよ。貴方の愛が本物か確かめさせて下さい」
それから繰り返される愛の試練。
愛の試練の間、命乞いの魔法の言葉「お母さん」「病気の妹」「人間が好きで仲よくしたい」とか平然と嘘を並べ連ねていた。だが、ボンドルドを前に無意味だと悟り、魔族は解放されるため仲間の数と配置を売り渡した。
「それなら、フリーレン達が負ける事はないだろうな。一応、フォローに行ってくる。黎明卿はどうする?」
「私は、ノルン商会の方々を待ちながら彼女の処理をしておきます」
この付近に魔族が残っていてもボンドルド一人でおつりが来ると判断したゲナウ。魔族の処理を任せてその場を後にした。
ボンドルドは、愛の試練で心が壊れそうになっている魔族の首を掴み比較的崩れていない廃屋に連れ込む。男女が夜の廃屋で二人っきり、何が起こるかは明白だ。色々な汁が飛び散る大人の時間が待っていた。
こうして、無事に一級魔法使いの任務を終えたフリーレン一行。ゲナウ達に別れを告げて次の街へと向かう。戦闘経験だけでなくカートリッジも得られてボンドルドは大満足だった。
投稿ペースが緩やかになるかも。
流石に、黄金郷編に入る前に過去編とかで、何話か稼ぐ予定です。
ネタが尽きてしまったので、どのようなお話を知りたいか読者様にお伺いできればと思っています。全て何話程度やるかも全く未定です。
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過去編(1000年前、初代ボンドルド)
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過去編(人類防衛ライン戦)
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過去編(50数年前、居候フリーレン)
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閑話(ゼーリエとプルシュカの文通)
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閑話(プルシュカと女神の魔法)
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バカか、全部やれ