黎明のフリーレン   作:新グロモント

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31:格落ち

 北部高原ヴァイゼ地方。

 

 野宿していたフリーレン一行の元に一通の依頼が届く。大陸魔法協会からの依頼ではなく、一級魔法使いレルネンからの直接依頼だ。依頼する側のレルネンとしては、内容次第でフリーレンとボンドルド、一級魔法使いフェルンを纏めて動かす事が可能になる為、美味しいと考える。

 

 フリーレンも個人的な依頼など面倒ごとであると悟る。しかも、街中でいきなり攻撃してきた狂犬だ。"貸し"はあっても、"借り"はない。レルネンが高齢である事を考えれば、"貸し"を返さずに死ぬ可能性すらある。

 

「報酬の魔道書も一緒に送られています。後、脱出用ゴーレムの製造法と可愛らしい便箋も…」

 

「よし、やるか」

 

 魔道書に釣られて依頼を快諾するフリーレン。残る品が誰宛かと言えば、ボンドルド宛とプルシュカ宛だ。酷い事に、フェルンやシュタルクへの品はない。どうせ、師を釣れば弟子も一緒に釣れるという大人の考えだった。

 

「あれの製造法とは、思い切りましたね。"貸し"を返してもお釣りがでます。つまり、それ程に面倒な依頼という事です。引き受けましょう」

 

「可愛い便箋!! ゼーリエお姉ちゃんからのお手紙だ」

 

 プルシュカが受け取った可愛い便箋は、ゼーリエからの手紙であった。

 

 これには、フリーレンもこの世の終わりみたいな顔をしていた。だが、あのゼーリエが手紙を書くのかと興味津々だ。それこそ、魔道書より手紙の中身の方が気になる。覗き込もうとしたが、プルシュカがマナー違反とそれを遮る。

 

「ゼーリエが手紙なんて……そうか、これは夢だ。フェルン、少しほっぺたを引っ張って」

 

「はいはい」

 

 痛みを感じて現実だと知るフリーレン。

 

 頬の痛みを感じつつ、フリーレンは依頼があった目的地へと足を進めた。暫く歩くと、城塞都市ヴァイゼが一望できる高台へと到着する。そこから見渡す風景は絶景だ。見渡す限りの黄金……その神秘的な光景に誰もが目を奪われる。

 

「すごいな…見渡す限りの黄金だ」

 

「城塞都市ヴァイゼ。50年前に七崩賢黄金郷のマハトの手によって一瞬で黄金に変えられた悲劇の都市。噂には聞いていたけど、まさか大陸魔法協会が管理していただなんてね」

 

 フェルンが、何故かボンドルドの方を確認する。

 

「ボンドルド様って黎明卿と呼ばれておりますよね。黄金郷と何か関わりがあったりするのでしょうか」

 

「昔から、二つ名が似ている事で風評被害に悩まされました。そろそろ、ご退場願いたいものですね」

 

 フェルンの一言は、言葉の暴力。意図せず人を傷つける。その代償をフェルンは、シュタルクから近い未来で受ける事になる。シュタルクの対女性教育をしているのがボンドルドだ。その教材に、アブノーマルな物が誤って紛れ込んでしまう事故が発生する。一発なら事故だと昔の人は言っていた。

 

「ボンドルドが黎明卿から変えれば良いのに」

 

「嫌です。この呼び名は気に入っております。マハトさんに変えて貰いたい」

 

 珍しく頑なに譲らないボンドルド。フリーレンには、二つ名という男心が理解できなかった。一応フリーレンは、そう言う物なのかと多少の理解を示す。

 

「しかし、驚いたよ。依頼書には、大陸魔法協会から派遣された結界の管理者を手伝うようにとあったけど。まさか、デンケンだったとはね」

 

「ゼーリエに頼み込んでな。最近、結界の管理者の任を継いだんだ」

 

 死ぬまでに再会できるとは思って居なかったデンケンとの再会がここで成された。プルシュカも世話になったおじさんに会えて満足している。ボンドルドの目には、デンケンがここを死地と定めているのがハッキリと分かった。

 

 北側諸国で権威のあるデンケン。近しい立場の人間が先に死に行く事に、多少の悲しみがあった。権力を持つ者が死ぬと、後が荒れるのでそのしわ寄せが来ないことをボンドルドは祈るばかりだ。

 

………

……

 

 それから、この依頼内容をデンケンから聞かされたフリーレン一行。

 

 七崩賢最強のマハトが封印される地は、デンケンの故郷。

 黄金郷が結界外にも少しずつ伸びているので、結界の管理者は微調整をしている。

 デンケンは、黄金と化した故郷にある亡き妻への墓参りを終えている。

 

 ここから導き出される答えは、マハトとの一騎打ちだ。七崩賢との交戦経験がある者達からしても、デンケンがマハトに勝利するイメージがわかない。無論、それが分からないデンケンでもない。

 

 魔道書という報酬を前にしても、フリーレンがこの依頼のキャンセルを申し出た事にフェルンやシュタルクも動揺を隠せない。リーダーが決めた事には従うボンドルドは、懐に収めた脱出用ゴーレム製造法を返す事に納得した。

 

「私は昔、黄金郷のマハトに負けている。私が今までの人生で負けたことがある12人の魔法使いの内の一人だ」

 

「クヴァールと同じ…」

 

 フリーレンが勝てなかったと言う言葉は重い。しかも、クヴァールと違い結界内部で今も生きており、封印解除と同時に潰すメタ作戦が使えない。これが人類存亡を賭けた戦いなら多少の無理は必要だ。だが、黄金の浸食スピードから、マハトの寿命の方が先に尽きると判断できた。

 

 死ぬまで、封印されていれば良い。これが、一般的な回答だ。

 

「パパが居ても勝てないの?パパだって、フリーレンお姉ちゃんを負かした一人だよね?」

 

「そうですね~。犠牲を払ってまで潰すほどマハトさんには価値はありません。私は、フリーレンさんの意見に賛成します。守るべきは、仲間の命です。そして、寿命で殺せるなら死ぬまで封印しておくのがベスト」

 

 現在の戦力で戦った場合、フリーレンとボンドルド以外が犠牲になる可能性が非常に高い。

 

 これも全て、黄金郷マハトが使う魔法――"万物を黄金に変える魔法"が原因している。それは、現代の魔法技術では原理も解除も出来ない"呪い"に分類される。更に問題なのは、マハトの魔法で黄金に変えられた物質は、不変であるという事だ。

 

「黎明卿、物は試しにこの黄金のリンゴを魔法で焼き切れるか試して貰えないだろうか」

 

「最強の矛と最強の盾……この矛盾がどのように処理されるかと言う事ですか。良いでしょう」

 

 デンケンが取り出したのは、大陸魔法協会でも手も足も出なかったマハト製の黄金。一級魔法使いであってもこれが魔法で作られた物と判断できない品物で有り、市場に流通したら経済が破綻するレベル。但し、加工できない金と言う事で見分け方は比較的に簡単だった。

 

「ボンドルドでも無理だよ。それは、如何なる方法でも加工すらできない」

 

 フリーレンの一言が、ボンドルドに火を付けた。

 

 過去の敗北経験からマハトに勝てるイメージが持てないフリーレン。だが、それは本人の問題だ。皆が不変という認識を強く持つせいで絶対無敵の黄金となりつつある。だが、人間は成長する。

 

「私よりマハトさんを信じるフリーレンさん。良いでしょう。英雄と呼ばれた貴方の腐れ縁が、その常識を覆して見せます。そのリンゴが動かないように固定しておいて下さい」

 

 フリーレンが間違って、黄金郷の封印に当たらないように角度を調整して魔法で黄金リンゴを拘束する。

 

 ボンドルドのカートリッジから悲鳴を上げるような軋む音が聞こえる。搾り取られる魔力。だが、この軋む音は、箱入り娘にされた者達からの歓喜の声だ。魔力を使い果たして楽になれるチャンスだと。

 

「何もソコまで本気にならないでも」

 

「プライドの問題です、フリーレンさん。―――枢機に還す光(スパラグモス)

 

 一点集中。ボンドルドが放った光が黄金リンゴに直撃する。

 

 枢機に還す光(スパラグモス)の継続照射を受けたリンゴ。枢機に還す光(スパラグモス)を弾き、周囲に光線を撒き散らした。光に触れた地形や木々が消し炭となっていく。その様子に少し期待していたフリーレンが残念そうな顔をしていた。

 

「ほら、やっぱり無理じゃん」

 

「いや、待つんじゃ。リンゴが変形してきた」

 

 デンケンがリンゴの異変に気が付く。魔法が"呪い"に打ち勝つ。その瞬間を皆が目の当たりにしていた。

 

「パパーーー!!頑張ってーーー!!」

 

「頑張れ、ボンドルド」

 

 エルフ女性二人からの声援。フリーレンの小声を確かに聞き取ったボンドルド。父親としての意地を、男としての意地を皆に見せ付けるボンドルド。

 

 黄金のリンゴを貫く穴が確かにソコにはあった。

 

 スポンという音と共に、カートリッジが一つ転がる。

 

「おやおや、リュグナーさんが終わってしまいましたか。少し無理をさせすぎました。ですが、彼の献身で今この瞬間、"呪い"が"魔法"へ格落ちしました」

 

「魔法なら私の領分だ」

 

 転がるカートリッジをゾルトラークで完全消滅させたフリーレン。彼女は、腐れ縁の行動に応える。次は自分の番だと。

 

ネタが尽きてしまったので、どのようなお話を知りたいか読者様にお伺いできればと思っています。全て何話程度やるかも全く未定です。

  • 過去編(1000年前、初代ボンドルド)
  • 過去編(人類防衛ライン戦)
  • 過去編(50数年前、居候フリーレン)
  • 閑話(ゼーリエとプルシュカの文通)
  • 閑話(プルシュカと女神の魔法)
  • バカか、全部やれ
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