黎明のフリーレン   作:新グロモント

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37:新しきボンドルド

 ボンドルドの生還。それを目の前で見ていたフェルンとシュタルク。

 

 喜ばしい再会。死んだと思っていた仲間が実は生きていた。少年誌では、よくある話。手垢がつくくらいに聞いた事がある。プルシュカは父親との再会を喜び、笑顔を取り戻していた。その笑顔を守る為なら、多少の事は許される。

 

 魔法に知見があるフェルンは、ボンドルドがボンドルドである事を正しく認識していた。彼女の五感、魔力探知など全てがボンドルドであると答えを出す。だが、周囲に残る肉片や血痕がそれを否定する。一級魔法使いの試験では、"質量のある分身を作る魔法"を作る受験生もいたが、そんなチート魔法ではない。もっと、物理的な物だと。

 

「凄いわ。今まで色々な人間と関わり魔法を教えて貰った。でも、貴方が使うような魔法は初めて見た。人間って、そんな事まで可能なのね」

 

「人間には愛があります。愛が有る限り人間は不滅です。覚えておいてください」

 

 シュタルクがフェルンの方を見た。

 

 魔法使いは、愛を知る事で同じ事が出来るのかと。その眼差しにフェルンが冷たい目線で返す。冷静なフェルンとて、今は混乱していた。死んだはずのボンドルドと同一人物が現れた。コレをどのように表現すれば良いかが分からない。

 

「そうだったの、これでまた一つ人類を理解できたわ。でも、先ほどよりかは弱そうね。それで、どうするの?私ともっとお話する?寿命がその分だけ伸びるわ」

 

「お気遣い感謝します。この身体は、南の勇者の血筋が混ざった特別製です。カートリッジが無くても負ける未来は想像できません」

 

 ボンドルドは、プルシュカを降ろしてフェルン達の所に行った。警戒をするフェルンとシュタルク。だが、プルシュカが大丈夫よというだけで二人の警戒レベルは数段下がる。

 

「ボンドルド様ですよね?後で、説明をしていただけるんですよね」

 

「俺も詳しく知りたい。あんたは、本当にボンドルドさんなのか」

 

「アンブラハンズは、全て私です。彼も私もボンドルド。ご納得出来ませんか?ですが、大丈夫です。次に目を覚ます時には覚えていません。――"数分間の記憶を消す魔法(オブリビエイト)"」

 

 記憶を消す魔法。それは、ボンドルドの師であるフランメがクソ弟子へと残した最後の資料。フリーレンへは、死者と出会う場所の情報を残し、ボンドルドには記憶を消す魔法を残す。

 

 人類史に残る伝説の魔法使いは、不出来な弟子達の為、あれこれと死後でも世話を焼いてくれていた。

 

 今から数分間前までの記憶しか消せない絶妙に使いづらい魔法ではあったが、今でこそ最高に輝いた。記憶が消された衝撃で昏睡する二人をプルシュカに任せたボンドルド。邪魔にならないように遠くへ避難を始める。

 

「あら、良かったの?皆一緒の方が戦えるんじゃない」

 

「今の彼女達の心理状況では、先ほど以上に足手まといです。それでは、語り合いましょう」

 

 ボンドルドが獣化状態へと変貌する。肉体は完全に新品となり、魔力も十分。ソリテールの手の内も割れている。魔力総量と魔力コントロール以外ではボンドルドが優勢であった。

 

「ふーん、魔力総量は7割くらいね。アウラが残っていたら負けていたかも」

 

「徹底的に壊しておいて何を言います。七崩賢クラスの品物は、貴重品でした。ですが、私の注意不足は私の責任。アウラさんの罪はまだ償い切れていないというのに、これでは天国へは行けないでしょう」

 

 ソリテールは、ボンドルドに勝てると確信していた。見た目が少し魔族に近付いた感じがする獣化状態だが、魔力の差は確実にある。

 

「その魔法、さっきは使ってなかったわよね。それも初めて見る魔法」

 

「失伝した女神様の魔法です。常人であれば、習得するのに300年以上かかります。だからこそ、事前に引き継いでおく必要がありました。この魔法を見て五体満足で生き残った魔族はおりませんので、是非チャレンジしてください」

 

 ボンドルドは、ゼーリエの様に他人に"魔法を譲渡する魔法(フィーアガヴエリア)"といった高度な魔法は使えない。だが、その劣化版"自分の経験を自分に譲渡する魔法"を歴代のボンドルド達が開発した。民間魔法より遙かに利便性がなく使いどころもないような魔法だが、ボンドルドだけは違った。

 

 その経験には、旅の経験、戦いの経験、魔法の経験といった内容が含まれる。精神隷属機(ゾアホリック)でボンドルドになった時点からの差分が新しい肉体に蓄積される。これにより、今までの経験を積み、アンブラハンズであった頃の経験も積まれる。こうでもしなければ、大魔族と渡り合えるだけの実力を身につけることなど到底不可能。

 

 そのキーとなるのが、ボンドルドの鉄仮面。この仮面こそが"自分の経験を自分に譲渡する魔法"が具現化した物。いわば仮面の形をした魔道書みたいなものだ。

 

「やっぱり、人類は危険ね。参考になったわ。さようなら」

 

「お別れの挨拶とは、つれないですね。貴方には、フリーレンさんの旅路に同行して人間を知って頂きたいと思っています」

 

 双方言葉は尽くした。決して交わることが無い者同士だ。

 

 ヌルリとボンドルドの身体が動く。身体を捻る勢いを利用し、尻尾でソリテールを突く。魔法攻撃と物理攻撃の双方を警戒していたソリテールだったが、マハトの黄金を利用した壁が僅かに間に合わなかった。攻撃を逸らしたが、脇腹を掠める。

 

 手や足ではなく、尻尾を使った攻撃を人類からされる経験はソリテールにもない。反射的に防御が間に合わないのは、無意識下で行動ができていない証拠だった。

 

「痛いじゃない。私も本気で応戦しなきゃね」

 

「えぇ、そうして下さい。コチラも慣らしが必要ですから」

 

 下手な魔法では追い込まれると感じたソリテール。高圧縮した魔力をボンドルドに幾度も放った。威力と速度は十分で有り、ボンドルドの肉体強度や防御魔法を考慮した上での攻撃だ。

 

 しかし、全て空振りに終わる。

 

 ソリテールの魔法の良い所は、発動タイミングが分かりづらい事と実質不可視だと言う事だ。魔力感知可能だが、その瞬間には魔法が直撃している。この見えない刃となっているソリテールの魔力をぶつける方法がボンドルドに通じていない。

 

「ふふふ、凄いわ。なんで避けられるの。貴方でも見えていないはずよ……いいえ、当たる前から避けていたわよね」

 

「偶然です。さぁ、もっと試運転に付き合ってください。――枢機に還す光(スパラグモス)

 

 ゾルトラークですら、持ち前の魔力を身に纏うだけで防ぐ自信があるソリテールだが、枢機に還す光(スパラグモス)を受けても無事でいる慢心はない。確実にマハトの黄金を盾にして防ぐ。だが、不透明な黄金は防御魔法と違い敵を見失う欠陥を持っている。

 

 ボンドルドは、地面に落ちていた過去の自分の頭部を拾い上げて投げつける。いまだに、頭部には魔力が残留しており、ソリテールの目を誤魔化すには有用だ。視界が晴れたところに飛んでくる人間の頭部。戦場ではよくある方法だ。そこら辺の死体でも戦士が投げれば投石にも匹敵する。

 

 グシャリとマハトの黄金が真っ赤に染まった。飛び散った血がソリテールの目に入る。人体の構造上では、人間と変わらない魔族。目という器官は、人間と同じ機能を有しており、目に異物が入ると反射的に目を擦ってしまう。

 

 フリーレンのように、魔族を殺し尽くしている修羅勢ならこの程度で目は閉じない。戦いの最中で致命的な隙を生む。

 

「わざとよ。人間らしかったでしょ」

 

3秒前(・・・)から知っています。これが、私の限界。南の勇者は、やはりバグでした」

 

 魔族のような手でソリテールの首を掴みあげようとしているボンドルドに対して、ソリテールは全力の魔力放出を構えて待っていた。ボンドルドなら必ずこのタイミングを逃さないと。

 

 攻撃が当たらなければ、至近距離で魔法を撃つ。正しい回答だ。更に、直線的ではなく面を押しつぶすような攻撃が理想だ。ボンドルドが仮に10層の防御魔法を使ったとしても致命傷を与えられるだけの魔力が込められた一撃。

 

 一筋の閃光が遙か遠い上空より放たれ、ソリテールの手を消滅させた。貯めていた魔力も行き場を失い消失する。何をされたかソリテールは分からなかった。攻撃魔法の方に視線を向けると遠くの上空に小さい人影が二つ見える。

 

 

「魔力探知範囲外からの超長距離射撃……これは予想外」

 

 失ったのは片手だけだ。まだ、魔族なら戦える。

 

 魔族絶対殺すウーマンがそれを許さなかった。二発の高圧縮ゾルトラークが長距離からソリテールの両膝を貫通させた。バランスを失い、倒れ込みそうになるソリテールをボンドルドが紳士的に支える。

 

 ボンドルドの両手がソリテールの肩を捕らえており、防御魔法や黄金を使って彼女は逃げられない。尻尾は、ソリテールの首を締めあげ脊髄に先端を突き刺している。ボンドルドが力を入れれば、首と胴体が泣き別れする。

 

「人間を甘く見るからです。魔法は使えませんよ。尻尾の先端には、封魔鉱で作られた特別製の針が付いています。脊髄の近くに挿されている内は、魔法行使など不可能です。最後に言い残す事はありますか?」

 

「ごめんなさい。改心します。死にたくないの。私は、貴方達と仲良くなりたかっただけなんです。ただ、やり方が分からなくて――」

 

 心にもない命乞いを始めるソリテール。

 

 だが、そんな言葉にすら縋る魔族の思い。女神様の敬虔な信徒であるボンドルドが無視することは出来なかった。それが、例え嘘であったとしても真実に変える。嘘はつき続ければ真実になるとは、よく言ったものだ。

 

「女神様の信徒であり、愛の伝道師である私が貴方を許します。貴方の罪は、私が文字通り背負って行きます。貴方が不幸にした人間以上の人を救う事で貴方は許される。……アウラさんの分も頑張ってください」

 

 ボンドルドの尻尾がソリテールの脊髄に刺さったまま、彼女は茂みに連れ込まれた。ソリテールは、その日を最後に太陽すら拝めない箱入り娘となる。こうして、ソリテールの罪を背負い、世直しをする新しきボンドルドの旅路が幕を開ける

 




アンブラハンズは、全て初代ボンドルドの血縁です。
自分の子供をボンドルドにして、生きてきました。

代々のボンドルド達で少しずつ魔法を開発し、今に繋がる涙ぐましい努力の結果、今のボンドルドが誕生しております。

新しきボンドルドは、南の勇者の血筋が混ざった特別製。任意で三秒先の未来が見えます。

PS:
大体11巻分までの内容が終わりました。
急ぎ足で色々飛ばし箇所もあり、誤字脱字も多い中、読者の皆様に支えられてここまでこれました。
この場で改めてお礼を言わせてください。
ありがとうございます!!

今後ですが……どうしようか考え中です。
後数話は持ちそうですが、存在しない過去編とかやらないと間が持たない。

投稿頻度を少し下げながら色々頑張っていこうと思います。

よろしくお願い致します。

ネタが尽きてしまったので、どのようなお話を知りたいか読者様にお伺いできればと思っています。全て何話程度やるかも全く未定です。

  • 過去編(1000年前、初代ボンドルド)
  • 過去編(人類防衛ライン戦)
  • 過去編(50数年前、居候フリーレン)
  • 閑話(ゼーリエとプルシュカの文通)
  • 閑話(プルシュカと女神の魔法)
  • バカか、全部やれ
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