北部高原キーノ峠。
陸路で帝国に入る為の検問があった。城塞都市ヴァイゼが黄金から解放された事から流通が回復し、検問所は混雑している。帝国への入国は、海路が主流であり陸路は珍しい。その為、検問所の常駐メンバーだけではキャパオーバーだった。
フリーレンが門番と交渉したが三週間待ちと言われてしまう。
80年程度で人は英雄の顔を忘れてしまうとは、悲しい事だ。人間の英雄なら、いずれは老化するので容姿が変わる。だが、エルフであるフリーレンは違う。人類史を真面目に勉強していれば、誰でも顔を見たことある。
「私が交渉してまいりましょうか。これでも、北側諸国では顔が利きます」
「別に良いよ。ちょうど、寄りたいところがあったから」
この世で二人と居ない風貌であるボンドルドなら、検問所の兵士達も顔パスで通す。現役の英雄であり、各地で働くアンブラハンズのお陰も有り知名度補正は十分だ。
皆がフリーレンに付いていく。今更数日寄り道した所でこの旅路ではよくある事だ。それに、三週間程度なら短いとすら感じるようになっている。人間、慣れとは恐い物だ。
目的地に進む道中、フリーレンの目的が女神の石碑だと知る。
「…女神の石碑ですか」
「女神様は知っているよね?フェルン」
この世界ではおとぎ話になるレベルの神様だ。今も昔も女神様を知らない人間などいない。
「もちろんです。聖典に出てくる天地創造の女神様。昔よくハイター様に読み聞かされました」
「女神様は自らの魔法を込めた、十の石碑をこの大陸に残したとされている」
フリーレンが言うのが今の時代に伝わる有名な話だ。だが、それは一つだけ間違いがあるので、ボンドルドは口を挟む。
「いいえ、一つは私が失伝させました。現存する石碑の内一つは、私が適当に作ったダミーです」
「パパの獣化は、女神様の魔法だったもんね。あれ、もふもふでプルシュカ大好き」
歴史的遺産ではあったが、技術独占は大事な事。自らの優位性を保つべく、この魔法は代々のボンドルドがしっかりと引き継いでおり、失伝と言って良いか疑問な所もある。
だが、形ある物が失われる事は歴史の中で沢山あった。大魔法使いフランメの魔法などもその一つだ。女神の石碑が一つ消えたところで、人類に何も影響はしない。
「ボンドルドって、僧侶だったよね?女神様の敬虔な信徒って言われるほどの」
「その通りですよ、フリーレンさん。だから、女神様もこの魔法を私に独占させてくれたのだと思っています。これは、私専用みたいな魔法です」
少し考えるフリーレン。だが、別に問題無いと結論づける。後で、ボンドルドに失伝した碑石の資料を見せて貰えば良いと思った。
「だったら、石碑に込められた魔法を解読するのは苦労しなさそうだね。なんだか、リベンジのつもりが簡単な作業になりそう」
「ボンドルド様。私の記憶が間違いでなければ、十の石碑は有史以来未解読だったと思うのですが、教会に黙っていて宜しいのでしょうか」
「大丈夫です。その教会の権力者の一人は私です。ハイター様がいらっしゃらない今、私を超える僧侶は存在しておりません。権力者達の中には、どのような対価を積んでも治療をして欲しいという顧客は掃いて捨てるほどおります」
仮に、バレたとしても揉み消す事は難しくない。高レベルの回復魔法が使える僧侶は、それだけで生涯が安泰する。
「そう言うことだから急ごう。入国審査までに解読できなければ諦める。ボンドルドにできたんだ私にだって出来るさ。リベンジといこうじゃないか。以前は、時間がなかったし、なぜか解析してから一週間ほどの記憶がないんだよね」
「その石碑危険な物じゃねーだろうな」
その後、近くにあると思った女神の石碑だが、二日も歩いた先にある。
だが、辿り着いた先にあったのは、壊れた女神の石碑。それと、その横には数十年前に新しく作られたと思う石碑があった。
「あれ?おかしいな、前に来たときは石碑は一つしか無かった記憶があるんだけど、いいか。崩れていても魔力が残っている。私はコッチを解読するからそっちは好きにして良いよ」
「じゃあ、プルシュカがこっちの石碑を解読するね」
石碑の解析を始めたフリーレン。
「――ママからだ。このお手紙ママからのお手紙だぁ!! パパ、ママからのお返事が来た。【プルシュカへ、ママより】って書いてある」
「そんなはずは……」
フリーレンがプルシュカの声に反応した瞬間、彼女の意識は過去へ飛ばされた。
………
……
…
フリーレンが違和感に気が付く。横にあった石碑が消えており、プルシュカも消えた。
「んん?」
「どうだ、フリーレン。何か分かったか」
懐かしい声に振り向いたフリーレン。振り向いた先にいた勇者PTが集合しており、思考が停止した。ヒンメル、ハイター、アイゼン。既に故人となっている仲間がそこには確かにいた。
いくつかの考察を立てつつ、フリーレンはヒンメルの事を確かめた。触感、反応など。
「えぇー…何?」
「実体か。ヒンメル、今、何歳?」
コレは重要な確認。フリーレンの推測が正しければ、以前に調査した時から一週間ほど記憶が飛んだ事と合わせれば答えが出る。
「23だよ」
「ふーん。なるほど」
どうやって帰るのかなと考えるフリーレン。
ネタが尽きてしまったので、どのようなお話を知りたいか読者様にお伺いできればと思っています。全て何話程度やるかも全く未定です。
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過去編(1000年前、初代ボンドルド)
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過去編(人類防衛ライン戦)
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過去編(50数年前、居候フリーレン)
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閑話(ゼーリエとプルシュカの文通)
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閑話(プルシュカと女神の魔法)
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バカか、全部やれ