黎明のフリーレン   作:新グロモント

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閑話:過去編(人類防衛ライン戦)②

 北部高原に向けて、進む大部隊。

 

 何台もの馬車を連れ北へ北へと進み続ける。南の勇者とボンドルドが率いるアンブラハンズ111名。見る者全員が道を明け渡す。妖しい光を放つ仮面を付けた大部隊が、最前線に向かっている。この異様な光景に誰もが息を飲む。

 

 大集団が進む先には、魔王軍の最前線基地の一つがある。元は占領された人類の街であり、そのまま活用されている。ここの奪還に、現地部隊は一進一退を繰り返している。

 

「この先の街は、魔王軍の一個大隊によって壊滅状態。しかし、生存者もおり、現地部隊では手も足も出ない状況。どうしますか、ボンドルド殿。お手並み拝見です」

 

「問題ありません。北上するに際し、あの街を抜けるのが最短ルート。露払いくらいはしましょう」

 

 アンブラハンズの中でも戦闘面に優れた死装束と呼ばれる者達。全員が今代ボンドルドのスペア。総合的判断からボンドルドに選ばれなかった猛者達がボンドルドを先頭に前へと踏み出した。

 

 魔族の前線基地とされた場所の奪還を試みていた部隊連中が、ボンドルドの行動を止めようとする。無理に突撃すれば生存者の生命が危ないと。だが、それは大きな間違いだ。生存者は、人食いの魔族達に囲まれて生きた心地はしていないだろう。明日は、自分が食われるかも知れない。

 

 人質達が求めているのは、一刻も早い救出だ。遅くなれば、生存者などいない。

 

「まぁまぁ、見てなさい。責任は、この南の勇者が取ります。彼も人類の到達点の一つです。今から、貴方達が見るのは夢でもない。現実です」

 

「たかが10人程度で何が出来るっていうんですか」

 

 ボンドルドの接近に気が付いた魔物達。無駄に知恵が付いた魔物達は、生き残った人間達を見せ付けてくる。これ以上近付けば、人質を殺すと。

 

 その行動をボンドルドは知能が低いと評価する。魔族は、魔力探知でボンドルドの魔力を感じた瞬間に空へと逃げた。まるで化け物を見るような顔でだ。

 

「敵前逃亡は重罪ですよ。アビス結界」

 

 戦争とは情報戦だ。前線の情報をいかに持ち帰らせないかが大事。だからこそ、魔族も魔物も全員生きて帰さない。

 

 空を飛ぶ魔族を逃がさない……その為、ボンドルドが年月懸けて開発した結界魔法――アビス結界。人間が空という魔族と同じ土俵に立てないなら、落とせば良い。それだけの事だ。

 

 血の色をした霧のような物が一瞬で広がり、空を飛んでいた魔族が自由落下を始めた。魔族にとって飛行魔法は、人間の歩行と同様に無意識で出来る。それが原因不明の魔法で出来なくなる恐怖は相当な物だ。

 

「それでは、ゴミ掃除をしましょう。枢機に還す光(スパラグモス)

 

 ボンドルドが放った魔法が遠くにいる魔物の頭を吹き飛ばした。その凄まじい貫通力で後ろにいる魔物達まで死傷させる。

 

 ボンドルド達が魔族前線基地に歩いて進む。歩きながら枢機に還す光(スパラグモス)を放つことで面白いように魔族や魔物が消し飛んでいく。それを死装束達も行えば神々しい光景が広がる。

 

『『『『『『『『『『枢機に還す光(スパラグモス)』』』』』』』』』』

 

 逃げ惑う魔族と魔物。射程距離外から途切れる事無く放たれる極悪貫通魔法。防御魔法でも防ぐ事は出来ず紙くずのように魔族達が死んでいく。隠れても探索魔法であぶり出され、物体越しに殺される。

 

「人質の保護は、貴方達でお願いします。私は、ボンドルド殿と一緒に人類防衛ラインを底上げします。さぁ、人類の快進撃の始まりです」

 

 南の勇者も前線基地攻略に参加する。

 

 それから僅か10分程度で魔王軍の一個大隊を殲滅し拠点が解放された。生きていた人質は酷い拷問で衰弱していたが、ボンドルドの回復魔法で傷が癒やされる。ボンドルドは、女神様の信徒として当然の事をしたと、それっぽい言葉をかけて、救われた者達の心を満たす事を忘れない。

 

 こうして、黎明卿ボンドルドの名は、人伝で伝わっていく。

 

………

……

 

 南の勇者の未来視により、待ち構えていた魔族達の策略を潰しまくるメタ作戦が数々実行される。

 

 10数個の前線基地を潰した所で、ついに南の勇者とボンドルドの情報が漏れ始めた。だからこそ、待ち伏せ作戦で殲滅する用意があった魔王軍。その為に、戦略物資を惜しみなく出してきていた。

 

「ここが、お前達の墓場だ。お前達の為、封魔鉱を大量に用意した。死ねぇーーー」

 

 誘い込まれた場所には封魔鉱が大量にあった。魔族の言うとおり、この場では魔法が使えない。勿論、それは魔族側も同じ。だからこそ、筋骨隆々で物理火力一点張りの魔物達が100近くも集められている。

 

「おやおやおや、これは困りましたね。私は魔法使いなので、南の勇者様にお任せしても?」

 

「ははは、私一人であれだけの数を倒すのは骨が折れます。まさか、ボンドルド殿にはこの程度の状況を打開する方法が無いと?……そこにギャリケーさんがいらっしゃいますよね」

 

 魔族達は何を勘違いしたのか、南の勇者が強いのは魔法のお陰だと勘違いしている。残念ながら違う。南の勇者は、肉体スペックがバグだ。未来視も魔法では無く、備わった才能だ。封魔鉱でどうこうなる物ではない。

 

『燃やします』

 

 人類は魔法が無くても戦える。魔法など摩訶不思議なパワーに頼らずとも、火炎を発生させる事は可能だ。これが人類の……ボンドルドの科学力。

 

 死装束の一人であるギャリケーが背負っていた荷物から火炎放射器を取り出す。ガソリンとタールを混合させたゲル状燃料を使用しており、魔法が使えない状況下ではこれを防ぐのは至難だ。周辺への被害など気にしない。魔族殲滅が最優先だ。

 

 火炎放射器から地獄の業火が飛び出した。魔法を封じた状況下で圧倒的な優位を保っていたと考えられた魔族。だが、追い込まれていたのは魔族達の方だ。炎に包まれて滅んでいく魔物達。

 

「これほどの物資が用意できるという事は、それなりの地位の魔族ですね。貴方の身体……是非、欲しい」

 

 ボンドルドの腕に備え付けた装置から三本の矢が飛び出す。ドラゴンのキバを加工して作り上げた物で、岩にも突き刺さる。先端には毒が塗られており、毒の効力は内臓がひっくり返る程度の苦しみを与える。生け捕りにするにはこの程度が丁度良い。

 

 魔族は二本の矢を防げたが、一本が脇腹に刺さる。丈夫な魔族だが、未知の毒に対しての抵抗など出来なかった。それでも、矢を抜いて逃げようとする。根性だけはあったが、立ち塞がる南の勇者を前に実現出来るかは別問題だ。

 

「どちらに行かれるのですか。貴方には、まだ役に立って貰わないといけません。未来では、箱入り娘とか可愛い名称で呼ばれるそうですよ。まぁ、貴方は男ですから箱入り息子ですかね」

 

「この化け物共が」

 

 魔族に化け物と言われる南の勇者。思わずボンドルドも同意してしまった。

 

「ボンドルド殿の事では?私は、人類最強というだけの普通の人間です」

 

「面白い冗談を言います。私の方こそ、たった1000年程度生きているだけの凡人です。神話の時代から生きている大魔法使いゼーリエ様から凡人だと評価を頂きました。女神様に一番近いと言われるお方が言ったのですから、間違いありません」

 

 最強と最凶に笑いながら、殺し尽くされていく魔族と魔物達。この事から魔族達は知る。化け物を倒すには化け物をぶつけるしか無い。

 

 また一つ魔王軍の拠点が壊滅する。

 

 この事が、魔王軍の七崩賢達に南の勇者とボンドルドという化け物が存在する共通認識を与えた。これこそが、南の勇者の死因となる出来事だった。

 




フリーレンの新刊(12巻)発売日が12月18日と知った作者は絶望中。

次話!! アウラさん、こんにちわ

本作品の今後の展開について、アンケートのご協力のお願い。どんな話で続けようか、読者様のご希望を窺えればと思っています。

  • 女神の石碑編normal ※週刊誌+独自
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