黎明のフリーレン   作:新グロモント

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全・年・齢!! 全・年・齢!!


閑話:過去編(50数年前、居候フリーレン)③

 身体が痛い。気が付いたときの最初の感想。

 

 フリーレンが目を開けると外から日が差し込んでいた。何で、こんなに身体が痛いのか少しずつ思い出していった。最後に、地面から吹き出した爆発に巻き込まれた。全魔力を注いで防いだ所までは記憶にあった。

 

「ベッドの上か。負けちゃったか」

 

 フリーレンが目線を横にすると、ボンドルドが椅子に座り読書をしていた。彼女が目覚めたのを確認し、近付く。

 

「えぇ、私の勝ちです。少し起き上がれますか?」

 

「怪我人なんだから、いたわって。で、何?」

 

 フリーレンは、起き上がれないほどの痛みでは無い。だが、怪我をさせた張本人に少しでも面倒をかけてやろうという悪戯心が働く。それを優しく受け止めるボンドルドがそっとベッドからフリーレンを起こす。

 

 ボンドルドは、フリーレンに自分の状態を正しく認識して貰う為、全身が確認出来る鏡を持ってきた。そこには、手足と腹部に包帯が巻かれたフリーレンの姿が映る。

 

「この三日間で顔の火傷は、完璧に治させて頂きました。回復魔法漬けで治すより、ある程度は自然治癒が良いと判断しました。激しい運動は控えてください。全治二ヶ月です。診療結果を纏めたので、後でご確認してください」

 

「自然治癒がいいと言う話は聞いたことある。髪の毛がサッパリしてる」

 

 背中にまで届いていたフリーレンの銀髪がショートカットになっていた。焼け焦げた髪をカットし、起きるまでにトリートメントまで済ませていた。なかなか、似合うと思ったボンドルド。

 

「女神様の魔法でも髪は無理です。伸びるまで、しばらく我慢してください」

 

「あの髪型、気に入ってたのに」

 

 長かった髪を惜しむフリーレン。

 

 ボンドルドは、フリーレンの横に座り櫛を取り出した。フリーレンは何も言わずに後ろを向き、髪を梳かしやすい様にする。フリーレンの寝起きの髪が丁寧に整えられていく。

 

「知っています。何か、他に希望はありますか?」

 

「お腹が減った」

 

 そう来るだろうなと思い、ボンドルドは行動食4号を取り出した。今の彼女に必要なのは栄養だ。それもバランスが取れた完璧な物。だが、それをみたフリーレンの顔が曇る。

 

 フリーレンは、ボンドルドに消化の良いご飯を用意するようにと部屋を追い出した。ボンドルドを追い出したフリーレンは、アンブラハンズ♀に頼み湯浴みへと出かける。三日間もお風呂に入っていなければ、女性として気になる所もあった。

 

 女性には、痛みを我慢してもお風呂に入らねばならぬ時がある。大雨の日に戦って、そのまま眠り続けて今に至る。常に側で治療をしていたボンドルドは、三日間程度風呂に入っていないフリーレンの匂いなど気になどしないが彼女は違った。

 

………

……

 

 汗を流しスッキリしたフリーレン。

 

 戻った頃にはベッドメイクも終えられており、ふかふかが待っていた。新しい包帯に変え、これで食事をしたら確実にぐっすり眠れる構えが整った。

 

 怪我をしてもここまで献身に介抱してくれる所は、そうそうない。部屋で食事をしながら、ボンドルドとの会話を楽しむフリーレン。

 

「湯治とは、良く言った物だ。スッキリしたし身体の調子も良くなった気がする。身体の何処にも傷一つ残ってないのは褒めてあげる」

 

「カルテをご覧になられたんですね。最初は酷かったです。左腕裂傷、胸骨の骨折、顔に火傷、左の小指なんて骨が見えていました。水蒸気爆発から貴方を拾い上げた時は、血の気が引きました」

 

 三日三晩、カートリッジを使い切る気で回復魔法をかけ続けたボンドルド。本当にヤバかったと。最悪、聖都にいるハイターを呼び出してでも何とかしようかと思っていた程だった。

 

 ムシャムシャと用意されたお粥を食べるフリーレン。食欲があるのは良い事だと、ボンドルドがお代わりの有無を確認した。だが、不要と言われアンブラハンズ達に食べ終わった食器が渡される。

 

 部屋には、二人しかいない。

 

「怪我人への差し入れは?姉弟子を殺しかけたんだから、それなりの物がないと許さないよ」

 

「用意しています。ですが、弟弟子の右足と指を10本全部ねじ切られました。私でなければ、死んでます」

 

 ボンドルドは、一冊の魔道書をフリーレンに渡した。

 

 勝敗有無にかかわらず、譲渡する予定だった飛行魔法の魔道書。十年もすれば、一般的になるのだから早いか遅いかの違い。それで、フリーレンの入院中の暇つぶしになるなら悪くないとボンドルドは思っている。

 

 フリーレンは、嬉しそうに魔道書を受け取った。彼女も、どうせこうなるだろうと分かっていた。伊達に長い付き合いはしていない。魔道書を受け取り、ベッドに横になりながら魔法でページをめくっていく。

 

 器用だが、お世辞にも行儀が良い魔法の使い方では無かった。

 

………

……

 

 涼しい風、鳥のさえずり、明るい部屋で寝ながら魔道書が読める。これには、フリーレンもまた試合をしても良いかと思っていた。

 

 小腹が空けば、ボンドルドが絶妙なタイミングでお茶とクッキーを用意してくれる。

 

「むふー。くるしゅうない」

 

「お茶とクッキーは、寝ながら食べないでください」

 

 真の平和とは、今のような時間を言うのだろうか。そんな事を思うフリーレン。魔道書もキリの良い所まで読み終えたフリーレンが、突然思い出したかのように言い出す。

 

「ボンドルド。子供を作ろうか」

 

「…………どうやら、私は疲れているようです。幻聴が聞こえてしまいました」

 

 ボンドルドが、そう思うのも当然だ。

 

 フリーレンは、全治二ヶ月の怪我をしている。病衣を着ており脱がしやすいという事実はある。だが、まだ昼間だ。お天道様が真上にある。こんな雰囲気もクソもない状況で、そんな発言が聞こえてしまうとは、誰もが自身の正常さを疑う。

 

 そりゃ、ニッチなジャンルでは、包帯を巻いた入院中のエルフと致したいと思う人達も居るだろう。もしかして、これは試されているのかとすら感じてしまう程だ。

 

「むふ~、恥ずかしいのかな。お姉さんがいいよって言っているんだから」

 

「まだ、明るいですよ?」

 

 ボンドルドが窓の外に視線を向けた。

 

「そうだね。何か問題?(顔が)よく見えた方がいいんじゃない。暗いと見えないよ」

 

「よく見えた方がいいんですか!? ………………………だ、駄目です。フリーレンさんは、全治二ヶ月です。お身体にご負担をかけるのは」

 

 怪我が悪化したら大変だ。回復魔法でいざという時の対応は可能だが、怪我が悪化しては申し訳が無いと思うばかりのボンドルド。

 

「負担。掛からないんじゃないかな。だって、子作り(のキス)なんて一瞬じゃん」

 

「一瞬……一瞬ですか。そうですか、知りもしないでそのような事を言っては失礼だと思いませんか? 私は、こう見えて経験を積んだ身です。訂正していただけませんか」

 

 ボンドルドは、男の身体も女の身体も知り尽くしたプロだ。出産の痛みすらも知っている。もし、出産の痛みを男性は知らないなんて言われても、どんな痛みか即座に答えられる男は、ボンドルド達以外に居ないだろう。

 

 1000年の経験を積んだ男性に対して、一瞬で終わると言われてはボンドルドの沽券に関わる。フリーレンのために積み重ねてきた1000年が一瞬で終わると言われた。

 

「いいじゃん、別に事実なんだし」

 

 ブチ

 

「私にもまだこれほどの人間性が残っていたんですね。これは、わからせる必要があります。その挑発に乗って差し上げます」

 

 メスガキ風誘い受けという高度な技術。王侯貴族達の中で100年ほど前に流行った遊びだ。高度な精神魔法の使い手がお小遣い稼ぎで娼婦の記憶を本にして売ったことから広まったとされる。

 

 ボンドルドは、フリーレンがどうしてそんな本の内容を知っているのか、疑問だった。しかし、フリーレンの挑発にのり、距離を詰めた。

 

「ボンドルド、仮面くらい外したら?キスができないよ」

 

「それは失礼致しました。……おや、どうされました?」

 

 ボンドルドの顔をみたフリーレンは、若干の違和感を覚える。1000年前もこんな顔だったかなと。だが、ボンドルドがボンドルドであると彼女の全ての五感が言う。

 

「あんまり、年を取ってないなって」

 

「人間、年を取れば顔つきくらい変わります。私は、若い方に変わっただけです」

 

 人間は年を取ったら老いるパターンが多いが、例外もあるのかと学んだフリーレン。また一つ人間を知る。

 

「なんで、ベッドに押し倒しているの?」

 

「貴方の負担を少なくするためです。今、一ヶ月無補給無酸素で生きられる魔法をかけました」

 

 エルフにとって一ヶ月と言う時間は、瞬く間だ。一瞬とも言い換えられる。

 

 フリーレンは、人類最古の叡智をその身で知る。彼女が魔道書の続きを読む事が出来たのは、それから一ヶ月後の事だ。

 




全年齢の作品ですので、過剰は叡智はありません。
作者の技術でR18は現実的で無いので許してください。

次で居候フリーレン編は終わる予定です。

本作品の今後の展開について、アンケートのご協力のお願い。どんな話で続けようか、読者様のご希望を窺えればと思っています。

  • 女神の石碑編normal ※週刊誌+独自
  • 女神の石碑編another(原作世界線)
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