昨日は、共通分だけ投稿すると言いましたが、嘘になりごめんなさい。
締め切りを守らない作者が悪いんです。
残影のツァルトの魔法によって、高度16000m付近まで転移させられたフリーレン。飛行魔法が無い時代の今ならば、殆どの人類に効果的。落ちた瞬間の衝撃で死なないのはアイゼンくらいだ。
移動にも攻撃にも転用可能な便利で汎用性が極めて高い。だが、その使い方が上空に飛ばすなどバカの極み。フリーレンが同じ魔法を使えるようになったら、地中や岩の中、深海に転移させる。もしくは、心臓や脳といった重要な臓器だけを飛ばすだろう。
「でも、普通は死ぬ。気圧が違いすぎる」
普段から魔力による防御を怠らないフリーレンだからこそ、一瞬で高度16000mまで移動させられても肉体が耐えた。地上に落下するまで約60秒という短い時間でフリーレンは、対策を考える必要がある。
飛行魔法を習得している知識があるため、対応は簡単だ。だが、今の時代、何処で誰に見られているか分からない。万が一、魔王軍に革新的な未来の技術が渡ってしまえば、未来の歴史が確実に変わる。そうなれば、例え未来へ戻れたとしても同じ未来とは限らない。
フリーレンは己がやる事を決めた。この時代の魔法だけで、自由落下から助かり、残影のツァルトを始末する。そして、未来へと帰還する。
………
……
…
自由落下中のフリーレンを心配するヒンメル。遙か上空16000mに居るフリーレンを視認できる。直線距離にして、東京駅から羽田空港より長い。同じ人類でもここまで差が生じるものだろうか。
「落下まで60秒といったところか」
ツァルトの言葉にヒンメルが考える。今この場でツァルトを殺せば、魔法が解除されフリーレンが戻ってくるのか、それとも違うのか。仮に、上空に飛ばされたのがヒンメルであれば着地の衝撃を分散させるとか、木々を利用して着地速度を軽減させて無傷も可能だ。だが、魔法使いのフリーレンがそれを出来るとは、ヒンメルには到底おもえない。
「随分と回りくどい殺し方だね」
「人質さ」
人質が無くては、ヒンメル達に勝てない事の証明。魔法使い一人を見捨てれば勝てる。ツァルトの手札が割れた以上、歴戦の勇者PTに同じ事は通じない。
だから、魔族は人間の情に訴えた作戦を持ち出した。人質をとり、武装解除し殺す。それから人質も殺すというやり方だ。これは、対人類戦において魔族が学んだ一つの戦い方。実に有効的であり、数々の強者PTを壊滅させている。
魔族の言う事など嘘だとは分かりきっているが、自分達が死ねばフリーレンを助けるという口車にヒンメル達は乗る。この行動は、魔族には理解ができない。ヒンメル達は、嘘だと分かりきっているのに武器を捨てる。
「…どういうつもりだ」
「人類の弱い所さ。たぶん君達魔族には一生わからない」
一筋の光の閃光がツァルトの肩を焼き切った。
一瞬何が起こったか分からないツァルト。自身の魔力防御を軽々と貫通し地面にも深々と焼かれた穴が残る。思わず上空を見上げたツァルトは、紫のサイリウムが無い事に少し安堵した。
「黎明卿の魔法だと!? なぜ、フリーレンがこの魔法を……いや、違う。お前が、中身なのか!?」
「なるほど。やっぱり、やめた。これが交渉の答えらしい」
ヒンメルは、フリーレンがツァルトを殺す覚悟があると知り、志を同じくする。
だが、ツァルトの方は新たな事実を知ったと勘違いする。歴史を遡れば1000年近く前から生存が確認されているボンドルド。魔族とて、このあたりまでは調べが付いていた。その傍らに、エルフの影がチラついていた事も。
フリーレンとボンドルドが同一人物で、都合が良いときだけ仮面を使い分けていると理解した。魔法で質量のある分身が可能なのだから、アンブラハンズ達の魔法もこれで辻褄が合う。
◇◇◇
自由落下中、ツァルトに手傷を負わせようと思いフリーレンが使ったのが、
「長距離だとコスパ悪いし、慣れない魔法だと精度も甘い。手足の一本すら落とせない」
ゾルトラークならば、咄嗟に軌道修正が出来る為、今ので殺していたとフリーレンは断言できる。改めて、ゾルトラークの汎用性を恐ろしく感じていた。
地上が近付いてきたフリーレンは体勢を整える。地面に向けて魔法を使い、その反動で自由落下を相殺する。これならば、見られても問題ない。この時代において同じ事ができる魔法使いがどれほど居るかという問題はあるが。
着地に成功したフリーレンは、仲間と合流しツァルトを追い詰める。触れられたらお終いという魔法だが、触れられなければ問題無いをできる勇者PT。危うい隙は、フリーレンが魔法でカバーする事で流れるような連携プレー。お互いがお互いを支え合う。熟練したPTにしかできない。
追い詰められヒンメルとアイゼンに胸元を切られたツァルト。よろよろと崖の方へと近付いていった。
「これで形勢逆転だ」
「形勢逆転?おいおい。そう見えるのか?」
窮鼠猫を噛む。ピンチはチャンスという言葉がツァルトには相応しかった。彼の転移魔法は生物限定ではない。触れてさえ居れば、あらゆる物を転移できる。それが、水や石……崖であっても。
「!? そいつを崖に触れさせるな」
フリーレンが気が付いた時には、ツァルトの背後にあった崖が抉られた。崖の転移先はフリーレン達の真上。逃げ場無しの状況となる。
転移された岩のサイズを見てフリーレンは、ツァルトの魔法が想像の上を行く事に称賛を送った。二度も魔法を見せてくれた。一度は、この身体で体験。二度目は、ツァルトの限界出力の転移。
持ち帰って研究するにしても、この状況をどう切り抜けるかがフリーレンの問題。この時代の魔法では、転移した崖ごと消し飛ばすような魔法はない。
ヒンメルもハイターも上空の崖を見ても冷静だった。困りましたといった程度の軽い感想。まるで打開策でもあるかの言い方だ。この状況で焦らないヒンメル達に逆にフリーレンが混乱しそうになる。
「どうしたの?妙に冷静だね」
「勿体ぶるなよ。フリーレン。打開できる魔法を隠しているだろう?」
ヒンメルの的確な指摘に対して、何も言えないフリーレン。
何故、そのような事が分かるのか。顔には出していなかったはずだと思い返した。
「……」
「やっぱりそうなのか。わかりやすい奴だ。君は気付いていないだろうけど、僕達は君を信じているんだ。どんな事情があるかは知らないが、たまには僕たちを信じてみるのもいいんじゃないか」
その言葉は、フリーレンの心に染み渡る。信頼してたからこそ魔王討伐に付き合った。ヒンメル、ハイター、アイゼン……みんな、こういう奴らだったと徐々に蘇る過去の思い出。
「わかったよ。これから使う魔法は、他言無用。墓の下まで持っていくこと」
フリーレンの大袈裟な発言だと思ったヒンメル達だが、フリーレンの覚悟を知り即座に了承した。彼等はみた魔法の事を生涯人に漏らす事はしない。
フリーレンの切り札。隠していた魔力を解放したその威力は、落ちてくる崖を一撃で粉砕する。その威力は、遠くで勇者PTを監視しているツァルトにすら人類の魔法の領域ではないと言わせる程だ。
ツァルトは、フリーレンの真の姿を知ってしまった。彼女は、南の勇者に比肩する脅威となる。その情報を魔王軍に持ち帰る事がツァルトの最優先事項。だが、フリーレンの真の姿を見て生きて帰れた魔族は居ない。今日もそれが守られ続ける。それだけの事だ。
「素敵な魔法を有り難う、ツァルト。暫くは君の事は忘れないよ。ゾルトラーク」
「…やはり…お前は未来から。くたばれ
崖の崩壊に目を奪われていたツァルトは、背後に回ったフリーレンには気が付けなかった。ツァルトは、女神の石碑、時空干渉、人類の域にない魔法の全てを繋ぎ合わせて、最後に敵が未来から来た事に気が付く。だが、その情報を持ち帰る事は出来なかった。
フリーレンのゾルトラークによりこの世から完全に姿を消される。
本作品の今後の展開について、アンケートのご協力のお願い。どんな話で続けようか、読者様のご希望を窺えればと思っています。
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女神の石碑編normal ※週刊誌+独自
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女神の石碑編another(原作世界線)