残影のツァルトを倒す為、切り札だけでなく飛行魔法まで駆使していたフリーレン。その様子をしっかりとヒンメル達に見られてしまった。夜になり薪を囲む勇者PTの全員が彼女に注目する。なかなか、話さないフリーレンにヒンメルが助け船をだす。
「それじゃあフリーレン。説明してもらおうか」
「私は、今から80年以上先の未来から来た」
隠したまま元の世界に帰るのは状況的に難しい。そもそも、隠しきれない。
フリーレンは、事実だけを簡潔に伝えた。信じて貰えるだろうかという不安はあった。いきなり仲間が実は未来から来たと言ったらどう思うのか…フリーレンは少し考えてみた。
○フェルンの場合:
「フリーレン様、実は私40年後の未来から来たんです。いい加減一人で早起きをしてください。だから、過去を変えることで未来を変えますからね」
想像に容易く、未来から来たと言っても納得してしまうだろう。
○ボンドルドの場合:
「フリーレンさん、実は300年後の未来から来ました。今、フリーレンさんが研究中の転移魔法が原因で世界大戦になります。だから、記憶消去を受け入れてください。私は、昔も、今も、これからも貴方の味方です」
これも想像に容易い、過去未来のどちらからでもやってきそうなボンドルドだ。納得するだろう。
○プルシュカの場合:
「むふ~。むふふふ~。ほらほら~、可愛いプルシュカだよ。ヘ・タ・レなお姉ちゃん?でいいのかな。ざぁ~こ、ざぁ~こ。でもね、大好きだよママ」
なんか、腹が立ってきたフリーレン。未来で何を知ったのか手に取るように分かる言動が気にくわない。
○シュタルクの場合:
「フリーーーレン。なんか知らないけど、過去に来ちゃったから未来に送り戻してくれ。頼むよ~、このままじゃフェルンにころされちゃう」
と泣きながら土下座するシュタルクがいる。未来から来たんだなと納得する。
信じるだろうと結論が出てしまった。思わず、そこまで自分がチョロかった事に少し衝撃を受けてしまう。もっと、クールなお姉さんポジの筈なのに、チョロインに成り下がっている。
フリーレンの悩む珍しい顔を見たヒンメル達は、未来では余程の事があったんだろうと察した。エルフの彼女がここまで感受性豊かになるとは、想像も出来ないと。
ヒンメル、ハイター、アイゼンの全員がフリーレンが未来から来た事に納得した。彼女が見せた崖すら砕く魔法、飛行魔法、どれも信じられない事だ。それに、フリーレンが嘘をつくような人物で無い事は彼等が一番知っている。
翌日になり、勇者PTは元の旅路を進む。
その道中でハイターは、未来で魔王がどうなったかが気になりフリーレンに質問をした。だが、それは未来が変わる可能性がある。勇者ヒンメルPTが魔王討伐したという事はこの時代で彼等が知る必要はない。
フリーレンの代わりにヒンメルが代弁した。
「魔王を倒せないなら挑むのをやめるのか?違うだろう。どのような結果になろうと僕達は戦うんだ。僕達は、勇者一行なんだから。」
勇者の使命を崇高に全うしようとする正統派。そんな彼だからこそ、今も皆付いてきている。
………
……
…
昼食の時間。ヒンメルが大事な事を切り出した。未来のフリーレンは確かに大事な仲間だ。だが今の時代のフリーレンに何時戻るのだろうかと。同じ存在であるが故、聞きにくい事だ。
「それで戻る方法はわかるのか?」
「それがさっぱりなんだよね。女神の石碑にもう一度触れたら帰れると思ったんだけど反応すらしないし。そもそも術式構造すら認識出来ない」
ツァルトの転移魔法を解析しながら応用で何とかならないかと考えているが時間が足りていない。
「まあ女神様の魔法ですからね。未知の部分が多い」
「ハイターでも無理か。ハイターより女神様の魔法に詳しいのって…………いた」
僧侶として最高峰のハイターでも習得していない女神様の魔法を習得している男。今なお、北側諸国で対魔族で猛威を振るう黎明卿ボンドルド。
「可能性がある事は全部やろう、フリーレン。とりあえず、近くの街まで移動するか。フリーレンの心当たりは、魔法使いギルドや教会か?」
「この時代の呼び名だったら、黎明卿ボンドルド。旅路で一度は話したことあるよね?腐れ縁というか幼馴染み?」
「黎明卿ですか。私もよく存じています。適任かも知れません。女神様の魔法についての知見で彼に勝る人はいません。教会にも強い権力があるので、正直かなりの無茶が通せますよ」
南の勇者と人類防衛ラインを底上げしたボンドルドの名は、勇者PTも知っている。現時点での戦果で言えば、ボンドルドの方が上だ。
問題は頼るのは良いが、何処にいるか。フリーレンは、ボンドルドから魔王軍との戦いの最中に頼られた事はないと聞いた。今の自分が口止めしたのか、それとも本当に会わずに解決したのかフリーレンが迷う。
だが、どちらにせよ街に行かねば始まらない。こんな何も無い場所では情報すら集まらない。
「ふ、フリーレン。その…あれだ。黎明卿とはどんな関係なんだ。この間の魔族も黎明卿の魔法かとか言っていた。幼馴染みとかじゃなくて、もっと具体的な」
「同じ師の元で魔法を学んだ弟弟子だ。とりあえず、街についたら女神様の魔法の情報集めと平行して、ボンドルドの情報も集めよう。今の時期なら北側諸国のどこかに居るはずだ」
勇者ヒンメルは、あせらすんじゃねーーよと言った雰囲気が漏れている。だが、フリーレンは全く気が付かない。これが、フリーレンという奴だ。
………
……
…
街に着いて早々に情報収集を始めたが、女神様の魔法についての情報は簡単には見つからなかった。民間人への聞き込み調査、ギルド、教会、魔法店など思いつく限りを回ったが無駄足に終わる。
だが、仮面を付けた客が宿泊しているという情報がフリーレン達に伝わる。紫のサイリウムが光る仮面を付けた客を泊めるとか宿の正気を疑う。だが、北側諸国では、そのような無礼を働く者はいない。
フリーレンが一人で会いに行くと言ったが、心配だとヒンメル達も付いていく。大人数で宿に押しかけるのはどうなのかと思う。
泊まっている部屋につき、フリーレンがノックをした。
「ボンドルドいる? フリーレンだけど、ちょっと話がある」
部屋の中でガタガタと音がして扉が開いた。扉から出てきたのは、ボンドルドではなかった。共通点といえば、紫のサイリウム……アンブラハンズだった。
『フリーレン様。卿は、最前線におります。卿にお繋ぎ致しますか?』
「最前線からだと時間が掛かるからいいよ。リメイヨは、なんでここに居るの」
アンブラハンズの一人リメイヨ。アンブラハンズ♀であり、高い戦闘力を有する死装束。彼女の役目は、後方支援とボンドルドのバックアップ。最悪、魔王が出てきて最前線が崩壊してもアンブラハンズは滅びない。
そして、リメイヨが後方に居る理由は、南の勇者の血筋を持つ子供の出産であった。一部のアンブラハンズ達は、既に最前線を離脱しつつある。ある者は、仮面を脱ぎ捨て一般民衆の難民に紛れて南下しイドフロントを目指している。リメイヨの場合、産んだ子供を仲間に預けた後、ここを拠点に後方支援の任についていた。
しかし、そのような情報までは、フリーレン達には伝えることはない。
リメイヨはフリーレンの発言に疑問を覚える。
『卿の支援の為、滞在しております。フリーレン様、失礼ですが貴方は
「80年後は、孫の代かぁ。じゃあ厳しいかな」
ボンドルドが率いるアンブラハンズの一人であったので、ヒンメルも少し警戒が薄れる。しかも女性だ。いかに、ヒンメルの直感が優れていたとしても中身が同じである事など想像できない。
本作品の今後の展開について、アンケートのご協力のお願い。どんな話で続けようか、読者様のご希望を窺えればと思っています。
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女神の石碑編normal ※週刊誌+独自
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女神の石碑編another(原作世界線)