黎明のフリーレン   作:新グロモント

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06:アウラ、長生きしろ

 希望の光を手に入れたグラナト伯爵。

 

 フリーレン一行を中心とした魔族殲滅計画が審議された。人類側を舐めプしていた断頭台のアウラは、自らの優位性を捨てる失態を犯している。それは己の魔法である服従の天秤について、情報が人類側に漏洩していることだ。

 

 詳細が割れている魔法など、いくらでもメタが張れるのがフリーレンとボンドルド。研究者肌の二人が揃えば、出来ない事はすくない。

 

「実に面白い。自らの魔力量より低い場合、強制的に相手を服従させる。リスクがある魔法だからこそ、実現出来るものでしょう」

 

「大魔族に勝てる魔力量となれば、勝てる者は限られる。あんまり乗る気になれないけど、私がでるか。多分、今のボンドルドをみたら永遠に引き籠もっちゃうからね。アウラが隠れたら見つけるのが大変」

 

 カートリッジの存在は、フリーレンも把握している。伊達に腐れ縁ではない。この保存技術を開発するに当たり、フリーレンの知識も活用されている。よって、ボンドルドの魔力量が一夜にして増えた事で何があったか理解していた。

 

 ボンドルド自体も相手を油断させるために魔力を抑える訓練をフランメの弟子の時代から続けている。だが、外付けタンクについては、どうしようもない。

 

「そうですか。では、フェルンさん、シュタルクさん、プルシュカに経験を積ませるために同行させてください。アウラさんの魔法から、物量戦で魔力消費を狙うタイプです」

 

「フリーレン様の足手まといにならないように頑張ります」

 

「えぇーー、俺もいくの。万が一、その魔法の対象に俺が選ばれたらどうするんだよ。絶対に抵抗できないよ」

 

「バカだね、シュタルク。その魔法は、間違いなく1対1を想定した物。だから、フリーレンお姉ちゃんが居る最中、そんな大事な魔法をシュタルクになんて使うはずないわ」

 

 プルシュカの答えに誰もが納得した。

 

 この状況で服従させるならば、フリーレンしか選択肢はない。当然、外野から邪魔されないように彼女が集めた戦力を使われるだろう。フリーレンをどうにかすれば、魔族側の勝利は目前となる。

 

「ボンドルド様、私達まで参加したら魔族が逃げる可能性はないのでしょうか」

 

「良い視点で物を見ますね、フェルンさん。逃げませんよ。フリーレンさんの魔法解析能力は魔族も知るところです。ココで見聞きした情報を元にメタを張れる研究がされては勝ち目が更に薄くなります。つまり、今の段階で逃げていないのならば、彼女は前に進むしかありません。無論、私の存在がバレていない事が前提ですがね」

 

 現時点で魔族側にいる鎧達が消えていない。アウラが逃げたならば、鎧達の操作が途切れる。つまり、彼女はまだ逃げずに仲間の帰りを待っているという事だ。

 

「黎明卿ボンドルド様。貴方の言わんとすることは理解出来ますが、子供を参加させるのは……」

 

「グラナト伯爵。貴方の感覚は正しい。しかし、プルシュカはエルフであり見た目通りの年齢ではありません。可愛い子には旅をさせろといいます。今ならば親の庇護の元で安全に実戦経験が積める機会。一回の実戦がどれほど大事か、戦争を経験したことがある者ならば理解出来るはず」

 

 百聞は一見にしかず。

 

 正にその通りだとフリーレンも頷く。

 

「そうだね。まぁ、親元で安全に実戦を積める機会はすくないから私は良いと思うよ。何かあれば、ボンドルドが対応するだろうしね」

 

 ピコーン

 

 そこで、フリーレンが閃いた。

 

 以前に、パパの魔法が最強だといったプルシュカ。フリーレンは、魔法に対しての知見が低いことが原因だと考えていた。つまり、今こそ、自らが魔法を教えて真に最強は何なのか分からせるべきだと。

 

「では、フリーレンさん。今夜にでも……」

 

「三日後だ。それまでに、フェルンとプルシュカに色々と教え込む。万が一があっては駄目だからね」

 

「相手もバカではありません。2名の仲間が戦死したのは理解しているはず。まぁ、一人はある意味生きておりますから、騙せと言われれば騙しますが」

 

「じゃあ、騙しておいて」

 

 簡単に言うフリーレン。だが、その騙す仕事をする方は大変である。しかし、フリーレンが人を頼るのは珍しいので気合いをいれるボンドルドであった。

 

………

……

 

 三日後の夜。つまり、アウラの死刑執行日となった。

 

 この日に備えて、フェルンとプルシュカはフリーレンから魔法指導という名の実践的な訓練を積んでいた。油断も慢心もしていないフリーレンが相手では、フェルンとプルシュカの二人で戦ってもかすり傷程度が限界だ。

 

 正直、それだけでも称賛に値する。

 

「それで、三日間の訓練の成果はどうでしたか。フリーレンさん」

 

「知ってるくせに。子供は覚えるのも成長も早い。将来が楽しみ」

 

「親に似て優秀という事ですね。私は万が一に備えておきますので、アウラの事は頼みましたよ」

 

 分かったと小声で呟いたフリーレンが、ボンドルドの横をすれ違った。そして、ボンドルドは元気に手を振るプルシュカ達を見送る。

 

 

◇◇◇

 

 断頭台のアウラは、ここ数日迷っていた。

 

 生き残っているはずの部下が帰ってこない。この状況で引くべきか、残るべきかという選択肢がある。だが、彼女は残った。フリーレンが居て魔族を殺していないなど考えられない。つまり、何かしらのトラブルで街から逃げれない状態にあると考えた。

 

 このご時世、年齢を重ねた強い魔族を部下に出来る機会は多くない。今後も考えれば、見捨てにくいのが事実。ソコに付け加えるならば、自らの魔法が割れている状況下でフリーレンを見逃す事は将来的に自分の首を絞める事になると彼女も理解していた。

 

 そこにボンドルドを除くフリーレン一行が現れる。

 

 アウラは相手の魔力量を観察する。80年前の勇者PTみたいな世界のバグが揃った連中ではなく、何処にでもいるような連中であると理解する。

 

「勝ったわ」

 

 思わず、勝利を確信するアウラ。フェルンやプルシュカの魔力量は、アウラには遠く及ばない。それは、隠蔽した魔力を解放したとしても事実である。500年以上生きる魔族が日夜鍛錬した差を埋めるには遠い。

 

 つまり、彼女にとって、フリーレンさえなんとかすれば勝ち確定である。

 

「久しぶりだね、アウラ」

 

「そうね、80年振りかしらフリーレン」

 

「この先の街に行くつもりでしょ。だから、死んでくれるとありがたいんだけど」

 

「嫌よ」

 

「なんで」

 

 誰が、死んでくれるとありがたいんだけどで死ぬのかとアウラは疑問に思った。80年振りに会った怨敵は、性格が悪いと改めて理解した。

 

「後、言いたくはないけど……常識的に考えて、この場に子供を連れてくる?殺すわよ」

 

「凄い魔力!! 流石は、魔族随一!! それに、大きいね。フェルンお姉ちゃんより大きい。フリーレンお姉ちゃんは、もっと頑張りましょう」

 

 平然とアウラとフリーレンの会話に混ざってくるプルシュカ。そして、何処を比べたか分からないが、体の一部を大きいと評価する。

 

「あら、いい子じゃない。どこぞの銀髪エルフに似ているから、身長も心も器も小さい子供かと思ったけど、気に入ったわ。私の新しい部下にしてあげる」

 

「違うよ、プルシュカ。私は、まだ成長期がきてないだけ」

 

「えぇ~、でもフリーレンお姉ちゃんてプルシュカより小さいよ。きっと、もうすぐ色々とプルシュカに抜かれちゃうよ」

 

 アウラは一体何を見せられているのだろうかと思ってしまった。仲間割れかと思う程だ。だが、なぜか、フリーレンが貶される様子をみていると心が晴れ晴れとする気持ちになる為、大人しく観戦していた。

 

「プルシュカに良い事を教えてあげる。エルフの遺伝子を甘く見ない事だよ。目の前にその実例がいる」

 

「私は、パパ似だからきっと大丈夫……だよね。パパみたいにおっきく成長するもん」

 

 なぜか勝ち誇った風のフリーレン。フリーレンとプルシュカの勝敗は、遠くない未来で決する事になる。

 

 そんなやり取りの最中、アウラは不死の軍勢でフリーレン一行を包囲していた。

 

 アウラの作戦は、服従の天秤を起動中に邪魔が入らないように周囲の戦力に不死の軍勢をぶつける事だ。アウラ視点では、フリーレンの魔力量はアウラに届いていない。つまり、発動した時点で勝利が確定する。

 

 その間だけ、守りに徹すればよい。

 

 しかも、リュグナーの魔力がアウラが居る場所に近付いてきている事もあり、アウラは思わずにやけそうになった。これ以上にない最高のタイミングだ。

 

「フリーレン様、周囲の敵は私達で何とかします」

 

「フェルンお姉ちゃん、シュタルク……一番多く倒した人が勝ちね」

 

「競争か。負けてられねーな」

 

 不死の軍勢に突撃をしてなぎ払う彼女達。消し飛ぶ軍勢をみてアウラも凄いわねと称賛を送った。グラナト伯爵領を守っていた兵士では到底できなかった芸当をやってのけた。

 

「邪魔が入らないうちに死んでくれる? フリーレン――服従させる魔法(アゼリューゼ)

 

「嬉しそうだね、アウラ。勝利を確信してるの?」

 

 服従の天秤にアウラとフリーレンの魔力が乗る。

 

 アウラの目には、今も鮮明にフリーレンの魔力が映し出されている。多く見積もっても自分の三割程度。100年程度修練を積んだレベルだと考えている。500年以上鍛練を積んだ己と比較して負ける要素無しと。

 

 それに加え、部下であったリュグナーの魔力が間もなく彼女の元に到着する。運が味方していると考えているアウラ。

 

「今に分かるわ。それにしても、貴方は運が無いわね。もうすぐ、リュグナーもここにくる」

 

「タイミングは完璧だった。リュグナーという手札がお前を更に慢心させた。後、最後だから勘違いを訂正しておく。私は1000年以上生きた魔法使いだ」

 

 その瞬間、フリーレンが魔力を解放した。

 

 圧倒的な魔力でアウラの支配の天秤を大きく傾ける。ここから助かる手段は、外部からの要因で魔法が解除されてアウラが逃亡する以外にない。アウラは、部下であるリュグナーに指示を出そうと声をあげようとした。

 

 だが、その魔力を感じた先にいる紫のラインをみて、息を飲む。全身から血の気が引き、脂汗をかいているのが彼女自身でも理解出来た。

 

「おやおやおやおやおやおや、お久しぶりです。アウラさんと直接会うのは、80年振り以上ですか」

 

「な、なぜ貴様からリュグナーの魔力を感じる」

 

 北側諸国の英雄ボンドルド。アウラが会いたくなかった筆頭である。彼と出会って生き残った魔族は表彰されると言われる程に魔族を殺し尽くした男だ。アウラは、過去に栄光を求めてボンドルドと対峙したことがあった。

 

 だが、結果は惨敗だ。

 

 アンブラハンズを率いたボンドルドとの総力戦において、参戦した魔族の9割以上は死亡した。仲間を見捨てて逃げ出したアウラだが、植え付けられたトラウマは想像を絶する。

 

「フリーレン、私を早く殺せ!!」

 

「あ、そう。じゃあ、《アウラ、自害しろ。》」

 

 服従の天秤でフリーレンの支配下にあったアウラ。一番正しい選択をした。自ら死ねない状態であるため、ボンドルドの手に捕まる前に死にたかった。

 

 だが、捨てる神あれば拾う神あり。

 

 ボンドルドがすかさず、自害を試みたアウラを押さえ込んだ。舌をかみ切らないように口に指を入れて、羽交い締めにする。

 

「何してるの、ボンドルド。早く殺さないと」

 

「フリーレンさん、焦ってはいけません。誰しも罪を犯します。私は、彼女を天国に導いてあげたい。魔族であっても、死後は平等に救われるべきです……いいえ、天国に行けるために手助けをすべきです。それこそが、僧侶としてあるべき姿だと自負しております。一度で良いので、彼女にその償う機会を与えてはあげてみませんか。大丈夫です、私が責任をもって管理します」

 

 理想的な聖職者。まさに、この地に降りた女神の使徒といっても過言でない発言。この行いは女神様もしっかりと評価してくれるだろうとボンドルドは思っていた。

 

 満足げなボンドルドとは変わり……アウラは、ボンドルドに密接して理解してしまった。

 

 配下であるリュグナーの魔力がどこから感じるかを。ボンドルドの背に積まれたボトルから感じており、なにをどうすればあのサイズに纏められるのか知りたくも無かった。この時ばかりは、自分が優秀であった事を後悔する。

 

 これから何をされるか理解してしまった。

 

「こ…ろして。お、おねが……ぃよ」

 

「分かった、《アウラ、長生きしろ。》」

 

 因果応報。

 

 死者を弄んだアウラに相応しい末路を与えたフリーレン。アウラは人間と敵対したことを後悔した。大人しく、慎ましく、人知れず、暮らしていれば良かったと。

 

 後日、ボンドルドの魔力が飛躍的に増大した。

 




まだ、3巻半ば……頑張るぞ!

ネタが尽きてしまったので、どのようなお話を知りたいか読者様にお伺いできればと思っています。全て何話程度やるかも全く未定です。

  • 過去編(1000年前、初代ボンドルド)
  • 過去編(人類防衛ライン戦)
  • 過去編(50数年前、居候フリーレン)
  • 閑話(ゼーリエとプルシュカの文通)
  • 閑話(プルシュカと女神の魔法)
  • バカか、全部やれ
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